TS転生お嬢様「家から追い出されたくないのでお兄様と子作りするぜ!」 作:赤々
「あはは、大丈夫かい彩華?」
「全っ然大丈夫じゃありませんわ……」
「はははっ!そっかそっか。確かに今日は結構歩いたからね、疲れるのも無理ないよ」
「全くですわ。お兄様ったらワタクシのことをあっちこっち連れ回すんですから……」
「ふふふ、ごめんごめん。彩華と一緒に買い物をするのが楽しくてついつい……ああ、それよりもう大分日が傾いてきたね。そろそろ屋敷に帰ろうと思うんだけど……彩華。他に行きたい場所はあるかい?」
「え?他に行きたい場所、ですか?いえ、特に行きたい場所はありませんが…………いえ、そうですわね……あそこにある庶民の甘味処のタピオカミルクティーなる飲み物が気になりますわね」
「タピオカ?ああ、あの黒いつぶつぶが浮いた飲み物のことだね。うん、じゃあ一緒に……って、ふふふ。その様子だと無理そうだね。じゃあ僕が買ってくるから彩華はちょっとここで待っていて」
「ありがとうございますわ、お兄様。」
疲労困憊の俺の姿に苦笑いした兄貴はそう言って俺をベンチを残してタピオカを買いに行く。……俺がその背中をほくそ笑みながら見つめていることも知らず――
そして数分後ーー
「戻ったよ彩華ーー……って、あれ彩華?」
可愛い妹の為に飲み物を買いに行き、戻ってきた兄の目には先程までは妹が座っていた、今はもう誰もいないベンチが映っていたのであった。
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「はあっはあ……ふう、ここまで走ってくれば大丈夫だな。全く、兄貴のやつ全然隙を見せないからまいったぜ。お陰で営業時間ギリギリじゃねえか……まあ、ギリギリ営業時間内には着けそうだけどよ」
兄貴を置いて大通りのベンチから抜け出してきた俺は篠崎志乃から渡されたメモを片手に人通りの少ない路地を歩いていた。勿論、騙す形で何も言わず抜け出してきたのは兄貴には悪いとは思っているが、こうでもしないと抜け出せなかったのだから仕方ないだろう。と、心の中で言い訳をしながら歩くこと数分。周りの建物に溶け込むように佇む一軒の古びた店が見えてきた。
「桃華堂……うん、間違いないな。メモに書かれた店の名前と同じだ」
その古びた店に掲げられた看板に書かれた店名とメモに書かれた店名が同じことを何度も確認した俺は頷く。そして店内に明かりが灯っている事を確認した俺は逸る気持ちを抑えて、深呼吸一つ。意を決し、年季の入ったドアノブに手を掛けた。
チリンチリン
ドアに付けられた小さな鐘を鳴らしながら、店内に足を踏み入れると、店の中は生薬の入ったガラス瓶や薬を煎じる為のすり鉢や乳棒などの道具が所狭しに並んでいた。