TS転生お嬢様「家から追い出されたくないのでお兄様と子作りするぜ!」 作:赤々
だが、俺以外の客の姿は無く、代わりにカウンターの奥から眼鏡を掛けた四十代半ば程の男性の店主が人当たりが良さそうな微笑みを浮かべながら扉の前に立つ俺に声を掛けてきた。
「いらっしゃいませ、お客様。本日は何をお求めですか?」
「え?ええっと……薬を買いに来て……」
「左様でございますか。どういった効能の薬をお求めですか?ああ、風邪でしたらこの薬なんかおすすめで……」
「いえ、その……風邪薬を買いに来たんではなくて……ゔうんっ。ワタクシ、惚れ薬を買いに来たんですの!」
「ははあ、なるほど惚れ薬ですか。惚れ薬、惚れ薬と…………えっ?惚れ薬、でございますか?…………申し訳ありませんお客様。当店では生憎惚れ薬と言った政府から認可が下りていない薬は置いてはいなくてですね……」
「いいえ、そんな筈はありませんわ。ワタクシ確かにこの店で惚れ薬を売っていると篠崎志乃という女から聞きましたもの。そうじゃなかったらこんな小汚い店になんか来ませんわ」
「あー……、ははっ。どこで聞いたら存じ上げませんが、先程も言った通り、当店は政府から認可が下りてない薬は置いておりませんので……う~ん、そうですねえ……惚れ薬ではありませんが近いものでしたらこの牡鹿の肝臓とかどうでしょうか?少々根が張りますが、男性に精を付けたいならこれが一番ですよ――……お待ちください、お客様。今なんと言いました?」
「いや、だからこんな小汚い店に……」
「いえ、そこではなくその前です」
「え?その前?ええっと……篠崎志乃という女に……?」
「……ああ、なるほど。お客様は篠崎志乃様のお知り合いの方でしたか」
「ええ、だからさっきからそう言って……」
「申し訳ありませんでしたっ!まさか篠崎様のご友人の方とは思わず、とんだ失礼を……!ささ、篠崎様から話は聞いております。どうぞこちらへ……!」
「え、ええ……ありがとう……?」
突然態度が変わった店主の篠崎志乃から連絡を貰っているという言葉に、
(あれ、あの女……店に連絡しておくとか言っていたか?)
と、若干違和感を覚えたが、きっと気を利かせて店に連絡してくれたのだろうと、納得して、店主に案内されるままカウンターの奥にある扉を潜る。すると、そこはどうやら応接間の様で革製の黒々とした高級感を醸し出すソファがこれまた立派な一枚板で出来た背の低いテーブルを挟むように向かい合わせで置かれていた。
「ささ、どうぞお座りになってください。今、お茶をご用意致しますので」