TS転生お嬢様「家から追い出されたくないのでお兄様と子作りするぜ!」 作:赤々
それから一分後。自分の部屋から歩いて一分のところにある兄『西条院隼人』の部屋の前に来た俺は急く気持ちを抑えて兄貴の部屋の扉をコンコンとノックした。
「お兄様、彩華です。実は折り入ってお話があるのですが……入ってもよろしいですか?」
「……」
「お兄様?」
返事がない。いつもだったらすぐに返事が返ってくるはずなのにおかしいな…と思いながらもしかして部屋にいないのかと思った俺は扉の隙間から部屋の中を見る。と、微かだが部屋の電気が見えるので、おそらく部屋の中に『西条院隼人』はいるだろう。
「お兄様?入りますよ?」
念の為、再度ノックをして声を掛けてから俺はドアノブを捻る。そしてそのまま部屋の中に入り、室内と廊下を隔てる襖を開けると……そこには座卓の上に置かれたカップラーメンらしきものを真剣な顔で見つめている金髪の整った顔立ちをした青年……兄『西条院隼人』の姿があった。
「お兄様?」
どうやら俺が部屋に入った事に気付いてない様子の兄に声をかけると俺の声に反応した兄はこちらを振り返って少し驚いた顔をした。
「……彩華?どうしたんだい?こんな夜更けに僕の部屋に来るなんて……」
「こんな夜遅くにごめんなさい。でもお兄様にお願いしたいことがあって……」
「僕にお願いしたいこと?」
「ええ、お兄様。実はワタクシ…………いえ。そんなことより……お兄様、それはなんですの?」
計画通り『怖い夢を見たんですの。怖いので今夜は一緒に寝て下さい』と大いに妹の特権を使って『西条院隼人』を寝室に連れて行く為の嘘を吐こうとした。嘘を吐こうとしたんだが……良家の嫡男が絶対に食べないであろう『超大盛り!醤油ラーメン』とパッケージに書かれたカップラーメンがどうしても気になってしまい、無理矢理言葉を切って尋ねてみると、西条院隼人は何も知らない子供に物を教える様な優しい笑みを浮かべて答えた。
「ああ、これかい?これは『カップラーメン』と言ってね、このカップの中にお湯を入れて三分待つと即席麺が出来るという……一般庶民に人気の食べ物なんだ。」
「一般庶民に……」
「うん、そうだよ。……どんな味がするのか気になって従者に頼んで買ってきて貰っててね。今から食べようとしたんだけど……そうだ、綾香も一緒に食べてみるかい?」
「え?」
思わぬ誘いに無意識に喉が鳴った。いや、だってしょうがないじゃねえか!この世界に生まれてからずっと『良家のお嬢様』をやってきたせいでジャンクフードを口にする機会なんてなかったし!