TS転生お嬢様「家から追い出されたくないのでお兄様と子作りするぜ!」 作:赤々
「はあ……はあっ……な、にを言ってるのこの……ガハッ!?」
「あはは!なによその声!お嬢様ならもっと可愛い声で叫びなさい、よっ!」
「うぐっ!?ごほ、ごほっ!!」
「きゃははははっ!」
「や、やめ……あぐっ!……ろ、ぐあっ!」
間髪入れずに女の足で腹部を蹴り上げられ、背中を蹴られ、髪を掴まれて顔を殴られる。
(ぐっ、前世の身体だったらこんないいようにはされないのに……っ!)
そう思うものの前世でも経験したことのない暴力の嵐に鳩尾を蹴られた体は耐えきれず、胃の中の内容物を床にぶちまけ、口は裂け、流血し、鼻からも血を流す。それでも必死に遠退きそうになる意識を繋ぎ止めて堪える。が、その俺の反応が恐らく女の目には不愉快に見えたのだろう。女は『生意気ね…』と呟くと、掴んでいた俺の髪から手を離した。勿論、気が済んで俺を痛め付けるのをやめたわけではなく……更なる暴力を俺に振るう為に手を離したのだと、
(あっ、やばい)
髪を離されて頭が床に打ち付けられた衝撃と共に開いた目に映る、眼前に迫り来るブーツの靴先を見て悟った。
「ーー……た、すけて……兄貴……」
だから、きっとこれは無意識に呟いた、そう。誰にも届かないことを理解した上で呟いた独り言のようなものだった。……それなのに。迫り来る衝撃にギュッと目を瞑った次の瞬間。
ドカァアアアン!
と、凄まじい轟音が俺の鼓膜を震わせると同時に女の『きゃあ!?』という悲鳴と男達の『てめえ誰だ!』『おい!どこから入ってきたんだ!』という怒声が響く。その声に恐る恐る俺は閉じていた目を開くと……そこには、眼前に迫っていた靴先はなく、代わりにまるで俺を守るように立ちはだかる大きな背中があった。その背中には見覚えがある。だって、その背中はほんのちょっと前に俺の為に飲み物を買いに行ってくれた兄貴の背中でーー……
「……隼人、お兄様……?」
「うん、遅くなってごめん。今あのゴミ共を始末するから」
「へ?」
なぜ兄貴がここにいるのか。理解が追い付かず呆然とする俺に背を向けたまま兄貴はそう言うと女と男達に近付いていく。
「ひっ!ち、近づかないで!な、何なのよアンタ!?」
「……僕の可愛い妹にこんな怪我を負わせておいて謝罪の言葉もないのかい?」
「し、知らないわよ!アタシはただこの女が生意気だから躾けてあげようと思っただけだし!それにアタシ達に一人で勝てると思っているの!?アタシが呼べばすぐに上にいる警備の人間が……!」
「うん、彩華が我儘なのは分かるけど……警備の人間なら来ないよ。なぜなら今頃、僕の部下達が全員捕縛している頃だろうしね」
「は?何言って……」
「ね、姐さん大変だ!上の連中と連絡が取れねえ!」
「なっ……!?うそでしょ!?だって上には数十人も……あ、あんた何者!?刀や銃を持った数十人の人間を制圧できるヤツらが部下だなんて……いくら大華族の坊ちゃんでもおかしいわよ!?」
「ああ、君が戸惑うのもすごく分かるよ。だって、まさか誘拐した女の兄が皇帝陛下から直々に帝都警備隊の指揮権を自由に行使してもいいと許可されている人間だって思わなかっただろう?知っていたら妹を……彩華を攫おうだなんて思わなかっただろうしね。」
「なっ…なっ…!」
(なっ……)
な、なにいいいいーーっ!?兄貴って前世でいうところの警視総監様だったのぉ!?!?