TS転生お嬢様「家から追い出されたくないのでお兄様と子作りするぜ!」 作:赤々
『あれ?黒須聞こえるかい?』
「っ!……は、はい隼人様。……今、お開けします」
その兄貴の呼びかけにハッとした黒須は戸惑いながら病室の扉に手を掛ける。そしてゆっくりと開かれた扉の先には予想通りと言うか思った通り、スーツを着た金髪の美男子こと兄貴が立っており、その両手は確かに花束やら紙袋やらで塞がっていた。
「すまない、黒須。助かったよ」
「え、ええ……お役に立てて何よりですが……そんなことよりも隼人様。先日仕事が忙しくて暫く来られないと仰っていた気がしますが……?」
「うん。そのつもりだったんだけど、思ったより早く仕事が片付いてね。時間が出来たから彩華の顔を見に来たんだ」
「……左様でございますか」
「でも元気そうで良かったよ。だって、君から聞いた話だと今回の件で彩華かなり落ち込んでいて君が離れようとすると心細いのか『ちょっと黒須!ワタクシから離れるなんて許しませんわよ!』と言って無理やり引き止めてくると聞いていたから……」
「?」(あ゛?なんだその話?俺そんなこと言ってねえししてねえけど……)
「……」
自分も知らない情報が兄貴の口から語られて、ジトリと怪訝な顔をして黒須を見ると黒須はバツ悪そうに視線を逸らす。そして俺の追及から逃れる様に黒須はコホンと軽く咳払いをして兄貴に向き直った。
「それよりも……美しい花々ですね隼人様。もしよろしければそちらの花束を花瓶に生けてきましょうか?」
「うん?ああ、そうだね。じゃあお願いしようかな」
「かしこまりました。ではお預かりいたします」
黒須はそう言って兄貴から花束を受け取ると俺から逃げるようにそそくさと病室を出て行き、その後ろ姿を不思議そうな顔で見送った兄貴は病室の扉をパタンと閉めてようやく俺に視線を向けた。
「やあ、彩華久しぶりだね。お見舞いにきたよ」
「……え、ええ……」
「ちょうど一週間ぶりくらいかな?どうだい初めての入院生活は?何か困っていることはないかい?」
「……い、いえ……」
「そうか。なら良かったよ。屋敷と違って色々と勝手が違うから困っているかと思ったけど……ふふ、黒須が色々としてくれているお陰かな?」
「え、ええ……」
「うん?さっきからどうしたんだい彩華?元気がないようだけど……もしかして体調がすぐれないのかい?」
「い、いえ……そうじゃ……」
「?」
兄貴に問われて俺は内心頭を抱えた。
(い、言えねえええええ!正気に戻ったせいでこの一か月の兄貴相手にやらかした