TS転生お嬢様「家から追い出されたくないのでお兄様と子作りするぜ!」 作:赤々
「ふふふ、隠さなくても大丈夫よ。貴方の姿を見れば恋をしているなんて一目瞭然だもの。ねえ、お相手は誰かしら?もしかして先日の交流会でいらした聖アンジュ学園のミハイル様?それとも父親が現宰相にも関わらず官僚の道に進まずこの学園で保険医をやっている櫻井先生?もしくは……次期帝候補の朔殿下、とか?ああ、それだったら悩むのも納得だわ。朔殿下は華族の者ならば知らぬものがいないほど大の女嫌いですものね。噂によると乳母兄弟であった幼馴染の令嬢に毒を盛られたのが原因だと言われているけど……でも大丈夫よ!この数々の恋に悩める乙女たちを救ってきた、それこそあの社交界で悪い意味で有名だった宮野さんの恋を叶えた私に任せれば次期皇妃も夢じゃないわあ!」
そう言って自信満々に胸を張る篠崎志乃の言葉にヒクリと頬を引き攣らせた俺は「冗談じゃねえ!誰があんな性格最悪クソ皇子が好きなものか!」と即座に否定しようとして……止めた。何故止めたかって?それは――……
「……ちょっとお待ちになって?今、宮野さんの恋を叶えたとおっしゃったかしら?もしかして宮野さんってあの一か月前の舞踏会で『お前みたいな美しくも賢くも愛想も無い女なんか大嫌いだ!分かったらさっさと私の前から失せろ!』と公衆の面前で罵倒されていた美也子お姉様のことですか?そんな……ありえないですわ……だって噂によるとあの舞踏会のあと美也子お姉様は婚約破棄されたって……」
「ふふふ、冗談じゃないわ。確かに宮野さんはあの舞踏会のあと婚約破棄をされたらしいわ。でも婚約破棄された後に私の恋愛指南を受けた宮野さんは今では『君の卒業を待たずに籍を入れたい』って婚約者に迫られるほど好かれるようになったって昨日宮野さん本人が嬉しそうに私に報告してきたばかりよ」
「……そんな……」
馬鹿な、と思った。だって宮野美也子とその婚約者と言えば婚約者の家が抱えていた莫大な借金を宮野家が肩代わりする代わりに結ばれた婚約の筈だ。だから宮野美也子が婚約破棄されたと聞いた時は『そりゃあ婚約者の家に弱みを握られていて対等な関係で無い状態で上手くいくわけないよな…』と納得したものだ。だからもし篠崎志乃の話が本当なら宮野美也子は一体どんな手段を使って好感度最低値だった婚約者の心を捕えたんだ……という不可解そうな俺の表情に気付いたのだろう。篠崎志乃はクスリと赤い唇に細い指先を押し当てて令嬢に似つかわしくない小悪魔じみた笑みを浮かべると俺が思いもしなかった台詞を口にした。
「ねえ、貴女って惚れ薬に興味あるかしら?」