TS転生お嬢様「家から追い出されたくないのでお兄様と子作りするぜ!」 作:赤々
明らかに怪しい。だって、目が泳いでいるし頑なに黒須の方を見ようとしないしなぜか頻りに机の方を気にしている。絶対に何か隠し事をしている。黒須はそう思ったがそれを指摘したところでこの強情なお嬢様はそう簡単に口を割らないだろう。そう思った黒須は実力行使に出る事にした。
「……なるほど、分かりました。でしたら机の中の方を確認させて頂いてもよろしいですね?」
「ええ、勿論構いませんわーー……って、黒須今なんて言いました!?」
「では失礼します」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!年頃の令嬢の机の中を確認しようとするなんて何を考えていますの!?それでも誉ある西条院家の教育係ですか!?」
「いいえ、仕えているお嬢様が誤った道を進もうとしているならそれを正すのも教育係の仕事ですから。それとも……彩華お嬢様は机の中に私に見られては不味いものを隠しておられるんですか?」
「ぐっ、そ、それは……そんなことはありませんが……」
「でしたら見ても構いませんね」
「ま、待って黒須!ワタクシの話を聞きなさいって――……うおっ!?」
「彩華お嬢様?どうされました――……うわあっ!?」
お嬢様の制止を無視して机に近付こうとした黒須の耳に令嬢らしからぬ野太い声が聞こえたと思った次の瞬間。背中に強い衝撃が走り、視界が暗転する。そして衝撃に呻きながら目を開けるとそこには亡き奥様によく似た緩くウェーブの掛かった金色の髪をした少女が目を丸くして黒須を見つめていた。彩華お嬢様に押し倒されている。黒須はすぐに状況を理解し、咄嗟に『こんなところを他の人間に見られるわけにはいかない』と判断して体を起こそうとしたのだが……どうしたことだろうか。体が動かない。いや、それよりもいつも以上に間近に感じる彩華お嬢様の体温、吐息、そして匂いの全てが愛おしく感じる。いや愛おしくて堪らない。
(な、なんだこの胸のトキメキは……!?)
突然の湧き出した未知の感情に黒須は激しく動揺するが、それでも雑念を振り払うように目をぎゅっと瞑り、
「黒須!おまえにいちばんおおきいカブトムシをあげますわ!」
と、言って教育係になった初期の頃、避暑地から帰ってきた彩華お嬢様が自分にカブトムシをくれようとして虫かごの中に入っていたカブトムシ達を屋敷に解き放ち、由緒ある西条院の屋敷を悲鳴と怒号の混乱の渦へと変えて、あの滅多に笑わなかった隼人様を大爆笑させた色気もへったくれもない事件を思い出し、今すぐにお嬢様の美しい金糸の髪に頬ずりしたくなる衝動を萎えさせようとする。が、それを見透かしたように彩華お嬢様の凛とした鈴のような可愛らしい声が頭上から落ちてきた。