戦国時代に転生したら春秋戦国時代だった件   作:d_chan

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第1話 始皇帝、誕生

●月×日

住み慣れた寺を出立して麓の村を経由し、5日経つ。ようやく村が見えてきた。この村は、秦という国に属しているらしい。

なんでも今は乱世で、秦はその中でも一二を争う強国なのだと教えてくれた。

とりあえず、首都の咸陽(かんよう)に行ってみようか。

 

 

●月△日

お姫様を助けたよ。異世界モノのテンプレだよね。びっくり。

盗賊らしき集団に襲われている馬車を助けたら、秦のお姫様だったでござる。

お姫様なんだけれど、覇気が物凄い。大物のオーラを感じる。

思わず鑑定してみたら、滅茶苦茶だった。

 

嬴政(えいせい)

政治11 知略9 統率7 武力7 魅力10 忠義3

 

このように、鑑定では能力値が見れる。それ以外にも、欲しいと思った詳細な情報もみれる。感情とか潜在能力とかね。

ちなみに、チートなはずの俺の能力値はこちら。

 

田忠(田中心) 義心

政治10 知略10 統率10 武力10 魅力10

 

ひょっとして、俺が弱いだけ?

 

 

●月◆日

いま咸陽にいます。お姫様に仕えることになりました。異例の大抜擢だそうで、周囲は大いに反発した。

俺も断ろうと思ったのだけれど、お姫様は頑として譲らない。

「信頼できる側近が欲しいのだ」としおらしく、ツンツンお姫様に哀願されたら、断れないよね。

彼女は13歳。なんでも、秦の王に即位するために、咸陽へ向かう途中だったらしい。

あの盗賊らしき連中も、自分の命を狙う者たちの仕業だと。

 

俺の(みための)年齢も、丁度13歳。シンパシーを感じたのか、やたら懐かれた。

悪い気はしないのだが、周囲の反発をどうにかしないと、彼女の立場まで悪くなってしまう。

どげんかせんといかんね。

 

 

●月☆日

無双しました。秦は実力主義なところがあったので、秦の腕自慢たちと手当たり次第立ち会ってもらって全部に勝利してみせた。

さすがに、ここまですれば俺の実力を認める他ないらしい。

風当たりは大分マシになった。お姫様は大喜びだ。

俺の能力値はやはりチートみたいだ。とすると、お姫様(正確には女王様)は天然チートだね。

 

 

◇月※日

お姫様が即位してしばらく経つが、もどかしい日々が続いている。激おこぷんぷん丸だ。

聡明な彼女は、秦を大改革して強国へと生まれ変わらせる自信があった。なにせ政治11だものね。

けれど、それを阻止する者たちがいる。その筆頭が、呂不韋とかいうやつだ。

 

やつは、継承順位の低かったお姫様を女王に仕立て上げだ後継人だ。だから、お姫様も感謝はしている。

だが、それをいいことに、国を好き勝手動かして私腹を肥やしているのはいただけないな。

 

 

×月☆日

即位してから6年目。趙・楚・魏・韓・燕の五カ国連合軍が攻めてきた。秦が強国だから、集団で潰しに来たのだ。外交的敗北ってやつだね。

宮中はてんやわんやだ。お姫様はそれを見て一喝。威風堂々と軍を率いて函谷関で連合と激突。鮮やかに勝利して見せた。

 

もちろん俺も参加したよ。親衛隊を率いて傍にいるだけかと思ったら、300人の部隊を預けられて「好きに暴れてこい」だってさ。

300人でどうしろと。正真正銘のスパルタですな。

でも、お姫様に「余の信頼するお前なら必ずできる」と言われてしまったら頑張るしかないよね。

で、大将首をいくつかとった。大手柄らしい。これには普段厳しいお姫様もニッコリだ。

知力10、統率10、武力10は伊達ではないのだよ。

 

 

×月◆日

将軍になりました。出世したなあ俺。お姫様によって完全実力主義となった秦だからできるのであって、他の国では無理だろう。

俺は運がいい。お姫様に感謝だな。

ただ、お姫様の親衛隊隊長兼個人的な相談役の職務も変わらない。おかげで忙しくってしょうがない。

武力だけではなく、政治についても対等に議論できる俺は、得難い相談相手だそうだ。

政治11についていける人間はやはり少ない。最低でも政治8はないと無理だろう。

 

この世界の一般人の能力値は、1か2だ。ちょっとエリートだと3か4。幹部クラスでやっと5を超えるのが標準的だ。

10とか11がいかにチートかわかるだろう。

 

 

★月〇日

呂不韋失脚! こいつお姫様のお母さんと不倫して、隠し子までいたらしい。

助命を嘆願するものが多くいたので、呂不韋は蟄居。でも、幼い隠し子は処刑された。

幼子を殺すのには反対だったが、乱世の定めと言われしぶしぶ了承した。俺もこの世界に染まってきたみたいだ。

ただ、呂不韋はお姫様の実の父親という噂もあった。問いただしてもはぐらかされたけれど。

 

 

★月◎日

呂不韋失脚によりフリーハンドを得たお姫様は上機嫌な日々が続いている。毎日高笑いしてるもんね。なんか悪役令嬢っぽいな。ざまあにならないように、俺が頑張らないと……。

 

 

△月◇日

この国は急速に発展している。韓・趙を滅ぼした。周辺の王国は危機感を抱いたようである。

秦の軍隊は精強だ。腰鼓と呼ばれる軍楽隊を先頭に快進撃を続ける俺たちを他国は心底恐れていたと思う。

軍楽隊のアイデアは俺とお姫様の二人で考えた。辛い行軍が楽しくなるから不思議だ。

ついでに、いくつか軍歌も広めておいたんだぜ。

 

燕からの刺客が放たれたのだ。お姫様と謁見しているとき、進呈された財宝の中に短剣が隠されていたのだ。

襲い掛かる暗殺者。なのに、周囲はただ見ているだけ。謁見の間には武器を携帯してはいけないからだ。

お姫様は辛くも暗殺者を一刀両断し、無事だった。武力7だしね。お姫様も手練れだ。

 

俺は軍を率いて遠征中だったため、傍にいてやれなかった。すまない。

謝る俺にお姫様は、こういった。中華を統一するぞ、と。おこなの?

 

 

×月▼日

あれから数年。あっという間だった。お姫様のそばであれこれと政治の相談をしながら、俺は各地を転戦した。間違いなく中華で二番目に多忙だった自信がある。一番目はお姫様だ。

魏を滅ぼし、ついに秦と並ぶ強国、楚と激突した。

 

初戦は20万で挑み敗退。俺も参加し局地的には勝利したが、全体では負けた。最も困難な殿軍を務めたことで、俺の株はまた上がったらしいけれど。

次は、なんと60万の軍で侵攻した。60万といえば秦の全戦力といってよい。

これだけの軍を一将軍に預ければ、謀反を疑われてもしかたない。けれども、老将軍、王翦は堂々と、金銭を要求してみせた。金銭に目がくらんでいるから謀反なんてしないよ、という彼女なりのメッセージである。

 

お姫様は、本当は俺に率いて欲しかったそうだが、断っている。王翦は、なんと統率10であり、年功で上なのだ。ここで俺がでしゃばっては軋轢が生まれる。そういったら、それでこそ余が認める義心である、と珍しく笑顔を浮かべて褒めてくれた。たまにデレるからドキっとするね。

 

 

☆月◎日

楚を滅ぼし、斉もあっさり滅ぼし、ついに中華を統一した。長い歴史上、初めての快挙である。

これで思うままに内政チートができる。内政11と10が火を噴くぜ!

 

 

 

 始皇帝、政は、目前の不思議な男、田忠を見て感慨に浸っていた。

 彼と出会ったのは、丁度秦の王に即位するために馬車で咸陽に向かっているときだった。

 道中、盗賊あるいは暗殺者に襲われ、絶体絶命のときに、さっそうと現れ一蹴した。

 

 

 三度笠に袈裟という珍妙な恰好で身の丈を超える錫杖を縦横無尽に振り回す様は、強烈な印象を政に与えた。

 

 

 政にも武芸に覚えがあるが、相手にならぬほど強い。同時に欲しいと思った。

 左右異なるルビーとエメラルドの瞳は、どんな宝石よりも美しかった。

 話してみると、年のころは自分と同じ程度。機知に富み政略の話にもついてきた。

 とても山に籠っていたとは思えぬ。

 父を亡くし見聞の旅で出てきたばかりだという田忠は、熱心に仕官を頼む政をみて、快諾した。

 

 

 それからはあっという間だった。

 見事な用兵を以て戦場で暴れ回るかと思いきや、一騎打ちで大将首をあげてくる。

 己の話題についてこられる数少ない臣として、政治、経済、軍略、策謀に至るまで、二人で夜遅くまで話し合ったものだ。

 度量衡や七曜、太陽暦の導入など、田忠の助言は大いに役立った。

 

 

 政は楽しかった。本当に楽しかった。

 そして、ついに秦は中華を統一した。自分の名声は不動のものとなったのだ。

 だが、己ももう40を超えた。もはや老境にさしかかっている。

 残念ながら、政の子供たちに己ほどの才はない。

 

 

 この国には、政が必要なのだ。永遠に国が発展し、国民が幸福に過ごすためには、自分が永遠を生きねばならぬ。

 

 

「なあ、田忠、いや義心よ。そなたは、余と出会ったころから、姿かたちが変わらぬな。なのに不老長寿の秘密を、なぜ余に教えてくれぬのだ」

 

 

 始皇帝の瞳には、昏い感情が差し込んでいた。決して友に向けていい眼差しではない。それは、この国の命運を暗示しているかのようだった。

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