戦国時代に転生したら春秋戦国時代だった件   作:d_chan

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第23話 六式修行編(紙絵と鉄塊)

T月◇日

「紙絵」の修行、相変わらず額に小石をくらってはのたうち回ってる。

これ、絶対紙じゃなくて石絵だろ。石が俺の顔面に絵を描く勢いで刺さる。

なんでだよ。なんで避けられないんだよ。体は軽いはずなんだよ、チートな身体だし。……いや、そもそも、避けるってなんだ?

「感覚でかわす」ってのは簡単だけど、俺は乱世の時代に生きる一般僧侶であって、CP9ではない。なんなら紙絵の概念を知ってる時点でこの世界の因果を乱してる気すらしてきた。

 

 

T月◎日

紙絵と並行して「鉄塊」にも挑戦中。

要するに、鉄のように硬くなって、敵の攻撃を無効化するってわけだ。

しかしだよ……肩に岩をぶつけた結果、硬くなるどころか痣が増えた。あれか?精神力が足りんのか?武装色の覇気を纏えってことか?

……いや、違う。これは六式。覇気はまだ先だ。

俺の身体は元々頑丈なんだ。理屈じゃない。きっと「呼吸」と「重心」、そして「筋肉の密度」が鍵だと信じてる。っていうか、これ日記じゃなくて研究ノートになってるよな。

 

 

U月□日

紙絵と鉄塊の修行を両立するのって、無理ゲーじゃない?

柔らかさと硬さって真逆なんだよ。ルフィとゾロを同時にやれって言われてる気分だ。だれかルッチを連れてきてくれよ、あいつならなんとかできそうな気がする。

とはいえ、進歩はしてる。小石はもうほとんど当たらない。視覚を捨てて音と風に集中するっていう「紙絵流の冥想法」が俺の中で確立された。

鉄塊の方も、身体の中心に「芯」を通す感覚が掴めてきた。表面は鎧、中はしなやかに。

あれだよ、覇気のないルッチを目指してる感じ。

 

 

W月○日

鉄塊、完成した。

崖から落ちてきた岩を、受け止めた。

……マジで。ちょっと泣いた。いや、感動で。

骨が軋んだが折れてはいない。肩に残る痛みが、生きてる証だった。

俺は田忠。元高校生、現仙人見習い。来世チート持ち。紙のように柔らかく、鉄のように硬い。

あとは……月歩と剃か。次は空を歩くぞ。六式、全制覇してやる!

 

 

 

 涼州の山中、深い霧と風の谷間で、少年が一人、修行を続けていた。

 名は田忠。前世の名を田中心。中華風ファンタジーに転生し、数十年をこの地で過ごした銀髪オッドアイの仙人——その彼が、今新たな力を得ようとしていた。

 彼が求めたのは、超人の武術「六式」。

 

 中でも、「紙絵」と「鉄塊」は相反する技術だった。紙のように柔らかく身を躱す紙絵と、鉄のように硬く身を守る鉄塊。相反するがゆえに、同時に習得する者は極めて稀である。

 だが田忠は一人、それをやり遂げようとしていた。

 

 修行の始まりは、ただの我流だった。

 小石を自分に向かって投げつけ、避ける。ただそれだけ。だがそれすらも難しい。風を読み、音を聴き、皮膚に感じる気配を信じなければ、避けることなどできない。

 初めは額に何度も石をくらった。血を流しながらも諦めなかった。

 

 そして、ある瞬間、風が語りかけた。

 その声を聴き取ったとき、田忠の体は自然と石の軌道を外れた。紙のように、柔らかく、軽く——。

 それは、まさしく「紙絵」の初歩だった。

 紙絵に成功した日、田忠はその場に崩れ落ちた。喜びと疲労と、何よりも自分自身への信頼が彼を包んだ。

 それから間もなく、彼は「鉄塊」の修行に移った。

 こちらはさらに苛烈だった。木の枝を叩きつけ、自らを打ち据える。

 痛みを、己の中で受け入れる。

 

 打たれるたびに、肉体が芯を得ていく感覚があった。全身を引き締め、なお柔らかく。拳を振るうたび、衝撃を内に逃がす術を、彼は体に刻みつけていく。

 最終試練は、山から転がした巨岩だった。

 その巨岩が、彼の肩に直撃した瞬間、田忠は一歩も動かなかった。足を踏みしめ、全身を芯で貫き、力を受け止めた。

「……これが、鉄塊」

 そう呟いた彼の瞳は、どこまでも澄み渡っていた。

 田忠はその夜、山の上から月を見上げた。

 記憶のかなたにある「六式」を使いこなした伝説の殺し屋、CP9のルッチ。田忠はルッチが好きだった。

 だから、重力を無視し、音速を超え、戦場を舞う男たちの姿。

 それをこの世界で再現しようとするのが、自分だ。

 

 

 体を鍛え、心を整え、技を磨く。

。目標は、かつて彼が少年時代に夢中で読んだ海賊漫画の中にあった。

 田忠の修行は、まだ——始まったばかりである。

 

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