+月◇日
「指銃」修行、今日も指先から衝撃が返ってきてのたうち回る。
いや、突いてるのは俺のはずなんだが、何故か毎回カウンター食らってる感じなんだよな。これ、指銃じゃなくて指痛(しつう)じゃない?
漫画で見た時はあんなに簡単そうだったのに……現実はこれだよ。おかしいな、俺、転生チート持ちなんだよな?
+月◎日
気の流れを一点に集める。それが「指銃」のコツらしいんだけどさ、理屈でわかっても身体が追いつかない。
岩に向かって一日中指突きしてたら、地味に指が腫れてきた。まさか……仙人の俺でも腱鞘炎になるのか?
指先の「一点突破」って、メンタル的にも負担でかいわ。今のところ、突いた後に「ぬあああああっ」って毎回叫んでる。マジで痛い。
*月□日
進展はあった。ほんの少し、木板が焦げた。これで一歩前進って言えるのか……?
でも、完全に手応えがないわけじゃない。
ひたすら続けてれば、いつか貫ける気がする。
それでも、今日は指を氷水につけながら「なんで俺、武僧やってんだっけ」って本気で考えてしまった。
@月○日
「雨だれ、石を穿つ」——。
そう教えてくれたのは虞美人だった。見た目ゴリマッチョなのに繊細なアドバイスしてくるあたり、さすが仙人級の姐さんだわ。
気を一点に滴らせるように流し込むイメージ……その言葉で、ようやく指銃のコツが見えた気がする。
やったよ。木板、貫いた。小さい穴だけど、ちゃんと「刺さった」んだ。
俺、田忠。来世チートの仙人見習い。指から衝撃波出せるようになりました(小声)。
@月◎日
さて次は「嵐脚」だ。
要するに脚から衝撃波を飛ばす技。かっこいい。夢だった。
ただの蹴りとどう違うのかと試してみたけど、初日は見事に空振り。風すら起きない。俺の蹴りは空気よりも軽かった。
ということで脚力強化からやり直し。毎日山道を全力ダッシュ、足に重り装備、階段昇降……って、これもう武道館目指してるアイドルのトレーニングじゃね?
P月□日
草原に戻って、再挑戦。
水面に蹴りを入れて、波紋を切るような感覚で「ビシッ」と脚を振ると……風が鳴った。
草が、一本だけ倒れた。やった。
でも木は倒せない。まだだ。もっと速く、もっと鋭く。
次こそ、木をなぎ倒すまでやる。それが俺の、嵐脚。
P月☆日
成功した。
木を……切った。一本だけど、間違いなく俺の脚が放った風圧で。
叫んだね。「嵐脚・破ッ!!」って。しかも技名つけたの俺だから。
よし、これで指銃と嵐脚、どちらも完成。
六式制覇に、また一歩近づいた!
◆
涼州の深き谷間、霧に覆われた山のふもと。
そこに佇むのは、銀髪オッドアイの少年。名を田忠。前世の記憶と転生チートを武器に、乱世を駆ける元高校生である。
彼が目指すのは、超人の武術「六式」。その中でも「指銃」と「嵐脚」は、体術としての完成度が極めて高く、修行には並ならぬ時間と集中を要する。
「指銃」の修行は、洞窟内の木板を相手に始まった。
初めはただの突きだった。何度突いても、痛みだけが返ってきた。だが彼は、自らの「気」を指先へと絞ることを覚え、少しずつ手応えを掴む。
転機をくれたのは、虞美人であった。
「雨だれが石を穿つ」——その言葉が、田忠に繊細な集中の概念をもたらす。
やがて、木板にはぽっかりと小さな穴が空いた。それが「指銃」の第一歩だった。
続いて取り組んだのが「嵐脚」だ。
脚の動きだけで風を裂く。蹴りの速度、角度、気の通り道。すべてが一体となった時、彼の脚から放たれた一撃は風を操る刃と化し、草原の木々をなぎ倒した。
その瞬間、田忠は確かに六式の「ひとつ」を、完全に我が物としたのだった。
少年は夜の草原を見渡し、静かに誓う。
「指から衝撃を、脚から風を。ならば次は——瞬間移動だ」
——風を読み、空を歩き、音を超える。
六式の完成は、仙人への道程の途中にすぎない。
田忠は今日もまた、一人立つ。
己の限界を超えるために。