モモンガ様リスタート   作:リセット

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サトルの休日

 ラナーが仕上がるか法国が動くまではお休みとなったナザリック。

 

 以前であれば殆どの者が寝ずに働くことに意義を見出し、昼夜問わず多くのNPCが動いていた。だがサトルの外装変更に伴い、企業連合が当然の如く行っていたブラックな形態にはしたくないのだと彼が強く訴えた事でその辺りの事情が大きく変化。

 

 またアイリスがナザリックのシステムを大幅に改造し、自動化系のシステムを多く組み込んだ事で別段無理に働かなくとも問題ないようにしたこともあり、ナザリックのNPCは大半が休憩や休みをとれるようになっていた。

 

 無理に働くことが逆にサトルの心労になり、またここにはいない創造主達も悲しむに違いない。そんな事情からラナーに訓練を施している組以外は長期休暇となり……サトルもリアルでは取ったことのない2日以上の休みを大いに満喫しようとしていた。

 

「オーナーの胸板は安心するのですよ……」

 

 休み一日目。

 

 ナザリックに突貫でオートファクトリーを実装し、8階層でのアイテム生成から解放されたアイリスも皆と同じように休みを取り……サトルと共にベッドに包まり意味もなくゴロゴロしていた。

 

 何をするでもなくサトルの腕の中で怠惰に惰眠を貪り、安らぎに包まれて眠る快楽に身を委ね。サトルも同じくアイリスを抱きしめ、彼女の髪に鼻を沈め甘い匂いを胸いっぱいに感じたり柔らかさを堪能したり。

 

 気が付けばお互いに軽く啄むようなキスをして。すぐさま舌まで捻じ込む深い接吻となり。

 

 上着を脱ぎ捨てたアイリスにサトルが覆いかぶさり。一日中を全身での交わりに使い果たした。

 

 休み二日目。

 

 流石に二日目も情事に耽るのはまずいと判断したサトルはこれなら安全だろうと、拡張した第6階層大森林にアイリスを連れてピクニックに行き……なんか気が付いたらやってた。サトルにも良く分からないがなぜか森の中でやってた。最初は普通にサンドイッチを食べたりしていただけなのに、ピクニック向けだと普段とは違う恰好をしていたアイリスにムラっときて、最後はノリノリのアイリス相手になぜかやってた。

 

 休み三日目。

 

 流石に……流石にこれ以上はまずいとサトルはちょっと焦っていた。そこで今度は最古図書館(アッシュールバニパル)でアイリスに家庭教師役をやって貰い、この世界の文字について教えてもらう事にした。

 

 ここならティトゥス・アンナエウス・セクンドゥス司書長など多くのNPCがいるため、仮にムラっときても大丈夫だとサトルは判断したからだ。

 

 気が付いたらやってた。家庭教師役をするならと眼鏡をかけて普段とは違う雰囲気になっていたアイリス相手にやってた。ばれない様に<星に願いを>と<完全不可視化>まで使って図書館の中でやってた。途中マーレが図書館にきて、バレないかどうかに異常に興奮したアイリスがいたりした。サトルも無駄に燃えた。

 

 休み四日目。

 

 サトルはここなら今度こそ大丈夫だろうと第5階層の氷河でアイリスとスキーをして……気が付いたらやってた。山小屋で遭難したらごっこをしてたら、いつの間にか人肌で温め合いましょうみたいな流れになり……スイッチが入った二人は求めあっていた。途中山小屋付近がおかしい事に気が付いた雪女郎(フロスト・ヴァージン)が様子を見に来て……察した彼女は吹雪を起こし雰囲気を盛り上げてくれた。

 

 休み五日目。

 

「───よく来てくれたなセバス。さぁ座ってくれ」

 

 ロイヤルスイートの一室ショットバー。落ち着いた照明が部屋を照らし、酒を並べた棚とカウンター。そして八つの席があるだけの小さな部屋だ。だがナザリックではここを利用する者は少なく、この程度の席数でも十二分に事足りる。

 

 サトルも初めて利用する場所だ。普段は副料理長のクラヴゥがマスターをしたり、拷問官のニューロニストがママとしてここで腕を振るっているのだが、サトルの要望により今日は席を外している。

 

「こちらこそお誘い頂き誠に感謝します。サトル様と酒の席を設けて頂けるなど、執事としてこれ以上嬉しい事は御座いませんので」

 

 サトルから相談がある。そう打ち明けられたセバスは心から快諾し、普段はこないバーを物珍しそうに見渡したあと彼も席に座る。

 

「それで……サトル様。ご相談があるとは伺いましたが……一体どうされたのですか?」

「そうだな……相談の前に酒をいれようか。少し素面で話すには……恥ずかしい内容でな」

 

 サトルが棚から酒を取ろうとするが、主にそのような事をさせるなど心苦しいとセバスが代わりに取り中身をグラスにつぐ。それを受け取ったサトルは少しだけ口に含んだ後、ぽつりぽつりと語りだした。

 

「その……な。このような話を出来る相手は、ナザリックの中だと少なくてな。最初はピッキーにしようと思ったんだが……人間体を持つセバスの方が適任だと思ったんだ」

「私がお役に立つならば本望です。それで……私でなければできぬ相談とは一体何なのでしょうか?」

「………………セバスは………………好きな子っているか?」

 

 ふむ?とセバスはその問いにまじめに考える。

 

「その好きと言うのは……人として好きと言う意味でしょうか?」

「いや、異性としてだ」

「異性……ですか。そうなるといませんね。仲間としてナザリックに所属する者達に対する親愛はありますが……女性として好ましいとなると少しばかり……」

 

 敬愛する主の問いに否定でしか返せない事に、心底申し訳なさそうにセバスは苦渋の顔を浮かべる。それを見て取ったサトルがそんなに落ち込まないでくれとセバスを励ます。

 

「あくまでも今のはセバスってそういう子とかいるのかな?ぐらいの質問だからそれほど大真面目に受け取らなくてもいいんだが……しかし、そうか。いないのか」

 

(考えてみればセバスはずっと9階層のNPCとしてここにいたんだものな。そこから実体化して、初日に外の見回りを頼んだ以外はナザリックに籠りっぱなし。それじゃ出会いなんてあるわけもない、か)

 

「それじゃあだな……この先ナザリックが外に進出して……そこでセバスの事を心から好きになってくれた子がいたとしよう。その子に対してセバスなら……どうアプローチをする?」

「……どうでしょうか。私はこのように面白味のない男です。そのような男性を好きになる女性となるといないのではないでしょうか。ですが……あくまでも仮定のお話なのですよね?であるならば……その女性がどのような種族であれ少なからず私の心は動くでしょうね。ひょっとすれば私自身の方が彼女の方に絆されるやもしれません」

「───そうか。ではその状況でだな……男性は女性にアプローチされた。あるいは女性に対して男性はアプローチしたとして……毎日求めるのはおかしいだろうか?」

 

 その質問でようやくセバスにもピンと来たのか、サトルの質問に対して質問で返す。

 

「サトル様……それは……御身とアイリス様……のことでしょうか?」

「───ああ……」

 

 それがサトルの相談だった。長期休暇に入ってからアイリスを求めるばかりの日々に、ひょっとして自分はおかしいのではないかとサトルは考えてしまったのだ。周りに人がいたり何かしらの業務中であれば別にそうでもないのだが、プライベートの時間にアイリスと二人きりでいたら自然と一緒になってしまう。リアルで異性との経験がないサトルはこれは男性として普通なのかを疑問視してしまったのだ。

 

「アイリスとのことはことなんだが……そんなにパッと出てくるぐらい俺って分かりやすい?」

「はい。我々がまだデータの頃の話ですが……御方達が去られ長い間サトル様も10階層にお姿を御見せになることもなく。その頃の私やプレアデス達は御身が無事かどうか御心配でした。御身がナザリックにログインされていたのは知ってはいたのですがね。ですが……アイリス様を連れられてお姿を見せられた時、私どもは大変嬉しかったのです」

「嬉しかった?」

「───ええ。アイリス様をお連れになられる前の御身は……私が最後にみた姿はロイヤルスイートをたった一人で御歩きになられていた。あの頃の私たちは命が無ければ動くことも出来ず……御身に真に尽くす事も出来ませんでした。その中でサトル様がどのような想いであったのか私には想像もつきません。ですが───」

 

 セバスはまっすぐにサトルへと目を向ける。

 

「アイリス様をお連れだったサトル様は……一目見ただけで分かるぐらいにはとても楽しそうでした」

「───あの頃の俺はアバターだから顔も動かなかったんだがな。……それでもそう見えたのか」

「はい。私をアイリス様にご紹介して下さり……アイリス様は『お髭の立派なダンディー執事なのですよ』、と。サトル様もわたくしめを『たっちさんが作ったNPCで……確か……確か』『セバス・チャンなのですよ』『あっ!データを直接覗くのはずるいぞ!卑怯だ!』『ネガティブ!これはアイリスの特権なのですよ!ズルじゃないのです』。もはや誰もいなくなったこのナザリックで……御身はアイリス様と楽しそうに談笑されておりました」

「そんなこともあったか。……よく覚えてるな」

「ええ。あの頃の私ではデータと言われても理解は及びませんでしたが……サトル様がアイリス様を大事になされているのは明白でした。そして……実体化した日に私が触診しようとしたところ、叱責されました。もはやあの時点で御身にとって、アイリス様はとても大切な存在だったのではないでしょうか」

「……あの時は本当にすまない」

「謝られるなど!あの時のサトル様は右も左も分からなかった筈です!その状況で動いた私の自業自得です。ですから御身が罪悪感を感じる必要などありませんとも!」

「……そうか。ありがとうなセバス……この話はここまでにして元の話に戻すんだが。……この長期休暇の間気が付いたら……アイリスを求めている自分がいるんだ。なぜかは分からないが……本当にごく自然に肌を重ねているんだ。これは……男として普通なのだろうか?それとも異常なのだろうか?それが分からないんだ……」

 

 サトルの悩みに対し、だから相談相手を自分にしたのかとセバスは納得する。ナザリックに所属するもので一番人間の感性に近いのはセバスだからだ。

 

 今のサトルは血を見ても驚かないや攻撃されてもたいして動揺しないなどアンデッドのメリットになる部分はそのままに、人間時代の鈴木悟としての成分は据え置きの状態だ。

 

 そんな状態で助言を求めたとしても異形種が基本のナザリックでは、どうしてもサトルの求める答えとは違う物が返ってきてしまうだろう。

 

「求めてもよいのではないでしょうか」

 

 だからセバスはシンプルな答えを返す。

 

「求めても……いいのか?」

「勿論です。アイリス様がお嫌になられるのであればその限りではないでしょうが……そうではないでしょう?私からみてもアイリス様はサトル様のことを心から愛していると感じます。であれば……良いのではないでしょうか。愛する男女が肌を重ね合わせる。それは生物であれば当然のことです」

「───今の俺は死者な気もするが……そうか。自然なことか……自然なことだよな!」

「Stimmt! es ist natürlich!」(その通り!自然な事です!)

「うぉッッッッ!!!」

「!!!?」

 

 いきなり前触れもなくバーに登場したパンドラに本気で驚くサトルとセバス。バサリと軍服を翻し、帽子に手を添えて決めポーズを取るパンドラは得意げな態度だ。

 

「おまっっ!お前なんでここに!?」

「なぜここにいるか……ですか。哲学的な質問ですね父上よ。元はデータに過ぎない私たちがどうしているのかとなると───」

「そういうのはいいからとっとと質問に答えろ」

「セバス様に相談があると誘っている場面に偶然出くわし……面白そうだったので隠れてついてきました!」

「お前この野郎!!!」

「くるしッ!!ちょっ!!!」

 

 パンドラの首を掴みサトルは持ち上げる。セバスだけにするつもりであった相談をあろう事か全く関係のないパンドラに聞かれていた恥ずかしさのあまり、彼に対して思わず実力行使してしまう。

 

「サトル様お気を確かに!パンドラズアクター様に悪意は多分ない筈です!それ以上首を絞めたら御身の僕は死んでしまいます!!」

 

 パンドラも世界級へと到達した一人ではあるが、サトルは更に世界級アイテムによるブーストでその一歩先を行く身。今の彼を超える膂力の持ち主は終焉へと到達したアイリスのみであり、パンドラの腕力では抗えず創造主であるサトルに対し抗う気もないのだが。

 

 だが目の前で殺影事件は起きるのはまずいとセバスが止めに入ったことで、サトルの首絞めからパンドラは解放された。

 

「首がへし折れるかと思いましたよ……」

「そこまで力は入れていないが……今回はセバスに免じて許すが今度盗み聞きをしたらマジで折るからな?本気だからな?」

「了解いたしました!……それで……義母上との性活で父上はお悩みですか」

「おい待て。何自然にお前も会話に混ざろうとしてる。あとアイリスのことを義母上って呼ぶのは禁止だって言ったよな?いったよな!?」

「仰られました!ですが妹に確認したところ『別に良いのですよ?お兄ちゃんの好きに呼ぶ方がアイリスも嬉しいのです』、と」

「アイリスぅううううう!!!!」

 

 サトルが拒否してもアイリスから許可が出ている以上、パンドラの義母上呼びは覆せないのだと察してしまった彼は慟哭する。

 

「お前には我が妹って呼び方があるだろ!アイデンティティを大事にしろよ!!」

「ふっ!甘いですね父上。呼び名とは状況に応じて常に変わるもの……義母上と呼ぶ方が良いと感じればそちらに変えるのも度量です」

「うっわぁ、指まで振ってうぜぇ…………まずその指から折りたい……」

 

 チッチッチっ甘いですねと指を振るパンドラの動作に、サトルは本気でイラっとする。セバスも同感なのか目を細める。

 

 そんな空気に気付きつつもパンドラは自分の言葉を以ってサトルへと助言する。自らをお創りになられた創造主に懊悩や我慢などして欲しくもないから。

 

「私は御身の息子として義母上との仲を応援しますよ。サトル様の隣には義母上がもっとも相応しいので」

「息子とは認めてないが?……まぁ、なんだ。アイリスとの仲を本気で応援してくれているみたいだし、それに関しては感謝するよ……あとドイツ語は……お前のアイデンティティなら仕方ないか」

 

 ええ本気で応援していますよとパンドラは返す。

 

 パンドラにとってこの世でもっとも嬉しい事はサトルが幸せそうにしていること。そして……アイリスといる創造主が心の底から笑っている。ならばそれでいいのだ。

 

 だってパンドラは知っているのだ。もはやモモンガ以外誰も訪れる事のなかった宝物庫で、時折咽び泣く声が聞こえていた事を。

 

 飾られた武具の前でかつての仲間たちを想い、死の支配者などではなくただ一人のサトルとして過去への郷愁ともはや戻る事のない栄光の日々に涙し、打ちひしがれる姿をパンドラは何度も見てきた。

 

 泣かないで欲しい。どうか笑っていてほしい。

 

 NPCとしての領分を超えて、今すぐにでもかけつけ、ここにまだあなたを救いたいと思う僕がいるのだと伝えたかった。どれだけそう思っても、この肉体は動かずただただ侵入者を撃退するための防衛システムの一部としてしか機能せず、孤独に苛まれる姿をただ見ている事しか出来なかった。

 

 父であり偉大な支配者であり、天上へ燦燦と輝く太陽の如きその背は曇り、パンドラの心境を掻き回す日々がどれだけ続いただろうか。

 

 ある日白い少女が宝物庫へと転がり込んできた。時を同じくして、最愛の御方がいつもと同じように宝物庫へと日銭を納めにやって来た。

 

 少女と御方は共に宝物庫を去り、また数日してギルド維持の日銭を納めにやって来た御方の傍らには、白いワンピースから真っ新な白い祭服へと姿を変えた少女が付き従っていた。

 

 至高の御方は少女へとここに納められた品の数々に、ナザリックの歴史を意気揚々と教示していく。少女も御方の事をオーナーと呼び、ポジティブと声を張る。

 

 今でもパンドラは思い出す。曇るしかないくすんだ黄金に日輪の輝きが戻る瞬間を目にした事を。

 

 ただパンドラは驚いただけだ。モモンガが宝物庫に訪れるとき、その隣には黒に艶を出させるよう輝かす白が増えた事を。

 

 ただパンドラは覚えているだけだ。少女が宝物庫へと降り立ったあの日以降、御方の押し殺した泣き声をただの一度も聞いた事がない事を。

 

 ただパンドラは知っているだけなのだ。

 

 休み六日目。

 

 セバスから求めても良いのだと聞き、またパンドラからアイリスとの仲を応援していますと伝えられたサトルにはもはや何の憂いもない。今日も今日とてアイリスを連れ歩く。

 

 二人がやって来たのは第6階層の円形闘技場。現在ラナーが訓練をしている場所であり、彼女がどのような様子なのか気になったサトルは見に来たのだが───

 

「助けて!!助けてクライム!!!クライム!!!!クラぃ───」

 

 そこにいたのは精神の異形種を名乗る知性の怪物などではなく……コキュートスとデミウルゴスの手で新兵の如く扱かれる一人の少女であった。

 

 彼女の周りには6本の鞘付きの刀が取り囲むように浮遊し、その中の二本を抜きコキュートスが繰り出す連撃に対処しようとする。

 

 コキュートスの手には神器級装備───刃渡り180の大太刀『斬神刀皇』に加え残り3つの腕にも神器級のハルバード、大剣、棍棒が握られている。

 

 彼の連撃はラナー用に手加減されているとは言え、世界級に到達した者の一撃は全てが必殺。当然の如くラナーの手が飛び、足が千切れ、クライムの名を言い切る前に首が落ちる。

 

「13秒ですか。大分持つようにはなりましたがまだ及第点にはほど遠い。死んでいる場合ではありませんよ」

 

 時間を計っていたデミウルゴスがラナーの死体めがけて薬瓶を投げつける。瓶は砕け中身が死体にかかり……彼女は五体満足で蘇生する。

 

「デミウルゴス様!!もう少しだけ……もう少しだけ手心を加えては頂けませんか!?」

 

 恥も外聞もなくラナーは叫ぶ。体が真っ二つに切り裂かれ棍棒で足が叩き潰される状況で、お優しい王女の仮面など被っている場合ではない。死の暴力に蹂躙される恐怖は彼女の人生観を粉々に破壊した。精神の異形種など謳っても所詮は元人間。真の悪魔たちの前では知性など紙より脆い。

 

 その嘆願を聞き入れたデミウルゴスは顎に手を当て少し考え込んだ後───

 

「その願いを受領しましょう。コキュートス相手にこれ以上粘っても上達は見込めそうにありませんしね。では……次のお相手はこちらです」

 

 デミウルゴスの言葉を合図に、闘技場の入り口からコキュートスに代わる相手が出てくる。フェンリルといったレベル70超えの神獣が計10頭姿を現し……ラナーが真顔になった。

 

 そして始まる蹂躙劇。四方八方から襲い来る獣の群れを相手に───

 

「あああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!」

 

 裂帛の気合と共にラナーは応酬する。鋭い爪に肉が抉られ、歯が骨をかみ砕き。そのまま何も出来ずに挽肉に変えられていく。そして蘇生。次はもう少し難度の低い相手に粘り……最後は全身を串刺しにされてラナーは死んだ。

 

「なぁ……あれは…………」

「すぐに義兄さんを止めてくるのですよ!」

 

 アイリスとサトルがデミウルゴスに対し猛抗議したことでラナーの待遇は改善され……のちに大悪魔を止めてくれた神とその側近に彼女が本気で感謝したとかなんとか。

 

 休み七日目。

 

 サトルは暇な者を誘い、アミューズメントプール施設ウォーターパークなざぶーんへと赴いた。プール遊びなどリアルではとうの昔に滅んだ文化だ。生身で泳いだりみんなとウォータースライダーで遊ぶ感覚はあまりにも新鮮で……彼は童心に帰ってスライダーや流水プールで遊びつくした。そして……更衣室でホルターネックのアイリス相手にも遊びつくした。普段は見れない姿に彼の理性は燃えた。

 

 休み八日目。

 

「感謝するがよい亡国の姫よ。王たる私が止めていなければ、お前も滅びゆく国と運命を共にしていたのだからな」

「くっ、殺せ魔王よ。私は……私はあなたになど屈しない!!この身は民に捧げると決めている!!!国と共に滅ぶのであれば本望だ!!」

「本望、か。それは死を知らぬがゆえの発言だな。お前は生きる喜びを知っているか?まだ若いその身にどれだけの幸福を刻んで来た?美食は知っているだろう。快眠も知っているだろう。だが……強き男に抱かれる幸福は知っているかな?」

「まさか……まさか!!!やめろ!!!お前になど!!!!くっ、やめろ!辱められるぐらいなら死んだ方がましだ!!!」

「そう強がるな。怖いのは最初だけだ。すぐにお前も虜になるだろう。さぁ、我が手にその身を委ねるがいい!!」

 

(これであっているんだろうか?)

 

 アイリスにこれをやってみたいと請われたので、彼女相手に玉座の間で囚われの姫と邪悪な魔王ロールを興じていたサトルは内心首を傾げるが……姫騎士スタイルとやらになったアイリスが常時であれば絶対にしない発言や反応をするのに徐々に興奮してゆき……最後はいつも通り全力で彼女を求めていた。

 

 休み九日目。

 

 サトルはアイリスと共に風呂に入り……気が付いたらマットが用意されていた。アイリスは大変知識が豊富であり……サトルは未知の世界を体験させられた。

 

 休み十日目。

 

 パンドラとセバスとアイリスと共に、カジノでポーカーをしていたサトルの元に墳墓内放送で一つの知らせが届いた。

 

 法国に動きあり。陽光聖典が出立した。目標はカルネ村。

 

「長い休暇も終わりなのですよ……」

「ああ。俺たちがようやく動く時が来たんだな……」

 

 全員が意識を切り替える。ようやくその時が来たのだと。新生アインズ・ウール・ゴウンが表舞台に出る時が来たのだと。

 

 3カ月半に及ぶ準備期間の成果。それが白日の下に晒されようとしていた。





次回二次創作の登竜門カルネ村 
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