スレイン法国。
かつてサトルと同じように『ユグドラシル』からこちらの世界に連れてこられたプレイヤー6人が、大陸の隅に追いやられていた人間を保護し建国した国である。
建国から600年。かつて人間を保護し、その在り方から崇め奉られ六大神として讃えられた彼らは既にこの世を去り……人間だけで人類の生存圏を守る事を余儀なくされた法国は人類以外を仮想敵として一致団結。
周辺にも長い年月の間に人間国家が建立され、それらに対し積極的に干渉し法国は様々な支援を行ってきた。
彼らが願ったのは自分達法国と同じように、人類を守るに足る英雄の出現だ。特に期待していたのが王国である。豊富な土地と資源を有する王国は真面な政策さえ取れれば、非常に優秀な人材が輩出し易い環境だからだ。
事実王国戦士長ガゼフ・ストロノーフやアダマンタイト冒険者『蒼の薔薇』や『朱の雫』、ガゼフと御前試合で死闘を繰り広げたブレイン・アングラウスなど英雄級あるいは英雄級寸前の人材が出てきてはいる。しかし……肝心の国の運営に携わる貴族の大半は、在野に存在する実力者たちを国で抱え込むこともせず、名誉ある自分達に仕えるには箔が足りないなどと法国からしたらくだらない理由で放置するばかり。
王の懐刀として取り立てたガゼフにしても本来であれば貴族位である騎士に任命するに相応しい功績を上げているのに、平民上がりが自分達と同じ貴族を名乗るのが気に食わないからと特に役にも立っていない貴族共が大反対し……強権を振るう事が出来ない王はせめてもと戦士長なる地位をガゼフのために創ったくらいだ。
結局王国は一部を除いて誰も彼もが現実が見えていなかった。どれだけ人間社会で権力や名を誇示しても……亜人や異形に攻められれば何の役にも立たないのだと気づきもしない。裏社会で王国を操っている気になっている八本指にしてもそうだ。
彼らの手で国が弱り腐り切れば帝国の手で簡単に王国は併呑され……くだらない犯罪組織など鮮血帝ジルクニフは根絶やしにするだろう。あるいは現在とある理由で手が離せない法国が誇る六色聖典最強の漆黒聖典が投入できるようになれば……麻薬を法国にも蔓延させようとする連中を皆殺しにするだけだろう。
だから法国は決定した。他国への麻薬の流入すら止められない王国など滅んでしまえと。
その一環として王国戦士長ガゼフの暗殺指令が六色聖典の一つ、陽光聖典に下された。冒険者にしか一定以上の実力者が存在しない王国は、ガゼフが亡くなれば帝国との戦争で確実に勝てなくなる。冒険者にしても政治には不干渉の掟があり……仮に『蒼の薔薇』などが戦争に出れば、その瞬間に彼女らは犯罪者として一生追われる事になる。
プライドだけは高い貴族は、真に滅びるその瞬間まで冒険者を自分の兵として雇い入れるなど絶対にしない。なぜなら泥臭い元冒険者など自分の身内として紹介したら家名に傷がつくからだ。
だからこのままいけばいずれ王国は滅ぶだろう。他者の介入がない限り……本腰を入れた法国の謀略を覆す手札は王国にはないからだ。
「馬鹿げています!こんな命令……たった50名で国境付近を捜索し、可能なら帝国兵を討伐せよなどと……」
エ・ランテル付近の街道を50名強の集団が馬にのり疾走する。彼らは王国戦士長ガゼフの部下であり、彼と共に今回ランポッサ三世から王命を受け賜わった戦士たちだ。
「そう言うな。王とて辛い立場なのだ。貴族の横やりがあれば強くは出られん。俺たちは王の命に従い任務をこなすだけだ」
「ですが戦士長!!明らかに今回の出動は罠です!!帝国兵がこの時期に国境付近に出るのはおかしいですし……ましてやその捜索をエ・ランテルの兵士ではなく、戦士長に御命令になるなど……恐らくあなたを釣るための陰謀としか思えません!!」
副長からの指摘に「そんな事俺だって分かっているさ」とガゼフも返したい。
今回ガゼフ達への下命は国境付近で目撃された帝国兵の捜索及び事実だった場合の討伐だ。従来であれば帝国と王国の国境に近い城塞都市エ・ランテルの兵を出し、行なうものなのだがそうはならず王直々の戦士団……それも僅か50人強の出兵しか許されなかった。
それもこれも王に対し貴族からの圧力があったからだ。その結果エ・ランテルの兵を動かす事は出来ず……ガゼフとその部下しか動かす事しかランポッサには出来なかった。
これらは法国からの貴族に対する扇動と貴族派閥の王に対するけん制であった。王を軽んじている貴族派閥……それも法国から甘い薬を嗅がされている屑は喜んで法国の謀略に乗っかった。国境付近に帝国兵───実際は彼らに扮した法国兵だが───がいると噂を流し、それを王の耳に届ける。そしてエ・ランテルはランポッサ三世の直轄領だ。
そこで問題が起きれば王の責任となる。それを防ぐためにランポッサは動こうとし……またもや貴族の手で邪魔をされた。
「下手に軍を動かせば帝国を刺激しますな。まさか王ともあろう者がそのようなことが分からないとは思いませぬが……」
あまりにも王を軽視した発言だが、国が割れる事を危惧するランポッサはこの発言を無視する事は出来ない。それだけ貴族派閥が持っている力が大きいからだ。
軍を動かせない以上、王が頼れる兵士はガゼフぐらいしかいない。あまりにも見え透いた罠だが……王は彼に命を出した。頼む、と。
しかしガゼフがいざ出動となるとまたもや貴族の横やりが入り……彼は本来の装備を全てはく奪されての行動となってしまった。装備をしてこその周辺国家最強と謳われるガゼフだ。ただの鎧や剣ではその力は大きく減少する。そうなればガゼフが亡くなるかも知れないが、貴族にとってはどうでもいい話だった。しょせん平民上がりのガゼフなど別にどうなっても良いと考えているがゆえに。
「なぜ糞貴族は誰も彼もが戦士長の価値を理解出来ないのだ!!王を追い落とすための策略とやらで内部闘争を繰り返したら国が衰退するとなぜ分からない!!!」
「……だが本当に帝国兵がいるだけなのやもしれないぞ。そうなれば傷つくのは民だ。貴族が民を助ける気がない以上、我ら力持つ者が守るしかあるまい」
「そこです!どうして貴族共は民を蔑ろにする!!彼らが食うものも着る服も全ては民あってこその代物でしょう!!権力闘争の道具としかなぜ思わない!!!奴らは結局現場が見えていないんだ!!!戦うのも傷つくのも民草ばかり!!!なぜあんな連中が───」
「それ以上は止せ。それに貴族や王族が全てそうなわけではない。ラナー殿下のように民のためになる政策を打ち出される方もいる」
「……黄金の姫、ですか。それはどの程度の話ですか?王女であられるあのお方を、どの程度まで貴族が認めますか?」
「……………………」
ガゼフは何も返さない。王宮で王と常にいるからこそ、ラナーがそこまで重要視されていないのを肌で実感しているからだ。王自身にしてもラナーはあくまでも娘であり、政策に関してはあまり口を挟ませない。どこまでいっても王女は王女。それだけだ。
「どちらにしろ俺たちは国境付近の村を周り帝国兵を探す。奴らがいたら倒す。……お前だって平民出身だから分かるだろ?ただの村では兵に襲われたらひとたまりもないと」
「それは……そうですが……」
「貴族が守ってくれない村はいつだって悲惨だ。野盗に襲われモンスターに襲われ、村人は命を落とす。全滅することだって珍しくもない。……お前の村はどうだった?」
「……モンスターに襲われましたね。その際私の領地の貴族は、兵どころか復興金すらだしてくれませんでしたよ」
「……そうか。俺の村もモンスターに襲われてな。その時何度も祈ったよ。力ある貴族が助けてくれることを。偶々通りかかった強者がその力でモンスターを追い払ってくれることを。……結局は誰も助けてくれず、モンスターが去るのを待つだけだったがな」
「戦士長も……そのような過去があったのですね」
「王国の村人であれば大あれ小あれ皆似たような経験をしているだろう。……だからこそ!強くなった今だからこそ俺は民を助ける。強くなったものの責務を果たしにいく。貴族が責務を果たさぬなら……我々が成すべきことを成しにいく!!」
副長はその言葉に少し胸が詰まる。彼はガゼフに憧れて彼の戦士団に入った身であり……彼が憧れた理由そのものがまっすぐに言葉を吐き出すからだ。
「……分かりましたよ。糞貴族が出来ない事をやりに行きましょうか戦士長。どこまでもお供しますよ」
彼ら50人はガゼフと共に馬を駆り進む。その先に何が待っていようとも……どこまでも、だ。
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陽光聖典。それは法国が誇る特殊部隊『六色聖典』の一つである。
主に亜人殲滅を得意とする部隊なのだが……現在はガゼフ暗殺のために動いている。元々この手の隠密活動を得意とする部隊ではないが、諸事情により彼らに出番が回って来た。
陽光聖典向きの命令ではない事は法国上層部も承知の上であり、出来る限りの支援は彼らも行うつもりであった。
その支援の一つがガゼフを誘き出すための偽の帝国兵である。スレイン法国の偽装部隊を動かし、国境付近の村を襲撃。そこに王国貴族に干渉することで釣りだしたガゼフを誘い込み、陽光聖典の手で抹殺する手はずだ。
偽装部隊を率いるのはベリュースと言う男である。彼は一言で言えば……駄目な人間だった。スレイン法国は上に立つ人間は清貧であれと定め、地位の高い人間であっても国のため人類のためにその身を捧げる事を良しとする風潮が強い。
しかしベリュースは違った。彼は法国では有数の資産家の息子であり、今回の作戦もただの箔付けのためだけに参加している。いわゆるエリート街道を歩む人間であり、その性根は王国の腐敗貴族とたいして変わらない。
この手の人間が自分達を率いる事に非常に不愉快な気持ちを隊員全員が抱いているが、法国上層部としても彼の父親を無視するわけにはいかない。どれだけ清貧であれと教えられたとしても人間の欲は止められない。
彼は作戦途中で村娘の一匹ぐらいは摘まんでも良いと考えている人種であり……結局のところ法国ですらこの手のタイプの出現を止められないぐらいには、人類国家は衰退していた。
「ベリュース隊長。村が見えてきました」
「ん?……おおっ、あれか。生きの良い獲物がどれだけいるか楽しみだな。良さそうな娘がいたら捕まえてこいよ」
「───隊長。我らは人類の明日のために彼らに犠牲を強いに来たのです。決して野盗のような真似事をするためではありません」
「お前は硬いなロンデス。これから死ぬ連中に何をしようとも神はお許しになられるぞ」
溜息混じりのベリュースの戯言に、ロンデスは本気でこいつを殺してやろうかと思案する。ただでさえ無辜の民をこれから法国の都合で殺害する命令に嫌気がさしているのに、部隊長は神の名で欲望を肯定しようとする。
これから多くを殺すだろう。王国戦士長が完全に釣れるまでいくつもの村を襲う。何人死ぬかも分からない。それでも……軍人であるロンデスには嫌だと感じても拒否権など存在しない。
だから彼は神に祈る。せめて村人の魂に安らぎを。どうかと。
「さぁ鏖殺の時間だ!!」
ベリュースが下卑た笑いを上げ、部隊に村への突撃を命じる。村人の数名が武装した集団に気付き驚愕の顔を浮かべる。
我が子を連れ逃げようとする者がいた。鍬などの農具を手に少しでも抗おうとする者がいた。
だが間に合わない。訓練を積んだ者と積んでない者。レベルの違いは嘘をつかない。最初の襲撃場所としてベリュースが選んだのは人口120人ばかりのカルネと言う村だ。そこには常駐の兵士などもいないと法国は事前に調査しており……帝国と王国との戦火に巻き込まれたこともないどこまでも平穏な村だ。
だがその平穏も今日終わる。戦いに従事したことがない村など、部隊からすればただの虐殺場だ。
帝国兵に扮した彼らが村に到達するまで後わずか数十mに迫ったところで……眼前に空から二本の鍔がない刀が降って来た。
人間の反応速度を遥かに超過する速さで着弾。爆音が鳴り響きクレーターが出来、まき散らされた衝撃波は部隊員を後方に吹き飛ばす。
「がぁあああああああ!!!?」
それは誰の悲鳴だったのかロンデスには分からない。なぜなら彼もまた他の隊員と同じように吹き飛ばされ、地面を転がっているからだ。
「ぐっ…………げぇっ…………げ……」
何度か転がった後ロンデスの体はようやく止まり、全身を襲う激痛に悶え苦しむ。数分経ちようやく痛みがある程度おさまった彼は首だけを動かし、周りを見て絶句する。
隊員たちは例外なく彼と同じように衝撃波で飛ばされたのか、地面に打ち捨てられたかのように転がっている。ロンデスは爆心地からまだ離れていたため四肢が繋がっているが、近かった者は着込んでいた鎧ごとひしゃげ兜から血を流し腕が曲がってはいけない方向に曲がり、酷ければ膝から下が無い者もいる。
「何が……起きたのだ?…………」
ロンデスより更に後方にいた弓兵は軽傷なのか立ち上がり、茫然とした呟きを漏らす。その呟きにロンデスも同意したかった。村を襲撃しようとしたら眼前が爆発した。そうとしか言えない現象に巻き込まれた部隊はほぼ壊滅。意味が分からなかった。作戦内容は唾棄すべき代物だが、行なう事自体は単純で簡単な筈だったのだ。こんな……こんな一瞬で死屍累々になるようなことはなかった筈なのに。
「おい……あれ……」
立ち上がった弓兵とは別の軽傷で済んだ兵士が爆心地を指さす。濛々と砂煙が立ち上がる爆心地から二つの影が飛び出したのだ。
影は虚空を飛び空へと向かい……その先にいた存在にまだ動ける兵士たちは強張る。奇妙な空気が漂い始めたことにロンデスは困惑する。
「空に……何かいるのか?」
痛む体を無理やり動かし彼も同じように視線を上に向けて……一瞬見えた物が理解出来なかった。彼の視線の先にいたのは……6枚の純白の翼が背中から生え頭上に神々しい
空に浮かぶ少女───ラナーは投擲した二刀を手元に戻し強く握りしめる。
「私……これほど強くなる必要があったのかしら?……」
ラナーは自分の手元を見つめながら思わずぼやいてしまう。ナザリックに連れていかれてからの僅か数日間で、真なる竜王級へと変貌してしまった自分の力を思わず疑問視してしまう。
少し前の自分であれば眼下にいる兵士一人でも相手にすれば簡単に殺されていただろうに、今ではたった一撃で数十人を瀕死に追いやれてしまう。
この数日間の間に行われたデミウルゴス主導の拷問染みた訓練は果たして本当に必要だったのだろうかと……ラナーは少しばかりの哀愁と共に濃密過ぎた時間を思い返す。
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種族レベルと職業レベル。この合算がレベルとなりそれが強さの秘密だと、ラナーはデミウルゴスに教えられている。
種族レベルとは文字通り種族自体に紐づけられたレベルである。例えばサトルであれば骨の魔法使いから始まり死者の大魔法使いを経由し、死の支配者へと至りこの合算が40となりこれが彼の種族レベルだ。この時点でサトルはレベルが40となり、フロンティアの人間基準では逸脱者と呼ばれる存在になる。
ここに魔法使い系の職業を更に60重ねる事で、彼はレベル100のアンデッドとして確立されている。
そしてフロンティアもこれと全く同じ
例えばこの地に生息する竜であれば年を重ねるだけで種族レベルが上昇していく。幼年からスタートし若年、青年、老年、長老、古老と跳ね上がっていく。元々の種族として竜は強いのだが、年を取るだけでも強くなる特性こそが竜が最強の種族たる所以だ。
それは竜だけに限らない。人間種を除く種族……亜人や異形も種族レベルを保有し、人間種に比べると強くなりやすい傾向がある。
それに対して人間種は職業レベルを上げるしか強くなる方法がない。これが『ユグドラシル』であればゲームだけに経験値を取得すればレベルアップ用のポイントを獲得して、自由に職業レベルに振り分けることでお手軽に強くなれたのだが……このフロンティアではその限りではない。
フロンティアで職業レベルを上げるには、その職業に則した行動をしなければならない。例えば料理人の職業を会得したければ毎日料理を作ったりだ。しかも漫然と料理を作るのではなく、心の底から自分は料理人になるのだと努力しなければ獲得できない。
しかも厄介なことに努力をしなくとも、行動に則していれば自動で職業を会得してしまう場合がある。例えば奴隷として扱われた人物は、自分が奴隷なのだと思い込んでしまえばその瞬間に
ただでさえ人間種は全般的にレベルの制限が低く、10から20の間で打ち止めになってしまうのにそれをいらない職業が占有してしまうのだ。その手のノウハウが全くない状況でバラバラに職業を会得し、無駄な
だから人間種ははっきり言えばこのフロンティアにおいて劣等種族なのだ。どうしようもなく……弱い生物なのだ。大陸北西部に追いやられ、六大神が保護するまでは絶滅を待つばかりであったほどに。
「それらを踏まえた上で端的に説明しましょう。君には人間をやめてもらいます」
ラナーの育成に際し、いくつかのプランをデミウルゴスは考えていた。一つは<星に願いを>やウロボロスを使用してのレベル制限の解放だ。フロンティアの個体が別々に持つレベル制限を、『ユグドラシル』のプレイヤーと同じ100にまで上昇させてからの育成だ。だがこの方法だと10日で仕上げるには時間が足りないと判断し彼は却下した。
そこで次案として考えていた人間種からの種族変更と、レベル制限解除を併用してデミウルゴスは採用することにした。幸いにもナザリックには多様な種族変更アイテムが存在する。一度種族を変更してしまえば、他所から経験値を流し込むだけで種族レベルが上昇することは事前調査で判明済みだ。
経験値にしてもアイリスがウロボロスの力で世界級アイテム『強欲と無欲』に、これでもかと
そしてラナーは種族変更アイテムを使用して天使となり……途中別の天使種族を経由したあと熾天使へとなった。
この時点でラナーのレベルは38となり、ガゼフどころか帝国最強の魔法詠唱者フールーダ・パラダインを種族レベルの暴力で潰し切れるようになった。
だが───
「さて……では準備も完了したところで本番と行きましょうか。先ほども説明しましたが、あなたはまだ種族レベルだけの強さしかない。ここから職業レベルを重ねるには、必死で努力を重ねるしかありません。分かりますね?」
「承知しております」
「そうかい。……職業レベルを重ねるには必死で努力するしかありません。ではあらゆる生がもっとも努力するタイミング。それはいつか?……死がすぐ傍まで迫っている時だ。つまり……君にはこれから文字通り死に物狂いで
「………………え?」
「何を驚いているのだい?……ああ、死亡時の蘇生に関して疑問を抱いたかな?確かに君の御友人が使うような低レベルの蘇生であればレベルダウン……生命力の喪失が起きてしまうが、我々ナザリックが保有する蘇生手段には
「…………………………え?」
驚くラナーだったが……その先にはただ地獄が待っていた。常に格上と休みなく戦わさせられる。異形種……それも天使種族となったことで疲労は無効化され……痛覚もある程度以上は遮断されるのだけが救いだった。ひたすら効率だけを重視した訓練はラナーの精神をやすり掛けする。死ぬ度に違う武器に変更され、ベストな装備を模索させられる。最終的に6つの属性が付与された刀を、状況に応じて使い分ける戦術が確立されるまで何度も死んだ。
模索する過程でいらない職業を取っていないか、ナザリックの状態モニターでデミウルゴスは常に監視し……ビルドに合わない場合は、態とペナルティが発生する蘇生方法でレベルダウンさせ取り直しさせる。
以前のデミウルゴスであれば、誰かが死ぬ姿に嘲笑を送っただろう。だが今の彼は違う。一心にラナーの強化のために昼夜問わず彼女を見守り続けた。悪魔基準で。
ラナーは自分が何回死んだのかなど覚えていない。デミウルゴストレーナーに扱かれ、コキュートス臨時コーチにバラバラにされる時間は永遠に続くのかと思われた時に。
このナザリックにおける最上位に御座す神とその側近が悪魔を止めてくれた。その後は死亡回数もグンと減り……ようやくデミウルゴスが満足するレベルに仕上がったところで数時間の休憩を貰い。法国相手のデビュー戦に彼女は駆り出されたのだった。
デスペナ:現在のナザリックにはペナルティなしorペナルティ緩和の蘇生手段が豊富(例:星に願いを 世界級アイテム 課金アイテム等)
ラナー
Lv100
種族レベル:天使15 熾天使5 他10
職業レベル:天才5 女優3 他62
デミが10日で仕上げて見せた超高速パワーレベリングの産物