モモンガ様リスタート   作:リセット

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神話の大魔法詠唱者

 エ・ランテルから北東数十キロの丘陵地帯に<転移門>が開く。空間に浮かび上がる、闇を濃縮させたような穴から出てきたのは冒険者組合で依頼を受けた『漆黒の剣』とサトル達だ。

 

 一行が受けた依頼はエランテルの北にある、トブの大森林の調査である。

 

 トブの大森林は帝国と王国を分つアゼルリシア山脈を包む形で広がり、面積4800平方キロメートルの広大な森林地帯で、奥地には貴重な薬草などが豊富に自生しているのだが、ここがまともに調査されたことはない。

 

 その理由は大森林が非常に危険だからだ。入って150mほどはなんの変哲もない森だが、そこから先に進めば木々に遮られ日光が届かず、昼間でも数十メートル先は見えないほど薄暗い。木の根っこや苔などでぬかるみ滑りやすく、まともな靴を履いていても簡単には歩けないほど足場も悪い。

 

 だが何よりも厄介なのはモンスターとの遭遇率が奥に行けば行くほど、急激に上がっていくことだ。平地であれば簡単に狩れるモンスターでも、視界が遮られ泥などに足を取られる状況となれば難敵と化す。森とはモンスターに取っては有利なフィールドだが、人間にとっては不利な場所なのだ。

 

 貴重とは言っても所詮は薬草であり、命には変えられないのだからここを好き好んで探索するものも少なく、国が総力を上げて調査するほどの魅力的な資源があるわけでもない。

 

 結果として冒険者ぐらいしかここの探索には乗り出さないのだ。

 

 だが危険とは言っても、銀級冒険者ぐらいになれば自分の身を守れるのでよほど奥に行かない限りは安全であり、『漆黒の剣』ならレンジャーのルクルットもいるため安全度は更に向上する。

 

 更には神話にしか登場しない第十位階魔法詠唱者二人(サトルとアイリス)第八位階信仰系魔法詠唱者(ルプスレギナ)。加えて圧倒的な力を感じさせるコキュートスもいるとなれば、例えトブの大森林といえども怖いものではない。

 

 そう言うわけで大森林の調査となった。

 

 ただエ・ランテルからトブの大森林へは距離の関係上、泊りがけの遠征となる。『漆黒の剣』のメンバーは野営用の道具などを準備しなければならないなと意気込んでいたのだが───

 

「大森林の近くまでショートカットなのです」

 

 アイリスが<転移門>を開き、移動時間を短縮する運びとなった。訳もなく行使される高位階の転移魔法に驚きつつも、<転移門>をくぐるペテルやニニャ達。彼らはあまりにもあっさり使われたせいで、自分たちが今第十位階の魔法を目撃したことに全く気が付かなかった。

 

「すっげぇ……ここって森林の近くの平野だよな」

「この場所まではエ・ランテルから数十キロはあった筈なのである! それが一瞬で移動出来るとは、転移魔法とは凄まじいのであるな!」

「ええ。本当に凄いです。改めて()()()()の魔法を身をもって体験しましたが、凄い以外の言葉が出てきません」

 

 アイリスがこれが第十位階なのです。そう説明する前になぜかニニャは<転移門>が八位階だと勘違いしていた。口を開こうとしたアイリスは、「ちょっとネガティブなのです」と困った顔をしている。しかしニニャがそう勘違いするのも仕方のない事なのだ。

 

 なにせ法国を除く人類国家には高位階魔法の知識がなく、法国ですら第七以上となると文献に僅かに残っているのみ。ようするに知識として残っていないのだから、説明してもらうか、鑑定系の魔法を使わない限り一体何位階の魔法なのかは分からないのだ。

 

 そのため『漆黒の剣』の中で一番魔法に通じているニニャですら、<転移門>は自分を裏路地から市場まで転移させた魔法と同じ第八位階だと思い込んでいる有様だった。

 

 アイリスはサトルにいつもの無詠唱<暗号伝言>を繋げる。

 

『困ったのです。今のが第十位階なのです! と発表したかったのですが、出鼻を挫かれたのです』

『うーん……十位階って言ってもパッと見て、これが神話の魔法なんですね! ……ってド派手な魔法ばかりってわけじゃないからな。<転移門>は便利だけど、<魔法探知>を使わずに初見で何位階か当てるのは難しいか』

 

 ペテル達現地の住民からすれば、十とは神話や伝承の中だけに姿を見せる魔法なのだが……伝説の魔法と呼ぶには、些か見た目が非常に地味な魔法も多い。

 

 例を挙げるならば<記憶操作>や<光輝緑の体>だろうか。

 

 <記憶操作>は読んで字のごとく、対象の記憶を操作する魔法だ。記憶を閲覧し、自由自在に書き換えられると利便な魔法ではあるが……傍目には手を頭に当てているように見えるだけなので、言っては悪いが伝説の魔法と言うには絵面がとても悲しい。

 

 <光輝緑の体>も効果時間内の殴打ダメージを軽減し、任意で一回だけ威力に関係なく殴打攻撃を完全無効化できるので戦いで使うには利便な魔法なのだが、見た目には何かが発動しているようには見えないため、これまた絵面がとても地味だ。

 

『あの期待に応えるとなると……派手な魔法の方が喜んで貰えるよな?』

『ポジティブ。とは言え森の中で広域破壊魔法を使うと、余波で木々を破壊しちゃうのです。この開けた場所で御見せした方が良いと、アイリスは提言するのです』

 

 アイリスの言葉にそれもそうだなとサトルは頷きを返す。下手に強大な魔法を使うと、せっかくの自然を無駄に破壊する恐れがある。仮に森の木々や草木を全て吹き飛ばしたとしても、<流れ星の指輪>や<永劫の蛇の指輪>を使用すれば元に戻せるが、だからと言ってあえて草花を燃やしたりしたいかと言えば嘘になる。

 

 それに『ユグドラシル』の頃と違い、フレンドリーファイアーの仕様上『漆黒の剣』が巻き込まれたら洒落にならない。最悪アイリス達ならサトルの魔法に巻き込まれたとしても、防御力や生命力の高さで凌げるが、彼女らと比較すると脆いニニャ達が巻き込まれたら一瞬で塵になってしまうだろう。

 

「ペテルさん。一つ提案があるのですが、よろしいでしょうか?」

「あ、はい。どうされましたか」

「今から大森林に向かうわけですが、その前にここで私たちが使う高位階の魔法の実演を行いたいのです」

「ここでですか? てっきり森のモンスター相手に披露されるのかと思っていたのですが……」

「私も最初はそのつもりでしたが……『漆黒の剣』の皆さんにも、事前にどれくらいの威力があって、どれくらいの効果範囲かを知っていて貰う方が、良いかと考え直しましてね。その方が戦術なども立てやすいでしょう?」

 

 その言葉に「確かに」と4人は同意をしてくれる。パーティーを組む以上、どれくらいの事が出来るのかは把握しておいた方が都合がいいからだ。

 

 立ったまま実演を見るのもと、アイリスが<上位道具創造>で物見席を創りだし、それを見た4人がまた驚いているのを尻目に、さてどの魔法を使おうかとサトルは思案する。

 

(やっぱり派手なのとなると<隕石落下(メテオフォール)>か? <大顎の竜巻(シャークスサイクロン)>も捨てがたいよな……あとは<要塞創造(クリエイト・フォートレス)で塔を創ってそれを的にしてもいいかも。最後の締めは……<重力波(グラビティ・ウェーブ)>にするか?)

 

 ───第十位階魔法の実演に4つも使用する。手札を無駄に晒し、また魔力の無駄遣いに他ならない行為。

 

 『ユグドラシル』のセオリーに乗っ取るのであれば、自分が使える魔法をただ見せるだけなどまずありえない。なぜならゲーム内で通常覚えられる魔法の数は300と限りがあるからだ。サトルなどは課金やPVPの報酬、特殊な儀式を行って習得数を718まで伸ばしていたが、その大部分を純火力魔法よりもロールプレイのために死霊魔法に注ぎ込んでいたので、純粋な攻撃魔法はアタッカータイプの魔法詠唱者に比べると少ない部類に入る。

 

 そんな常識の中「私はこれを使えるんですよ」と自慢げに話す者がいたなら、そいつは馬鹿か阿呆だ。実際にこの世界で実体化した直後の頃であれば、サトルも魔法を進んで見せようとは思わなかった筈だ。

 

 しかしながらそれは実体化直後の話。今のサトルは『ユグドラシル』に実装されていた6000以上の魔法全てを習得している。通常では特定の職業でしか取得できない魔法も含め全てだ。そのうえアイリスが『五行相克』を使い、せっせと夜なべして増やした魔法もあるため、手数に困る事がない今たかが4つの魔法を見せる程度なんてこともない。

 

 つまるところ現在のサトルは通常のプレイヤーの立場とは全く違う。事実上のGM権限を保有しているに等しいアイリスがいるのだから、誰かを警戒して力を隠す必要など全くもってない。

 

 サトルが真に警戒するべき相手はたった一柱。未だその正体すら掴めていない存在Xのみ。ウロボロスを使っても、『存在Xは竜帝である』と偽の情報が出力されるだけで、世界級アイテムの力すら誤魔化す絶大な怪物だけが唯一の敵足りうる。

 

「かんっぜんに馬鹿にしてるのです! 竜帝はあの八人で十分に勝てる相手でしかないのです! そんなのを自分の偽装情報に使うなんて、舐め腐っているのですよ!」

 

 とはアイリス談。彼女どころか、サトルでも単独で殺せる程度のドラゴンを代理としているのだから、怒るのも無理はないなとサトルは思ったものだ。

 

 何にしろサトル達が警戒するべきなのは特定の相手だけであり、その特定の相手に対抗できる手段はアイリスが持つワールドスキルだけだ。つまりナザリックが……アインズ・ウール・ゴウンが真に秘匿するべきなのは、アイリスが持つ最終兵器のみであり、それ以外は全て魅せ札に過ぎない。だから今から実演してみせるように、従来であれば隠すべき十位階の魔法を人前で躊躇なく使っていく。それが彼らの方針だ。

 

「では今からお見せしますが、皆さんはアイリス達からは離れないでくださいね。流れ弾が飛んで来たら非常に危険ですので。アイリスは念のために周辺への結界と、ここに防御魔法を」

「ラージャ! 『世界断絶障壁』。<生命の揺り籠>。<魔法三重化・聖壁>」

 

 アイリスを中心として、周囲数キロに半透明のドーム型の結界が展開される。それとは別に物見席も透明なシールドに包まれ、更に万全を期すためにシールドの周りに防御壁をアイリスは張る。

 

 見た事もない魔法の数々を見せられたせいか、非常に目をキラキラさせたニニャが「はい! 絶対に離れません!」と元気よく返事をする。年相応の元気さを見せる彼女にチラリと視線をやってから、サトルは魔法を行使する。

 

「<魔法三重化・要塞創造>」

 

 8人の前に広がる何もなかった平野に、突如として高さ300mはある巨大で重厚感のある塔が3本聳え立つ。両開きの金属扉を持ち、全体が漆黒に染まった外観からは見るものを圧し潰すような威圧感を放出する、まさに要塞と言える塔だ。

 

「な……あれが第十位階の魔法…………」

「あれほどの建造物を一瞬の内に創り出すなど…………まさに神の所業なのである!!」

「まじですっげえわ───」

「ほ、本当に凄いです! アイリスさん! あれはどのような魔法なんですか!?」

「見た通り、おっきな塔を創り出す陣地作成魔法なのです。術者が解除するか、破壊されない限りは壊れたりしないので、要塞として使えます。ちなみに中は結構豪勢な造りになっていて、部屋もたくさんあるので泊まったりできるのですよ」

「と言う事は、野営の時などにモンスターに襲われる心配もなく一晩を過ごしたりも?」

「出来るです。ちなみに80レベル……この辺りですと難度ですか。難度で表現するならば二百四十のドラゴンに襲われても壊れないくらい頑丈なので、とても安全なのですよ」

『二百四十のドラゴン!!!!?』

 

 アイリスの言葉にまたもや絶句する一同。

 

「二百越えって……どんな怪物なんですか…………」

「本で読んだことがあります。二百年前に十三英雄が退治した魔神が推定難度二百らしいと」

「お伽話の魔法詠唱者の口から、お伽話のドラゴンが語られるであるか」

「と言うかだ。アイリスちゃんの口ぶりだと、ドラゴンに襲われたことがあるってことだよ、な?」

 

 ルクルットが疑問形で話すがそれも無理はない。王国住民の殆ど、どころか周辺国家全体で見ても、ドラゴンを生で見た事がある者は非常に少ない。

 

 王国の北西には数匹のドラゴンが統治する亜人国家の評議国があり、今回一行の目的地であるトブの大森林の傍にある山脈にはフロスト・ドラゴンが生息してはいるのだが……基本彼らは縄張りから出てこないため、『漆黒の剣』にとってドラゴンとは物語の向こう側の存在と言う認識の方が強いからだ。

 

「ドラゴンノ相手ナラ何度デモアルゾ。奴ラノ全身ハ素材ノ宝庫デ、利用価値ガ高イカラナ」

「あと肉が美味いんっすよ。一度食べたら病みつきになるっす」

「襲われる側じゃなくて襲う側の視点かよ!」

「難度二百を超えるドラゴンが喰われる側とは……度し難い話なのである」

 

 ドラゴンを日常的に狩っている話などされても、通常であれば嘘をついているとしか思えないが……実のところアイリスの<転移門>を見た時点で、ペテルらはサトル一行が神話に出てくるような魔法詠唱者なのだと信用していた。そこから<上位道具創造>での物質生成。大規模な結界魔法。遠めでも巨大だと分かる<要塞創造>と立て続けに見せられてしまえば、もはやサトルらの話を疑う余地などない。

 

 ───自分たちは今、神話の大魔法詠唱者一行と一緒にいるのだ。

 

 極度の興奮により、彼らの頭は緩くなりハイになっていた。

 

 そこに燃料が追加される。

 

「せっかくですし難度()()のドラゴンを見せてあげるのですよ!」

「え?」

 

 アイリスが手を空に差し向け、大きな<転移門>を開く。彼女がパンパンと2回手を叩くと、<転移門>から2体のドラゴンが滑り落ちてくる。

 

 赤い竜と白い竜。翼を力強く羽ばたかせ、空の王者達が地響きをさせながら物見席の傍へと降りてきた。

 

「アイリス様。御身の前に」

「我らを呼ばれるとはどうされましたか」

 

 逞しさを感じさせる四肢に巨大な尻尾。全身を赤と白の鱗に覆われ、縦に割れた爬虫類の鋭い眼光を持つ怪物。見上げるような巨体からは生命力が迸り、そこいらにいるモンスターとは別格なのだと分からされる。

 

 ペテルら『漆黒の剣』どころか、王国全土の人間を掻き集めても皆殺しにされるだろう絶対的なプレッシャーに、本能が教えてくれる。これこそがドラゴンなのだと。数々の物語で最強と表現される、本物の竜だと。

 

「ポジティブ。こちらの人たちにドライグとグイベルを紹介したかったのですよ。……急に呼び出してしまいましたが、もしかして迷惑だったですか?」

「迷惑などありえません! 我らはアイリス様に仕える絶対の忠臣! 御身が望むならば例えそれが何であれ従うのみです!」

「……昔のルプーやコキュートスみたいなのです」

「私たちこんなに酷かったっすかね?」

「絶対ニ違ウナ。我ラハモット柔軟ダッタハズダ」

「ネガティブ。オーナーに対する態度はこんなだったです」

 

 アイリスの言葉にうんうんと頷くサトルに、ちょっとしょんぼりするルプスレギナとコキュートスだが、そちらのやり取りに2頭に意識を奪われている4人は気づかない。初めて見る竜の威容は恐ろしく、それがアイリスが呼んだのだと理解していても心身が凍り付く。

 

「……この方たちは」

 

 リーダーとしての矜持だけでペテルは問う。どう見ても世界を軽く数回は滅ぼせそうな、このドラゴン様達はなんですかと。

 

「アイリス様が使役するドラゴンっす。召喚モンスターみたいなもんっすね」

 

 アイリスの代わりにルプスレギナが簡素な答えを返す。その回答にニニャが錆びたブリキの玩具のようにぎこちない動作で、アイリスへと振り返る。

 

 ───本当ですか?

 ───ポジティブですよ?

 

 ニニャは自分がまだまだ第十位階魔法詠唱者を甘く見ていたのだと内心恥じる。通常魔法詠唱者が使役するモンスターや召喚モンスターは、術者より強大な力を持つことはない。つまりアイリスは……自分を助けてくれた小さな少女は、このドラゴン達よりも強いのだ。恐らく、圧倒的に。

 

 ───私はとんでもない人に助けられたんだ。

 

 そう考えていると物見席から立ちあがったアイリスに手を引かれ、彼女らはドラゴンの前へと連れていかれる。先ほどまで見下ろしていた竜はアイリスが近づくと、頭を下げ平伏した。

 

「この子たちが難度三百のドラゴンなのですが……ニニャ達はひょっとしてドラゴン自体初めて見るですか?」

 

 目の前に全てを超越していそうな暴の化身がいることに言葉が出てこないので、コクコクと首を動かすだけでニニャは返事する。その様子を見て、アイリスは「そんなに怖がらなくとも良いのですよ」と優しく語り掛ける。

 

「見た目はちょっと怖くてネガティブかもしれませんが、この子たちはとても優しいのですよ」

 

 そう言って赤いドラゴン───ドライグの鼻先を撫でるアイリス。まるでペットに対するかのような行為であり、これが通常のドラゴンであれば馬鹿にされたと怒り狂うだろうが、そんな様子もなくアイリスにされるがままだ。

 

「みんなも触ってみるですよ」

「いや……イヤイヤイヤイヤ!! 無茶! 大分無茶!」

 

 自分たちを鼻息一つで殺せそうなドラゴンへの接触をお勧めされても、はいとはならない。様子を見る限りではアイリスの完全支配下にはあるようだが、それでも怖い物は怖いのだ。

 

 二の足を踏む一同の事をじっと見ていた白い竜───グイベルが鼻先を近づける。まるで触っても良いぞとばかりに、だ。

 

「グイベルは優しいのですよ」

 

 アイリスが言う通り、実際に優しいのだろう。身じろぎすらせずに待ち構えるドラゴンの眼は知性に溢れており、ここまで来たら行くところまで行ってしまえとニニャは決心して撫でてみる。

 

 ───あっ、硬い。

 

 そこからドラゴンとのふれあいタイムをしばし堪能した後。

 

「ではドライグとグイベルはあの塔を攻撃してくださいです」

 

 実際にサトルが創り出した塔の耐久性試験をお披露目する。二頭のドラゴンは飛び出し要塞への攻撃を開始する。竜の口から炎や冷気、雷のブレスが吐き出された。

 

 一発一発が轟音を響かせ、塔へと直撃。あのブレスが一撃でもこちらに飛んで来たら……そう考えたペテル達は身震いする。確実に骨すら残さず自分たちは絶命する。それだけの威力だと言うのに、塔の外壁には傷すらつかない。

 

 アイリスはある程度まで攻撃させたところで二頭を呼び戻す。

 

「ではお待ちかねの第十位階の攻撃魔法を使います。……本当に危険ですので、ドームからは出ないで下さいね。…………<隕石落下(メテオフォール)>」

「あれを見てくださいです」

 

 アイリスが指さす先に全員が注目する。

 

 彼女の指の先。遥か彼方の空が、ひどく輝く。薄雲を突き抜けて落ちてくるのは天変地異の一撃。ドーム型の障壁をすり抜け直径50mの巨塊が音の数十倍の速度で落下し、サトルの要塞へと直撃した。

 

 威力の大部分は要塞が緩衝材となることで緩和されたが、それでもあまりある衝撃を受け止めきれなかった。

 

 ニニャらの視界が真っ白に染まる。極大の爆発。大地が捲れ上がり地下数十mをほじくり返す。瞬間的に発生した熱により水蒸気が発生し、巻き上げられた粉塵と混ざりキノコ雲を生成させる。

 

 世界断絶障壁を張っていなければ、数百キロに渡って熱波と衝撃波が猛威を振るっただろう。この近くにある村は一瞬で地上から消し飛び、大陸北西部の大部分がこの世から消失しかねない大魔法の行使。

 

 その余波は当然物見席にまで及んだが、たかが国が消える程度の魔法でアイリスの防御壁を抜くことなど叶わない。むろん叶わないと言っても、中にいた者の心情は全く別だ。

 

 ペテルは気を失い、ルクルットは泡を吹いて、ダインは神に祈り、ニニャはちょっと漏らした。

 

 煙が収まり視界が晴れた時、まだ気絶はしていなかったダインとニニャはその光景に言葉を失う。

 

 外壁に少しだけヒビの入った要塞以外には、何もなかった。平野があった場所にはただ巨大なクレーターが出来上がっており、どれだけの破壊力があったのかを知らせてくれる。

 

「これが第十位階魔法<隕石落下>です。では続きまして───」

 

 出し物の司会役のような口調で、新たな魔法を使おうとしたサトルに対して、ニニャは「これ以上はお辞めください」と泣きながら哀願した。

 

 




平野:流れ星の指輪で修復

世界断絶障壁:五行相克と永劫の蛇による完全再現。下手したら過去一ツアーがキレる

ドライグとグイベル:黄昏時に呼び出せる御供モンスター。元ネタはウェールズの赤い竜と白い竜の伝説。戦闘能力は3ラナーぐらい。サトルへの初お披露目の時に召喚。ワールドスキルを解除しても消えなかったので、そのままアイリスの使役モンスターとして運用している。二頭の記憶からはワールドスキルの情報は消去済み

要塞創造:改造済み。扉の開閉権を他者に与えたり、創る要塞のサイズを任意変更可能

隕石落下:隕石を召喚しぶつける。威力と範囲は術者の魔力と魔法攻撃力に依存する。サトルが自己バフ+アイリスバフ+世界級アイテムバフ+世界級品質の装備で使うと大変なことになる(今回はノーバフの素撃ち)



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