一仕事終えたアイリスを迎え、彼女のおねだりに応える事一晩。長い間サトルと触れ合えなかったせいか、アイリスの欲は留まる事を知らず。朝方までサトルを彼女は求め続けた。そんな長い交わりも終わり、日が昇る頃にサトルとアイリスは就寝し、主従揃って惰眠を貪っていた。
「ん? ここは……」
ふっと。サトルが目を覚ますと、彼はナザリックの円卓の間にいた。
「え?……俺はいつの間にここに? ……<伝言>。アイリス聞こえるかい? さっきまでエ・ランテルにいた筈なのに、どうしてかナザリックにいるんだ。…………アイリス?」
なぜかアイリスに<伝言>が繋がらない。その事に疑問を覚え……自分の手を見た瞬間に。サトルの防衛本能が最大級の警戒を発する。肉がついていた筈の手、それがモモンガのアバターだった頃の骨だけの手に戻っているのだ。
(何が起きた!! ……まさか……存在X!ついに奴が現れて俺たちに攻撃を仕掛けて来たのか!! ならアイリスは……まさか戦っている!!)
サトルが焦りの感情を抱き、円卓の席から立とうとするが……一向に足に力が入らない。更に焦りが加速する。歯噛みするサトルだが、その彼の目の前で円卓に変化が起きる。
影だ。四つの影が円卓に備え付けられた豪奢な椅子に湧き上がる。その影は最初黒い塊でしかなく、棒人間のようなシルエットであったがぐにゃぐにゃと形を変え、大小様々な姿を取っていく。
それらはサトルが良く知る姿だった。
「ぺ、ぺロロンチーノさん! たっちさんに……ぶくぶく茶釜さん……ウルベルトさんも……」
影はかつてのアインズ・ウール・ゴウンメンバーを模していく。なぜその姿を取ったのか。サトルは精神攻撃かと疑う。良く知る人物に似た姿を取らせる事で、精神を傷つけるやり口。『ユグドラシル』時代には、ドッペルゲンガーを使って相手ギルドのメンバーの姿を模倣。それをPVPに投入し、敵のメンタルを直接攻撃したこともあるが故にその手法かとサトルは身構える。
「─……い。─……しい」
影のぺロロンチーノが口を開く。彼は『ユグドラシル』のアバターであるバードマンだが、今は怒りを溜め込んでいますとばかりに背中の羽根が膨らんでいる。
「恨めしいぃぃ……モモンガさんが恨めしいぃ」
彼が口にするのは怨嗟の言葉。地の底から響くような、重苦しい声。恨めしい。そんな言葉をサトルはぺロロンチーノに投げられたことなどない。彼が知るぺロロンチーノとは、明るくおちゃらけて……エロゲーをこよなく愛するアインズ・ウール・ゴウンのムードメーカー。それが、シャルティアの創造主であるバードマンなのだ。
……そんな姿を一切見せず。血走った眼をサトルに向けて、呪殺せんとばかりに言葉を吐きだす。その光景に、思った以上にサトルの心は動かされる。今のように親友から恨み言を向けられたくなどない。だって彼は……彼らは自分に人生の過ごし方を教えてくれた人たちなのだ。そんな大恩人の一人に……否定されるなど。
(やはり存在Xの攻撃……なのか? こうやって俺の心を折るために……)
そう推測するサトルだが、ぺロロンチーノの口は止まらない。一体彼は何が恨めしいのだろうか───
「羨ましいぃ─。モモンガさんが羨ましい。毎晩毎晩合法ロリとイチャイチャできるモモンガさんが恨めしい─……」
(良し! いつものペロロンチーノさんだ! 俺の知ってるロリバード100%だ! 待てよ。これ本当に精神攻撃か? なんか違うような……)
「恨めしいぃんだよぃぉおおお! 何モモンガさんだけちゃっかり脱童貞してんだよぉ! クリスマスの誓いを忘れたのかぁあ! 一緒に嫉妬マスクを被って、聖夜に性夜して、ログインしてないのが判明してたリア充ギルドを襲撃しまくったあの夜をぉよう!!」
「うわぁ。愚弟から誘われたから参加したけど、あの時の襲撃ってそんな裏事情があったんだ。きっつぅ……」
ヒートアップするぺロロンチーノの言葉に、ドギツイピンク色をしたスライム───ぶくぶく茶釜が「引くわ~」と粘体を上手に動かして、口元と思わしき部分を手でやるように抑えている。
「なんだその反応は! 姉貴にだけは俺のことで引く権利とかないからな! NPCに思いの丈をぶつけたせいで、マーレやアウラちゃんが困ってんだぞ!!」
「おい。その話だけはするな。ただでさえマーレとアイリスちゃんの『どうしてぶくぶく茶釜様は僕に女の子の恰好をさせたんですか?』『……
「うちの姉貴はどうしてこう、横暴なんですかね!?」
……そのやり取りに、サトルは困惑し……懐かしさを覚える。それはかつてナザリック地下大墳墓でよく見た光景。騒がしいバードマンと、ロリ声のスライムの姉弟喧嘩。もしこれが精神攻撃と言うならば……これ以上の攻撃はないだろう。なにせこれはもう戻らない日々の在り方。『ユグドラシル』のサービス終了と共に、ナザリックと一緒に異世界へと転送されたサトルには……二度と見られない風景なのだから。
「モモンガさん。これは精神攻撃なんかじゃありませんよ」
「……たっちさん?」
姉弟喧嘩を余所に、純銀の鎧に赤マントの騎士がサトルに声をかけてくる。たっち・みーは「落ち着いてください」と優しい響きの声を出す。
「モモンガさん。貴方は存在Xの手で円卓の間に来たんじゃない。ここは一言で言えば夢……もっと言えば可能性の世界を夢として構築した場所。と言うのが正しいでしょうね」
「……可能性、ですか」
「並行世界と言う可能性を夢で観測する。……私たちがそれをなぜ自覚しているのかと言われたら、少し説明が難しいですが。そんな場所にモモンガさんが来た原因は明確ですよ。貴方の想い人であるアイリスさん。彼女のワールドスキルです」
「たっちさんの説明だと分かりにくいでしょうし、俺からも説明しましょうか」
「!! ウルベルトさん…………」
山羊頭の悪魔を見た瞬間……サトルの心の動揺が一気に引き上げられる。自分の事を一番の親友と呼んでくれて……アイリスを任せてくれたリアルでの最大の恩人。夢……つまり幻だ。幻影にすぎない。それでも……もう会えないとアイリスに断言された彼を見た事で。サトルの心に様々な感情が湧きだしてくる。歓喜・愉悦・快味・喜悦・至福・感激。ぐちゃぐちゃな感情がごちゃ混ぜになって、もし涙を流せるなら膨大な量を流しただろう。
そんなサトルにウルベルトはちょっとだけ笑い……ここがなんなのかを説明してくれる。
アイリスの持つ超弩級能力、ワールドスキル。あれはその気になれば可能性を知覚し、並行世界への移動すら行える。そして……あまりにも強大過ぎると。スキルそのものをオフにしていても、影響は如実に出ている。例えば肉体を完全な状態に固定するとか。その手のスキルをアイリスは保有していないのに、評議国にいるツアーがこちらに気付いたのを知覚したりと、ありえない現象を引き起こしている。そして今サトルが体験している、イフの世界に一時的に潜り込む現象もその一つだ。
「ここにいる私たちを定義するなら、『モモンガさんと共にこの世界に転移した可能性』ですね」
「……そんな未来もあったと?」
「ありえたでしょうね。ギルドメンバー全員は無理ですが、ここにいる四人ぐらいであれば。俺がテログループの一員であるとたっちさんにバレなければ、今でもモモンガさんと一緒に遊んでいたでしょうし。俺への罪悪感が無ければたっちさん……貴方も別にこのゲームは離れないんじゃないですか?」
「───そうですね。仮に途中で離れていたとしても、アカウント自体は残しておいて。モモンガさんの最終日の誘いに応えていたでしょうね」
「そして俺が残っていて、モモンガさんと二人で誘えばぺロロンチーノさんもアカウントの消去まではしない筈」
「茶釜さんも弟であるぺロロンチーノさんが続けているのであれば、アカウントは残して戻れるようにする可能性が高い。これで四人。モモンガさんも含めれば5人でこの世界、フロンティアに来ていたでしょう」
たっち・みーとウルベルトの説明に、そういう可能性もあったのだなとサトルは納得しかけたところで。一人抜けている事に気付く。その一人の名前を……震える声でサトルは問う。
「5人? ……もしこの可能性が実現していたとしたら……アイリスは?」
「───この世にいません。俺が属していた組織がテロ活動の一環として研究所を襲撃したから、彼女は助かったんです。ですが私が『ユグドラシル』を離れていなければ、前提が崩れます。バタフライエフェクトとでも言えるのですかね? ちょっとした切っ掛けで物事は変わってしまう。だから、この可能性を進んだ場合、No.3333。アイリスは予定通り消去されて……消えていたんです」
アイリスが消えていた。そんな言葉がウルベルトの口から出てくることに、予想以上のショックをサトルは受ける。骨の口を手で押さえて、信じられないとばかりに。アイリスがそんな……そこまで考えたところで。サトルには気になる事が出来てしまった。どうして自分は今こんな夢を見ているのだろうと。
「どうして……俺はそんな可能性を見れているんですか? ワールドスキルは確かに強力です。でも今までこんな夢を見る事なんてなかった。なんで急に……」
サトルの言葉に、ウルベルトとたっち・みー。姉弟喧嘩をやめたぺロロンチーノと茶釜が黙り込む。その反応に不可思議な色をサトルは見た。4人の反応は知らない人間のそれではなく、逆。知ったうえで、果たしてこれを自分達が言っていいのかどうかを戸惑っている。そんな感じの反応なのだ。
4人は顔を見合わせて、アイコンタクトでやり取りをした後。ぺロロンチーノが代表して説明を始めた。
「あー……アイリスちゃんって箱庭に4年間入ってたでしょ? それが原因。……あの子のワールドスキルは世界級エネミーと世界級アイテムの複合能力でしょ? その中には当然、あれも入ってるんだよ」
「あれ?」
「───
「あ?………………あっ。ああ!!?」
ぺロロンチーノがぼそりと零した名前。その名前が何を指しているのか理解した瞬間。サトルはどうしてその可能性に思い至っていなかったのかを恥じる。アイリスのワールドスキルに世界級アイテムが全て含まれているなら。最強の世界級アイテムの力も含まれているのだと。
「普段は御情け程度の攻撃力しかない棍棒だけど───」
「───アイテムとして使ったら、時間経過に応じて使用者の強さを無限に強くして、武器攻撃力も無制限に上がっていく。……本当は使い切りの二十だからログアウトしたら消えるし、特定の条件を満たさないと強くはなれないですけどね。アイリスちゃんの場合、その手のデメリットは全部消しちゃってるからな」
しみじみとぺロロンチーノは言うが、サトルの方はもはやその話は聞こえていない。
『世界意思』。ゲーム中に存在した世界級アイテムの中でも、凶悪な効果を持った二十の一つ。その効果はぺロロンチーノが口にしたように、時間経過で無限に強くなる、だ。
当然その力を持つアイリスは……時間を重ねれば重ねるほど。天井知らずに全能力が跳ね上がっていく。ワールドスキルを発動していなくとも、無限に。
その強くなる効果は当然、ワールドスキル自体も強化していく。つまり───
「箱庭の中で4年もいたら、そりゃあこんな風に漏れ出すくらいには強くなるでしょ」
「……アイリスは今でも十二分に強いのに……まだ上があるの?」
「あるから、モモンガさんはここに来ちゃったんでしょ?」
そう言われてしまえば。もうサトルには否定できない。……この不思議空間がまだ存在Xの手による可能性も捨てきれないが。それでもなんとなく。なんとなく目の前のギルドメンバー4人からは、そんな偽物のような匂いがしないのだ。
かつて何度も追いかけた幻影だからこそ。サトルには彼らが夢ではあるが、本物の可能性をここに具現化させた存在なのだと。はっきりと分かった。
「ウルベルトさん……たっちさん……ぺロロンチーノさん……ぶくぶく茶釜さん。俺……あっ、いや私は───」
「どうせ俺たちしかいないんですから、私なんて使わずに俺でいいでしょ」
「───俺は……俺は皆さんが、違うみんなが! みんながあの日々を捨てたって思い込んでいて!! でも違って……何もかも違って!!」
「……モモンガさん。その話は『ユグドラシル』最終日。アイリスとの話でケリがついていますよ。どんな理由があれ、モモンガさんが孤独だと感じたのは事実です。だからその話はやめにしましょう。……ここにモモンガさんが居られる時間はそう長くはありませんよ。今は少しだけ、話をしませんか」
ウルベルトにそう言われて。骨の体であるアバターにはない涙腺が緩むのを、サトルは感じたが。無理やり抑え込む。偶然であれ何であれ。アイリスの力で一時だけ、ギルドメンバーに出会えたのだ。例えここにいる彼らが、自分が夢から覚めたら消える幻影だとしても……今だけはこの贅沢を享受したかった。
夢が覚めるまでの間、サトルは四人との談笑に花を咲かせる。
「昔はさぁ! モモンガさんったら俺がロリエロゲーをお勧めしても、『いやぁ、流石にロリはちょっと……』って否定してた癖にさ! 癖にぃ!! いざ自分の番が来たら、あっけなく未成熟ボディに誘惑されてさぁ!」
「違いますから! 俺はぺロロンチーノさんと違って、ロリコンじゃありませんから! 好きになった子が偶々ロリ体型だっただけです! それに初体験の時のアイリスはワールドスキル状態で、アルベドより胸とかデカかったからノーカン!」
「余計羨ましいんじゃぁ! 可変式ロリとか余計妬ましい! 俺だって合法ロリの肋骨を指でなぞりたいのに!! 」
「そんな事言ってるから、リアルで彼女の一人も出来なかったんだぞ愚弟」
「うるせえ! モモンガさんに、自分の想いを伝えられなかったヘタレに男女関係の事とか言われたくねえよ!!」
「ちょっ! 愚弟!! お前それ言っていいと思ってんのか!!」
「……俺への想い?」
「実はですね。ぶくぶく茶釜さんはモモンガさんの事が───」
「シャラァアアアップ!! それ以上言ったらたっちさんでもパンチしますよ!! ……モモンガさんは何も聞いていない! いいね!!」
「あっ、はい」
何か重要な事を言われようとした気もしたが、これ以上突っ込むと夢の世界なのに取り返しがつかないような気がしたので、サトルは黙る事にする。
他にも───
「俺の知ってるモモンガさんだったら、絶対へたれてたのに! 何が『全部上げてるよ、俺は』だよ! エロゲ主人公みたいなこと言いやがって! 俺だって言ってみたいのに!」
「別にいいでしょうそれは! あの場面で『ごめんやっぱり無理。食堂に行こうか』、とか言えるわけないでしょうが! あそこまで踏み込んでくれたアイリスの想いに応えられなかったら、もう万年童貞になるしかないだろ!」
や
「ウルベルトさん! そもそもどうして俺にはアイリスを送ってくれなかったんだ! ま、まさか!! 俺や姉貴がアーコロジー住まいなのを恨んでいて!?」
「はぁ……ペロロンチーノさん。普段からロリだなんだと言ってる人に、幼い子を託せるわけがないでしょう」
「お前の普段の行い見てたら、見た目ロリっ子なんて預けられるわけないだろ」
「畜生正論だ!」
……とにかくサトルは楽しかった。ギルドメンバー全員がいるわけではない。いるのはかつての四人だけ。所詮はワールドスキルに影響された夢であり、覚めれば消える泡沫。それでも……同窓会のような気分にサトルは浸っていた。
でも夢はいつか覚める。永遠には続かない。かつての黄金の日々が思い出に昇華されたように。この世に永久はない。
「あっ」
サトルが声を漏らす。彼の視界の中で、少しずつ。少しずつ世界が溶けていく。最初に円卓の間の扉が消えた。次に壁が泡になる。5人が座っている席以外が全て煙のように失せる。
「時間ですか」
「の、ようですね」
楽しい夢の世界を結んでいた糸が解けていく。
「それじゃあねモモンガさん! アウラとマーレにヨロシクね!! ……またいつか会いましょう!!」
その言葉と共に。ぶくぶく茶釜が姿を消す。
「姉貴はさっぱりしてるなぁ……ヨシ!! モモンガさん。アイリスちゃんは円卓会議の時に、色々と言ってたけどさ。それでも俺にとってはシャルティアが、やっぱり最高のエロゲーヒロインだと思ってる! ……シャルティアの想いに応えるかどうかは、モモンガさんに任せる!! ……あ、あと最後に一つ。……リア充末永く永遠に爆発しろ!!!」
ぺロロンチーノは彼らしい言葉と共に。エロゲオタクらしい祝福の言葉を残してここを去っていった。
「あの姉弟は最後まで騒がしいですね。……さて。私ももう消えるようですね。モモンガさんに託したい言葉はたくさんありますが、全部伝えている時間もないようですので。この言葉だけを残していきます。モモンガさんが抱いてくれた弱者救済の夢。必ず叶えてください。リアルでは何も出来なかった私の代わりに。……多くの人に希望を見せてあげてくれますよね?」
弱きを助け強きを挫く。そんな想いを抱きながらも、社会構造ゆえに叶わなかった正義に憧れた警察官。かつての自分が抱いていた夢。それに憧れてくれた人がいた事に笑いながら、たっち・みーもサトルの夢から泡となり消え去った。
「……最後まで残ったのは俺か」
「ウルベルトさん……」
山羊頭の悪魔。彼の姿も徐々に消えていきつつある。その事に「もうちょっとだけモモンガさんと話をしたかったんだけどなー」と名残惜しそうにしている。
「……ウルベルトさん。俺は貴方のおかげで───」
「はいはい。そう言う湿っぽいのは禁止。それにアイリスの事なら、俺に言ってもあんまりねぇ……ここにいる俺はあくまでも『別の可能性』の俺であって、アイリスにあった俺じゃない。だからその言葉は、俺じゃなくてアイリスを助けた俺にでも伝えてください」
どこか拒絶するような言葉を吐くウルベルトだが、その意図は十分にサトルに伝わる。彼がウルベルトであるからこそ、その言葉はちゃんと伝えるべき人に伝えろと。そう言っているのだ。
「───分かりました。もし……いつかまた俺が知っているウルベルトさんに会えたら。たくさんの感謝の言葉を贈ります」
「そうしてください。……と。俺も流石に消えるようですね。それじゃあな、モモンガさん。……モモンガさん!」
「なんですか?」
「───モモンガさんは今! 幸福か!! 孤独や寂しさはもうありませんか!?」
その言葉に……サトルが返す言葉など。決まっている。
「───ええ! 俺はもう……独りきりじゃない!! 過剰すぎるくらいに───幸せです!!!」
サトルはウルベルトが消える直前。心からの言葉を彼に贈る。それを聞いたウルベルトは、山羊の口元をにやりと笑わせて。満足気にこの場から消えていった。
……円卓の間は既に消え去った。残っているサトルにしても、体の7割近くが消えている。今日見た夢は本当に夢でしかない。アイリスに頼めばもう一度は見れるかもしれない。でも……それをする気はサトルにはない。
そう……夢は夢でしかないのだ。いくら懐かしいからと言って、せがんで何度も見る物じゃない。現実のサトルには、今の生活が待っているのだ。ナザリックの皆がいて……アイリスが隣にいる生活。それがあるのだから……今日の出来事はやはり同窓会のようなもの。
ゆえにサトルが考えることは一つだけだ。今日見た可能性の夢。それと『世界意思』の事。それをアイリスに伝えたら……彼女は驚いてくれるだろうか。
そう考えるサトルも完全にこの夢の世界から消えて……現実へと戻っていくのだった。
世界意思:無限に攻撃力が上がっていく世界級アイテム。アイリスの場合生きている限り、全能力が際限なく上昇する。スキルや魔法効果も無制限上昇。時間が経てば経つほど手が付けられなくなる