アンケートのご協力ありがとうございました
後書きに色々と書いています
産まれて来てから多くの経験を積んできた。
自嘲したように既に老体と言えるだけの年数をツアーは刻んできた。
もう驚くことなんて、この世に残っているとは思っていなかった。
「ば……くそぉ!!」
鎧と遮断されたのは完膚なきまでに破壊されたから。それを理解したツアーは、すぐさま普段寝ている台座から飛び立とうとする。
ツアーの鎧は始原の魔法製。本体の強さに比べれば劣るが、それでもあの鎧は真なる竜王でも、早々簡単には壊せない強さを持つ特別な鎧なのだ。
それをあっさりと鎧だった何かに変えてしまう手合いなんて、悪夢の産物に他ならない。
それだけではない。転移阻害が施されている自分の拠点に、転移してきたであろう謎の手札。いつの間にか潜り込んでいた異形種二人───片方は見ただけで分かる異形種で、もう片方のメイドは人間に見えるが、匂いが人間ではなくもっと獣臭い何か。だから異形種だと分かるが……分かるからこそ目で見るまで完全に認識出来ていなかった事実に、ツアーは歯噛みする。
ありえない事態に思考はまだ混乱しているが、それでも長年積み上げてきた経験は体を動かそうとしてくれる。
───相手の手札が全く読めない以上、とにかく距離を取る! 距離を取って始原の魔法で建物ごと……駄目だ! ここにはギルド武器がある。私の攻撃で壊れてしまったら、最悪だ!! くそぉ……くそぉおおおおおお!!
表には決して出さないが、内心でツアーは歯噛みする。自分の事を調べていた。それを告げられた時点で、鎧を捨ててでもギルド武器を持ってここを離れておくべきだったのだと後悔する。
そもそも……事前に調査をするなんて手間をかけるようなプレイヤーなのに、どこかで自分は侮っていなかったかとツアーは自問する。最後にはあの八人が味方同士で自滅したように……今回もどうにかなるだろうと。
ツアーの思考を知らぬ内に蝕んでいたのは認知バイアス。今までがなんとかなって来たのだから、今回の揺り返しもどうにかなるだろうと。
甘かった。自分の考えは甘かった。あの八人と同等かも知れないと、少しでも感じたなら。例え危険であろうとも、ギルド武器を素直に渡しておけば良かった。
結局交渉は決裂した上に、先に殴りかかったのはツアーの方だ。確かにアイリスは力づくで奪い取ると宣言はしたが、武装はまだしていなかった。先に撃ち戦端を開いたのはツアーであり……結果として決裂し攻撃を仕掛けた相手に、準備が終わらない内に拠点に乗り込まれてしまうと言う、挽回のしようもない失態を演じてしまった。
───く……ぐぅううう───ギルド武器は諦めるしかない。評議国も捨てる! あくまでも彼らに攻撃したのは私だけ。とにかく……今は逃げる! 態勢を整える! ここで下手に始原魔法を使えば、ギルド武器も巻き込まれて、国の民草にも被害が出かねない!
ツアーの部屋には、いつでも飛び立てるように穴が開いている。羽を動かし、そこから全速力で飛び立とうとし───
───動くな
どこかから声が聞こえた……ようにツアーには感じられた。実際には誰も口を開いてはいない。だがツアーには確かに聞こえて───
「───こ……か……」
まあいい。ただの錯覚だろうとツアーはその声を切り捨てて、すぐにでも飛び立とうとして……体がガチガチに緊張して動かなかった。
その現象を経験したのはツアーで二人目。一人目は既にこの世にいない。かつてクレマンティーヌの動きを制限したアイリスの技『威嚇』を、武技として更に強化した『威圧』による行動の強制停止だ。
『威嚇』だけであれば、ツアーならまだ対抗できたかもしれない。だが『威圧』はツアーですら縛り付けてしまう。
口すら満足に動かなくなったこの世界最強の竜王は、生涯で初めて自分の体がスタンさせられたことに目を白黒させる。
「ツアー。これが私たちの力です。……『威圧』を解除しますが、逃げたりはしないでください。まだ話したい事もありますし、別にあなたを傷つけるつもりもありません。……それでは解除します」
アイリスの言葉と同時に、ツアーの全身を縛り付けていた重圧のような何かが消えていく。
肺も満足に動くようになったツアーは、白金に輝く鱗を揺らして何度か深呼吸をする。生涯でここまで深い呼吸をした経験はツアーには殆どない。生まれつきの強者であり、体力にも優れる竜王なのだからそんな経験を積める機会の方が稀だ。
既に重圧はなく、飛び立とうと思えばいつでも飛び立てるが……ツアーにはそれをする気にはならない。全く原理が不明な何かで行動を封じられたのだ。その正体が分からない限り、もう一度同じように阻害される恐れの方が高い。そして傷つけないとNPC───アイリスは伝えてきたが、その言葉をどこまで信用していいのかツアーには判断しかねる。
下手に自分が逆らい、もう一度行動を止められたら。その時に攻撃されたら。……少なくとも鎧をあっさりと破壊する攻撃手段を持っている連中の前で、無防備に隙を晒し続ける羽目になった時に、無事でいられると思える程。ツアーは自分の防御力に自信があるわけではない。
癪ではあるが、ツアーはプレイヤーの要求に今は素直に従う事にした。
「アイリスの言葉に従ってくれた事に感謝しよう、ヴァイシオン殿」
「……………………」
サトルの言葉に、何が感謝だとツアーは返したいが。今は沈黙する。主導権は既に握られている。この状況で挑発なりを返す気はツアーにはない。だが何かをこのプレイヤーと話す気にもならない。とっととギルド武器でも持って、どこへなりと行って欲しい。
「随分と不機嫌そうだな」
「……鈴木悟。君は自分の家に乗り込まれて、ニコニコとした笑顔で敵対者を迎え入れられる手合いかい?」
我慢しようかと、ツアーは少し思ったが。不機嫌そうなのを分かっているだろうに、あえてそれを突きに来られたことで少し感情の蓋が決壊する。思わずといった感じで、ツアーの口から言葉が漏れた。
「難しいな。私であれば家に土足で踏み入られたとしたら……まぁ、殺しはしないが二度と同じことをしたいと思えない目には合わせるな」
「そうか。それなのに私にわざわざ不機嫌なのかどうかを問うか」
「問うたわけではない。事実を確認したまでだ……だが不機嫌と言うのであれば、私たちもまた怒りを抱いてもおかしくない立場なのは忘れてほしくはないな」
「……………………」
「困ったら沈黙で返そうとするのは止せ。口撃をしたのはこちらも同じだが、先に手を出したのはお前の方だぞ? それに対して本来であれば報復として、お前の心臓の一つや二つ止めてもいいところを、アイリスが言うように傷つけない。つまりは不問にすると約束したのだ」
「だから、感謝しろと?」
「そこまでは言わん。だがお互いに水に流す事は出来るだろうと言っているのだ。私はお前が先に手を出した件に関しては忘れる事にする」
「……私は住処に踏み入られたことを今回だけは我慢しろ、か。あんな風に───」
ツアーはぐしゃぐしゃになった白金の鎧を見る。
「私の自慢の鎧だったんだがね。あれをあそこまで粉々に出来るんだ。それなのに攻撃されたことを、そこまで根にもっているのか?」
「度合いの問題ではない。子供が行う怪我もしないような投石の報復に、矢を射かけ射殺する例すらあるんだ。確かに私は傷一つ負っていないが、だからと言ってお前の責が消えるわけではない」
「……そもそも君たちが私をあの草原に招かなければ、攻撃される事も無かったんじゃないかい?」
「確かに。だとしても……先に手を出した事実は消えんぞ」
ああいえばこう返すサトルに、ツアーは頭が痛くなってきた。これ以上この件でこのプレイヤーと話をしても、屁理屈を返されるだけのような気がしてきたので、ツアーは住居侵入に関しては忘れる事にした。それよりも───
「話を変えよう。……君たちはギルド武器を持って行くつもりか?」
「ああ、そうだ。鎧越しに伝えたように、私たちにはギルド武器が。あの剣が必要だからな」
サトルが指さす先。コキュートスがギルド武器に白い布を巻き、持ち上げている。もうすでに持って行く気満々のようだ。
「……私が反対しても持って行くのだろ? ならもう反対はしない。だが持って行くのであれば、約束は果たして欲しいね」
「約束? ……世界級アイテムの件か。いいだろう。本当なら交渉が決裂した時点で、その約束も反故にするところだが……それらは水に流すと言ったからな。アイリス! あれをツアーに」
「ラージャ! ……ツアー。ギルド武器を手放してくれる貴方に、これをお渡しします」
サトルの傍に佇んでいたアイリスが、アイテムボックスの中から何かを取り出す。それは天秤だ。片方の秤には鉛筆サイズの矛が、もう片方には消しゴムサイズの盾が乗っている。
それをツアーの前までアイリスは持って行く。
「これは?」
「これですか? これは『矛盾の天秤』という世界級アイテムです。両立しない筈の現象を両立させるという効果を秘めています」
「……まぁ、確かに。世界級アイテム独特の魔力を感じるから、本物なんだろうが。かなりあっさりと渡すんだね」
訝しむようにツアーは差し出された天秤を見る。強力無比な力の持ち主が多い『ユグドラシル』のプレイヤーにしても世界級アイテムは別格だと、200年前にとある人物にツアーは教えられている。
持っていないプレイヤーの方が遥かに多く、ギルド単位で見ても所持していないギルドの方が圧倒的に多い破格のマジックアイテム。
トップギルドであった『ユグドラシル』時代のアインズ・ウール・ゴウンにしても、最多の所持数を誇っていたが、それでも11個しか持っていなかった。
そんな事情まではツアーが知る由もないが、世界級アイテムは貴重だと理解している。だからこそギルド武器と引換の約束を守ってくれるとは、思ってもいなかったのだ。先ほどの約束を果たしてほしいと言う言葉も、言ってみただけだったのだが……そこまで考えたところで、一つの可能性にツアーは思い至る。
───私に世界級アイテムを渡しても、問題ないほどに保有している? もしそうだとすれば……もしではないな。確実にそうなのではないか? 私の事を私に関知させずに情報収集する手腕。どうやったのかは知らないが、ここに直接転移してきた方法。先ほどの動きを停止させられた謎の攻撃手段。鈴木悟……彼がギルド毎転移して来ていたとして……それは私の想像以上に強大だとしたら? ああ……最悪だ。本当に最悪だ……
ツアーは嫌な想像に頭を振る。八欲王の時ですら、ここまで強烈なストレスは感じなかった。「胃が痛いような気がする」と愚痴をこぼし始めてすらいる辺り、この短時間で相当気が滅入っているようだ。
「ツアー? あなたが何を考えているのかは何となく分かりますが。これを受け取って頂かないと、話が進まないのです」
「……そうだね。世界級アイテムが私の管理下に入るのであれば、なんでもいいか……ギルド武器があった場所にでも置いといてくれるかい……」
ポジティブと短く返答し、アイリスはコキュートス達のところまで走っていく。チョコマカと動く白銀の髪を、感情のない眼でツアーは追いかける。NPC……つまりはゴーレムのようなものだと、ツアーは認識しているが……「あんなのもいるんだね」と力なき言葉を吐き出す。
「……あんなのとはなんだ。あんなのとは。まさかお前……内心アイリスの事を馬鹿にしたか?」
「誤解しないでくれ。私が知っているNPC……はもっと君たちプレイヤーに忠誠を誓い、プレイヤー以外の言葉で動くことは少なかったんだ。少なくとも私が知るNPCは、プレイヤーのためにのみ存在していた。言葉一つでああも素直に動いてくれるとは思わなかったんだよ」
「……つまり……珍しいと言いたいのか?」
「そうなるね。何か他に意図があったわけじゃない」
「なら別にいいが……」
「……それよりも。君たちはギルド武器を手に入れたわけだが……まさか今からあの天空都市にいくつもりかい?」
「そうだが? 善は急げと言うだろう? これからエリュエンティウに行って、あの浮遊要塞を攻略するつもりだ」
サトルの言葉に対し、ツアーは難しい顔をする。なんとなくこのプレイヤーのギルドが強力なのは理解した。したが……やはり500年前の記憶からそう簡単にあの天空都市が墜とせるとは、到底思えない。だから彼は思わず訊いた。
「君たちはギルドでこの世界に来たのだろう? なら天空都市の攻略に、何人のプレイヤーと何人のNPCで挑むつもりかな?」
ツアーの質問にはいくつかの意図がある。一つはサトルとラナー以外にプレイヤーがいるのかどうかを確認するためだ。過去の事例からNPCとプレイヤーを比較した時、装備の質やNPCでは取得できない職業などの関係上、基本的にプレイヤーの方が強い。流石に取得可能な職業云々まではツアーも知らないが、かつてその身で戦った経験から、天空都市のNPCレベルでも1対1ならなんとかなると確信している。
だから気をつけるべきなのはプレイヤーなのだ。彼らはNPCを超える戦闘力を有している。そんな危険な存在が何人いるのか。それを確かめるためだ。
そして二つ目に知りたいのも、同じく人数。NPCが何人いるのかだ。プレイヤーに劣るとは言え、それでも数と質によっては恐ろしい脅威になる。
つまるところツアーが知りたいのは、サトル達がどの程度の脅威なのか。どれくらいの規模なのか。それを確かめたいが故の質問だった。
鎧の時に聞いた限りでは、アイリスが30人の都市守護者と口にしたことから、天空城の戦力をサトル達も把握しているとツアーは確証を得ている。
ならば同一の人数か、それ以上の戦力を動かす筈だと確信した上での質問だったが───
「キルヴィス浮遊要塞に行くプレイヤーは私とラナー殿下だけだ。NPCはあそこにいる3人。アイリスとコキュートスとルプスレギナ。それとラナー殿下の護衛として、現地人のクライム君。この6人だけだ」
「………………………………はぁ?」
何言ってんだこいつ正気か。そんな空気を滲ませたツアー渾身の「はぁ?」だった。30人相手に6人で挑む。しかもプレイヤーは二人だけ。NPCも三名のみ。しかも弱者である現地人を参加させると言う暴挙。
ツアーでなくとも頭がおかしいと思う行動に他ならない。確かにプレイヤーは強力だ。現地の生命体とは別格の実力を有し、下手な竜王よりも上を行く戦闘能力を有している。
それこそ竜王を除けば誰も相手にならない場合が殆どだ。それこそ本気でやれば人間国家全てを単独で敵に回したとて、勝ち得る強者が極まったプレイヤーなのだ。
だがそれは現地の脆弱な生物を敵にした場合であって、同じユグドラシル出身の都市守護者達を相手にするならば1対1でも本腰を入れる必要がある。2対1になれば勝率は更に下がり、3対1となれば殆ど勝ち目はない。
言ってしまえばサトルのやろうとしていることは、プレイヤー視点で見ても無謀な行為に他ならない。ましてや現地生物……それも脆弱な人間種まで連れて行こうとしている。
だから思わず、ツアーは語気を強めて制止しようとした。
「正気じゃない! 君たちのギルドには他に戦力がいないのか!?」
「他に戦力? いるにはいるが、みんな忙しくてな。私が来てくれと頼めば集まるだろうが……別段そんなに頭数を揃える必要性を感じないから、やっぱりこの6人だけで十分だ」
「鈴木悟、君のやろうとしていることは自殺行為だ! ……別に君たちが勝手に死にに行くのであれば、それは君たちの勝手だ。けれど……ギルド武器を持って行ってまで自殺をする? 何を考えている! 確かに……君たちは私を簡単に止められるほどの強者なのかもしれない。それでも相手は私と1対1でも互角に戦いかねないNPCだ。……君たちの自殺にこの世界の生命を巻き込まないでくれ。ギルド武器が彼女らに渡ったら……もう誰にも止められない。その責任をどうやって取るつもりだ? ───ましてや王国の若い人間まで巻き込んで……」
君たちプレイヤーはどうして……そんななんだ。ツア―は顔を下げて悲嘆に暮れる。ここで実力で止めようにも、先ほどの『威圧』を出されたらツアーにはどうしようもない。もしかしたら自分を止めた『威圧』とやらを使えば、都市守護者も止められるのかもしれないが……そんな不確実にこの世界の命運を委ねる気にはなれない。
実力では止められない。だから懇願するようにツアーは言葉を搾りだす。今は上手く回っているのだから。どうかやめてくれと。
その言葉を聞いたサトルはと言うと───
(そう言われてもな。事前に調査した情報に間違いが無ければ、俺一人でも無傷でなんとかなるし……なんならアイリス曰く、クライム君単体でも時間はかかるけど全員切り捨てられるらしいんだよな。それをツアーに伝えたとしても……言葉だけじゃ信じてはくれないか)
……サトルたちアインズ・ウール・ゴウンの事情からすると、ツアーの絶望染みた杞憂は正直なところ、ただの心配性でしかない。きちんと戦力分析をし、確実に勝てる戦力を用意した上でギルド攻略戦に挑もうとしているのだ。
(最悪俺たちの事前調査が甘くて、天空城のNPCが全員アーティファクトで世界級エネミー化していたとしても……こっちにはアイリスがいる)
サトルは『矛盾の天秤』を置いた後、ギルド武器をインベントリに収納しているアイリスを見る。
彼女がこちらにいる限り、まず負けはない。ゲーム時代よりも大幅に戦力を増したナザリックだが、その戦力の内割合で言えば、限りなく100%に近い99%をアイリスが単独で占めている。
もしアイリスが負けるならば、その時は素直に敗北を受け入れようとサトルは決めている。彼女で駄目なら、もうナザリックに出来る事はない。とは言え、それをツアーに説明するわけにはいかない。ワールドスキルの事は、サトルとアイリスだけの秘密なのだ。
しかしこの心配性な竜王をこのまま放置していくのも、サトルとしては気が引ける。彼をこちらの事情に巻き込んだのは間違いなくサトル達の意思であり……また彼も存在Xの被害者だからだ。
自分の父親が『ユグドラシル』からプレイヤーを招集したと思い込まされている、記憶を操作されたドラゴン。それがナザリックから見た白金の竜王の姿だった。
ある意味責任感の強いドラゴン。それがツアーだ。そんな彼をここに残しても、やきもきしてしまうだろうとサトルは想い、彼に一つの提案をする。
「ヴァイシオン殿もついて来たらどうだ?」
「は?」
「私たちが負けるかもと、心配なのだろう? ならば直接見に来ればいい」
「……私が都市守護者に恨まれているのは存じているかい?」
「ああ。だがヴァイシオン殿が懸念しているように、我々が倒れればどちらにしろ、恨みを買っている貴殿は命を狙われるはずだ。ならばこんなところで気を揉んでいるよりは、自分の目で直接確かめに来ればいい」
その言葉にツアーは考える。普段であれば、鎧を操作し付いて行っただろう。だが鎧は破壊されてしまい、その手段はとれない。別の拠点にいけば予備品があるが……そもそも意味がないかとツアーは考え直す。
本体である竜の自分が動かず、遠隔操作で鎧を動かしていたのはギルド武器の件があったからだ。それが持っていかれる以上、手間をかけて鎧を動かす意味が殆どなくなる。
鎧は使い方次第でプレイヤーの戦力調査に使えなくもないが、今回来たプレイヤーであるサトルには既に手の内を全て暴かれている。ならば最低でも百年は鎧を動かす意味がツアーには無くなってしまった。
だから「はぁ……」と再度人間臭い溜息をツアーは吐いた後───
「その申し出を受けよう。非常に不本意だが……君たちの自殺になんて付き合いたくもないが。世界の守護者として……この世の終わりを見届けに行こうか」
最悪、自分の『大爆発』にこのプレイヤー達と都市守護者を巻き込んで、少しでも数を減らそうと心に決めて。ツアーはサトルの提案に乗る事にした。
……そうして。サトルを筆頭に。ギルド武器を自分のインベントリに収めたアイリス。GVGにやる気を出しているコキュートス。アイリスの頭を捏ねくりまわしているルプスレギナ。ツアーとサトルが丁々発止のやり取りをしている間、ツアーが発した殺気の後遺症に泣いていたラナー。そんな彼女をお姫様抱っこして、よしよししていたクライム。竜の顔を仏頂面にして、これでもかと不満ですとオーラを放つツアー。
計7名は<転移門>を開き。かつて八欲王が作り上げた大国家の首都にして、八欲王無き後唯一残った都市『エリュエンティウ』へと一歩を踏み出した。
アンケート結果からステータス記載&天空城攻略戦の際の世界級エネミーパワー初お披露目はコキュートスに決定
出番が多くチート過ぎるアイリスは低いだろうと予測していたけど、コキュートスがサトルを追い抜くとは……4期のブレイン相手の武人ムーブとか格好いいものね
ステータス記載は僅かに見てみたいが多かったので下記に示す(サトルのステータスは別の機会に)
現時点のアイリスのステータス
通常時(左の数値はプロローグ3のステータス)
Lv100
HP:55→20,000
MP:100→800,000
攻撃:5→1,200
防御:36→1,200
素早:100→1,200
魔攻:11→1,200
魔防:94→1,200
総耐:98→1,200
特殊:100→1,200
ワールドスキル時に必要な数値の単位:万、億、兆、垓、秭、穣(10^28)、溝(10^32)
ワールドスキル発動時(横の括弧内はパッシブスキルをONにした時の数値)
Lv3333
HP:640,000(500穣)
MP:2560万(2溝)
攻撃:38,400(30穣)
防御:38,400(30穣)
素早:38,400(30穣)
魔攻:38,400(30穣)
魔防:38,400(30穣)
総耐:38,400(30穣)
特殊:38,400(30穣)
Q:なんでこんな数値に?
A:パッシブの仕様が累乗計算になってるせい(世界級一体に付きn倍ブースト。それが32体分なのでnの32乗されてる)
Q:このステータスで魔法とか撃ったらどうなるの?
A:天体制圧用最終兵器になる。IFルートの時は存在Xを欺き誤認させるためにパッシブはオフにしてた
Q:まだ上がるの?
A:世界意思でまだまだ上がる。現時点でも魔法・アクティブスキル・装備によるブーストが残ってる。それらが適用されると単位に恒河沙や那由他、無量大数が必要になる
Q:サトルはこの仕様を知ってる?
A:知ってる。知ってるからワールドスキルさえ秘匿すればいいやって楽観的になった。これが負けるなら何しても負けるだろの精神