遠出の準備を整えた、アダマンタイト級チーム『蒼の薔薇』。
準備を終えた頃には既に日が暮れていた為、王都で一夜を過ごした後城塞都市への移動を開始した。
イビルアイは転移魔法を使えるのだが、その移動先にエ・ランテルは登録されていない。そのため魔法を使わない普通の方法での移動である。
ちょうど王都を発ち、エ・ランテルに向かうと言う行商人が居たので護衛がてら便乗しての旅となった。
行商人と言うには過剰に立派な荷馬車であり、貴族が使ってもおかしくないような高品質の馬車での移動は『蒼の薔薇』にとっても快適だった。ただ行商人なのでエ・ランテルに行くまでの途中、商いを行ったため通常1週間もあれば王都からエ・ランテルに付くところを、倍近い時間がかかったのは少し難点ではあったが。
しかしその時間を考慮しても、旅馬車代わりとしては非常に心地よい時間ではあった。
「お嬢ちゃんら。エ・ランテルが見えてきましたぜ」
行商人の声に、アンデッドであるイビルアイと見張り役のティナを除いて眠りこけていた『蒼の薔薇』が眼を覚ます。
「ふわぁ……ようやくエ・ランテルに着いたか。揺れもなく快適ではあったが、移動時間だけはどうにかなんねえもんかねぇ」
「ふっ、安心しろガガーラン。今回移動先に登録しておくから、今後は私の転移で簡単にこられるようになるさ」
「そいつは助かるぜ。イビルアイちゃん様々ってところだな」
「そうね……でも今回の旅は、立派な馬車で良かったわね。こんなマジックアイテムの馬車なんて、貴族でもそうはお目にかかれないわ」
「おっ? ラキュースの嬢ちゃんにはこの荷馬車の良さが分かるかい?」
ラキュース達の会話が聞こえていたのか、行商人が御者席から振り返り話しかけてくる。
「ええ。私も何度か貴族令嬢として馬車に乗った事はあるけれど、これだけしっかりとした馬車はありませんもの」
「ほぇえ……ラキュースちゃんは貴族の御令嬢様だったのかい。ご貴族様なのに、アダマンタイトのプレートを掲げてる。大した女傑がいたもんだ」
「そんな。よしてください
「へへ、ラキュースちゃんみてえな別嬪さんに褒められると照れくせえな」
行商人───ヤルダバオトと呼ばれた長い耳を持つ男が、自分の鼻を擦りながら口調とは裏腹に自慢げな顔をする。エルフのような耳を持つ亜人で、日焼けした肌に黒髪のオールバック。盲目になってしまった目に代わり、宝石のような義眼を嵌め込んだ人風変わった男だった。
「いやぁ、実際大したもんだと思うぜ? この辺りで流れの亜人種が商いをするなんて、苦労も多いだろうしよ」
「まっ、あっしはめげず折れず、足を運ぶぐらいが関の山なんでね。商売なんざ、基本苦労しかありやしません。……それよりもお嬢さん方は、エ・ランテルに付いたら冒険者組合にすぐいくんでしょ? もうすぐ検問所ですし、手荷物などを今の内に纏めてくださいや」
「そうね、そうしましょうか。……ほら、みんな支度するわよ。ティアも
「……離れたくない」
「至福の時間を壊さないで。こんなショタ、二度と巡り合えない」
双子の忍者は別れが惜しいと、小さなダークエルフ二人に引っ付いて離れようとはしない。彼女らの趣味嗜好にこれ以上なく嵌ってしまう逸材に、巡り合えた奇跡にティアとティナはいるかどうかも分からない神に祈りを捧げていた。
そもそもこの行商人の護衛をしようと言い出したのは、この二人だった。まだ幼い見た目をしているダークエルフの事が、よほど気に入ってしまっているようだ。
レズビアンとショタコンにガシッと掴まれたダークエルフの姉弟は、もはやこの双子忍者の奇行に慣れたのかされるがままだ。諦めたと言っても良い。
検問所まで来た『蒼の薔薇』。彼女らは身分証として、いつものようにアダマンタイトのプレートを衛兵に見せる。こうすれば大体の都市で顔パスで通れるのだ。そしてあの『蒼の薔薇』かと驚かれたりする。
王国にちょっと前まで二組しかいなかった、アダマンタイト級冒険者の知名度とはそれほどなのだが───
「この人たちって……」
「アダマンタイト冒険者……女性ばっかりって事は『蒼の薔薇』か。念のために、名前などをお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「ん?」
『蒼の薔薇』全員がなんかおかしいなと感じた。いやに衛兵の反応が薄いのだ。もし言葉にすれば「ふぅん。アダマンタイト冒険者なんだ」ぐらいに手応えがない。久しぶりに尋ねる都市であれば諸手を上げて歓迎されて、初めて訪れる都市であっても『蒼の薔薇』となれば熱烈に迎えられる。
仮に王国ではなく、帝国の都市であっても街を歩けば「おい、あのプレート見ろよ」などと言われたりするのがアダマンタイトなのだが───
「確かに『蒼の薔薇』の皆様ですね。ようこそ、エ・ランテルへ」
まるで普通の冒険者に接するぐらいの態度を衛兵達は見せる。それにちょっとだけティアとティナは不満そうだ。
「……すごく淡泊」
「もう少し驚いてくれてもいい」
「こら。やめなさい二人とも」
ボソッと双子は不平を漏らすが、ラキュースに窘められる。幸い衛兵には聞こえていなかったのか、彼らは特に反応せず───
「『蒼の薔薇』の皆様は、エ・ランテルに訪れるのは久しぶりですよね」
「はい。王都での依頼をこなすのに忙しくて、あまりこの辺りに来る機会もありませんので」
「では冒険者組合に顔を出されましたら、一度城壁外に出て正門とは反対方向に行ってみると面白いですよ」
「面白い? この都市の外に、なんか観光地でも出来たのかよ」
「そうなんですよ。この都市ぐらいでしか見れない、凄い観光スポットが最近できたんです」
「ほう? その凄いスポットとやらは、どんな場所なんだ」
「それは実物を見てからのお楽しみってやつですね。ただ何も聞かずに見た方が、絶対に驚けるので、それに関しては人に聞いたりせずに自分の目で見るのをお勧めしますよ」
衛兵の言葉に「面白いねえ?」と思いつつも、絶対に凄いですからと念押しされた『蒼の薔薇』の一同は組合に顔を出しラナーを探して顔を拝んだら、その観光名所とやらを見る事にした。
「それじゃあ、ありがとうございましたヤルダバオトさん。貴方の馬車のおかげで快適な旅を過ごせました」
「こっちこそ護衛を買って出てくれて、ありがとな。病気だって言うお友達にも、よろしく言っておいてくれや」
同じく検問所で手荷物検査を受けたヤルダバオトと別れた『蒼の薔薇』は、5人仲良く冒険者組合を目指していく。その後ろ姿が見えなくなったところで───
「アウラ。マーレ。二人ともご苦労様。あの双子の相手は疲れただろ? 今日はモモンガ様や義妹の所で、ゆっくりと英気を養いなさい」
「……なんなのあいつら……人間がどうとか関係なく、普通初対面の相手にあんなべたべたくっ付く? 常識がないよ、あの忍者女……」
「ぼく……つかれました。ぐちゃってやらないようちからをかげんするのにつかれました……」
2週間もの間、厄介な双子に懐かれていたダークエルフの双子───アウラとマーレはとてもぐったりとしている。敵意や害意であれば遠慮なく叩き潰す二人だが、一応、ギリギリ、多分好意から出た行動にうざったいと感じつつも、死んだ目でティアとティナに好きにさせていた。
荷台で伸びている姉弟を本当に心配そうに見つめるヤルダバオト───と名乗っているデミウルゴス。今度あの双子忍者が同じ要求をしてきたら、『支配の呪言』を使おうと心に決める。流石に義妹も何も言わないだろう。
「……デミウルゴスこそ、良くあのキャラを続けられるね。一人称あっしとか似合ってないよ」
「……この路線は義妹やモモンガ様と話し合った結果、決まってしまったものでしてね。そうそう変えるわけにもいかないのだよ」
「……な、なんで? そんな似合わない路線に、に、なったんですか?」
「………………一度私の考える最高の商人像を演じたらですね」
「演じたら?」
「…………率直な意見をお願いしますと伝えたら、モモンガ様に『胡散臭い商材を売りつける詐欺師みたい』と」
「……………………」
アウラとマーレが沈黙する。何も言えなかった。
「義妹からは『ニコニコ笑顔で近づき柔和な言葉使いを使う眼鏡をかけた人間は胡散臭いと言う共通認識があるのですよ』と。ふふふ……なんでもウルベルト様が私を御創りになられる前。デザインを見た御方達の第一声は『裏切りそう』だったらしいですよ。ふふふふふふ───」
階層守護者随一の忠臣デミウルゴス。ゲーム時代、1500人の大討伐隊に映像を撮られ、拡散された際に付けられた彼の非公式名称は『アインズ・ウール・ゴウンの絶対裏切るNPC』。
その話をサトルから懐かしそうに聞かされて、彼は心の中でちょびっと泣いたらしい。泣いた後サトルと二人きりで晩酌を出来たので、結果オーライではあったとか。
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冒険者である以上、依頼を受ける場合は組合に顔を出す必要がある。ラキュース達は依頼のためではなく、あくまでもラナーの見舞いのために来ただけ。だが大体の都市には白金級やミスリル級では手に余る、オリハルコン以上でないと解決できないような塩漬けになっている案件がいくつかあったりする。
ラキュース達が知る限りでは、エ・ランテルの冒険者の最高位はミスリルだ。だからラナーの見舞いついでに、そう言った案件を片付けようと顔を出した。
『蒼の薔薇』が組合に入ると、幾人かがそちらを振り返る。彼らの目に入るのはアダマンタイトのプレート。この都市最高である筈のミスリルを超える、最上位の冒険者の証。通常この手のオリハルコン以上がいない都市では、アダマンタイトが来たとなれば確実に注目を浴びる。ラキュースにしろガガーランにしろ……イビルアイや双子の忍者にしろ、その手の反応には慣れている。ざわつく空気、おいあつらってまさか。そんな反応には慣れている。
だからそれには慣れていなかった。アダマンタイトのプレートを見て、彼女らの顔を見た面々がまるで興味がなさそうに依頼の吟味や受付嬢との会話に戻っていく光景には全く慣れていない。
若干面食らう『蒼の薔薇』の一同。わざとそうしているのではなく、本当に微塵も興味がなさそうな反応など初めてだった。
「……なんだろうな。私たちのプレートが偽物だとでも思われているのだろうか」
イビルアイは組合内のそっけなさに、そんな言葉を漏らしてしまう。しかしそんなわけがないとも思ってはいる。冒険者組合に偽物のプレートを付けて出てくる奴がいたら、そいつは只の阿呆だ。
「何かがあったのかしら?」
「さあなあ……まっ、別に歓迎ムードにして欲しいって訳じゃねえし、気を取り直して受付に行こうぜ」
ガガーランが率先して受付嬢の元へと歩いていく。それを見た一同は気を取り直し、彼女のあとに続く。
「よお。久しぶりだな。元気にしてたか?」
「あっ、ガガーランさん。お久しぶりですね」
ガガーランの知り合いなのか、何か書き物をしていた受付嬢が顔を上げる。
「エ・ランテルまで来られて、どうされたのですか。何かの依頼でしょうか?」
「依頼じゃねえな。ラキュースの個人的な用事だ。そのついでに組合によってみたんだが……なんか分かんねえが、ここは雰囲気が随分変わったな」
ここと組合を指さすガガーラン。彼女が言うように、エ・ランテルの冒険者組合の雰囲気はなんと言うか、随分と変化している。例えばそれはアダマンタイト冒険者の『蒼の薔薇』が入って来ても反応が薄いだとか。そう言った分かりやすい変化から、なんとなく組合自体の空気が緩くなっているとガガーランは感じていたのだ。
「変わったのは組合だけじゃねえな。城壁の衛兵も街を歩く衛兵も、なんつうか───」
「ピリピリしていない。この城塞都市が規模の割に治安が良いのは知っているが、それでも犯罪などはどこの都市でもある。だがこの都市には、その手の治安を乱すような、ある種の刺々しい空気が薄いんだ」
ガガーランの言葉をイビルアイが引き継ぐ。彼女の言葉に同意するのか、ティアとティナも首を縦に振っている。
「治安が良くなった……多分『黄昏』や『漆黒の剣』の方々のおかげだと思います」
その原因に思い当たるところがあるのか、受付嬢が二つの名前を口にする。
「『黄昏』に『漆黒の剣』? ……名前からして冒険者チームだとは思うが、聞いたこともねえな。お前らはなんか知ってるか?」
「うーん……聞いたことはないわ」
「左に同じ」
「右に同じ」
「知らん」
「あっ、知らないのは無理ないと思います。『黄昏』の方々は冒険者になってから、まだ2ヶ月も経っていませんし、『漆黒の剣』も一月ほど前までは銀級冒険者チームでしたから」
「素人の冒険者チームに、銀級の冒険者チーム?」
ますます良く分からないとガガーランは不思議に思う。治安が良くなったことと、どこにでもいそうな駆け出しに、『蒼の薔薇』から見てまだまだひよっこの銀級チームが常識からしたら結びつかないからだ。
「二チームは、この都市から生まれたアダマンタイト級冒険者なんです」
「……………………はぁ?」
いきなり訳が分からない単語が出て来て、ガガーランは思わず顔をしかめてしまう。それは彼女だけではない。他の面々も同じなのか、仮面で顔が見えないイビルアイ以外は情報と情報が繋がらないのか、困惑気味だ。イビルアイにしても、仮面の下で受付嬢に疑問の目を向けている。
「待て待て待て! かたやまだ駆け出しで、片方は銀級だったんだよな! なんでそれがアダマンタイトになってんだよ!!」
「………………箔付けのために、アダマンタイトを名乗らせているんじゃないだろうな?」
イビルアイが低い声を出す。彼女が疑ったのは、エ・ランテルの組合が自分のところからアダマンタイトを輩出したと宣伝するために、陰謀を企んだのではないかだ。長い間、エ・ランテルが街の規模の割に、オリハルコンも出てきていなかったのは冒険者の間では有名な話。だから、箔付けのために組合がバレないと思って愚かな真似をしたのではないかとイビルアイは疑ったのだが───
「おい! あんま受付の姉さんを困らせるんじゃねえよ!」
話が聞こえていたのか、依頼掲示板の前にいた白金のプレートを首にぶら下げた冒険者が口を挟んでくる。
「あんたら『蒼の薔薇』だろ。『黄昏』や『漆黒の剣』を疑ってるみたいだが、外の観光スポットを見てねえのか?」
「あん? ……門番がそういや、城壁の外に新しく名所が出来たとか言ってたが、それがどうしたんだよ?」
「そうか。まだ見てねえのか。……なら疑うのも無理はねえのか……」
「おい! 何を一人で納得している! ちゃんと説明をしろ説明を!!」
「……その観光スポットってのは最近できたやつでな。『黄昏』が討伐した難度250の大魔樹の死骸と、それが盗まれないように守り手として配置された、『黄昏』が使役する難度300の竜2体と触れ合えるっつう名所になってんだよ」
『……………………』
『蒼の薔薇』全員が、掲示板の前にいる白金級冒険者の頭が急におかしくなったと思った。彼女らの感覚からすれば、いきなり小説の一部でも語りだしたのかと感じたのだ。……しかし別に冒険者の頭がおかしくなったわけではない。彼は真実しか喋っていない。
「あのドラゴン意外と優しいよな。普通に撫でさせてくれるし」
「でも魔樹を盗もうとしたら厳しいらしいぜ? この間イグヴァルジの奴が、グイベルにトブの大森林まで追いかけまわされたらしいし」
「あいつ馬鹿じゃねえの?」
「あんたならどっちの竜が好き? ドライグ? グイベル?」
「コキュートス様! 私をトロールから助けてくれたの!!!」
「……あんたに聞いた私が馬鹿だったよ」
その冒険者の言葉を皮切りに、組合中でその竜に関する雑談が始まったのだ。まるで自分達が異界にでも迷い込んだかのような錯覚を『蒼の薔薇』は覚える。
「おい……おい……マジの話なのかよ」
「……嘘でしょ……難度250の魔樹に300の竜なんて……」
「300……ツアー級の竜を………………2体使役!?」
「ありえない…………」
「……みんなで担いでる」
……『蒼の薔薇』は声を絞り出すが、組合の雰囲気は嘘をついているそれではない。ただ日常の話をしているだけの緩い空気。……『黄昏』がこの街に誕生してから、彼らの間では難度300とは日常の中に出てくる存在でしか無くなっていた。
「そいつらは……私たちより強い……のか?」
ガガーランは思わず、そう声を出してしまう。それを聞いていた受付嬢が簡潔に答えてくれる。
「ガガーランさんには悪いんですけど、相手にもならないと思います」
「……即答……するほどかよ……」
「おい! お前は受付嬢でしかないだろ! なんでそこまで断言できる!!」
「ええと……一度だけ『黄昏』のアイリスさんとコキュートスさんの御業を目撃する機会があったので。あれを見たら、ガガーランさんの方が上とはとても……」
「そんなに違うと分かるほどの御業だったの?」
「うーん……ガガーランさんはその背中の大槌が武器ですよね? それを振るって、この組合の建物を一撃で崩せますか?」
「……『黄昏』のアイリスとコキュートスってのはそれが出来るのかよ……」
「はい。この建物より大きく、アダマンタイトよりも遥かに硬い魔樹の死骸を戦斧で真っ二つにされていました。それに私が一度冗談で『アイリスさんならエ・ランテルを一人で更地に出来そうだね』って言ったら……『ポジティブ。1分かからないですよ』って……」
受付嬢の発言に、ラキュース達の顔が引きつる。都市を一分かからず更地に出来る。それは流石に嘘だろうが、組合より大きな魔樹を真っ二つにしてみせるなど人間技ではない。面々の中で一番最強であるイビルアイでも絶対に無理だ。
……仮にイビルアイが知る最強の存在。ツアーであればできるだろうかと彼女は考える。答えは多分出来る。あの竜王はそれだけ絶大な存在なのだ。……逆に言えば。イビルアイは多分と考えてしまった。それだけ建物よりも巨大なモンスターを一刀両断など、普通ではありえない所業。
「……その功績で駆け出しから、一気にアダマンタイトに昇格って事かよ」
「それだけ。それだけ刺激が強かったのでしょうね」
「後でその観光スポットやらを見に行くしかないな。魔樹の死骸とやらを、この目で見てみたい」
ただラナーの見舞いついでに、来ただけの都市。そこでは想像を絶するような怪物達が誕生していたと言う事実に、『蒼の薔薇』が驚愕しているところに───
「ん? この空気……何かあったのか?」
新たな来訪者が組合へと現れた。
「本当ですね? 何かあったのでしょうか」
「おー……おっ? あそこにいるのって」
「アダマンタイトのプレート。それと女性ばかりと言うことは……」
「『蒼の薔薇』の方々ですね。エ・ランテルに何か用でもあったのでしょうか」
組合に現れたのは『黄昏』とは別のアダマンタイト級冒険者チーム『漆黒の剣』だった。
「あっ、ペテルさんにセリーシアさん。ダインさんに、ルクルットさん。それに
「ああ。セリーシアが刻印<
「良いじゃねえか。楽できるなら楽するに越したことはねえ」
「ま、確かにな」
受付嬢に話しかける男は、ほっそりとしているがシャツから出ている腕は鋼糸で編まれたかのように引き締まり、戦う事だけを念頭に置いた素晴らしい体つきをしている。
ぼさぼさの髪の毛に、無精髭。腰には刀をぶら下げ、チェインシャツを着こんだ彼の名はブレイン・アングラウス。つい最近『漆黒の剣』に加入した前衛戦士だ。
その名前に聞き覚えがあったガガーランは、思わず声を張り上げる。
「ブレイン…お前ブレイン・アングラウスか! あのガゼフのおっさんと御前試合で死闘を繰り広げた!?」
「そういうあんたは、見たところ『蒼の薔薇』のガガーランだな。王都のアダマンタイト級冒険者が、エ・ランテルで何してんだ?」
「そりゃこっちの台詞だ! あの御前試合の後、行方をくらましたお前がなんでこんなとこで冒険者なんかやってんだよ!!」
「……色々とあってな。色んなところを転々としてたんだが……師匠や大師匠との約束を守るために、『漆黒の剣』を紹介して貰ったんだ」
「はぁ? ガゼフのおっさんと互角に戦えるお前に師匠?」
「何かおかしいか?」
純粋に首を傾げるブレインにガガーランは言葉に詰まる。まるで師匠がいる事が当然のように語る彼。その瞳に少し押されたのだ。
「っとすまない。ペテルにセリーシアもダインもルクルットもすまんな。この後師匠に稽古をつけて貰う約束なんだ。悪いが先に帰らせて貰う」
「ええ、お気をつけて」
「アイリスさんによろしく言っておいてください」
アイリス。その言葉にイビルアイが反応する。その名前は先ほど『黄昏』のメンバーとして出てきた名前で───
「お、おい! ブレイン・アングラウス! お前の師匠とやらは、『黄昏』のアイリスなのか!?」
「? それは大師匠の方だな。……まずいな、本当に時間がない。師匠は大師匠以上に時間に厳しいからな。遅れたらどやされちまう」
イビルアイの質問に答えを返し。再度彼女が呼び止める前に、ブレインは冒険者組合を後にするのだった。
個人的にリスタート4が一番書いてて楽しい
デミ&アウラ&マーレ:東ゲヘナ貿易会社組。各地を転々と回りながら八本指拠点潰し班。一番能動的に動くグループなので、万が一を考慮して世界級3名で組む
ブレイン:ようやく御登場。彼がなんでこんな事になっているのかはいつもの時間巻き戻しで語る予定