モモンガ様リスタート   作:リセット

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私はアイリス/クライム

 黄金の戦士はひどく困惑していた。とても困っていると言ってもいい。

 

 彼が困っている原因は、目の前にいる仮面をかぶった少女。

 

 懐かしい顔……顔と言っても仮面を被っているせいで素顔は一度も見た事はないが、少年だった頃の自分が憧れ追いかけた理想像の一つ。才能がないと諦めたらいいところを、それでもと追いかけ続けた英雄の一人。

 

 目の前の少女に何度も言われた。お前は才能がないのだから、もっと別の事をしろと。戦士は思う……あの頃の自分は強くなるために魔法を習得したいと願っていたはず。それで仮面の少女に教えを請いたいと願い出た事もあったが……返ってきた答えは才能がないからやめておけだった。

 

 それでも彼女が正しいと、少年時代の自分は納得していた。なにせ才能がないのは誰よりも自分が良く知っていたから。それに……目の前の少女───イビルアイはアダマンタイト級冒険者だった。憧れの戦士、ガガーランよりも遥かに強いイビルアイ。強者の側に立つ彼女が間違ったことを言う訳がないと。

 

 黄金の戦士───クライムは苦笑する。昔の自分は相手が強者だと言うだけで、疑いもなくよく人を信じた者だと。それだけ強さへの憧れが強かったのだろう。師匠であるアイリスはそれが美徳だと褒めてくれて、ラナーもその素朴さが良いと好んでくれたが……

 

 それは置いておこう。改めてクライムはイビルアイを見る。向こうからみれば、前に会ってから2ヶ月ぐらいしか経っていないだろうが、クライムからは6()()ぶりの再会となる。

 

 久しぶりに見たイビルアイをクライムは小さいと感じた。身長の話ではない……いや、確かに背丈も小さいとは感じる。王都にいた頃のクライムは周囲の男性と比べても低く、イビルアイに対してそんな事は思わなかったが……頭1個分大きくなった今。自分の鳩尾ぐらいまでしかない彼女に対してそんな風にも感じるが。

 

 それ以上に……小さく脆いと感じてしまった。触れれば壊れそうな体躯だと。自分が少しでも力を入れてしまったら、砕けてしまう薄いガラス細工。

 

 ……彼女だけではない。ラキュース。ガガーラン。双子忍者にクライムはあったことはないが、彼女達も人間基準では恐ろしい強者側の存在なのだろう。

 

 昔、ああなりたいと少年の自分は無邪気に彼女らを尊敬していた。ラキュースのような華やかさを。ガガーランのような逞しさを。身につけたいと願い、何度血豆が潰れようとも剣を振り続けた。

 

 そんな憧れが目の前にいて……クライムはとても脆弱だと感じてしまった。初めてあった時、クライムはガガーランに握手を求めた。それに気っ風の良い彼女は心よく応えてくれた。もし今。あの時のように握手をしようものなら。少しでも力加減を間違えれば。たちどころに手を握りつぶしてしまう。そんな不安が頭をよぎってしまう。

 

 クライムはだからと言って、『蒼の薔薇』に上から何かを語ったりしようと言う気にはならない。強さと人格は別物だ。そもそもクライムは自力で彼女達より強くなったわけではない。到達できる道を整えてくれた師匠の助力があってこそ、自分は強くなれたのだと戒めている。例えその道を歩いて見せたのが、彼の自力だとしても。クライムは一人では強くなれなかった。

 

 頑張れたのは憧れがいたから。それは例えばガゼフかもしれない。あるいはガガーランかもしれない。そしてラナーを守れるだけの絶対の戦士に……そんな明確なビジョンがあったからこそ、彼は歩けたのだ。そんな憧れだった人達に、どうして脆いなどと感じたのだとクライムは自戒する。そんな事ではラナーの隣にも、アイリスの弟子にも相応しくないだろと叱責する。この力は誰かのために……そしてラナーのために。それが最初の誓いなのだから。

 

 とはいえ……それでも少しだけクライムは寂しく思っている。英雄だと憧れた人達の背を遥か後ろに置き去りに、逸脱者を超え、超越者を超え、世界級に入門している彼は『蒼の薔薇』とは既に領域(ステージ)が違う。藍より出でて藍より青しではないが。師を超えてしまった弟子のような気分にクライムは浸り、どう話しかけようかと考えていたところで───

 

「お初にお目にかかります、『黄昏』のアイリス様。私は恐れ多くも、貴女様と同じアダマンタイト級冒険者を名乗らせて貰っている、『蒼の薔薇』のイビルアイと申します。以後、お見知りおきを」

「!!!?」

 

 イビルアイの壮大な独り劇場が始まった。多少ぎこちないが、淑女の礼をとる彼女に『蒼の薔薇』の面々がぽかんとした顔をしている。ラナーはイビルアイがどのような思考を辿ったのか考察し、顔が引き攣っていた。

 

 そんな中、モモンだけは「とんでもない勘違いをしていますね。まぁ、面白そうですし放置しますか」と一人優雅にコーヒーを啜っている。

 

「エ・ランテルに到着してから、御身の噂を多く耳にしました。最初はたった一人の人間がそんな御業を……そんな風にこの矮小な脳は疑ってしまいましたが、その黄金の鎧を一目見て確信しました。貴女様こそこの世の頂点に立つ御方だと」

 

 歯の浮くようなお世辞をすらすらと述べるイビルアイ。アイリスだと間違えられたクライムは慌てて訂正しようとし───

 

「その方が『黄昏』のアイリスさんなの?」

「おい、ラキュース! ちゃんと様をつけろ! 礼儀がなっていないぞ!!」

「いや、礼儀って。それはイビルアイが言っていい事じゃねえだろ。それにアイリスってのは女なんだろ? その鎧の人物は男だと俺は思うぜ。多分鈴木悟の方じゃねえか?」

「お、おい馬鹿。だから様をつけろと言ってるだろ! 良いから今回だけは私の忠告を受け入れろ! 頼むから!!」

 

 イビルアイは悲鳴に近い頼みをする。ここにいる全員を一秒かからずに殺せるであろう絶対者を呼び捨てにする仲間の態度に、彼女の神経は壊れかけ寸前だ。……世界級エネミー(モモン)がいる時点で一秒で殺すなど不可能であり、そもそもクライムにそんな事をする気は皆無だが。

 

 そんな事を知らないイビルアイはチラリとクライムを見る。彼女が見る限りでは最強の戦士は泰然とした態度であり、怒っているようには見えない。その事に安堵し、同時に納得する。自分達のような虫けらの態度など意にも介していないのだなと。

 

 ───指先ひとつで潰せる蟻に、本気で怒りを抱きはしないか。冷静とみるべきか理知的とみるべきか。それとも大して興味がないか……

 

 イビルアイは失礼な事を考えるが、クライムは自信満々な彼女の言動をどうやって修正すべきなのかを図りかねているだけだ。

 

「鈴木悟……アイリス様の夫である鈴木悟様は、魔法詠唱者だと組合の人間も言っていただろ。なら全身鎧はまずありえない。コキュートス……様は魔獣で、ルプスレギナ様は女性神官。なら残るのは前衛戦士らしい、アイリス様だけ。そうですよね! アイリス様!!」

 

 違う。びっくりするぐらい違う。全く違う。私はアイリス様じゃなくてクライムです。

 

 そうクライムは言いたいが、それを口にするとイビルアイの尊厳を傷つけてしまうと躊躇する。最近弟子にした……と言うか弟子になったある人物の稽古のために、この鎧を着ていたところに『蒼の薔薇』がラナーに会いに来たと聞いて、鎧も脱がず応接室に来たわけだが……それが仇となってしまった。それにいきなり顔を見せたら驚くかもしれないと配慮して、顔を隠し様子を伺ってから兜をとり実は私は……そんな風に考えていたのに───

 

「その通りですイビルアイ様。素晴らしい聡明さです」

「!!!!?」

 

 イビルアイの勘違いにラナーが便乗した。まさかの行動にクライムは兜の下で目を剥く。

 

『落ち着きなさいクライム。イビルアイに恥をかかせたくないのでしょ?』

『……そうです。ここで兜をとり、私がクライムだと宣言したら……イビルアイ様は羞恥に悶えてしまいます』

『ならここは彼女の勘違いを肯定し、後日に改めてあの時の黄金の戦士が私ですと言う方が良いわ。ここで正体を明かすよりも、時間をおいてからの方がイビルアイの精神衛生上よろしいわ』

『! た、確かに! それなら今すぐ明かすよりも、イビルアイ様も冷静になれます!』

 

 無詠唱<伝言>でのやり取りにクライムは活路を見出す。さすがは我が主だとクライムはその思考を首肯する。

 

『そうと決まれば。<集団伝言(マス・メッセージ)>。サトル様、アイリス様。聞こえますか?』

『どうしたですかラナー?こっちはそろそろお着換えや()()()の巻きがおわりますが……』

『実は───』

 

 ラナーはイビルアイがクライムの事をアイリスだと勘違いしていることを説明。それに便乗した事なども二人に伝える。

 

『……なんでそんな勘違いを?』

『……大体の想像はつくですが……ともあれ確かにその場でじゃじゃーん! するよりも後日にした方がメンタルダメージは弱くなるのです。人間……イビルアイは吸血姫ですが。時間をおいたら、あー、そんな事もあったねで済ませるのです。了解しました。それではアイリスはそちらに赴いたら───』

 

 即興でアイリスの新設定を創り上げて全員で共用する。応接室にはモモンもいると言うことで、彼にも<集団伝言>を繋げて全員で情報を共有。

 

 なおこの間にかかった時間は3秒。全員高速戦闘用の思考に切り替えての会議だった。

 

「ところでよ。クライムの奴はどこに行ったんだ? あいつが姫様の傍にいないなんて、珍しいじゃねえか」

「クライムなら、今は一人で自主鍛錬をしているわ」

「今は? てことは誰かに普段は見て貰っているってことか」

「はい。こちらにおられるアイリス様に稽古をつけて貰っているんです」

 

 全員がアイリスと言う事になったクライムに注目する。その視線にコクコクと頷くクライム。頷くだけで喋ろうとはしない黄金の戦士に、『蒼の薔薇』はちょっとだけ疑問を持つ。

 

 それにさも気づきましたと言わんばかりにラナーが少し合いの手を入れる。

 

「……実は今日のアイリス様は喉の調子が悪くて、あまり喋りたくないそうなんです」

「そうだったのか。……そいつはあんたの夫の魔法とかで治せねえのか?」

 

 フルフルとクライムは首を横に振る。どうやら彼は全てジェスチャーで済ませる方向で行くことにしたらしい。

 

「こんなとんでもねえ館に住んでる魔法詠唱者でも駄目なら、うちのリーダーの魔法でも駄目だろうな」

「いい加減にしろガガーラン! なんでそんな舐めた口が利けるんだお前は!!」

 

 どうやらアイリスはその強烈な威圧感とは裏腹に、かなり穏やかな性質なのかもしれないとイビルアイは思い始めていたが、それはそれとして神の如き王者に対しタメ口を叩くガガーランを思わず怒鳴りつけてしまう。

 

 しかし───

 

「─────────」

 

 イビルアイに対し手を突き出し大丈夫のジェスチャーをクライムは行う。

 

「お、怒ってはおられないのですか?」

 

 勿論と伝えるために首を縦に二回。

 

「た、タメ口でもよろしいのですか?」

 

 もう一度首を縦に二回。それを見て今度こそイビルアイは安堵する。

 

 それからサトルとアイリスが来るまでの間、ラナーを通じて『蒼の薔薇』はアイリスだと思っているクライムや久しぶりに再会したラナーとの話を始める。

 

「イビルアイから見て、アイリスってのはどれくらい強いんだ? あんなドラゴンを使役してるぐらいだし、相当やばいんだよな?」

 

 ガガーランの問いにイビルアイはクライムの方を見る。私がこの方を評価しても良いのだろうかと言う視線だ。それに気づいたのか「どうぞ」と手を差し出すクライム。それが了承のサインだと受取、イビルアイは口を開く。

 

「はっきり言うぞ。あまりにも高み過ぎて分からん。私の尺度では表記出来ない」

「……お前がそこまではっきり言うほどかよ」

「そうだ。私たちが水溜まりなら、この御方は海だ。とてもじゃないが、私では理解できない」

「イビルアイがこんな表現するの初めて見た」

「さっきまでのイビルアイは凄く怯えてた。とても可愛い」

「うるさい! しょうがないだろ! お前たちと違って、私は見るだけでそいつの強さが分かってしまうんだ! ここまで別格の戦士なんぞ初めて見たんだ。パニックになっても、仕方がないだろうが!!」

「うーん……あっ。と言うことは、モモンさんも、もしかして凄く強いんですか? そんな人の血を継いでいるんだから」

「いえいえ。私は義母上のように強くはありませんよ」

「そうなのですか?」

「……モモン……様の言っていることは事実だ。あー、アイリス様。これは悪口とかではありませんので、それだけはご了承ください。……私が見たところ、モモン様はミスリル級からオリハルコン級の冒険者ぐらいだ。普通の人間に比べると遥かに強いが、ガガーランにも劣るな。アイリス様の人知を超越したそれと比較すると、普通としか言えん」

 

 そんなもんなのかと『蒼の薔薇』は納得する。その会話をモモンは微笑ましそうに見つめている。この部屋で現在一番強いのはモモンなのだが、能力隠蔽を施されているせいでイビルアイには読み取れていない。

 

 ……この部屋の映像は監視システムで録画されており、現在進行形でイビルアイは黒歴史を製造していると気づかない。

 

「そんだけの戦士に直接稽古をつけて貰うなんざ、あの童貞も良い機会に恵まれたな。あの『漆黒の剣』も銀級からアダマンタイトになったんだから、案外クライムの奴もオリハルコン級相当ぐらいにはなってたりしてな」

 

 動作には出さないが、自分の名前が出た事にクライムは少し動揺する。

 

 ───ガガーラン様……申し訳ございません! もう童貞ではないんです……ラナー様の初めてを貰ったんです!……

 

 箱庭から出て、ラナーに4年ぶりに再会した事で恋心や愛情が爆発。ベッドの上でラナーにおねだりされて理性が崩壊した結果、クライムは彼女の体に雄を刻み込んだ。

 

 その事をクライムは後悔していない。誰でもない自分がそうしたのだ。……もっともどうおねだりすれば、クライムが獣欲を解放するかはラナーはきっちりと計算していたが。

 

 ともかくガガーランの中では、いまだに自分は童貞の少年なのだろう。しかしそれは仕方がないこと。箱庭などと言う神話のマジックアイテムを使ったことなんて、彼女は全く知らないのだから。

 

「……言ってるだろガガーラン。アイリス様が面倒を見たとて、あの小僧は伸びる才がない。……あ、違うんですアイリス様! 貴女様が無駄な事をしていると揶揄してる訳ではなくてですね!!」

「アイリス様はそんな事を御怒りにはならないわ。それにしても、私のクライムを貶すのは止めて頂戴。クライムはとっても頑張ってるんだから」

「うっ……頑張りは認めるが、なぁ……」

「そもそもどうしてイビルアイはそこまでクライムを虐める。何か迷惑でもかけられた?」

「迷惑なんてないが………………分かった! 話すからいきなり匂いを嗅いでくるな! 離れろティア! ……まったく。…………ただこれは小僧には言うなよ。……若い奴が無駄に時間を過ごすのを見てられんのだ」

「どういう意味だよそりゃ」

「言葉通りだ。才能がないと何度言ってもあいつは諦めない。人間の時間は限られているのに、時間を浪費しようとする。そんな事に時間を費やすなら、もっと王女様といてやればいいのに……なのにあいつは叶わない願いを胸に抱き、届きもしない星に手を伸ばそうとひたむきになる。……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。何かにひたむきになる前に、今ある幸せを大切にできないなら意味がない。……それにな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『……………………』

 

 なんとなく。なんとなくでしかない。だがそれは彼女の……イビルアイの経験談のようにその場にいた全員は思えた。まるで自分がそうであったかのように。語っていると。

 

 ……この場にいる中で、ただ一人。調査報告書を全て記憶しているモモンだけは、イビルアイの語りが何に起因するのかを理解し、心の中でそれを呟く。

 

 ───240年前の悲劇。亡国の吸血姫……戻らなかった過去……魔神戦争を切っ掛けに進みだした時間。なるほど……この少女の根底にあるのは、インベリアの……あの竜王が引き起こした事件でしたか

 

「ようするにあれか? ラナー様ラナー様って言って訓練を頑張るよりも、お姫さんと一緒に遊んで幸福を追求しろって事かよ」

「そうだ。あの小僧が王女に懸想していたのなんぞ、誰にでも分かるだろ」

「!!!」

 

 自分がひたむきに隠していたと思っていたラナーへの想いが、そう言った事に疎そうなイビルアイにすらバレていたことにクライムがひっそりとショックを受ける。

 

「お前……それを姫さんの前で言うか普通?」

「私は聞かれたから答えただけだ」

「別にそれを聞かされても、私自身もクライムに恋心を抱いていたので構いませんが」

「貴女も貴女で、クライムへの特別な感情は分かりやすかったものね……」

 

 クライムと違い、ラキュースに分かりやすいようにクライムへの感情をわざと見せていたラナーはそこまでショックは受けていない。

 

 ただ……イビルアイの本音を聞くことになったクライムは、少し泣きそうになっていた。才能がないからやめろと言われた事がある。だがその裏にあったのは、年長者としての心配であり。長い年月で擦れてしまったが、諸々は不器用なイビルアイの優しさで。少年時代、王宮で味方が殆どいなかった自分には、なんだかんだで心配してくれる人がいて。

 

 ───私の憧れの一つが『蒼の薔薇』の皆さんで、本当によかった。

 

 クライムが少し、思い出や繋がりの温かさに浸っていると───

 

「遅れて済まない。少し着替えに時間がかかってしまった」

 

 応接室に若旦那スタイルのサトルが入ってくる。『蒼の薔薇』はその顔を見て、モモンに似ていることからこの人が彼の父親である鈴木悟かと勘づく。

 

 ───そして

 

 次に入って来た人物に、ラキュース達はギョッとする。

 

 その人物はラナーと一緒ぐらいの背丈の女性だ。白いドレスを着た女性。服の上からでも分かる豊かな胸を持つ女性。

 

 しかし男性であっても、その胸より先に彼女を一目見たら、それに注視してしまうだろう。両目を隠すように白い布を鉢巻のように顔に巻いているのだ。その下にある黄金と白銀、太陽と月の眼を隠すように彼女の顔に巻かれている。

 

 膝まで届きそうな長い白銀の髪を、包帯のような白い布でグルグル巻きにして後ろに放り出している。

 

 次に目を引くのは両手首と両足首。髪を縛っている布と同じ代物が、怪我でもしているか包帯のように巻き付けてある。

 

 一度見たら忘れられそうにない女性がそこにはいた。

 

 呆然としている一同の前で、彼女はカーテシーをしながら挨拶をする。

 

「皆さま初めまして。私はアヤメ。アイリス・リンウッドの妹……なのですよ!」

 

 入室してきたのは、アヤメと偽名を名乗るアイリスであった。





まだだ。まだフラグを積み上げなくちゃ……
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