モモンガ様リスタート   作:リセット

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今回活動報告にも書いたアンケートのために最新話を再投稿しています



正史の可能性

 宇宙(そら)の真ん中に白銀の髪を揺らすアイリスが、サトルを困り顔で見つめている。

 

 先ほどまで屋敷にいたのに、全く知らない異空間にいる事にサトルは驚かない。数千年分の歳月を進めたアイリスは、超常現象を自由に操ってしまう。

 

 今更……驚くことでもなかった。

 

「アイリス……」

 

 サトルの声に先ほどまでの怒りは微塵もない。あるのは当惑だけだった。

 

「さっきの……コキュートスを守った鱗は君が?」

「ポジティブ。あのままオーナーが殴りつけていたら、コキュートスの外骨格でも砕けていました。それは危険だと判断。オーナーの御意思に背くことになりますが、私が防御壁を発動したのです」

「……そうか。アイリスがそう思ったなら、仕方ないか……それよりもここから出してくれないか? 俺は今からしなきゃいけないことがあるんだ」

「───ラナーとクライムのことですか?」

 

 アイリスの言葉にサトルは少し嬉しくなる。あの場にいなかったのに、アイリスは自分が何を考えてくれているのかを理解してくれている。無理解だったNPC達とはやはり別物なのだと。彼女だけがやはり自分の唯一の味方で───

 

「そう! そうなんだアイリス! あの二人は弱者救済にとって障害になりかねない! 今回だってブレイン・アングラウスなんて特例を作ろうとしている! 八本指を見逃している悪徳貴族と同じことをしようとしているんだ!! あいつの兄であるバルブロも金を貰う代わりに、八本指を優遇しているんだろ? それと同じ事をしているんだあの二人は! これは明確な裏切りに違いない! あいつらを問い質して、ブレインを処刑させる!! 不穏分子は排除しなきゃいけない!」

 

 矢継ぎ早にサトルは自分の感情とナザリックとしての理屈を乗せた持論を展開。アイリスであれば「その通りなのです!」と同意してくれると信頼して、嬉しそうに語る。

 

 その姿に……アイリスは困った顔のまま、サトルを見つめている。勢いの良かったサトルが固まる。

 

「アイ……リス?」

「───少し、話をしましょうか。ここは全てが切り離された場所。たくさん……時間があるのですよ」

 

 アイリスが指を振ると、星のような球体が瞬くだけの空間に畳が数畳出現。そこに正座した彼女がサトルを手招きすると、無重力に浮かんでいたサトルの体が引き寄せられる。

 

 抵抗しようにも、アイリスの力はサトルなんて及びもつかない領域に到達している。簡単に捕まえられて、寝転がされる。アイリスの膝に頭を乗させられて、一切の動きをサトルは封じられてしまった。

 

「……そうですね。まずはオーナーがどう思ったのか? あるいはどうしたいのか? ナザリックのリーダーとして……同時にオーナー当人がどうしたいのか? それをアイリスに聞かせてください。私が推測したり考えたオーナー像ではなく。オーナー自身の口から、偽りなく聞かせて頂けませんか?」

 

 いつもの優しい声と穏やかな口調に、少しだけ言い淀みそうになり……ナザリックのリーダーとしての自分の意見と……鈴木悟としての本心をアイリスに伝える。

 

 それらをサトルの髪を梳きながら全て聞いた後、アイリスはポジティブとだけ口にする。

 

 彼女は何を言うべきか考えて、まずはコキュートスの件に関しての所感を口にした。

 

「オーナーの御気持ちは良く分かりました。……私の身を案じてくれたのは、とてもポジティブです。でもコキュートスに世界級エネミーの力を向けたのは、短慮……短気に過ぎます。あのまま攻撃していたら、とても不幸な結果に終わっていました。オーナーの性格ですと、コキュートスを叩いた気持ちのまま、ラナーを問い質しに行っていたら、間違いなく彼女の言い分を聞く前に叩いてた筈です」

「……それは……そうかも……しれん」

「───この件に関しては後でコキュートスに謝りましょう。アイリスも一緒に謝るのです」

 

 アイリスに諭されて、サトルも自分が怒りから冷静さを欠いていた事を認める。押しのけたりするならまだしも、世界級エネミーの能力を解放してまで攻撃してしまった。その事実に頭を振る。

 

「───ではここから本題に入ります。まずラナーの助命嘆願の件ですが、これに関しては彼女は私たちのルールに従っただけ。それを咎める事は、根底を覆す事になります」

「だが! ……やっていることはバルブロ王子と一緒じゃないか……」

「ポジティブ。金銭を受け取ったりしていないだけで、クライムの願いを叶えると言うメリットをラナーは享受しました。……しかしラナーも、アイリス達ナザリックに対し最大限の譲歩はしてくれています」

「……譲歩? 俺には……一方的に要求を突きつけたようにしか───」

「あの時、私はこう質問をしました。『助命嘆願はブレインのみですね』、と。ラナーはあそこで傭兵団全員の助命を請う事も出来ました。クライムはそこまで思い至っていなかったようですが、あそこで優しい王女として振舞うなら、そちらの方がクライムの印象は更に良かった」

「…………ラナーは俺たちに……一応気は使ったと?」

「ポジティブ。彼女はクライムの願いを聞きつつも、同時に私たちのしたい事に対して配慮はしています。……それにあの場でああ動いた方が、民を想う少しお花畑な第三王女としての側面としては理に適う。実態はどうあれ、クライムの知るラナーとはそんな女性です」

「……ラナーは俺たちより立場の低い協力者だ。それが意見をするなんて……」

「ネガティブ。()()()()()()()()()()()()()。ラナーが私たちの意を汲むのではありません。ラナーの意図を私たちが汲むのです」

「それは……建前だろ。結局はあいつなら忖度して、俺たちが動くのを補助するって睨んだから協力者に据えたんじゃないか……」

「ポジティブ。彼女はクライム以外に何の興味もないですからね。だから都合が良いとして、義兄さんは彼女を協力者に選びました」

「でもあいつはクライムを優先して、俺たちに楯突いた! これは裏切りじゃないか!!」

「ネガティブ。前提が違います。私たちナザリックは彼女に価値を見出して勧誘しました。その時点で関係としては対等であり、楯突いたのはではなく要望に過ぎません。そもそも巻き込んだのはこちらの都合です。その都合がある以上、私たちはラナーの意思をある程度汲まなければいけません。人間関係とはそういうものです。少し不都合だからと言って切り捨てては……」

 

 アイリスは難しそうな顔をする。サトルが彼女の言葉でも納得しがたいと空気を発しているからだ。その空気を感じ取ったアイリスは、サトルに対してある言葉を投げることにした。

 

「ではオーナーに一つお話をするのです!」

「お話?」

「そうです! ……こほん。私は箱庭の中に箱庭を設置する事で時間を100万倍にまで加速させました。そのおかげで三千年ほど時間を重ねました。それによりワールドスキルが強化され過ぎて、解除出来なくなったのは難点でしたが……それは置いといて。今の私であれば、フロンティアに住む全生命体の意思や記憶を書き換える事が可能です」

「それは……なんとも凄いな」

「───ポジティブ。凄いです! ……凄くて、とても危険です。もしもオーナーがお望みになるのであれば、気に入らない相手も不都合だと感じた相手も……オーナーが望むままに恭順する生命体に変えてしまえます」

「……えっ?」

「ビーストマンが気に食わないのであれば、彼らの意識を塗り替えて人間に従う動物にも変えられます。人間が気に食わないのであれば、彼らの記憶を全て消去して赤ちゃんにもできるです」

「……………………」

「オーナーはラナーやクライムが反乱分子だと思うのですよね? オーナーがお望みに……本当に望まれるのであれば……あの二人の記憶を書き換えて、オーナーのためにだけ存在する、とっても都合の良いお人形に出来ます。()()()()()

 

 アイリスが畳を指で叩くと、そこにはクライムとラナーが出現する。少し前まで絶対に許さないと決めていた二人がそこにいることに、サトルは面食らうが───

 

「サトル様。我らの罪は御身の誇りを傷つけました。この穢れ、掃うにはもはや我が血を使うしかありません。ラナー様。御身の介錯は私がします」

「お願いするわクライム。代わりに私が貴方を介錯するわね」

 

 サトルが眼を白黒させている間に、クライムは剣を。ラナーは刀を握り───お互いの首を切って二人は死んだ。サトルの目の前で二人の首から血が溢れ出し、倒れて動かなくなる。

 

 それだけではない。サトル達の周りに大地が出現。そこに次々と人影が現れては───

 

「弱者救済万歳! アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!!」

「弱者救済はこの世の真理!! ナザリックの意を示せ!!!」

 

 影たちはお互いを刺したり、首を絞めたりして死んでいく。ばたばたと倒れた影の数は数千、数万、数億……サトルには数えられなかった。

 

「こ……アイリス……これは……一体なんなんだ…………」

「オーナーのお望みになる、私たちの不都合を全て取り払った弱者救済です。嫌な事は何一つ存在しない理想の世界。ナザリックに逆らう者は全てが消えた世界。あらゆる生命体がオーナーの意思を忖度し、裏切る事が一切ない。そんな理想世界が今見て貰っている世界です」

 

 殺し合う影がいれば、逆に手を取り合い狂ったように笑う影もいる。影たちには意思がなかった。アイリスが笑えと言えば笑う。アイリスが死ねと言えば死ぬ。誰もかれもが自分の意思を持たない世界。裏切りを嫌うサトルの理想を体現した光景がそこにはあった。

 

「ち、違う! 俺はこんな事望んでない!! ただラナーを糾弾したいだけだ!!!」

「でもオーナーはラナーの行動が不都合だと……自分達を舐め腐ったのだと感じたのですよね? 見てくださいオーナー。こんな世界に変えてしまえば、もう舐められる事も裏切られることもありません。み~んなオーナーの言う事を聞くお人形さんです! これで悩む必要もないのです! ビバ! ドリームなのですよ!」

 

 ニコニコと笑うアイリスの顔を見た後、サトルは周囲の影を見る。そこにいたのはニコニコした笑顔のアイリス達だった。彼女らは自分に膝枕してくれているアイリスと同じように笑っている。

 

 ニコニコと。一切の邪悪もなく、笑っている。それにサトルが発狂しそうになり───

 

 柏手一つ。アイリスの発した乾いた音に大地と影は消え、首の取れたラナーとクライムも消滅する。

 

「ごめんなさいオーナー。少し意地悪し過ぎました」

「…意地悪? 今のを……見せた事が?」

「ポジティブ。……どうして私たちが、現地の法に従おうと定めたのか。それは勿論オーナーも御知りですよね?」

「ナザリックが法になるのを防ぐため……だろ?」

「ポジティブ。そしてナザリックが法になった世界の極致が、今のシミュレーションです。誰も私たちに逆らったりしない。私たちが口にする言葉、行う行動が全て正義として扱われる世界。現状でさえ、武力により我儘を押し通しているのが私たちナザリックです。ただでさえ、弱者を守るためと言う言葉を盾に私たちは自分の意思を他者に強要している」

「だから……ラナーの行いは身勝手ではあるが、赦すべきだと?」

「ネガティブ。身勝手ですらありません。私たちは法に従うと定めた時点で、ラナーが法です。だから私たちがラナーの意思を忖度しなければなりません」

「そんな……そんな馬鹿な話が…………」

「……オーナーにはお辛い話になります。それでもあえて……私はそれを口にします。自分達に従う、従わないだけで全てを判断する。誰もかれもがナザリックに恭順しなければいけないとするのであれば……今見せたあらゆる生命の意思が存在しない管理世界か……あるいはナザリックに籠り、楽しい事だけをして生涯を過ごすしかありません」

 

 首を横に振るアイリスの言葉にサトルは動揺が抑えられない。だっておかしいじゃないかと。自分達は誰かを救うと決めたのだ。それなのに……ブレインに特例を赦すラナーやクライムを許さないといけないなんて……アイリスを裏切ったあいつらを受け入れろなんて……そんなの間違っていると……

 

「なら……ラナーやクライムの意思だけ書き換えて……」

「……その次は誰を書き換えますか? 生きて誰かと関わる限り、オーナーの御意思とは違う意見なんてたくさん出てきます。それは地球で社会人としてお仕事をしていたオーナーも良く知っていますよね?」

「で、でも……ラナーはやはり危険だ! あいつは……あいつはアイリスを利用できることを学んでしまったんだろ!? そんな奴をこれ以上協力者にするわけには……」

「利用したのは私たちが最初です。彼女の利になるからと、生まれ変わりなんてバックストーリーまで用意して、クライムへの感情を利用してまで退路を断たせた上で誘い込んだのはナザリックの意思です。それを考慮しないのであれば、私たちに人助けを謳う資格はありません」

「……ブレインは……ブレイン・アングラウスは犯罪者なんだぞ!! なのに……それが正しくなってしまうなんて……」

「……ラナーが助命をした時点で、法は彼を赦しています。ブレインをどうするのかは……ラナーだけが決められる事。その前提を崩すのであれば、私たちが法になる。ここからラナーを都合で切り捨てるのであれば、そもそもが誰かの救済を願える立場ではありません。私たちの言う事をなんでも聞く相手を望むのであれば、最初から全ての生命体の意思を書き換えてしまうのと同義です」

 

 アイリスの言葉にそんな馬鹿なとサトルは口を開いては閉じてを繰り返す。だって……危険なのだ。自分には分かる。ブレインは必ず復讐する手合いだ。……違う。ブレインだけではない。ラナーもまたトラウマを背負わされた時点で、ナザリックを恨んでいるに決まっている。

 

 これはその復讐の一環なのではないか。アイリスを軸に自分と仲違いをさせてナザリックを破壊しようとしている。そうだ。そうに違いない。アイリスは優しいからラナーにまるで正当性があるかのように口にするが、その性質をあの悪女なら利用する。

 

 守らないと。自分が守らないといけないんだ。アイリスは優しいから。優しいアイリスを……ウルベルトが託した希望を守らないと。守らないと。守護らないと。そうでなければ……

 

「オーナー……貴方のネガティブは消えたと……私はそう思っていました。過去は振り切ったのだと。違ったのですね……私が貴方の楔になってしまっていた」

「! 違う!! アイリスは何も悪くない!! 悪いのはアイリスを困らせて傷つける連中だ!! 君は何も悪くなんかない!」

 

 アイリスの言葉をサトルは否定しようとするが……彼女は首をゆっくりと横に振る。膝枕から頭が浮いたと思ったら、アイリスの胸にサトルの頭は抱かれる。

 

「……コキュートスやペストーニャ……カルマ値が低いルプスレギナも赦しを覚えようとしている。理性と理知に向かおうとしている。でも……オーナーは失いたくない一心で、悪い方に悪い方に全てを考えてしまう。性悪を実体験で覚えてしまったから……それなのに私は気づきもせずに、貴方の成長機会を奪ってしまった。今オーナーがどうしてそこまで、ブレインを敵視するのか……あるいはラナーやクライムを裏切り者として糾弾しているのか……怖いんですよね? 今ある何かが消えてしまうかもしれないことが───」

 

 アイリスの胸に顔を埋めたサトルの後頭部が細い指に撫でられる。怖いかと聞かれて……初めてサトルは自分の怒りが何に起因するのかを……ようやく掴みつつあった。もしそれを言葉にするのであれば───

 

「ラナーがこれからも裏切り続けるかもしれない。あるいはラナーがクライムに命じて私たちを斬りにこさせるかもしれない。ブレインアングラウスが贖罪の道なんて歩まずに、力をつけて復讐しにくるかもしれない……それが怖いんですよね?」

「───そうだ!! あいつらは絶対に裏切る!! 俺たちを殺しにくる!!! それを防ぐためにも───」

「それは可能性です。まだ起きていない出来事。起きた出来事に対しては法がブレインを赦し、ラナーとクライムが管理する案件になっています。だから───」

「可能性は起こり得る!! リスクを排除しなければ、安全は確保できないんだ!!!」

 

 血反吐を吐くようなサトルの叫びに、アイリスは思考する。……そうして一つ。サトルを説得する方法を思いついた。

 

「オーナーは可能性があるからこそ、ブレインは許されてはならない。そう言いたいのですか?」

「そうだ! ……身勝手な存在は絶対に身勝手を起こす!! 三つ子の魂百まで……絶対に変わるわけがない!! 人を斬ったあいつはまた自己都合で人を斬るに決まっている!! 人は簡単に変わらない……犯罪者は犯罪者なんだ………………」

「犯罪者は犯罪者……なるほどなるほど……ではその理屈ですと、アイリスは今すぐ死ななきゃ行けないのですよ!」

「……えっ?」

 

 アイリスが何を言い始めたのかサトルには理解できなかった。だってアイリスは犯罪者……では確かにある。地球時代にハッキングやクラッキングをしていた。だが地球時代のアイリスはAIであり、それが罪になるわけが───

 

「アイリス自身にも罪が一杯あるのですよ……ですがその話は後にしましょう。今はブレインの話でしたね。彼は変われるのか? 変われないのか? アイリスの意見としては変われるです。どうしてアイリスがそう思ったのか? それはこれを見たからです。付随して、ある存在達が大幅に変化した現実。それをオーナーにも見て頂けませんか?」

 

 アイリスの言葉に疑問を抱いているサトルを横に、アイリスが指を振ると宇宙(そら)に浮かんだ星たちの中から一際大きな星が近づいてくる。

 

 一際大きい星……と言ってもそのサイズはバスケットボールぐらいのサイズしかない。周りの星がビー玉サイズなので大きく見えるだけだ。

 

「アイリス……その球体は一体?」

「……これは可能性です。ここは可能性を見れる世界の狭間なのです。もっと言えば並行世界を外から観測できる場所……と言うのが正解なのでしょうね。ここに無数に浮かぶ星は数多の可能性が詰まった世界なのです」

 

 アイリスが一つ星を掴み、サトルに手渡す。

 

「これが……可能性の世界?」

「ポジティブ。例えば今手渡しした可能性は、オーナーが魔法少女リリカルアインズとして転移した可能性の世界です」

「なにそれ」

 

 急にシリアスな空気をぶち壊す単語にサトルは素で返答してしまう。

 

「こちらはオーナーがアルベドやシャルティアのアバターで転移する可能性に、ギルドメンバーと共に転移する可能性。色んな可能性がここにはあります」

 

 サトルが周りを見渡す。そこに煌めくのはアイリス曰く可能性。無限に広がる並行世界。

 

「ここにあるのが全て可能性? ……でもこれだけどうしてこんなに大きいんだ?」

 

 アイリスがわざわざ呼び寄せた可能性の球体だけサイズが全く違う事にサトルは言及する。

 

「可能性は無限。ですが可能性には割合が存在します。殆どの可能性はビー玉サイズでしかありませんが……可能性の中でも、一番その時間軸になりやすい可能性があります。私はそれを正史と呼んでいます」

「じゃあ……これが正史の可能性?」

「ポジティブ。仮にフロンティアの時間を巻き戻し、改めてスタートした場合そうなる可能性が高いのが正史になります」

 

 指先で正史の可能性を弄るアイリス。そんな彼女に一際不可思議そうな視線をサトルは向ける。

 

「その正史が……アイリスが見せたいもの?」

「ポジティブ。正史の世界と()が存在する世界。その差異を見て頂ければ、変わらない事はない。それを実感できると思うのです」

 

 アイリスはいつも不思議な事を口にするが、これは一際……不思議であった。だが……他の誰かの言葉であれば聞く耳をサトルは持たないかもしれないが、執着の象徴であるアイリスが勧めるのであれば……一度ぐらいは見ても良いのかもしれないと考えた。

 

「それじゃ、一回ぐらいは見てもいいが……でもこれってどう見るんだ?」

「そのまま動かないでください。アイリスの力で見れるようにしますので…………えい、えい、むん!」

 

 アイリスの掛け声と共に、正史の球体が強く光る。思わずサトルは眼を抑え───次に目を開けた時には、草原にいた。

 

 その草原はサトルにも見覚えがある場所だ。あの日、アイリスの在り方に憧れた場所。月夜の下で踊る彼女に改めて見惚れた日を今でも覚えている。

 

 空には月が浮かんでいる。あの日そっくりの満月がそこにはあった。

 

「ここが……正史の世界?」

「ポジティブ……ああ、いたいたいたのです。あそこに浮かんでいる二人をよく見て下さい」

 

 アイリスが空を指さす。遥か上空、そこには二人の人影があった。一人は……それを見た瞬間にサトルの思考が固まる。

 

 そこにいたのは蛙顔で蝙蝠の羽が生えたスーツ姿───デミウルゴス。そしてもう一人は───

 

「そうだな。世界征服なんて、面白いかもしれないな」

 

 黒い鎧を着た骸骨が、そんな言葉を口にした。





人は変われるよ教材兼サトルの道徳資料兼アイリスの罰:原作及びとある時間軸

と言う訳で次回からは幕間 サブタイトルは『オーバーロード アインズ・ウール・ゴウン』
原作オーバーロードをサトルとアイリスが見学ツアー
原作NPCの所業とかいろんなあれこれを見ていくお話

アンケート結果は2023年12月15日(金)で締める予定です。

活動報告でも書いたブレイン生存について

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