モモンガ様リスタート   作:リセット

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章タイトルを分かりやすく前編・後編に変更。タグもちょっと整理。あと数話で完結予定





月夜の散策 前編

 9階層の執務室からモモンガへの私室へと向かったアイリスは、ナザリック最速の脚を十二分に活かし超特急で辿り着いてみせた。

 

「お待たせしましたです、オーナー」

「いやいや。別に待ったりなんかしてないさ」

「…………ところでオーナー。お外に出る件ですが……精神的にお疲れですか」

「……うん。なんであいつら俺がなんかやる度に、拍手したりすんの?褒めないと死んでしまう呪いか何かか!?」

「ま、まぁNPCなりにこのナザリックを頑張って支えたオーナーに、敬意を示してるのですよ。彼らはただでさえ、オーナーの為に尽くす存在です。それがたった一人でもやってみせると、彼らに誠意をみせたならそれは……とてもポジ……いえオーナーにとってはネガ……とにかくずっと詰めてても参るだけですし、セバス曰く空が見えるぐらい綺麗とのことなので楽しみですね、オーナー」

「待てぇアイリス!ポジティブなのかネガティブなのかどっちなんだ!今無理やり流そうとしなかったか!?」

「オーナー…………スルースキルはとてもポジティブなのです」

 

 ともあれ合流した二人は早速外へと向かうため、指輪の力を発動させてナザリック地表部に最も近い中央霊廟へと移動した。

 

 外部から見ると古代ギリシャに建てられていた神殿によく似た形をしており、中の広間から少し歩けば外へと出る事が出来る。

 

 外へと出ようと二人は中央を抜け出ようとしたのだが───

 

「これはモモンガ様に…………アイリス!一体こんなところに、どうしたんだね!陣中見舞いかい!陣中見舞いだね!!全く先に言っておいてくれれば、こんな殺風景なままになどせず、一般メイド達を呼んでティーセットの用意ぐらいしておいたものを……いや、むしろモモンガ様達が来ることを、想定できなかった私のミスだねこれは」

 

 中央霊廟で作業中であった階層守護者の一人、デミウルゴスに妙に高いテンションで話しかけられた。

 

「お疲れ様ですデミウルゴス。ティーセットを用意されても、オーナーは食べられないですし、その状況でアイリスだけ頂くわけにはいかないですよ」

「全く何を言うかと思えば……君はモモンガ様が手塩にかけてお創りになられた僕だ。我々はみな至高の御方が、君をどれだけ大事にされているかを痛いほどに理解しているつもりだよ。君が紅茶を飲み茶菓子を食む姿を見るだけで、心が潤い英気が養われるのだとも。そうで御座いますよね、モモンガ様!」

「お前のその、アイリスに対する全面的な信頼はなんなんだ」

 

 ナザリック地下大墳墓第七階層守護者デミウルゴス。彼はウルベルトが創造したNPCであり、当然ウルベルトの影響が強く出ている。彼自身は現状ではアイリスとモモンガとウルベルトの関係をまだ知らない。それでも託した者と託された者の間にあった繋がりのせいか、彼はこのナザリックにおいて、宝物殿を守護しているアイリスのお兄ちゃんと並ぶ、特段彼女の事を可愛がっている組の一人だ。

 

「残念ながら、陣中見舞いではないのですよ。これからオーナーと一緒に、ちょっとお散歩をしてくるのです」

「お散歩……外出……緊急事態中に外にでる、と。なるほど。少しばかり失礼を。…………アルベド、少し聞きたいのですが、アイリスとモモンガ様が外出なされる件、承知かい?…………承知している。ふむ……なぜ止めようとしなかった!ナザリックにおけるモモンガ様とアイリスの重要性を、統括守護者である君が知らぬわけ…………うるさい、いいから仕事しろ?待ちたまえアルベド、まだ話は……クッ、<伝言>を切りましたか」

 

 デミウルゴスは二人の外出に反対なのか、アルベドに猛抗議したかったようだが一瞬で<伝言>を切られて妙に憤慨していた。

 

「デミウルゴスがオーナーやアイリスを心配してくれるはポジティブですが、それでアルベドに当たるはネガティブですよ」

「しかし…………では私も一緒に同行しましょう。いざという時の肉盾ぐらいにはなれますからね」

「デミウルゴス……お前にはここで、何かしらやらなきゃいけない仕事があるんだろ?途中で放棄するのは、無責任だ」

「大丈夫ですよデミウルゴス。オーナーは強いですし、アイリスだって強いです。途中で何か危険があっても、平気へっちゃらですとも」

「…………なるほど、そういう事ですか。モモンガ様とアイリスは、ナザリックそのものと呼んでも差し支えない存在。であるならば、下手に供を増やしても足手まといにしかならないと。そうアイリスは仰りたいわけですね、モモンガ様」

「あ、うん。デミウルゴスがそう思うなら、それで良いんじゃないか。俺は良いと思うぞ…………多分」

 

 モモンガは面倒なのか、適当にスルースキルでポジティブに流す事にした。

 

(デミウルゴスは賢い設定の筈なんだけど、この妙な方向に深読みする癖どうにかならないものなのか……俺の事を評価してくれてるだけなのは分かるんだけど、疲れるんだよなぁ)

 

 まぁ、とモモンガは思う。初日に自分に対してNPC達がこれでもかと、忠誠だの忠義だのと頭を垂れるので、戦々恐々としてた頃を思えば精神的な疲れはマシになったなと。これから彼ら相手にどうやって接していけば良いのかと、頭を抱えてた頃を考えれば、随分とフランクに対応出来るようになったものだ。

 

 転移初日や次の日は、NPC達が言うところの偉大な魔王とでも呼ぶべきロールで接しなければ、彼らが失望しひょっとして裏切ったりするのだろうかと思い、モモンガはアイリスに相談したのだが───

 

「裏切りなどはないです。NPCはオーナーがいるだけで、とっても嬉しいんです。はっぴーです。彼らは最後まで頑張ったオーナーの事が、とってもとっても大好きなだけなんです。オーナーへの大好きさで負けるつもりはありませんが…………それでもお疑いならそうですね。デミウルゴスが食堂にいる時に、御箸かスプーンを転がして、『ほう、今日は悪くないな』と言ってみてください。それだけでデミウルゴスなら深読みして、『なるほど。そういう事ですかうんたらかんたら』と呪文を唱え始め、周りにいたNPC達も拍手喝采です。ぶらぼーです。それを見たら大真面目に考えるのなんて、馬鹿らしくなるですよ」

 

 とほんとかよと思うアドバイスを受けたのだが、アイリスのアドバイスは大抵何かしらの結果を生んで来たので、実際に実行してみた。これで何もなくとも、少しだけモモンガが恥ずかしい思いをするだけで済むのだからローリスクである。

 

 その結果だが───アイリスの言う通りになった。デミウルゴスは深読み呪文を唱え、周りにいた一般メイド達は呪文効果によって、より一層モモンガに忠誠を尽くしますと宣言した。

 

 モモンガが食器を転がすだけで礼賛するNPC達。その姿にこいつら何やってもこんな感じなんだなと勘づいたモモンガは、真剣に悩んでいた自分が馬鹿らしくなり、魔王ロールとか心のゴミ箱に捨てた。

 

 お見送りなのか頭を深く下げるデミウルゴスを尻目に、モモンガ達はナザリック外壁を飛び越え、平原へと飛び出すのだった。

 

 

 

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「凄いなこれは!!こんなに草が生えてるのなんて、俺は初めてみたぞ。それに空も、こんなに綺麗だなんて……」

「オーナーのいた地球ではもう、久しく見れなくなっていた光景ですね。際限なく工場排水や排出ガスを垂れ流しにすれば、どう考えたって環境なんて壊れちゃうです」

 

 2人はゆったりとした速度で歩きながら、取り止めの無い話に花を咲かせる。

 

 モモンガはただ感動していた。別惑星に来る前には、ナザリック第6階層ぐらいでしか見る事を許されなかった満天の夜空と、どこまでも生い茂る草花。どんな富裕層でも、もはや見る事は出来なかった光景。上級のためだけに作成された、ドーム型のコロニー内に再現されていたであろうそれでも、今モモンガが目にしている物と比較すれば輝く宝石とただの石でしかないだろう。

 

 胸のうちに()()なくあふれ出す感激に、ただモモンガは圧倒されていた。

 

「よかったですねオーナー。綺麗な景色は心を洗い、とてもリフレッシュさせるです。ナザリックの中だけで過ごしては、精神が参ってしまうです」

「ああ───本当にこれは……」

 

 モモンガはただ幸福だった。少しばかり大げさなNPC達に、ちょっと苦労はしているがアイリスが言うように彼らに悪気があるわけじゃない。

 

 自分が肩肘を張るような真似をせず、ただ普通の鈴木悟として接しても別段何も変わらずNPC達は褒めたたえてくる。その褒め具合が過剰過ぎて、モモンガは疲れているのだが。

 

 モモンガは考える。自分ひとりだけだとそんな風に出来ただろうかと。たった一人で彼らと相対して、自分らしくいれたかと。答えは不可能だ。モモンガは一人だけだと必ず気後れし、無駄だなと感じて捨てた魔王としての仮面を被ってしまっていたはずだ。そうならなかったのは───

 

「ありがとうアイリス」

「褒められるような事なんて、アイリスはしてないですよ」

「いいや、してくれたんだ。それに…………アイリスの『ワールドスキル』がなかったら、俺はこんな風に夜空を見て感動することも出来なかった」

「そこに関しては、アイリスとしてはかなり不満足なのです。感情抑制までは消去出来ても、アンデッドとしての精神変容を完全に消すには、種族変更が必要になるのはネガティブです……オーナーが望むなら種族を変える事も出来るですよ?」

「うーん…………この死の支配者の体自体は、かなり悩んで作ったビルドだしな。簡単に変える気にはならないな。……それにしても『ワールドスキル』なぁ……」

 

 文字通りのチートで構成された、アイリス謹製にして無敵のプログラム。第8階層で一度モモンガもお披露目して貰った最強スキル。それを今後どう扱って行くのか、アイリスと話し合ったのをモモンガは月夜の下思い出すのであった。

 

 

 

 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 モモンガを守るために、アイリスが最後のプログラミングで作り出した、最強と呼ぶに相応しい奇跡の結晶。『第8階層のあれら』すら、遥かに上回る現在のナザリックにおける秘中の秘。対プレイヤーではなく、モモンガ達をこの世界に呼んだ謎の存在───アイリスが存在Xと呼ぶ誰かを相手に想定された究極の武器。

 

 アイリスが作成したチートスキル『ワールドスキル』───正式名称を黄昏の終焉(ジ・エンド)。名前に関してはモモンガが好きそうな名前にしたとか。

 

 これの全容についてモモンガは『第8階層のあれら』相手の検証実験の後に全て聞いており………アイリスが10大ギルド相手にしても、勝てると豪語した理由を全て察した。

 

 発動した際の内容についてはおおまかに二つ。一つはアイリスのステータス的な強さを、32体全てのワールドエネミーの合算数値にし耐性などもそれに準拠する。もう一つはワールドエネミーが持つ全てのスキルや魔法、加えて世界級アイテムが持つ固有効果を、ノーコストでスキルとして使用可能かつ自由自在に組み合わせて運用可能とする、だ。

 

 世界級アイテムには通常のゲームであれば、チートとしか言えない効果がごまんとある。その中でも最上位の20と呼ばれるアイテムに至っては、蘇生不可能効果付き完全消去能力と極悪な仕様の槍などが存在する。

 

 一応はバランス調整として一度使うとアイテムは消滅。使用者も消滅するのだが───形振り構っていられなかったアイリスは、この手のデメリットを全て消去した。

 

 それでどうなったかと言えば───例えばだが、この完全消去効果を全攻撃に乗せたり出来るようになってしまった。

 

 ワールドエネミー専用の、超広範囲必中魔法攻撃にすら上乗せする事すら可能な形として、だ。

 

 普通に考えるならば、アースガルズの天空城などが来ていてもまず相手にもならない。スキルや魔法を使わずとも、殴るだけでギルド拠点ごと消し飛ぶだろう。だが───

 

「アイリスは黄昏の終焉でも、存在X相手だと不十分だと考えてるんだよな?」

「不十分と言うわけではないのです。仮に異空間転送が可能な神の如き存在だとしても、オーナーの安全を確保出来るようには設計したつもりなのです。ですが……存在Xの正体が判明するまでは、黄昏の終焉はあまり見せびらかしたくはないのです。こちらに対抗手段があるのだと、あちらに気づかれたくはないのですよ」

「だから……覗き見防止用の、攻性防壁が張られてるナザリック以外では不用意には使わない。手札を必要以上には晒さない、PVP戦闘の基本を守るわけだな」

「ポジティブ。向こうとて全知全能ではないはずです。その証拠はアイリスを消さなかったこと。あの瞬間データが抜き取られる事に気づいたアイリスは、立ち向かえる牙を研ぎ澄ませました。存在Xが全知であれば、アイリスに気づき阻止するか、消滅させたはずです。無論無駄な足掻きをしているのを、どこかで嘲笑っているだけなのかもしれません。……ですがこの可能性まで考慮していては、アイリス達は何も出来なくなってしまいます。───それにオーナーに見せるために8階層で使った日、誰かに見られているような感覚はありませんでした。たまたま見ていなかったのか、それともアイリス達に興味がないだけなのかは分からないです。ですが……あれはチャンスだったです。『永劫の蛇の指輪(ウロボロス)』の力で攻性防壁を大幅に強化したので、もう外から特殊な力で内部を見る事は出来ないです」

 

 アイリスは何かに祈るかのような動作をする。それはモモンガやナザリックの仲間達を必ず守るのだと、決意を固める誓いの動作。アイリスはモモンガを安心させるために勝てますと断言したが、実のところ対プレイヤーならまだしも存在X相手だと、彼女とて不安がないわけではないのだ。

 

「アイリスは今後オーナーの業務の傍ら、存在X対策の一環として、みんなには内緒でナザリックの戦力強化を図るつもりです」

「情報漏洩を防ぐためだな」

「ポジティブ。どこから漏れるか分からない以上、黄昏の終焉の存在も知らせるわけにはいけないです。これは本当に最後の切り札───ナザリック外でこれを見せる時は…………存在Xと対峙した時だけです」

 

 彼女はモモンガだけを守るわけではない。彼が守ろうとしたナザリックですら、己の命を賭して守護するのだと。どこまでも覚悟を完了していた。

 

 

 

 




真の切り札は最後までとっておき、ひたすら(勘違いで)戦力を整えるのがナザリック流

黄昏の終焉:奥の手中の奥の手。基本はナザリック内で戦力強化に運用し、ナザリック全員でも勝てない強大な敵にのみ戦闘で使用する。転移後世界でこれ使わないと勝てない敵とかいないので戦いで日の目を見る日は永遠に来ない

永劫の蛇の指輪:WIの一つ。通称ドラゴンボール。黄昏の終焉の中でもっとも多用される酷使枠。この力を使ってアイリスはナザリックの防衛システム強化や資金消費を0にしたりと魔改造を着々と進めてる。これを使っても演算能力などは戻らなかった模様

『ユグドラシル』産アイテム:原作ではもう手に入らない代物。上記ウロボパワーでWIや課金を含む全アイテムを時間はかかるが無限に生成・増殖・複製が出来る

ユグドラシル金貨:上記と同じで無限生成してる

第8階層のあれら:増殖アイテムと金貨は第8階層に保管。あれらに守護させる事に。アイリスを見ると怯えるようになったとか

竜帝:アイリスが警戒する存在Xさん。無駄にスーパーAIを警戒させたせいでとんでもないものを招来させてしまった

ツアー:竜帝の息子。世界を守るために頑張るドラゴン。アイリス周りの真相を知ったら憤死する

宝物殿のあいつ:感想でも期待されてるまもっちゃん。喋り方自体は小説準拠なので大人しめ。なお内面はまもっちゃん全開。アイリスからの呼び方は真面目時はパンドラ 幼いモード時はお兄ちゃん。モモンガさんのアイリスに対する感情に影響されてかシスコン気味

みんな大好きデミえもん:まだそこまで壊れてない。アイリス誕生秘話を知ったら脳が破壊される

ルベド:誤字脱字報告でアルベドのアが抜けた脱字として間違われる原作ナザリック最強NPC




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