ダイの大冒険 ―次世代の竜の騎士ー   作:キャットテールの鈴

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バラン処刑シーンのため、苦手な方はご注意を。


1_アルキード王国の処刑

アルキード王国の広場にて、この国のソアラ姫を攫った魔物の公開処刑が行われようとしていた。姫誘拐の大罪を犯した魔物の処刑が行われるという御触れは全国民に通達され、城近くの広場にはその光景を一目見ようと多くの群衆が集まっていた。

 

群衆が注目する先、広場中央には2メートルほどの高さの柱が建てられており、そこには1人の男性が腕を柱の後ろに回され、手首をロープで縛られていた。縛られた死刑囚の名はバラン。国王の一人娘であるソアラ姫を誘拐した魔王の手下の生き残りとされる魔物である。バランに対峙する形でこの国の処刑人である3人の魔法使い、執行人の大臣、そして国王アルキード王が魔物の男を睨みつけるように見ていた。

 

数年前に終結した魔王による侵略は人々に怒りや恐怖、そして悲しみを与え、多くの人々に深い心の傷を残していた。処刑を見に来た群衆は侵略時に受けた怒りや恐怖を、魔物であるバランに向けて悪口雑言として浴びせていた。

 

「…あの男は魔王の手下らしいぞ…」

「まあ、なんて恐ろしい…!」

「早く火あぶりにしろー!!!」

「噂では人間に化けた魔族とも言われているわ…!」

「人に化けるなんて恐ろしい!」

「魔物を、魔族を許すな!殺せ!」

「ざまぁみやがれ魔物め!」

 

周囲の群衆からの怒りや罵倒、嘲笑の声を聞きながら、バランは表情を動かさず、自身が処刑される時を静かに待っていた。処刑の時刻が刻一刻と迫る中、バランは目を閉じて愛する妻ソアラと息子のディーノのことを思い浮かべた。

 

ソアラ姫と恋に落ち、妊娠した愛する妻と共にテラン王国の森深くに駆け落ちし、そこで愛する息子のディーノが生まれた時のこと。

 

森深くの小屋で家族3人、戦いのない平和な世界で暮らす日々はとても安らかで心が満ち足り幸せだった時のこと。

 

そして愛するソアラとディーノの笑顔。

 

しかし、その幸せな時間は長くは続かなかった。

 

「魔物に姫を取られたとあっては国の名折れ!」と怒った国王が大軍をもって暮らしていた小屋を取り囲んだ。人間を傷つけないため、そして自身の命を引き換えに妻と息子の安全の保障を願い出るため、バランはアルキード兵に無抵抗でその身を明け渡した。安全を願った息子のディーノは数日前に異国の地へ送られ、バランはこの日、公開処刑の運びとなった。

 

「時間だ」

 

執行人が処刑時刻を告げたことでバランは閉じていた目を開き、正面にいる魔法使いを見た。執行人の合図により処刑人の魔法使いはメラミの炎をその手に宿しバランを睨みつけた。

 

(竜闘気《ドラゴニックオーラ》さえ使わなければあの程度の呪文でも死ねるだろう)

 

竜の騎士であるバランは竜闘気《ドラゴニックオーラ》をその身にまとえばどんな魔法でも防御することができたが、処刑を受け入れているバランは執行人の魔法を抵抗することなく受けようとしていた。

そして、執行人が処刑の合図を出そうとしたその時。

 

「やめてえーーー!!!」

 

一人の女性が群集の中から飛び出すと、処刑されようとしていたバランに駆け寄り、処刑人から庇うように立ちふさがった。

 

「ソアラ…!」

「ソ…ソアラ!なぜここにいる!」

 

この場にはいないはずのソアラ姫がいることにバランと父親のアルキード国王は驚きの声を上げ、群衆はソアラが処刑場に現れたこと、魔物をかばったことに驚き、辺り一帯は騒然となった。執行人の大臣は国王や群衆の様子を見ると、慌てて周囲の衛兵に指示を出した。

 

「衛兵何をしている!早く姫様をこの場からお連れしろ!!!」

 

衛兵が慌てて処刑場に駆け寄ると、抵抗するソアラ姫を拘束した。衛兵に連行されながらもソアラは父親である国王と夫であるバランに対して懇願し叫ぶ。

 

「父上!お願いやめて!これ以上ひどいことはしないで!あなた!ここから逃げ出して!ディーノを探して!お願いよぉ…」

 

ソアラ姫は途中から涙を流しながら父親と夫に必死で訴えかけるが、アルキード王は娘の声が聞こえていないかのように目を閉じ何も言わず、バランも首を横に振り「すまない…」とつぶやくように言ったため、自分の言葉を聞き入れてもらえないことを理解したソアラは泣きながら絶望の表情を浮かべた。衛兵たちに姫が引きずられるように連れ出され、姿が見えなくなった頃、アルキード王は周りの群集に聞こえるように声を上げた。

 

「…哀れな娘よ。魔王の手下に操られおって!地上を脅かす魔物め!このアルキード王が滅ぼしてくれるわ!!!」

 

地上を脅かす魔物め!アルキード王のその言葉にバランは怒り、悲しみ、そしてやるせない気持ちを抱え、自嘲気味に笑った。

 

(地上を守るため、命をかけて冥竜王ヴェルザーと戦ったというのに…最期は守った人間に殺されるとは…なんとも皮肉だな…)

 

処刑人がメラミの炎を再度手に灯すのを確認したバランは目を閉じ、妻ソアラと息子ディーノ2人の笑顔を思い浮かべた。

 

(それでも…お前たち2人を守れたと思えば命をかけた甲斐があったというものだ…ソアラ…ディーノ…幸せに暮らせよ…)

「うてーーー!!!」

 

複数のメラミの炎が処刑人の魔法使いの手から放たれ、着弾したバランの身体は激しい炎に包まれた。全身を焼かれる激痛に耐えながら、バランの脳裏にはソアラとディーノと過ごした穏やかで幸せな日々が浮かんでいた。戦いに明け暮れ身体も心も疲弊したときに助けてくれたソアラの太陽のような温かさ。本来子供を持たないはずの竜の騎士が子供を持てたことへの奇跡、そして日々成長していくディーノへの愛おしさ。

 

(二人に出会えて私は幸せだった…もし・・・叶うなら・・・・・・・・)

 

意識が消えゆく最期の時、バランは悲痛な女性の泣き叫ぶ声が聞こえたような気がした。

 

 

 

魔界の神バーンがいる居城バーンパレス、その玉座の間にて竜の騎士バランが処刑される様を映像を通じ見ていた者がいた。魔界の神を名乗るバーン、その側近ミストバーン、死神キルバーンと使い魔のピロロである。彼ら4者は冥竜王ヴェルザーを倒した竜の騎士の動向を常に探っており、人間の女性と関係を持ち子供を作ったことを、人間の影に潜ませたシャドーや悪魔の目玉からの情報より得ていた。そして、アルキード王国で竜の騎士が処刑されることを知ったバーンは3者を呼び出し、バランの最期を共に鑑賞していたのだった。

 

「竜の騎士の最期にしてはあっけないものだな」

「僕もバーン様に殺されるかと思ってましたが、まさか人間に殺されるとは思いませんでしたね」

「処刑だ!処刑だ!キャハハ!」

「…」

 

映像では聖母竜マザードラゴンが降臨し、死んだ竜の騎士を回収して飛び立つ様子が映っていた。急に現れたドラゴンに群衆はパニックとなり四方八方に逃げ出し、兵士たちはどうすればよいか分からない様子で武器を持ちながら右往左往する様が見て取れた。その滑稽な人間の姿にバーンは鼻で笑った。

 

「うふふ、それにしても人間って愚かですね。自分たちを命懸けで守った竜の騎士様を自分たちの手で殺しちゃうんですから。まぁ、ショーとしては楽しめましたけど」

「ふっ、だがこれで地上侵略の最大の障害は消えた。たとえ聖母竜が次世代の騎士を生んだとしても、竜の騎士として覚醒するには最低でも15年はかかる…が、その前に地上は跡形もなくなっておる。…気がかりは竜の騎士の子供か。ミストバーンよ、悪魔の目玉に命じよ、竜の騎士の子供の行方を追えとな」

「…」

 

ミストバーンが悪魔の目玉に竜の騎士の子供を探すように手を振り合図し、指示を受けた悪魔の目玉はその意図を察し、世界中に点在する悪魔の目玉に子供の動向を探るよう伝えた。

 

「殺すので?」

「殺すのはたやすい。なに、拾って育ててみるのも一興だとおもうてな。本来生まれないはずの竜の騎士の子供が父の敵を討つため人間を滅ぼす。なかなか良いと思わんか?」

「うふふ、バーン様もいい趣味をしてますね」

「貴様ほどではない、キルバーン」

 

バーンはのちに結成する六大軍団の軍団長に就任させるのも一興かもしれんと考えながら、少し楽しげに手にしていたワインを飲み干した。

 

後日、悪魔の目玉の報告により竜の騎士の子供が乗っていた船が嵐で難破したことが判明した。バーンは流れ着いていることを想定し沿岸部を中心に悪魔の目玉に監視をするよう指示したが、船の残骸や人間の死体が流れ着いたとの報告はあったものの、赤子が漂着したという報告が出ることはなかった。





バラン大好き!バランが活躍する話が見たい!ダイ君と一緒に旅してほしい!
バラン父さんとソアラ母さんとダイ君が一緒にいる姿が見たい!幸せになってほしい!
でも、バランを主人公にすると、大魔王バーンの監視から逃れるのは難しい…。
ダイ君の活躍も影が薄くなっちゃう…。
そうだ!バラン父さんを殺せばいいんだ!

バランの活躍を見るため好きなキャラの処刑シーンを第一話にするという暴挙を働きました。
ソアラ母さんはかわいそうなことになりましたが、最後には幸せにします!

報告:誤字脱字修正しました!報告ありがとうございます。
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