ダイの大冒険 ―次世代の竜の騎士ー   作:キャットテールの鈴

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ソアラ母さんが登場します。


11_家庭教師とアルキードの欠けた月

レグルスは明かりを消した暗い室内にて窓際に立つと窓の外を眺め、暗い夜空に浮かぶ欠けた月をじっと眺めていた。レグルスは睡眠時間が短いため、いつも誰よりも遅く就寝し、誰よりも早く起床していたため、寝る前にはよく夜空を見てたりしていた。ポップとラーハルトはベッドで寝息を立てて寝ていたが、アバンはまだ起きており、アバンは寝ている2人を眺めた後、窓際に立つレグルスに近づいてきた。近づいてくる気配に気づいたレグルスは後ろを振り向くと小声でアバンに声をかけた。

 

「アバン先生、明日は早い、そろそろ寝たほうがよいのではないか?」

「本来ならそれは大人である私が言う言葉なのですがね。ちょーっと考え事して、眠れなくなってしまったのです」

「なるほど、それで私に声をかけたのだな?」

「ええ、レグ君、よければこの後―」

 

アバンが言い終わる前に、レグルスは指先を向けると魔法を唱えようとした。

 

「ラリ―」

「ストップ!レグ君、ラリホーは必要ありません!」

「む?眠れないからラリホーかけてもらいたくて声をかけたのではないのか?」

「違いますよ!眠れないのでよければ散歩でもしないかと誘おうとしたのですよ」

「そういうことか、分かった。一緒に行こう」

 

レグルスは窓際から離れると、アバンの側に行き、共に部屋の外につながる扉まで歩き出した。

 

「レグ君、ラリホーですが、今後は相手がかけてほしいと言った時だけ魔法をかけましょうね」

「なぜだ?ラリホーなら確実だろう」

「眠れないときはホットミルクを飲んだり、一緒に話しをして過ごすのですよ。人にもよりますがね」

「そうなのか…分かった、今後はそうしよう」

 

宿屋を出た2人は月明かりが差し込む人気のない道をゆっくりと歩き、人がいない港に着くと立ち止まり真っ暗な海を眺めながら周囲に響く波の音を聞いていた。

しばらくすると、アバンは内心少しドキドキしながら隣に立つ少年に話しかけた。

 

「今日、ポップと一緒に広場に行ってきたのですが、そこで興味深い話を聞きました。10年ほど前、この国の姫と男性がテランに駆け落ちし、駆け落ち先で子供を授かったという話です」

 

アバンは真剣な表情をすると隣に立つレグルスに目を合わせ、レグルスもアバンに視線を合わせた。

 

「レグ君。ソアラ姫とバラン、そして2人の間に生まれた子供に何か聞き覚えはありませんか?」

 

アバンはレグルスからの返事を待つ間、時間として少しであったがその時間がとても長く感じた。レグルスはじっとアバンを見返した後、ゆっくりと口を開いた。

 

「ああ、聞いたことがある」

「!!本当ですか!よかったらレグ君が知っていることを…教えて、下さい…」

 

アバンはレグルスが知っていると発言した時は、バランの記憶があるのではないかと嬉しそうに声を上げたが、レグルスの表情を見てアバンの言葉は段々勢いをなくし最後は尻すぼみとなってしまった。ソアラとバラン、その子供を知っていると言ったレグルスの表情は無表情で、とても関心があるようには見えなかったからである。

 

「以前、父上からテランに駆け落ちした夫婦とその子供の話を聞いたことがある。妻の方はこの国アルキードのソアラ姫であり、アルキード兵士によって夫婦と子供は連れていかれたと。父親の方は王族誘拐の罪で処刑され、子供は別の国に連れていかれる途中、船が難破して亡くなったと。そう聞いた」

「…そうですか、フォルケン王が…ちなみにレグ君がこの話を初めて聞いた時、何か感じましたか?ビビッ!と来るような、これだ!と思ったりはしましたか?」

 

レグルスは少し首を傾げて変わった質問をしたアバンを見ていたが、すぐに当時初めて話を聞いた際の自分を思い出し、特に変わったことはなかったため首を横に振った。

 

「特に何もない」

「…そう、でしたか。もう一つ聞きたいのですが、子供の名前は分かりますか?」

「聞いていない」

「何か!何でもよいので思いついた名前を言ってください!」

「?私が名前を考えるのか?言っとくが、合ってないと思うぞ」

「構いません!レグ君が思った名前でよいので言ってみてください!」

 

レグルスはアバンの頼みに少し戸惑いながらも目をつぶると子供の名前を考え、思い浮かんだ名前を呟いた。

 

「…ゴンザレス」

「ゴンザレス!それが、その子の名前なのですね!?」

 

アバンは子供の名前を嬉しそうに言ったが、レグルスの名前つけは1つだけではなかったため、喜びはすぐに消えた。

 

「ゴンザレス、エッジ、アレン、ジャック、カルロス、チャッピー、ヘロロン…こんなものか。どうであろうアバン先生、思いついた名前を言ってみたが」

「…ありがとうございます、レグ君。多分、違うような気がしてきました…」

 

アバンは少しガックリしながらレグルスにお礼をした。

 

「そうであろうな…?アバン先生、何かあったのか?」

「ん?何がですか?」

「…ホイミ」

「レグ君?私は怪我をしてないですよ?」

 

アバンは怪我をしていないにもかかわらず、急に回復魔法をかけたレグルスに疑問を持ちながら表情を見た。そこには先ほどの無表情とは違い心配そうに見上げるレグルスがおり、アバンは少し驚きながらも子供の表情の変化を内心複雑に思っていた。

 

「アバン先生が辛そうにしていたからな…どこか痛めてたのではないか?」

「そうでしたか…心配かけてしまいましたね。私は大丈夫ですよ、回復魔法ありがとうございます、レグ君」

「そうか、痛みがなくなりなによりだ」

 

アバンは笑顔を浮かべ感謝を述べると、レグルスはほっとした表情をした。

アバンは先程のやり取りの中で無表情に話を聞いていたレグルスと、アバンを心配して回復魔法をかけた目の前のレグルスを見て、レグルスの関心が過去にはないことを少し悲しく、そして心配してくれたことに対して嬉しく思った。

 

(…レグ君にとってはソアラ姫、バラン、子供のことは記憶がない以上、過去の出来事なのでしょうね…思い出してほしいと考えるのは私のエゴなのでしょうか…ですが、1年もしないうちに魔王が攻めてきます。記憶を思い出した時には後の祭りという事態だけは避けたいところですが、レグ君がバランの記憶を思い出さない限りはどうにも手の出しようがありません…ソアラ姫の居場所も分かりませんでしたし、困ったものです…)

 

解決方法が分からず、アバンはうーんと唸りながら悩んでいると、レグルスは首を傾げ、訝しげにアバンを見つめた。

 

「アバン先生、本当に大丈夫か?頭痛でもあるのではないか?」

「大丈夫ですよ、ちょーっとした悩み事です。頭は痛くないので問題ないですよ」

「そうか、私は今日初めて頭痛というものを経験したが、あれほどひどい症状だとは思いもしなかった。多くの民があの病に苦しめられていたのだと思うと無関心でいたのを申し訳なく感じる」

 

レグルスは父親や多くの民が頭痛により弱っている姿を目撃したことがあったが、これほど痛みを伴うものとは考えていなかったため、頭痛は想像以上にひどい病だと認識を改めた。そのため、悩んでいたアバンを見て頭痛があるのではないかと心配したのだった。

 

「頭痛はポピュラーな症状の一つですからね」

「まさか、額から血が出るとは…頭痛、恐ろしい病だ」

「…レグ君、普通の頭痛は額から血は出ませんからね」

「む?そうなのか?」

「出ませんよ!レグ君の頭痛は他の人が経験する頭痛とは原因が違います。そのため、他の人は額から血は出ません。痛みは個人差がありますが、多くはレグ君が受けた痛みよりは小さいと思いますよ」

「そうか、それならよいのだ」

 

レグルスは父親や民が経験する頭痛が日中経験した痛みより小さいと知り少し安心しながら、空を見上げた。そこには欠けた月が先ほどよりも移動しており、到着した時より時間が経っていることを確認するとアバンに声をかけた。

 

「アバン先生、夜も遅い、そろそろ寝なければ明日に支障をきたすのではないか?」

「そうですね、戻りましょうか。レグ君、お話に付き合ってくれてありがとうございます」

「私も暇していたから問題ない。戻るとしよう」

 

レグルスとアバンはラーハルトとポップが寝ている宿屋まで来た道を歩いて戻った。戻る際中、レグルスは空を見上げた。

 

そこには、真っ暗な夜の闇の中、欠けた月が空に浮かんでいた。

 

 

 

早朝、宿屋から出た一行は船に乗るため港の船着き場に向かって歩き、アバンが歩きながらレグルスに話しかけた。

 

「レグ君、もうじきこの国を出ますが…なにか、やり残したことはありますか?」

 

レグルスは昨日同様にアバンの変わった質問の仕方に疑問に思いつつアバンを見上げると、普段ニコニコしているアバンが真剣な表情をしていた為、内心驚きつつも、何か忘れてることがあったか思い出そうとした。だが、何も心当たりがなかったため、首を横に振りアバンを見上げた。

 

「いや、特にない」

「そうですか…もし気になることがあって、ここに戻りたいとかあれば言ってくださいね」

「…分かった」

 

レグルスの返答にアバンが何処か悲しそうな目をしていたため、レグルスはしばらくやり残したことについて何かないか思い出そうとしたが、何度考えてもやり残したことについて思い当たることはなかった。

そして、アバンとの旅の間、レグルスは一度もアルキードに行きたいと発言することはなかったのだった。

 

レグルス達一行は朝日が差し込む中、船に乗るとアルキード王国を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルキードの王都から離れた周囲に人が住んでいない深い森の中、そこにはレンガで作られた立派な離宮が聳え立ち、入口には兵士が警備として配置されている。

 

その離宮の最上階、窓から差し込む月明かりで明るく照らされた部屋には長い黒髪の美しい女性が椅子に座りゆっくりと体を前後に揺らしながら腕に抱えていたものに対して優しげな笑顔を向けた。

 

「ミルクのんでお腹いっぱいになったわね。ふふっ、眠そうね」

 

女性は腕に抱えていた赤子を縦抱きにすると、背中をポンポン優しく叩きながら赤子に話しかけた。

へんじがない。

 

 

女性は窓の外に目をやり暗い夜空に浮かぶ欠けた月を見た後、腕の中の赤子に話しかけた。

 

「お父さんは今どこにいるのかしらね?お父さんは私たちのため、世界の平和のために戦っているのよ」

 

へんじがない。

 

 

 

 

女性は腕の中の赤子を部屋に置かれたベビーベッドにそっと置いた後、毛布をかけ、優しげな声で赤子に話しかけた。

 

「さあ、よるも遅いし そろそろねましょうか」

 

へんじがない。

 

 

 

 

女性は寝ている赤子の頭を優しくなでながら嬉しそうに赤子に話しかけた。

 

「ふふっ あなたがいるからおかあさんはまいにちしあわせよ」

 

あかごから へんじがない。

 

 

 

 

 

 

 

女性は、ソアラは笑顔を浮かべながら赤子に愛しげに話しかけた。

 

 

 

「おやすみ ディーノ」

 

 

 

あかごから へんじはない。

 

 

 

あかごは ただの にんぎょう のようだ。

 




ソアラはあかごをしらべた。
へんじがない。ただのにんぎょうのようだ。
ソアラはあかごをしらべた。
へんじがない。ただのにんぎょうのようだ。
ソアラは…

ソアラは今とても幸せです。
なぜならディーノは赤子としてずっーと側にいて、夫は家族のために戦っているからです。
ソアラは幸せな夢を見ています、いつまでもずっと、永遠に続く夢を。

欠けた月、欠けた心。心が欠けているのは―
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