ダイの大冒険 ―次世代の竜の騎士ー   作:キャットテールの鈴

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ベンガーナに立ち寄ったレグルスとラーハルトは、メルルとナバラを訪ね、ある場所を水晶で映してもらう。そこに映っていたものは…。
ダイ(12)、主人公レグルス(10)。


16_水晶の先の悪夢

テランを出発したレグルスとラーハルトはアバンとの約束の日まで時間に余裕があったため、途中にあるベンガーナ王国のデパートに立ち寄りメルルとナバラを訪ねていた。

 

「レグさん、ラーハルトさんお待たせして申し訳ございません」

「いや、こちらも急に訪ねてしまったからな。それよりも、メルルとナバラが無事で何よりだ。…商売はうまくいっているようだな」

「おかげさまでね。こんなご時世じゃ占いに頼りたくなるんじゃろうよ。パプニカは無事ですか、カールは無事ですか、どこに逃げればいいんですか?…そんなんばっかじゃよ。おかげで見たくないものをさんざん見るはめになっちまった、あたしゃ疲れたよ…」

 

レグルス達が占い師であるメルルとナバラを訪ねにデパートを訪れた時、占いの列には多くの人が並んでいたため、離れた場所で待機し、客が途切れるのを待つこととなった。デパートには多くの客が訪れ、武器や防具を抱えた兵士、食料を買い求める人々でデパート内は大混雑し、商品棚は空の個所も目立っており、魔王軍襲撃の影響が出ていることがうかがえた。

客が途切れたタイミングで店じまいをしたメルルとナバラは疲れた表情でレグルス達に合流した。

 

「少し話したいのだが、ここでは休めないだろう。どこか個室があるレストランがあればよいのだが…」

「それでしたら私たちが借りている宿屋をご案内します」

 

混雑するデパートを出た一行はメルルとナバラが泊っている宿屋に着くと、席に着きお互いの現状や世界情勢などの情報共有を行った。

 

「私たちはお客さんの依頼で各国の現状を水晶を通して知っております。そこで分かったのは、敵は世界中の王国を同時に攻撃しているようでした。一番侵攻が激しいのはパプニカ、リンガイア、オーザム…、侵攻は受けていますが被害がまだ軽微な国はロモス、カール、アルキード、そしてここベンガーナです」

「唯一侵攻を受けていない王国はテランのみか…。無事でよかったが、少し複雑だな…」

「そうですね、ですが私は侵攻を受けてないと知ったときは安心しました。パプニカやリンガイア、オーザムを見ればテランが同じような侵攻を受けていれば今頃テランは…。侵攻を受けている国の人には申し訳ないとは思いますが…」

「魔王を倒さない限りテランへの侵攻も時間の問題だろうがな…。ナバラ殿、水晶で見ていただきたい場所がある。ロモスがあるラインリバー大陸より南、怪物島と言われるデルムリン島の様子が知りたい」

「ふぅ、今日で水晶を見るのは何回目だろうね。ちょっとお待ち」

 

ぐったりした様子で椅子に座っていたナバラはだるそうに懐から水晶を出すと机の上に置き操作を始めた。だが、しばらく経っても水晶には映像が何も映らなかった。

 

「おかしいね…何かが邪魔していて見ることが出来ないようじゃ」

「ナバラ殿、離れた海上から島を見ることは出来るか?」

「ちょっとお待ち…むむむ、見えた!」

 

水晶が輝きだすと水晶には海に囲まれた島が映し出され、その島全体は何か光り輝くものに覆われていた。

 

「この光はなんだ?」

「これは破邪呪文マホカトールか!天界の精霊が得意とする呪文だ、まさかアバン先生が使えるとはな」

「マホカトールですか?」

「ああ、光の五芒星の魔法円を地面に描き、魔法を発動することで邪悪な力を祓い清める効果があり、この魔法を使えば魔王の悪意ある意志も清め防ぐことができる!おそらく先ほどナバラ殿が見えなかったのはマホカトールの結界のせいだろう」

「さすがアバン殿、それだけの呪文を扱えるとは!レグルス様も流石の博識です!」

 

ラーハルトはマホカトールの解説を聞くと驚きの表情をしながらも嬉しそうにレグルスを見つめ、内心さすがは俺の主と褒めたたえていた。

 

「天界やら精霊とか気になる言葉も出てきたが…まあ、今はいいかの。どれ、どこかに人はいないか…の?な、なんじゃあ!?」

 

水晶を操作していたナバラが急に驚愕の声を上げたため、周りにいたものは驚いてナバラを見つめた。ナバラが声を上げた後、水晶に映っていた映像は消え、何も映し出されていなかった。

 

「おばあさま?どうかしたの?」

「う、海の上に人が!?いや、人ではない!恐ろしい、大きな悪意を持った何かじゃ!」

「…ナバラ殿、何か居たのだな?」

「はいっ!」

「映し出せるか?」

 

顔色を悪くしたナバラは震える手で水晶を操作すると、デルムリン島の映像が映し出されたが、先ほどと違い、そこには頭から足元までをすっぽり包む黒いマントを羽織った人型の何かが海の上に立ち、島に向かって移動していた。

 

「こ、これは!」

「恐ろしい、巨大な力と悪意を感じます…!」

「ナバラ殿、この者の顔を映せるか」

「…はい!」

 

水晶の映像は徐々に場所を移動すると、海上を歩いているマントを羽織った者の正面に回り、その者の顔が映し出された。肌の色は緑色、表情は勝ち誇った凶悪な笑みを浮かべており、頭の角のような突起は種族を考えると尖った耳であることがうかがえた。水晶に映し出された人物を見た瞬間、ラーハルトは息を呑み、驚きの表情を浮かべた。

 

「魔族!!」

「この魔族は…」

「レグルス様、この者を知っているのですか?」

「これは推測に過ぎないが…世界中で魔王軍が侵略し、このタイミングで15年前魔王を討ち取った勇者アバンの前に現れた魔族。思い当たる者が1人いる…!」

「まさか…!魔王ハドラー!!」

「なっ!!」

 

メルルとナバラは怯えた表情を浮かべ水晶に映る魔王ハドラーを見つめ、ラーハルトは驚愕の表情を浮かべると焦った様子で机に両手をついて水晶に向かって声をかけた。

 

「くそっ!ポップ!アバン殿!そこから離れろ!魔王が来るぞ!メルル、何とか島にいる2人に声を届けられないか!?」

「で、出来ません!この水晶はこちらから見ることしかできません!こちらの声は届きませんし、向こうの声も聞こえないんです!」

「くっ!」

 

ラーハルトは立てかけてあった槍と剣、荷物を持つとレグルスを見ながら必死の表情で声をかけた。

 

「レグルス様!デルムリン島に行きましょう!急げば間に合うかもしれません!」

「…残念ながら、間に合わないだろう。どんなに急いでもここから島まで、最低3日はかかる」

「俺が!俺が、レグルス様を抱えて走ります!夜も走り続ければ―」

「例え夜間も含めて移動したとしてもアルキードからデルムリン島までは海が広がっている。舟を漕ぎ続け、バギで風をおこし、海上を素早く移動したとしても…それでやっと3日だ。着いた頃には戦いは終わっている…」

 

ラーハルトはレグルスの言葉に助けに行くことは不可能だと悟ると、唖然とした表情で体の力を抜き、武器を持った両手を下げた。

 

「…では、…我々は見ていることしかできないと?」

「ああ…。現状、短時間でデルムリン島に行く方法は移動呪文のルーラか合流呪文のリリルーラだけだ。…ルーラ!…リリルーラ!…やはり発動しないか」

 

レグルスは自分の中にルーラとリリルーラの呪文があることは感じていたが、レベルが足りないのか、呪文を唱えても魔法は発動することなく不発に終わった。助ける方法が分かっていながら実行できない状況にレグルスは歯を食いしばりながらも、もどかしい気持ちを押し殺していた。

ラーハルトは持っていた武器をもとあった場所に立てかけると力なく椅子に座り、水晶に映る魔王ハドラーを見ると忌々しそうに睨みつけた。

 

「ラーハルト、アバン先生とポップは実力者だ。たとえ相手が魔王であっても簡単にやられたりはしない…彼らの勝利を信じよう」

「はい…ポップ、アバン殿。死ぬなよ…!」

 

水晶に映る魔王ハドラーは島に張られた結界を破り中に入ると島の中央に向かって進んでいった。ナバラは水晶を操作すると視点を島の上空、マホカトールの結界の外から島を見下ろすように視点を変えた。島の山の麓付近には小さいが何人かの人影が見え、服の色からしてアバンとポップらしき人影がいることが分かった。しばらくするとアバン達の元に黒いマントを付けた魔王ハドラーが接近すると、一定の距離を保ち対峙した。

 

そして、映像は人影が小さくよく見えないが、戦いが始まった様子がうかがえた。

 

「魔王が魔法を放った!アバン殿に当たったが、魔法が消えた?」

「魔法を相殺したのだろう。アバン先生が魔法を放った、あれはベギラマか?…水晶ごしだとよく見えないな…」

「これが限界じゃ!結界がなければもっと近くで見えるんじゃが!」

「ナバラ殿がいなければ私もラーハルトも戦いが起きていたことすら知らなかっただろう。感謝している」

「緑色の人物と青い人物が動き出しました!」

 

アバンの後ろにいた2つの人影がアバンの左右に並ぶとハドラーとの戦闘に参加しだした。緑色の人影はポップだが、もう一人は見覚えがないため、この青い人影はアバンが言っていた勇者に育てると言っていた島に住む少年ダイだろうとレグルスは推測した。

 

ポップはアバンとダイの背後から左右に移動しながらヒャド系の呪文でハドラーに対して攻撃し、アバンとダイは剣術でハドラーに対して攻撃をしているようだった。ポップと思わしき影が魔法を放ち戦っているのを見たラーハルトは驚きに目を見開いた。

 

「ポップ…お前は逃げずに戦っているのだな…」

「アバン先生達の攻撃が効いているようだ、ハドラーが後退している!」

「このまま行けば、皆さん勝てるかもしれないのですね!」

 

水晶を通して戦いを見守っていた一同はアバン達の攻撃が優勢であることに喜び、誰もがこのままいけば勝てると希望を抱いていた。

アバンが放った光の斬撃、アバンストラッシュを放ち、それを受けたハドラーは大きく後退、アバンとダイが追い打ちをかけるようにハドラーに近づいた時、それは起きた。

 

「魔王の両手が光りだした!」

「まずい!あれは―イオナズン!」

 

形勢は逆転した、悪いほうへ。

水晶に映る画面は巨大な爆炎により一時的に何も見えなくなり、イオナズンの威力を目の当たりにした一同は先ほどの喜びから一転、顔を青ざめて映像を見ることとなった。

 

「ポップとアバン殿は!?何も見えない!」

「居ました!大丈夫です、動いています!」

「…まずい状況だ」

 

ポップとダイと思わしき人影はアバンのいる位置から後方へ大きく移動しており、イオナズンの爆風で吹き飛ばされたことがうかがえた。2人の人影は動いてはいるがその場から移動する様子がないため、生きてはいるが動くことができない状況である様子だった。そして、アバンは倒れ伏している2人に近づき、何かすると2人の身体の色が灰色に変化した。そして、しばらくアバンは2人の傍を離れなかった。

 

「アバン様はお2人に何かしたのかしら?お2人の身体の色が変わったわ」

「身体の色が灰色に変化し、今まで動いていた2人が一切動かなくなった。…これはアストロン。身体を鉄の塊に変化させ、あらゆる攻撃や呪文を防ぐ魔法だ…」

「アバン殿はお1人で戦うつもりか!」

 

水晶の映像ではアバンが2人の傍から離れると魔王ハドラーと対峙し、アバンと魔王ハドラーとの戦いが始まった。双方近づいては攻撃し、相手からの攻撃には離れるといったことを繰り返し、時折魔法による攻撃もあったが、接近戦ではアバンが優位の戦いが画面上で繰り広げられていた。

だが、ハドラーによる魔法攻撃でアバンの動きは徐々に鈍くなっていき、とうとうハドラーの一撃がアバンに決まってしまう。

 

「ひっ!」

「アバン殿!」

「っ!…アバン先生がハドラーを攻撃した!あれは―」

 

アバンがハドラーに何かしたのが見えた後、水晶の映像はいきなり光り輝いた。

 

「うっ!」

「うひゃぁぁぁ!な、なんじゃあ」

 

あまりの眩しさに一同は目をつぶり、水晶を操作していたナバラは手を止めてしまい、映像には何も映らなくなった。

 

「今の光は一体…」

「……メガンテ」

「えっ?レグルス様、今なんとおっしゃいましたか?」

 

映像に映った光に一同は驚いている中、レグルスが唖然とした表情で小さく何かつぶやいたが、周りの者は聞き取れなかったため、レグルスに何と言ったかを聞き返した。

 

「メガンテ…先ほどの光、アバン先生がメガンテを放った際の光だ…」

 

レグルスの言葉に一同は息を呑み、アバンの身に何が起きたのかを理解すると何も映さなくなった水晶を啞然とした表情で見つめた。メガンテ、自己犠牲呪文として知られており、使用者は必ず死ぬが相手に対して特大ダメージを与えることが出来る。その呪文をアバンが使用したということはアバンが死んだことを意味していた。

 

「…ナバラ殿、先ほどの場所を映していただけるか」

「分かっておる…」

 

水晶に先ほどと同じ場所の映像が映し出されると、離れた場所にいるポップとダイと思わしき人影はアストロンが解除されておらずそのままの場所にあり、一方のアバンがいた場所は何もなく、そして、魔王ハドラーは生きて同じ場所に存在していた。

 

「そんな!アバン様が命までかけたのに!」

「魔王め!まだ生きているのか!まずい、ポップはアストロンで動けない!このままでは―」

「いや、どうやら動けないのはハドラーも同じらしい。見ろ、生きているがその場から移動する様子がない」

 

画面の中ではポップ、ダイ、魔王ハドラーはその場から動かず、しばらく同じ場面が続いていたが、アストロンが解けたようでポップとダイの人影の色が灰色から変化し、元の服の色に戻ると、2人のうちの1人、青い人影が動き出しハドラーのもとへ駆け出した。

 

「青い人影が動きました!」

「このまま魔王を―っ!くそっ!魔王が逃げた!」

 

青い人影、ダイがハドラーに接触しようとしたその時、ハドラーはルーラ特有の光の軌跡を出しながらその場から脱すると、どこかへと飛び立ち、見えなくなってしまった。

 

「どうにか…危機は脱したようですね…」

「…アバン殿のおかげだ。ぐっ、俺とレグルス様がいれば魔王にも後れは取らなかった!アバン殿を失うこともなかった…」

 

アバンを失った悲しみ、アバンの命を奪うきっかけとなった魔王ハドラーへの怒り、自分への不甲斐なさにラーハルトはひどく感傷的になりながら顔をゆがませ、足元を見た。そんな時、強く、怒りのこもった低い声が隣から聞こえたため、ラーハルト少し驚きながら顔を上げるとレグルスを見つめた。

レグルスの表情はいつものような無表情に近かったが、水晶を睨みつける目が冷酷で強い怒りをこもった殺気を放っており、あまりの恐ろしい殺気にラーハルトは無意識に息を呑むと、震える手を強く握りしめた。

 

「ラーハルト、必ず地上の平和を脅かす者どもを倒すぞ!テランのためにも、そして…アバン先生のためにも!!!」

「!!はいっ!」

 

レグルスはアバンを失った際の強い怒りを感じながら、水晶に映る映像を見つめた。

アバンがいた場所は、大きな円形のクレーターが残るのみでアバンがいた痕跡は何もなかった、何も残っていなかった。

レグルスは水晶から顔を上げ、部屋にいる3人を見た、守るべきテランの国民であり、大切な仲間を。目を閉じると故郷のテラン、父とテラン国民、そしてここにはいない共に旅し大切な時間を共に過ごしたポップと今は亡きアバンを思い浮かべた。

 

(アバン先生を奪った魔王軍を絶対に許しはしない!必ずこの手で滅ぼしてくれる!!…これ以上、何人たりとも私から、私の宝を奪わせはしない…!私の宝に触れるものには目に物見せてくれる!!!)

 

レグルスの強い怒りと大切なものを宝と称し守ろうとする様は、まるで宝を守り、宝に近づく敵を執拗なまでに排除するドラゴンの特徴に似ていた。レグルスは怒りを抑えるため唇を噛み締めると、切れた傷口から血が流れ、口の中に血の味が広がった。

 

 

 

翌朝、レグルスは眠りから覚めると、メルルとナバラがベンガーナで泊っている宿屋の部屋、昨日水晶を通して魔王ハドラーとの戦いを見ていた部屋で上半身を起こすと、ゆっくりと周りを見渡して寝ている3人の様子を確認した。メルルとナバラは部屋に備え付けのベッドに寝ており、ラーハルトは同じく部屋に備え付けのソファに横になり静かな寝息を立てて寝ていた。

レグルスはラーハルトと一緒に寝ていたソファから降り、窓の外を見ると、地平線が明るくなりつつあることから今は夜明け前であることを確認した後、足音を立てずにナバラが寝ているベッドに近づくと、肩を叩き、周りを起こさないように小さな声で呼びかけた。ナバラは呼びかけに目を覚ますと、眠そうな表情をしながらもゆっくりと起き上がった。

 

「ナバラ殿、寝ているところ悪いがそろそろ夜明けだ。デルムリン島の様子を見せてもらいたい」

「ふあぁっ…まったく、こんな日も昇らないうちから…うちの王子は人使いが荒いね。まあいいさ、あたしが役に立つのはこんな時ぐらいだろうからね」

「感謝する。おそらく島から出るとしたらそろそろ準備していてもおかしくないと考えている」

「分かったよ、お待ち…むむむ、出た!レグルス様の言う通りじゃ、島の子が準備しているよ」

 

ナバラはベッドの上で姿勢を正し、水晶を手に乗せるとデルムリン島の映像を映し出した。島の海岸近くは結界の境界線近くのため、昨日の離れた場所から映像を映していた時と違い、近くの映像を映し出すことが出来、海岸の舟に荷物を載せる、見かけない青い服を着た少年の姿がはっきりと映し出されていた。

 

「この子がダイか?」

「おそらく。この子以外、人間の姿を見ておりません」

 

島の少年ダイは水が入った竹筒を舟に載せようとしており、離れた砂浜には肌が灰色の鬼面道士が少年を心配そうに見つめ、その近くには食料が一か所にまとめられていることから今日中に出発しようとしていることがうかがえた。

 

「どうやら今日中に島を出るようだな、こちらも準備するか」

 

レグルスはラーハルトが寝ているソファに近づくと耳元近くで声をかけた。

 

「ラーハルト起きよ、ロモスに行く準備だ」

「っ、はい、承知しました」

 

ラーハルトがレグルスの呼びかけで起き上がりソファから降りると、その際の物音でメルルもベッドから起き上がり、それぞれ身支度をし始めた。

 

「朝食を用意しますね」

 

メルルは簡単に服装を整えた後、食事を取りに行くと言って部屋を出た。ラーハルトは水晶の映像で食料を舟に載せる少年を見た後、ゆっくりと準備を進める主を不思議そうに見た。

 

「レグルス様、ポップ達が島を出る前に我々は出たほうがよろしいのではないですか?ここからロモスまでは我々の方が時間がかかります」

「本来ならそうなのだが、ここから出るとポップ達を確認する手段がない。島を出たのを確認してからここを出たほうが確実だろう。ポップ達にはロモスで待たせてしまうことになるがな…」

「なるほど、かしこまりました。メルルが食事を用意しているため、それを食してから我々もここを出ましょう」

 

レグルスとラーハルトは水晶に映る映像を見ながら道具の手入れや、地図を確認し、すぐに出られるよう事前準備を行った。

メルルが食事を持って部屋に戻ってくると一同は部屋の机を囲んで朝食をとり、その間は一時的にナバラも操作をやめていたため水晶には何も映し出されていなかった。食後しばらくしたのち、映像ではダイとポップが舟を動かし始め、鬼面道士が見守る中、島を出ようとしている様子が映っていた。

 

「レグルス様、舟が出ますのじゃ!」

「分かった、ラーハルト我々も出るぞ!」

「はっ、準備は完了しております!」

 

武器を持ったレグルスとラーハルトは扉の前まで行くと、その場で振り向き部屋にいるメルルとナバラを見た。

 

「ナバラ殿、メルル殿、此度は感謝している。2人がいなければ我らは何があったのか知らずにいただろう」

「あたしゃ、自分が出来ることをやったまでさ。それより2人とも気を付けるんじゃぞ」

「また、近くを通った際は顔を見に立ち寄る。元気でな!」

「ええ、お二人に竜の神の加護があらんことを!」

 

レグルスとラーハルトは部屋にいる2人に笑みを浮かべた後、部屋を出てロモスへ向かって旅立っていった。

メルルは部屋を出た後もしばらく入口の扉を心配そうに見続け、心の中で2人の無事を祈り続けていた。

 

 

 

次の日の夕方、デパートから帰ったメルルとナバラは疲れた表情をしながら、宿屋に備え付けられた椅子に座ると力を抜いて息を吐いた。

 

「つ、疲れたわい…なんじゃ、今日の込み具合は…」

「…きっと、昨日お店をお休みしたから、お客さんがたくさんいらしたのではないかしら…」

 

昨日はレグルスとラーハルトを見送った後、仕事をする気分になれなかったため、デパートの仕事を1日休み、今日お店を再開したのだが、あまりの混みようにメルルとナバラはまともに休憩をとる暇さえなく、宿屋に帰ってきたときには疲労困憊といった状況であった。

 

「はあ、やっとお2人の動向を見ることが出来る…仕事中、気になっていたんじゃ、ポップ達に合流することができたかどうかをのう」

 

ナバラは気だるげに懐から水晶を取り出すと、レグルス達を確認するため操作を始め、すぐに映像が映し出された。

 

「むむむ…出た。おお、どうやらロモスには着いたようじゃぞ!じゃが…ポップと島の少年はいないのう…」

「ここは港かしら?レグルス様、心配そうに海を見ているわ…」

 

ロモスと思われる港町にてレグルスは不安そうな表情をしながら夕日で赤く染まった海を見ており、ラーハルトは仮面をつけているため表情は分からないが、同じく不安な表情をしていることは想像ついた。

2人は同じ方向を向いて海を見ているため、おそらくデルムリン島の方角を向いてポップ達の舟が到着するのを待っていることがうかがえた。

 

「おかしいね、確かデルムリン島の方がロモスから近いから早く着くはずなんじゃが…どれどれ、ポップ達がどこにいるか見てみるかの。むむむ…出た!ん?ここはどこじゃ?」

 

映像には2人がいる姿が映し出されたが、場所はロモスではなく、深い森の中にいるようで、2人は地図を見ながら森の中を指すとその場を移動し始めた。

 

「ロモスではないわ…ここはどこの森かしら?」

「どれ上空から見てみるかの…むむむ?ここはロモスから大分離れた森の中じゃぞ!?」

「ポップさんたちはどうしてこんなところに?」

「分からん、舟が流されてしもうたのかものう…む、これ!そっちに行くんじゃない!そっちはロモスとは逆方向じゃ!あああ、行ってしもうた…」

 

映像の中ではポップ達はロモスとは逆方向の深い森の中を進んでおり、ナバラが思わず声をかけるが当然水晶に話しかけても声は届かないため、ポップ達は足を止めることなく森の中を進んでいった。

 

「おばあさま、どうしましょう…」

「どうにもならん。2人が気付いてロモスに向かうことを祈るしかないよ…」

 

ナバラは何も手伝い出来ないし、仕事のあとで疲れたこともあり、水晶を横にずらすと投げ出すように机に突っ伏した。

ナバラが操作しなくなった水晶は、何も映像を映さなくなり、本来の姿に戻った水晶は窓から差し込む夕日が当たったことできらりと光った。




レグルスとラーハルトはロモスに到着!ポップ達を探している!
ダイとポップは魔の森で迷子になっている!
メルルとナバラは仕事が多忙なため疲れている!

ちなみにダイ君は紋章を出していません!
出すと死神さんが来ちゃうので、アバン先生のみでハドラーを撤退させてます。

主人公のレグルスですが、実は人間の心が欠けた状態で生まれています。
原因はバランの死に際に起因しています。
バランは最期の時、守った人間たちに裏切られ処刑されており、その際に人間に対して絶望はしていませんが失望はしました。そのため、レグルスはバランと違って人間を守るべき対象と見ておらず、その他大勢の多種族の一つと見ています。
レグルスにとって 人間 = 魔族 = モンスター です。
正直、人間が殺されようが滅びようがどうでもよく、関心がないのです。
レグルスは自分を人間と思ってますが、人間を同族と見ていないため、進んで助けようとは思いません。ただし、関心がないため滅ぼそうとも考えてません。
欠けた人間の心ですが、実は修復することが出来ます。ただし、そのための条件が現時点では不足しております。

一方でソアラとディーノの幸せを願って亡くなっているので、愛する人や大切な人への想いはカンストしています。これは人の心が欠けた分、ドラゴンの宝を守ろうとする特性が強くなったためです。
レグルスの優先順位
?、? > 大切な人:フォルケン王、ラーハルト、カナル、ナバラ、メルル、アバン、ポップ、テラン国民 > 大切な人の想いや気持ち > 大切な人が大事にしている者

レグルスが関心がないはずの他人を助けるのは大切な人の想いを汲んでいるため。また、敵を先に排除することで大切な人に危害を加えられる前に対処しようと考えて行動したりします。

敵に対しては、戦闘マシーンとなり、冷酷で無慈悲なため命乞いする敵に対しても容赦なく殺そうとします。
バランは人間絶対滅ぼす!でしたが、
レグルスは魔王軍絶対滅ぼす!となりました!

報告:誤字脱字修正しました!報告ありがとうございます。
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