ダイの大冒険 ―次世代の竜の騎士ー   作:キャットテールの鈴

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次世代の竜の騎士の誕生


2_神の子

テラン王国にて国一番ともうたわれる占い師ナバラが大事なお告げがあると言い、城に訪れたのはまだ日が高いうちの日中であった。

 

「ここ何日か運命の星が強く輝いておる、これは神が地上に使者を遣わすためのモノやもしれん」

 

その言葉を聞いたフォルケン王は居てもたってもいられず、信頼厚い側近とナバラを連れ、竜の神が眠ると言い伝えられている湖を訪れた。湖では水鳥が優雅に泳いでおり、竜の神をかたどる石像が湖の真ん中に座している姿も変わらず平和そのものだった。神秘的な湖に改めて感動しつつも、何か変化はないか目を凝らして探したが何も見つからないため、側近の兵士に周辺の探索を命じつつ、訪れるかもわからない神の姿を待つため湖のほとりでフォルケン王は何時間もその場で待機した。日が沈み、夕暮れが訪れたころ、心配そうな表情をした側近がフォルケン王へ進言した。

 

「王よ、これ以上はお体に障ります。われらが寝ずの番をしますゆえ、王は城に戻りお体をお休めください」

「私を気遣ってくれ感謝する。だが、せめて日が変わるまではここに残るとしよう。神が訪れるとき、私はその場で出迎えたいのだ」

「かしこまりました。では城より食べ物をお持ちしますので、少しでも召し上がっていただきたく」

「うむ、よろしく頼む」

「占いでは今日中に訪れるとあります」

「分かった、では待つとしよう」

 

食事をとり、休憩を挟んだりもしたが、その場にいたものは皆、神の使者を待つため静かにその場で待機していた。夜が更け、日付が変わる深夜に差し掛かったころ、側近の一人が驚愕の表情を浮かべると空を指した。

 

「王!あれを!」

 

側近が指さした先をその場にいた全員が見上げると、光る何かが夜空を飛んでおり、暗い夜空の中でその光は一段と目立った。光が徐々に近づいていくにつれ、真っ暗だった湖の周りは昼間のように明るくなり、テランに住む人々は光に驚いて家から飛び出し、湖の周りには徐々に人々が集まり始めた。テランの民は空を見上げ、驚きの表情を浮かべながら空を指さす者、涙を流しながら手を組み祈る者などさまざまであった。そこに5歳ぐらいの小さな女の子が占い師ナバラのもとに駆け付けると、ナバラの身体にしがみつきながら空を見上げていた。

 

「おばあさま!この光はなに!?とても神聖な力を感じる」

「メルルや!起こしてしもうたか、お前さんも一緒にここにいなさい。あれはまさしく神の使者じゃ!」

 

光は徐々に高度を落としていき、人々はその光の正体をはっきり見ることができるようになっていた。

 

「おお…!あれぞまさしく聖母竜マザードラゴン!」

「なんて神々しい…」

 

神秘的な白い鱗に覆われたドラゴンは光り輝いており、その姿は伝承に記された竜の騎士を生む聖母竜マザードラゴンそのものであった。その場にいた人々は一人二人と自然に膝をつき、王を含む全員が両手を組み、その神に祈りをささげた。マザードラゴンが降りるのをやめ空中に停止すると、遠くからでは見えなかったその両前足に光に包まれた赤ん坊がいるのが見えた。

 

「私は聖母竜マザードラゴン。この赤子は天より遣わされた竜の騎士。この子をあなたたちに授けます」

 

テランの人々は聖母竜マザードラゴンが言葉を発したこと、そして竜の騎士を託すという言葉に祈りをささげる手を震わせながら内心驚愕と感動に包まれていた。テランは竜の神を信仰する宗教国家であり、竜の騎士は神の子とも神の使者と言い伝えられており、その赤子を育てるという大役にテランの民一同は震えあがった。そんな中、フォルケン王が目元を涙で光らせながらマザードラゴンに対し震える声で返事をした。

 

「マザードラゴンよ、神に誓って竜の騎士様を必ずや守り育てさせていただきます!」

 

フォルケン王は少しふらつきながらもマザードラゴンに近づき、光に包まれた赤子をゆっくり抱え上げた。赤子は寝ていたが、額にドラゴンの顔の形をした紋章が光り輝いており、フォルケン王はすぐさまその紋章がこの湖の石像にも刻まれている竜の騎士の紋章であることに気づいた。

 

「この子を頼みます」

 

赤子をフォルケン王が受け取ったのを見届けたマザードラゴンは、ゆっくりと翼を羽ばたかせると天へと昇っていった。その場にいた人々は夜の闇を飛んでいくドラゴンを見上げ、夜空の中に光が消えてゆくまでずっと眺め見届けていた。マザードラゴンの姿が見えなくなると、昼のように明るかった湖は再び夜の闇に包まれ、光り輝いていた赤子も額の紋章とともに光を失っていた。兵が松明を灯し、国民に家に戻るよう伝えると、王は側近、占い師ナバラ、そしてメルルと共に城に向けて歩き出した。皆呆然として口をつぐみ、誰も話をするものはいなかった。

 

城に戻り、赤子をゆりかごに入れた後、その場にいた全員が赤子が見える位置に自然と集まり、静かに見守る中、王が話しかけた。

 

「今日起きたことは誰にも話してはならない。この子が竜の騎士であることも、この子自身に伝えることも、運命が竜の騎士様を必要とするその時まで口外することは禁止とする。それが我々全員と竜の騎士様を守ることにつながる」

 

その場にいた全員が静かにうなずいた。魔のものが、障害となる竜の騎士の命を狙っているのは分かっていることであり、なにより神の子を育て守ること以上に大切なものはないと、その場にいた全員が感じていた。メルルは話の内容がよく分かっていなかったが、周囲の空気を感じ取り、誰にも言わないことを心の中で神に誓った。

 

「この子は私の親戚の子供で、後継者のいない私が養子として迎えたということにする」

「竜の騎士様を王位に継がせなさるおつもりで?」

「この子が王位を望むなら譲ってもよいだろうが…竜の騎士様が過去に国を持った例はない。残念ながら王位を継ぐことはなかろう…それでも、子供のいない私が後継ぎとして養子を迎え入れたということにすれば、国内外に勘ぐられず、守りやすくもなる。何より大事なのは、この子を立派な騎士様に育て上げることだ」

「かしこまりました。我々一同、竜の騎士様をお守りするため全力を尽くす所存です!」

「わたしゃ占い師だからこの子の近くで守ることができないが、もちろん誰にも口外はせんよ」

「占い師ナバラよ、そなたがよければこの城に残らないか?そなたがいればこの子の安全も高まるのだが」

「占い師ってのは場所を選ばないさね。この城の外からでもこの子に危機が迫ってきたら、力及ぶ限り助けさせていただきますゆえ、安心してくだされ。それに、わたしゃ城暮らしは性に合わんのです」

 

その言葉にフォルケン王は少し微笑んだ。

 

「そうか、残念だが仕方ない。では、早速力をお借りしたいのだが、この子に相応しい名前を一緒に考えていただきたい」

 

その言葉にナバラは「ひょえっ!そんな恐れ多い!」と驚きの表情とともに思わず奇声を上げた。

 

「この子を養子として預かる以上、名前をつけていないと怪しまれてしまうであろう。他の者も考えよ」

 

竜の騎士の名づけという大役を背負った一同は動揺し、うなりながらも神の子にふさわしい名前を考えたが、なかなか決まらず時間だけが過ぎていった。そこで昼間のナバラの言葉を思い出した王は、ふと思いついて占い師に尋ねた。

 

「ナバラよ、昼間言っておったお告げの運命の星の名を聞かせてくれ」

「ええ、星の名は―」

 

後日、長らく不在であったテラン王の後継ぎとなる子供を養子として迎え入れたとの通達が各国に届いた。テラン王国内でも養子となった子供の発表があり、それが竜の騎士様であること、このことを今後一切誰にも話してはならないと箝口令が敷かれ、人々は新たな竜の騎士を見守り育てることを心に誓い、つつましくも子供の祝福を祈るお祭りが国内で開催された。

 

多くの人々から祝福され、運命の星の下生まれた新たな竜の騎士。

その赤子の名は「レグルス」。

 




主人公の名前の由来はバランの名前の由来と同じように星座からとりました。

【バラン】
牡牛座の1等星、アルデバラン。
アルデバランという名前は、アラビア語で「後に続くもの」という意味があります。

【レグルス】
獅子座の1等星、レグルス。
レグルスはラテン語で「(小さな)王」という意味があります。
テランはラテン語のアナグラムでもあるためピッタリな名前だと思い、この名を採用しました。

報告:誤字脱字修正しました!報告ありがとうございます。
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