ダイ君たち主人公は登場しません。
注意!モブに対しての残酷な描写あり!
リンガイア王国はギルドメイン大陸の北方に位置する五大王国の一つにして、城塞王国と呼ばれ、堅牢な要塞は魔王ハドラーの時代でも破壊されたことはなく、城は難攻不落の要塞に守られていた。軍事力もベンガーナ、カールに次いで高く、さらにリンガイア最強の勇者ノヴァを有しているため、世界有数の防御力と軍事力を兼ねそろえた国家となっている。
リンガイア周辺の魔物が凶暴化したという報告があったその日にパプニカの使者が魔王復活を告げに来たのが数日前。そして昨日、海を挟んだ北のマルノーラ大陸にある唯一の王国、オーザム王国より兵士が救援要請のためリンガイアを訪れた。現在リンガイアの玉座の間ではリンガイア王、猛将と言われるバウスン将軍と戦士団、兵士が、王の前にて必死の様子で救援を求めるオーザム兵士から話を聞いていた。
「オーザムが…!我が国が魔王軍の襲撃を受けております!至急、救援を求めます!」
「なんと…オーザムが!分かった、オーザムへ援軍を出そう。バウスン将軍!」
リンガイア王は交友あるオーザム王国からの救援要請に対応すべく、王の側近であり兵士、戦士団のトップであるバウスン将軍に声をかけた。玉座の隣に控えていたバウスン将軍は王からの指示にすぐさま応えた。
「はっ!オーザムへの遠征はリンガイアの戦士団、そして我が息子ノヴァを向かわせます!」
「指揮はバウスン将軍に任せる」
「承知しました!」
救援に向かうという話を聞いたオーザム兵士は少しほっとした表情を浮かべながらもバウスン将軍に視線を向けると必死になって懇願した。
「敵は強く、このままではオーザムは滅んでしまいます!お願いいたします!我が国を助けてください!!」
「救援にはリンガイア戦士団と息子…北の勇者ノヴァが向かいます。勇者ノヴァは強い、魔王軍など蹴散らしてくれます!」
「おお!かの有名な北の勇者と名高いノヴァ様が助けてくれるのですか!なんと心強い!」
「うむ。戦士よ!戦の準備をするように!至急、ノヴァをここに!」
「はっ!ノヴァ様をお呼びします!」
海を挟んだ北の大地オーザムから救援要請を受け、国王はリンガイア最強と名高い勇者ノヴァを玉座の間に呼び出し、救援任務を命じた。
「北の勇者ノヴァよ、現在オーザムが魔王軍の襲撃にあっておる。戦士団を率いてオーザムを救うのだ!」
「この勇者ノヴァの名にかけて、必ずや魔王軍を蹴散らしてくれます!」
「期待しておる」
勅命を受けたノヴァは数隻の軍艦と共にオーザムの救援に向かった。リンガイア国王は魔王軍がこの国にも来ることを想定し、兵士やリンガイア国民に戦いの準備を命じた。
勇者ノヴァがオーザムの援軍に向かった次の日の夜明け前、リンガイア兵士は何人かの兵士達と共に城塞の上から街の外を確認し魔王軍が襲撃してこないかと警戒しながら見回りをしていた。
見回りしていた兵士の1人が少し不安そうに辺りを見渡しながら、他の兵士に声をかける。
「なあ、昨日ノヴァ様がオーザムの救援に行っただろ?その間にこの国に魔王軍が来たら…どうすればいい?」
「籠城しかあるまい…この国は城塞王国!魔王軍の攻撃などビクともしないわ!ノヴァ様が戻られるまで耐え忍べば、こちらのもの!魔王軍など我らが滅ぼしてくれる!!!」
「で、でもよ…もし…ノヴァ様が戻られる前に防ぎきれなかったら…?」
オドオドした様子で不安ばかり口にする兵士にイラついた別の兵士が怒鳴り声を上げる。
「貴様ぁ!それでも誇り高きリンガイア戦士か!これから戦いに挑む兵士が弱気を吐くな!!!」
「ひぃ!す、すみません!」
「貴様はいつから兵士をやっている!」
「き、昨日からです!それまではレストランで厨房の手伝いをしていました…」
「…剣は振れるのか?」
「え、えっと、魚なら捌けます…」
オドオドした兵士からの返事を聞いた兵士は頭が痛くなるのを感じながらため息をついた。
「はぁ~……貴様は敵が来たら大声で他の奴らに伝えろ…間違っても戦いに挑むな、貴様の実力では足手まといにしかならん…」
「わ、分かりました!」
「あとなぁ、ひとつ言っとくがこの国の城塞は特別頑丈だ!たとえ、ドラゴンが来たとしても突破できや―」
グォオオォォ!!
その時、兵士たちがいる場所より上空から動物の大きな唸り声がリンガイア国中に響き渡ったことで、兵士たちは驚いで薄い雲がかかった暗い上空を見上げた。
「今の音はなんだ!?」
「暗くてよく見えん!」
「み、皆、街の外を見ろ!」
兵士達は城塞に身を乗り出すようにして街の外を確認すると、街の外の森や平原から現れた巨大な怪物の群れが城下町に向かって進む姿が確認された。森に近い町では家を壊し、口から炎を噴きながら城の中心に向かって突き進んでいる様子が見て取れ、その巨体の姿を見た兵士は顔を青ざめ、驚きながら叫び声をあげた。
「あ、あれは、ドラゴン!!」
「魔王軍の襲撃だ!」
ドラゴンの群れは国を囲むように周りから徐々に中心に向かっており、見える範囲だけでも数十体のドラゴンがいることが確認でき、あまりの数にその場にいた多くの兵士は愕然とした。だが、すぐに気持ちを切り替えると兵士の1人がオドオドしている兵士に大声で命令を下した。
「急いで他の者に知らせろ!行け!!!」
「は、はい!魔王軍だ!ドラゴンが攻めてきたぞ!皆起きるんだ、敵襲だーーー!!!」
オドオドしていた兵士はドラゴンの姿を見て恐怖に感じながらも大声を上げながら他の兵士がいる詰所に向かって走り出し、その声に詰め所などにいた他の兵士達も襲撃に気付き、要塞は敵を迎え撃つため慌ただしくなり始めていた。
「我々もドラゴンと戦うため移動するぞ!」
「ククッ、その必要はないぜぇ」
上空から聞こえてきた声に兵士達はギョッとしながら慌てて顔を上げると、そこには黄金の鱗をもつスカイドラゴンが宙に浮いており、兵士達を興味深そうに見つめていた。そのドラゴンの上には黄色の羽毛を生やした翼を持つ獣人族が立ち、ニヤニヤしながら兵士達を見下ろしていた。
「ス、スカイドラゴンだ!」
「上には鳥人間がいるぞ!」
「貴様ぁ!何者だ!!!」
兵士に大声で尋ねられた鳥の姿の獣人族はニヤリと笑うと堂々と答えた。
「俺は魔王軍超竜軍団、軍団長ガルダンディー!!!」
「軍団長だと!」
「敵だぁ!!!武器を構えろぉ!」
ガルダンディーの名乗りを聞いた兵士達は驚いた表情の後、すぐさま剣を構えると睨みつけた。剣を向けられたガルダンディーはニヤニヤしながら面白そうに、声高に発言した。
「ドラゴンが来たこと他の奴らに知らせてぇんだろ?なら派手に狼煙を上げてやるよぉ!!!」
ガルダンディーがスカイドラゴンの手網を引っ張ると意図を察したドラゴンは頬を膨らませ、そして口から巨大な炎を吹き出すと兵士達は火に包まれた。
「ぎゃああああ!!」
「クハハハハッ!!!」
炎に包まれた兵士達の断末魔の叫びを聞きながらガルダンディーは人間が簡単に死ぬ様を面白可笑しく笑いながら見ていた。
「そ、そんな…皆が……」
一部始終を見ていたオドオドした兵士は先程まで共に過していた仲間の兵士が叫びながら死ぬ様にショックを受けていたが、仲間の死を侮辱し笑うガルダンディーに対して強い怒りを感じると敵の軍団長を睨みつけた。
「よ、よくも皆を!お前たち魔王軍は我らリンガイア兵士が倒してくれる!」
「あ〜?啖呵切るならシャキッとしろよ!足が震えてんぞ、ククッ!」
「クーン」
「どうした、ルード?あ?あいつと遊びたいってか?」
「グルル!」
スカイドラゴンのルードは頭の上にいるガルダンディーにまるで甘えるような声を出すと、意図を理解したガルダンディーはニヤリと笑い、プルプル震えている兵士をルードと共に睨みつけた。
「ひっ!!!」
睨みつけられた兵士は顔色を悪くしながら後ずさりし、何時でも走り出せるように構えた。
「いいぜぇ、やっと戦いの許可が下りたんだ、せいぜい楽しまないとなぁ!行け、ルード!遊んでやれ!!!」
「グォオオ!!!」
「うわぁぁぁ!!!」
ガルダンディーは翼を羽ばたかせルードの頭から離れると、ルードは兵士に向かって高速で飛行した。兵士は叫び声を上げながらすぐさま踵を返し他の兵士がいる城塞の扉に向かって全速力で駆け出した。
「ガウッ!」
だが、スカイドラゴンであるルードの飛行スピードは速く、逃げる兵士にあっという間に追いつくと左腕に噛み付き、そのまま空中に持ち上げた。腕を噛まれ、足が地面を離れたことで全体重が噛まれた腕に集まり、あまりの激痛に兵士は叫び声を上げた。
「ぎっ…あああああ!やめろぉ!放せぇ!!!」
腕を噛まれた兵士は激痛にパニックになりながら必死で噛まれていないほうの腕を動かし剣でルードの顔を何度も切りつけるがドラゴンの鱗は硬く、攻撃を与えることはなかった。
「グルルル!!」
「ぎゃあああ!!」
ルードが顎の力を強めたことで兵士の噛まれた左腕からブチブチと肉がちぎれる音と骨が砕ける音が辺りに響き渡り、兵士の腕は噛まれた場所から噛みちぎられた。空中に持ち上げられていた兵士の体は支えを失った事で宙に投げ出されると、クルクル回転しながら城塞の上に墜落した。
「う…うぁ……」
兵士の左腕は途中から先がなく、剥き出しになった傷口からは肉や骨が見え、吹き出す血で兵士の周囲は赤く染まっていった。
兵士の腕を噛みちぎったルードは美味しそうに腕を咀嚼し飲み込んだ後、下に這いつくばっている血濡れの兵士を見て舌なめずりした。
要塞の中にいて様子を見ていた他の兵士は顔を青ざめ恐怖を感じながら、城塞の上に倒れている兵士に大声で呼びかけた。
「立て!こっちに来るんだ!ドラゴンがまた来るぞ!」
「早く!大砲を準備するんだ!あいつを助けるぞ!」
「分かっている!!!」
要塞の中では大砲やバリスタの準備が急ピッチで行われていたが、夜明け前の襲撃であったため多くの兵士はまだ到着しておらず、ドラゴンにやられている兵士を助けたくても助けられない状況にその場に居た兵士は焦りながら手を動かすことしか出来なかった。
「うっ、痛い…腕…俺の腕、が……」
左腕を失った兵士は多くの血を流し、貧血でふらつきながらも立ち上がると他の兵士がいる要塞の中へ向かって歩き出したが、足元はふらつき、その場を離脱するだけの体力が兵士には残されていなかった。
「グルル」
「…ひっ……!」
兵士の頭上ではドラゴンの唸り声がすぐ近くで聞こえており、あまりの恐怖に目尻に涙を浮かべた。兵士は残った右腕を震えながら持ち上げると、他の兵士に向かって手を伸ばし、ガチガチ歯を鳴らしながらかすれた声で助けを求めた。
「…た…たすけ………」
兵士が最期に見た光景は暗く何も見えない闇であった。血なまぐさい暖かな息を頭に感じると首に激痛が走ったが、その感覚もすぐになくなり、兵士の意識は闇に閉ざされた。
ルードは腕を食べた兵士を頭から咥え、すぐに首を噛みちぎると兵士の体は下に落ち、首がない死体からはゆっくりと血が広がると辺りに血の匂いが広がった。ルードは口の中の首を咀嚼するため噛もうとしたがガキンと硬いものが歯に当たったため、顔をしかめた後、口の中の物を吐き出した。ルードが吐き出した物は金属の音を響かせながら城塞の上を転がっていき、転がった物を見ながらガルダンディーはニヤリと笑うとルードに声をかけた。
「どうしたルード?口に合わなかったか?」
「グルゥ!」
「兜が硬くて食べられなかった?そいつは残念だったな!ならあっちの体を―」
ガルダンディーが首のない兵士の遺体を指さしながら食べるように提案しようとした、その時。
「撃てーーー!!!」
兵士の攻撃合図をきっかけに城塞のあちこちから砲弾とバリスタの矢がガルダンディーとルード目掛けて高速で飛来したため、ガルダンディーとルードは避けるため上空へ飛び上がった。
「あのドラゴンと鳥を撃ち殺せ!!!」
「ちっ!これじゃ、城塞に近づけられねえなぁ…」
「グルルル!」
「機嫌直せよ、ルード!戦いは始まったばかりだ、せいぜい楽しもうぜぇ!」
そう言いながらガルダンディーは城塞の上空から城下町の方へ翼をはためかせて移動を始め、城塞に居た兵士達は背を向けて離れていくガルダンディーとルードに怒鳴り声を上げた。
「待てぇ!!!逃げる気かぁ!!!」
「オイオイ、俺にかまけていいのかよぉ?足元に火がついてるぜぇ?ククッ!」
城塞の下に広がる城下町ではドラゴンにより家は壊され、火を放たれており、暗い夜明け前にも関わらず、街は炎の明かりによって照らされていた。ガルダンディーは外側から徐々に火の手が広がり、必死になって火やドラゴンから逃げ惑う人間を見ながら小さく笑った。
「ククッ!」
逃げ惑う市民の中にはドラゴンに追いかけられ、そして、ドラゴンに追いつかれた人間が食われたり、踏み潰されたり、裂けたりする様子があちらこちらで発生していた。ガルダンディーはドラゴンにより破壊されていく町を、ドラゴンにより死んでいく人間をルードと共に移動しながら上空から眺めると、楽しそうに笑い声をあげた。
「クハハハハッ!!!」
火の手が上がるリンガイアの城下町上空でガルダンディーは背後から聞こえてくる罵声すらも面白く感じながらスカイドラゴンのルードと共に飛行を楽しんでいた。
「貴様だけは許さんぞ!超竜軍団長ガルダンディー!!!」
城塞では仲間を殺された兵士の怒りに満ちた怒鳴り声が響き渡った。
ノヴァはオーザムの救援に向かった!
超竜軍団長ガルダンディーがリンガイアに侵攻を開始した!
もともと六軍団長が集結する話を書く予定でしたが、原作と内容があまり変わらないのに書くのは嫌だったのと、バランが居ないことで空席となった超竜軍団長を誰にするか、原作ではバランの部下だったガルダンディーをどこで登場させるかを考えた結果、軍団長をガルダンディーにして原作に描かれていなかったリンガイアを書こうとなりました。
ガルダンディーの性格は残虐で人間を見下す発言をよくしていたので、人間を憎んでいない主人公に会わせても敵対するだろうし、性格を捻じ曲げてまで一緒にいさせる必要はないかなと…どう考えても魔王軍寄りだし。
次はリンガイア目線での戦いになります。