一方の軍団長は魔王軍からある知らせを受ける…。
ダイ君たち主人公は登場しません。
リンガイアと超竜軍団との戦いが始まってから1週間が経過していた。城下町ではドラゴンにより家は壊され、炎によって燃やし尽くされたが、王や民の多くが逃れた要塞の攻略は上手くいっておらず、ガルダンディーは少しイラつきながら要塞を睨みつけていた。ドラゴンに命じて何度も要塞を攻めたが、その度に大砲やバリスタ、魔法や投石の反撃にあい、破壊するどころかドラゴンの数を少しずつ減らしていた。
「ちっ…!硬ぇなあ…」
リンガイアから少し離れた地上にて水分補給をしながら未だに攻略し切れないでいる城塞を見ていたガルダンディーは呟きながら、どのように攻めるか考えていた。
(城塞の中から攻撃出来ればこっちのものだが、上空は大砲やバリスタが邪魔しやがる…地上からだと要塞は硬くて簡単に壊れやしねぇ!………ん?まてよ…地面を掘って要塞の中に入れば―)
「ガルダンディー様」
「あ?」
話しかけられたガルダンディーは木の上を見上げた。そこには魔王軍の連絡係でもある悪魔の目玉が木の枝に垂れ下がりながらガルダンディーをじっと見ていた。
「なんだ…悪魔の目玉か」
「ハドラー様より伝令です。全軍団長は鬼岩城に集結せよ。ガルダンディー様も鬼岩城にお集まり下さい」
「なんだとぉ!こっちはここに着いてまだ1週間しか経ってないんだぞ!なんでそんなに早く集結しやがる!!!」
「新たな勇者の少年ダイが誕生し、クロコダインを討ちました。その対策について協議します」
「ク、クロコダインが討たれただと!?…ちっ、分かった…すぐに鬼岩城に向かう!」
ガルダンディーはクロコダインが倒されたことに驚きながらもすぐさまその場を離れた。攻略途中で現場を離れることに内心イライラしながら地上で休んでいたスカイドラゴンのルードの元にたどり着くと、翼を動かし浮き上がり、ルードの頭に乗った。
「くそっ!せっかく攻略法を思いついたってのによ…タイミングわりぃな…ルード!」
「グルゥ!」
ルードは頭にガルダンディーが乗ったことを感じると上昇し、城塞近くへ移動した。城塞の周辺にいるドラゴンは上空に上司であるガルダンディーが近づいて来るのに気付くと顔を上げ、ガルダンディーは上空から地上にいるドラゴンに対し大声で指示を出した。
「てめえら!穴を掘って地中から城塞の中に侵入しろ!!!中に入ったら周りの人間を殺せ!だが、城は攻撃するな…王様は俺が殺すんだからなぁ!ククッ、戻った時が楽しみだぜぇ!行けルード!目指すは鬼岩城だ!」
「グォオオ!」
ガルダンディーが手網を引っ張るとルードはさらに上昇しながら魔王軍の拠点、鬼岩城に向けて進路を変えて飛行していき、地上に残ったドラゴン達は上空を見上げ、小さくなっていく上司の姿を見送った。姿が見えなくなる頃、ドラゴン達は上司の命令を実行するため城塞の壁際近くに移動すると穴を掘り始めた。
リンガイア王城の玉座の間では国王がバウスン将軍から戦況の報告を絶望的な気持ちで受けていた。
「城下町はドラゴンによって壊滅的な被害です…港は全ての船が破壊され海からの脱出は不可能。また、この国は四方八方からドラゴンに囲まれているため…退路がなく逃げ場がない状況です」
「…国民の多くはこの要塞に逃げ切れたのか…?」
「残念ながら…襲撃が早朝であったため、人々の多くは就寝しておりました…ドラゴンから逃げ切ることが出来たのは要塞付近に住んでいた人々です…多くの国民は城塞に辿り着くことが…出来ませんでした」
リンガイア国王は右拳を振り上げると椅子の肘掛に振り下ろし、静かな玉座の間に木を叩く鈍い音が響き渡った。
「くそっ!魔王軍め!よくも我が民を!!!……食料の備蓄はあとどれだけある?今、生きている民に分配したとしてどれだけ持つ?」
「城塞内にいる人数ですと…1週間ほどになります」
「1週間…それだけ耐え忍べばオーザムに遠征に向かった戦士団も戻ってこよう…!」
「はい、我が息子ノヴァも戻ります!そうしましたら、こちらから攻勢に―」
その時、城の外から人々の叫び声が聞こえた事で、バウスン将軍は話すのを止め、周囲を警戒しながら窓の外を窺った。城外は徐々に騒がしく音も大きくなっていった頃、玉座の間の外に繋がる扉が勢いよく開き、息を切らした必死の表情の兵士達が飛び込んで来た。
「報告!ド、ドラゴンが、ドラゴンが要塞内に侵入しました!」
「ば、はかな!城門が破られたのか!?」
「やつら穴を掘って侵入してきました!すでに多数のドラゴンが侵入しています!」
「陛下!」
「…民を城内に避難させよ、1人でも多くの民を救うのだ!」
「はっ!」
駆け出した兵士を見送りながら王は静かにバウスン将軍に話しかけた。
「…この国はもうじき、滅ぶ……バウスンよ、長年仕えたこと感謝する…」
「王よ、まだ勝敗は決まっておりません!私は最後まであきらめず、王のお側でお守り致します!!」
「…そうだな、まだ勝敗は決まっておらん…王が諦めてはならない…!バウスン、部隊を編成せよ!敵に一矢報いるぞ!!!」
「はっ!直ちに部隊を編成―」
「ほ、報告します!」
バウスン将軍が部隊編成のために王へ実行を進言しようとしたところ、玉座の間の外に繋がる扉から先ほどとは別の兵士が慌てた様子で部屋の中へ駆け込み、王を見ながら大声を上げた。
「今度はなんだ!!!」
「船です!海上から船が現れました!」
「なに!船だと!?帆に描かれた紋は!」
玉座の間にて王に報告をする兵士の表情は興奮しながらも嬉しそうであり、力強く、見た船の特徴を述べた。
「帆に描かれた模様はリンガイア王家の紋章!ノヴァ様率いる戦士団が戻られました!!!」
オーザムへ遠征に出ていたリンガイアの勇者ノヴァの帰還の知らせ。それは、絶望の只中にいた王、バウスン将軍、兵士達の心に希望を与えるのに充分であった。
「撃てーーー!!!」
砲撃の合図により海上にいた軍艦の砲門から爆音が上がり、港のドラゴンに向かって多数の砲弾が発射された。港にいたドラゴン達は軍艦を睨みつけながらも砲弾の雨から逃げるため港から離れた場所へ移動し、砲弾が着弾した港は炎と爆発音が鳴り響いた。戦士団団長のノヴァは武器を持ちながら険しい表情で船上にいる戦士に向かって大声で命令を下した。
「このまま上陸する!第一、第二旅団はボクに着いてこい!港からドラゴンを一掃する!!!」
「分かりました!!!」
船が港に接岸するとリンガイア戦士とノヴァは港に飛び移った。港にある船は全て破壊され、火の手が上がり、港の建物も多くは瓦礫の山となっており、変わり果てた故郷の姿に多くの戦士は怒りの表情を浮かべた。ノヴァ達が上陸してすぐ、崩れた建物の影から複数のドラゴンが姿を現し、戦士団に襲い掛かった。
「ドラゴンが出たぞ!」
「ボクが動きを止める!マヒャド!!」
「凍りついた!今だ、攻撃―!」
ノヴァの魔法によってドラゴンたちは凍り付き、動けなくなったところを戦士団とノヴァの攻撃により倒していった。港からドラゴンを一掃するとノヴァは火の手が上がっている要塞を見上げ、焦った様子で周囲にいる戦士団に命令を下した。
「戦士団はこの場で待機、船と港を守れ!ボクは城に行く!」
「こちらはお任せください!団長もお気をつけて!」
「ルーラ!」
ノヴァはルーラの魔法を発動すると城に向けて飛び立った。
城に到着するとノヴァは玉座の間へ走り、道中、多くの民が壁際や柱に隠れて怯えた様子で友人や家族と抱き合う姿や武器を持った兵士が出入り口や窓の外を警戒している様子を確認しながら移動した。
玉座の間に到着するとそこには王や父であるバウスン将軍、兵士や多数の民がおり、王と父の無事を確認するとほっとしながらノヴァは王の前に立った。
「戦士団団長ノヴァただいま戻りました!」
「おお、勇者ノヴァよ!よくぞ無事に戻った!」
「ノヴァ!よく無事に戻ってきてくれた!!!」
「王よ、ボクが来たからにはご安心ください!魔王軍どもは勇者であるボクが必ず倒してみせます!父さん、反撃の準備を!!!」
ノヴァが勇ましく好戦的に戦おうと進言するが、一方の王とバウスン将軍は悲痛な表情を浮かべながらノヴァの進言を否定した。
「勇者ノヴァよ、我々はこの国を脱出する…そのためにこの城にいる全ての人間を船に移動させるのだ」
「………脱出…?戦わないのですか…?国をこれだけめちゃくちゃにされたまましっぽ巻いて逃げろというのですか…!?」
「ノヴァ!周りを見なさい!!!」
ノヴァは父の怒声に眉を顰めながらも玉座の間にいる人々を見渡した。人々は王とノヴァのやり取りを見ていたようで、民は不安を抱えながらノヴァのことを見つめ、兵士の多くはどこか怪我をし、うつろな表情でノヴァを見ており顔色が悪く、戦える状況ではなかった。
「こ、れは…」
「兵士の多くはドラゴンによって倒れた…今、この城にいる人々の多くは戦うことが出来ない…」
「要塞内にもドラゴンが侵入し、門も内側から破壊された…この城が陥落するのも時間の問題…ドラゴンがこの城を襲わないのが不思議なぐらいだ…!ノヴァ、反撃の機会はとっくの昔に…潰えたのだ…」
「そ、んな、ボクは…間に合わなかったのか…?」
戦える人間がリンガイアにはほとんど残っておらず、防御も城だけではドラゴンの攻撃に耐えられないため、戦いに出れば、城に残った人々がやられることを悟ったノヴァは歯を食いしばりながら怒りを押し殺した。
そんなノヴァを見つめながら王は落ち着いた声で言葉を発した。
「だが、希望はある。勇者ノヴァ、それが我らの希望だ」
「!!」
ノヴァは王の言葉に驚いた表情を浮かべ、王はノヴァに対して力強くそして希望を持った目つきで見返した。
「たとえ、国を離れようとも、生きていればチャンスはやって来る!その時こそリンガイアを我らの手で取り戻す!」
「王!」
「勇者ノヴァに勅命を命じる!リンガイアの民を救うのだ!!!今それが出来るのは勇者ノヴァ以外に他ならない!」
「!!!…分かりました!必ずや民を救って見せます!」
「頼む…!バウスン将軍!」
「かしこまりました!兵士よ、民を中庭に集めるのだ!動けるものは動けない者を手助けせよ!!!」
「ははっ!」
王とバウスン将軍の命令により兵士は城に残った民を中庭に案内し、ある程度人が集まるとノヴァはルーラで多数の民を港に送り、すぐ城に戻るとまた民をルーラで送るといったことを繰り返した。港にたどり着いた民はその場にいた戦士団の案内により軍艦内に案内され、人が一杯になった軍艦は港を離れるとドラゴンが来ることの出来ない沖合に移動した。
「民は全て港に送り届けました!」
「王よ、ドラゴンに気づかれる前に移動しましょう!後は我々だけです!」
城に残っていた民はすべて港に送り、残りは戦える兵士、王、バウスン将軍、ノヴァのみとなった。
「皆、よくやった!兵士達よ!中庭に集まるのだ!」
「ははっ!」
王の命令により、城の窓際や出入り口付近でドラゴンの襲撃に備えていた兵士たちは持ち場を離れると中庭に向かって駆けだした。そして、すべての兵士たちが中庭に集まったことを確認した王はノヴァに顔を向けた。
「ノヴァ、たの―」
グオォォォ!
その時、城の上から中庭に、兵士たちが集まる中心に向かってドラゴンの巨体が落ちてきたため、兵士たちは慌ててその場を離れた。
「うわぁ!ドラゴンが屋根から落ちてきたぞ!」
「避けろぉ!!!」
「グルルルル!!!」
ドラゴンは城内の大勢の人間が姿を消し、兵士たちが逃げようとしていることに気付いたことで怒りながら屋根の上から飛び降り、着地と同時に尻尾を振り回して周囲を攻撃した。
「王よ!」
バウスン将軍はドラゴンの尻尾攻撃から王を守るため王の前に出ると武器を構えた。だが、ドラゴンの攻撃に耐えきることが出来ず、後ろに庇った王と一緒に壁際まで吹っ飛ばされてしまった。
「父さん!王!」
「っ!…私は…大丈夫だ!バウスンしっかりせよ!」
「うっ…」
庇われた王は直撃を免れたため軽症で済んだが、ドラゴンの攻撃を食らったバウスン将軍は気を失い、頭からは血を流していた。
「よくも父さんを…!」
ノヴァは怒りの表情を浮かべドラゴンを睨みつけると、闘気を剣にまとわせた闘気の剣《オーラブレード》を作り出し、大きく跳び上がるとドラゴンの首めがけて一気に振り下ろした。
「ノーザン・グランブレード!!」
振り下ろされた闘気の剣はドラゴンの首を綺麗に切断し、重たい頭は地面を転がり、体も痙攣した後、動きを止めた。兵士たちはドラゴンを倒したノヴァに対して喜びの声を上げた。
「さすが勇者ノヴァ様だ!あのドラゴンをあっという間に倒したぞ!」
「急いで一か所に集まれ!我々に気づいたドラゴンが集まって来るぞ!」
ノヴァの指示により、ドラゴンの攻撃を受け動けない者は周囲の兵士たちが協力して運び、兵士や王が一か所に集まったころ、複数のドラゴンの怒りに満ちた唸り声が城の建物を破壊しながら中庭に向かってせまってきた。
「グオォォォ!!!」
「ド、ドラゴンが来たぞ!」
「皆、周囲の人間に触れるんだ!行くぞ、ルーラ!!」
魔法を唱えたことで中庭にいた人々は姿を消し、ルーラ特有の軌道が港の方へ描かれていった。人間に逃げられたことを悟ったドラゴン達は怒りの咆哮を上げながら八つ当たり気味に城の建物を破壊した。
「団長!」
「王!ご無事でなによりです!」
「怪我人がいる!急いで船に運んで治療するんだ!」
港にルーラで現れた兵士、王、将軍、ノヴァの姿を見た戦士団は団長であるノヴァが多くの人々を救い出したことに喜びながらすぐさま怪我をした兵士やバウスン将軍を船に運び、王も戦士団の案内で船に案内された。離れた場所からドラゴンが怒りながら迫ってくるのを見た戦士は指さしながら大声を上げた。
「団長!ドラゴンが来ます!」
「ここはボクが食い止める!すぐに船を出港させるんだ!」
「っ!分かりました!出港しろ!」
「帆を張れ!」
ノヴァ以外の人間が軍艦に乗ると、船は帆に風を受けるとゆっくりと港から離れていった。
「グォオオ!」
「この船は絶対に壊させはしない!」
ノヴァは港に走ってくるドラゴンを睨みつけると、闘気の剣を作りドラゴンに突っ込んでいき切りつけて行った。船は徐々に港から離れていき、かなりの距離が空いた頃、船上にいた戦士が少し焦りながらノヴァに大声を上げた。
「団長!早く船に!」
「マヒャド!」
ノヴァは港ごとドラゴンを凍らせると海に向かって走り出し、勢いをつけて船に飛び移った。
「団長!流石です!」
ノヴァが乗り移った船では歓声が上がった。
「グオォォォ!!!」
一方港では、凍らされたドラゴンの後ろから別のドラゴンが走って来る様子が見られたが、離れていく船に間に合う距離ではなく、港の端に辿り着くと怒ったドラゴンが口から火を噴きながら怒りの咆哮を上げた。
戦士は港にいるドラゴンを睨みつけ、追手が来ないか警戒したが軍艦は何事もなくリンガイアから離れ、沖に向かって移動した。
船の上では気を失ったバウスン将軍に癒しの魔法がかけられ、治療が完了する頃、バウスン将軍の目がゆっくりと開かれた。
「こ、ここは…」
「父さん、目が覚めた?」
「ノヴァ!無事だったのだな!」
バウスン将軍はノヴァの姿を見ると嬉しそうに声を上げた後、周囲を見渡し、船にいることや王が無事であることを確認するとほっと息を吐いた。
「王もご無事でなによりだ…ノヴァ!よくぞ皆を救った!よくやった!」
「父さんも王をお守りしたじゃないか…少し見直したよ」
バウスンとノヴァはお互いの無事を、笑みを浮かべながら喜びあった。ノヴァ達が乗る軍艦は沖合に避難していた他の軍艦に合流するとバウスン将軍が軍艦にいる皆に声をかけた。
「これより軍議を開く!隊長以上の指揮官は集まるように!」
隊長クラス以上の指揮官が船長室に集まると、王も含めた軍議が開かれた。
「ノヴァよ、救援に向かったオーザムはどうであった?」
「オーザムはボクらが到着した時にはすでに滅んでおりました…生存者を探しましたが、生き残りはおらず、それどころか家や家畜も全て焼き払われておりました…」
「そうであったか…オーザムにリンガイア…もしかしたら魔王は世界中の王国を襲っているのかもしれんな…救援要請に来ていたオーザム兵士はどうした?」
「彼らは国に残りました…王や民を埋葬すると…」
「…そうであったか」
救援が間に合わなかったとの報告に王は目をつぶると、親交あったオーザム国王やその国の民、そして、自国の民の冥福を心の中で祈った。
バウスン将軍は王の冥福を待った後、今後のリンガイアの行方について進言をした。
「王、これから我らが向かうべき場所ですが…私はカール王国に行くべきだと考えます!」
バウスン将軍の発言にその場にいた兵士、戦士達はざわつきだした。
「カール王国…!」
「たしか魔王ハドラーの時代…当時のカール騎士団長はかつて勇者様と共に魔王を討伐したのだったな!確か…そうだ!戦士ロカだ!」
「勇者アバンもその騎士団出身と聞く!」
「…勇者アバン、か」
勇者であるノヴァは少し複雑そうに同じ勇者であり世界を救ったアバンの名を口にした。船長室は人々のざわめきで少しうるさくなったがそれは興奮したざわめきであり、好意的なものであり、カール王国に向かう提案に対して反対する者は誰一人としていなかった。王もバウスンの発言に頷くと口を開いた。
「うむ、それが良かろう。カール騎士団は世界最強と名高い!魔王軍との戦いに我らも参加させてもらおう!」
軍議は終了し、王やバウスン将軍、ノヴァが船の甲板に出ると多くの民、兵士、戦士団が見守る中、王が大声を張り上げた。
「民よ!我々はこれからカール王国へ向かう!魔王軍との戦いにカールと協力を仰ぐ!そして、いつの日か必ずここに戻り、故郷を、リンガイアを取り戻す!船を出港させよ、西へ進路をとる!」
「「「はっ!」」」
船は帆を張ると西へ向けて海上を移動した。多くの人々は船上から少しずつ離れていく故郷のリンガイアを怒りや悲しみをもって見つめ続けた。
「…リンガイアが、燃えている」
リンガイアの民の1人が燃え盛る城下町、要塞、城を見ながら力なく呟いた。多くの民が魔王軍の襲撃で亡くなった。燃え盛る火の下にはかつての家があり、職場があり、学校があり、友がおり、家族がいた。
魔王軍は人々に死を、絶望を運んできた。
だが、一方で多くの人々が生き残った。
もし、魔王軍の軍団長が大砲やバリスタの攻撃が効かないような人物だったら、リンガイアはもっと早くに、ノヴァの救援が間に合わずに、滅んでいただろう。
騎士団は変わらず健在で多くの兵士や民も生き残り、王も救い出すことが出来た。
それは小さいが確かな希望だった。
後日、リンガイア攻略を指示されていた超竜軍団の軍団長が一時的に鬼岩城から戦況を確認するためリンガイアに戻ると、誰も居ない城を見て激怒した。
「人間が誰もいやがらねぇ!!!てめぇら、なに逃がしてやがる!!!あとちょっとだったのによ!くそがぁーーー!!!」
人間が誰もいなくなったリンガイア王国上空でガルダンディーの叫び声が響き渡った。
生き残ったリンガイアの人々はカール王国を目指す。
原作ではバランによりノヴァ君が帰還する前にリンガイアは滅び、王様は行方不明、バウスン将軍と一部の戦士だけしか生き残ることができず、ノヴァ君とバウスン将軍との親子仲は悪くなっておりました。
バラン不在のこの小説では要塞の攻略に時間がかかったことで、リンガイアが滅ぶ前にオーザムから帰還したノヴァ君の活躍により、王様や民を救い出すことに成功しました!
書いてみて思ったのは世界に影響を与える人物であればあるほど運命が大きく変わるなと…。アルキード、リンガイア、カール…。
次はパプニカ編になります!