ダイの大冒険 ―次世代の竜の騎士ー   作:キャットテールの鈴

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名前のないオリキャラが少し登場します。
原作開始3年前。ダイ(9)、主人公レグルス(7)。


3_呼ぶ声

テラン王国は中央に位置するギルドメイン大陸に存在する5大王国の一つで、竜の神を信仰する森と湖に隣接した、静かで自然豊かな王国である。以前は自然主義に回帰するという現国王であるフォルケン王の方針により武器や道具の開発を禁じていたが、7年前より国王の跡継ぎであるレグルス王子が生まれてからは、武器や道具の製造を再開し、それに伴い減少していた人口も増加し、現在は200人ほどの人口となっている。

 

テラン王国の森の中には、フォルケン王やレグルス王子、使用人たちが住む城があり、城の一角には兵士たちが剣や魔法の訓練を行う訓練場がある。

 

その訓練場では、練習用の片手剣を手にし、一定の距離を保ちながら対峙する壮年の男性と、この国の王子レグルスがいた。壮年の男性は、フォルケン王が隣国ベンガーナから依頼して招いた実力者で、ベンガーナ軍の新人兵士を指導するほどの腕前を持つ戦士である。一方、レグルスはまだ7歳の子供で、体が小さく、練習用の剣を両手で持たなければ振るえないため、片手剣をまるで両手剣のように扱っていた。

 

睨みあっていた両者が先に動いたのはレグルスであった。

体の小ささを生かして体勢を低く屈め、剣を後ろに構えた状態で男性に突っ込んでいき、男性は剣をタイミングよくレグルスに振り下ろしたが、レグルスは走りながら体をひねると振り下ろされた剣をすれすれでかわし、体の回転を生かしたまま剣を振るうと男性の左腕を切りつけた。レグルスは力が弱いとはいえ、全身を使って振るった攻撃はかなりの衝撃を与え、男性は内心焦りを感じながらも反撃しようと再度剣を振るった。しかし、その後何度も打ち合うが男性の剣はすべてレグルスにかわされ、逆にレグルスの攻撃で男性の身体には少しずつ怪我が増えていった。

 

(すべての攻撃が当たらない!たった1日で俺の剣の動きを読んでしまうとは!)

 

何度も打ち合う中で男性は疲れが見え始め、呼吸も荒くなったが、一方のレグルスは攻撃のスピードも威力も衰えることなく、涼しげな表情からも疲れた様子は見られなかった。

 

(この子の体力は怪物並みだな!このままでは負ける…!)

 

疲れと焦りから動きにスキが生じた次の瞬間、レグルスはすぐさま剣を持つ男性の右手首を攻撃した。剣を落とし、慌てて拾おうとする男性の首元にレグルスは剣を当て、落ち着いた声で男性に降伏を促した。

 

「私の勝ちだ」

「…降参する」

 

剣を鞘に納めたレグルスは息を乱すことなく落ち着いており、先ほどまで剣を交えていたにもかかわらず淡々としていた。男性は落とした剣を拾い、唖然とした様子で剣とレグルスを見比べ、予定していた1週間の稽古がたった1日で終了してしまったことにショックを隠せなかった。

 

「正直驚いております。まさかたった1日で基礎から応用まで習得し、剣の打ち合いで私に勝たれるとは。レグルス様はまさに天才です!将来が楽しみでありますな!私の稽古は本日をもって以上となります。またいずれお会いしましょう、その時には剣の打ち合いをお願いしたい!」

「こちらこそ感謝しております。剣を交える相手がこの国にはほとんどいないため、よい刺激となりました。再びお会いしたときは剣を交えたいものです」

 

互いに握手を交わし、レグルスが礼をして訓練場を離れるのを見送った後、男性はフォルケン王がいる玉座の間を訪れ、国王の前で膝をついた。フォルケン王は高齢ながらも世界中の伝説に通じ、並々ならぬ知識を持ち、小国ながらも周辺国家の情報にも通じていた。今回の稽古相手も周辺国からの情報で兵士を育てている戦士のうわさを聞いたフォルケン王が依頼した戦士であった。稽古初日に訪ねてきた男性に対して、フォルケン王は驚くことなく落ち着いており、まるで訪問の理由をすでに知っているかのようだった。

 

「失礼いたします。本来であれば7日間を予定していたレグルス様の稽古ですが、私から教えられることはこれ以上ないため、本日をもって稽古を終了したいと考えております」

「…わかった、稽古をつけていただき感謝しておる。ところで、そなたから見てレグルスの腕前はどうであったか?」

「レグルス様は同世代の子供が到底たどりつけないほどの剣の高みにいる、間違いなく天才です!」

「そうであったか」

「私が教えた剣もその日のうちに覚えてしまい、剣の打ち合いも1度目は私が取れましたが2度目以降は何度対峙しても私が勝つことはありませんでした。まるで…私の動きを全て見切っているかのように…」

 

稽古相手を頼んだ男性の表情には困惑と興奮、そして少しの怯えを含んでいるのをフォルケン王は感じ取っていた。金のやり取りと挨拶を終え、玉座の間から退出した稽古相手を見送った後、フォルケン王はレグルスの将来を案じた。

 

(この国には剣を持って戦えるものがほとんどいない。ましてや竜の騎士様と一緒に、となると共に過ごすものは萎縮してしまい竜の騎士様の負担となってしまう。せめて竜の騎士様と一緒に修行できる者がいればよい刺激になるかもしれないが…)

 

竜の騎士が将来使命を全うできるよう育てることが自身の役目だと感じているフォルケン王は新しい稽古相手を探すため、近くにいた兵士カナルに周辺国の情報を収集するよう指示を出した。

 

 

 

レグルスは訓練場を出た後、剣の修行も兼ねて魔物と戦うために森の奥深くを歩いていた。彼の姿を見て逃げる魔物には目もくれず、逆に襲い掛かってくる魔物は次々と返り討ちにし、倒した魔物の数が十を超えた頃、ふと自分を呼ぶような気配を感じて足を止め、その気配が感じられる方角の木々を見つめた。どこか懐かしく感じるその気配に内心不思議に思いながらも、導かれるようにさらに森の奥深くへと入り、草木をかき分けて進んだ先で、レグルスは森の中に建つ小さな小屋を見つけた。

 

小屋は何年も人の出入りがない様子で、入口付近には草が生い茂り、屋根の上には苔が生え、枯葉や枝がたくさん落ちていた。

 

(こんな城から離れた森深くに小屋があるとは、狩人の小屋か何かか?)

 

不思議に思いながらも小屋のドアを開け中に入ると、そのとたん、強いかび臭い匂いにレグルスは顔をしかめた。鼻を腕で抑えながら窓を開け、ドアを開けっぱなしにすると一度小屋の外へ退避し、部屋の空気が入れ替わるのを待った。匂いが和らいだところで再び小屋の中に入ると、自分を呼ぶ気配が埃をかぶった床下から感じとったレグルスは床板を外せないかと手を埃や砂埃で汚れながらも手探りで調べ、外せそうな床板を見つけると、指をひっかけて持ち上げた。

 

一部の床板を外したレグルスは、そこに現れた物に驚きの表情を浮かべた。

 

柄の先に竜の頭、本で見たことがあるようなドラゴンの皮膚のような鱗模様の鞘の立派な長剣がそこにあった。

 

「ぐっ、重い!」

 

ずっしりと重たい長剣を苦労しながら床下から取り出し、床に置いてから柄を握り、鞘から剣を少し抜いてみると、城にあるどの武器とも違う輝きを放つ刀身が現れた。レグルスは、この剣がただの剣ではないことをすぐ理解した。

 

「私を呼んだのはお前なのだな」

 

剣に向かって思わず呟くと、刀身の輝きが増したような気がした。それがまるで、呼んだことに対して肯定しているような、出会えたことを喜んでいるようにも見えた。

 

レグルスは剣を鞘に収め、自分の身長以上の長さの剣を抱えながら、この剣がなぜ小屋の床下に隠されていたのか気になった。事情を知っていそうな人物を訪ねるため、部屋の窓を閉めた後、小屋を出て森を抜け、城の途中にある占い師の家を訪ねた。ドアを叩くと、一人の年上の女の子が戸を開けて出迎えてくれた。

 

「レグルス様、ようこそおいでくださいました」

「こんにちは、メルル殿。ナバラ殿は居るだろうか」

 

ドアを開けた女の子はメルル、この国一番の占い師であるナバラの孫娘である。レグルスは幼少期からナバラとメルルに世話になっており、たびたび占い師2人に会いにこの小屋を訪れていた。メルルの後ろから一人の老婆が表れ、レグルスに頭を下げた。

 

「レグルス様、ようこそおいでくださいました。して、わたくしに何か用ですかな」

 

占い師のナバラとメルルは要件を聞きながらもレグルスの腕に抱えられていた長剣を気にしていた。

 

「この剣を見たことがないだろうか?」

 

レグルスは腕に抱えていた長剣を差し出し、鞘から少しだけ抜いて刀身を見せると、ナバラとメルルはその輝きに思わず顔を近づけていた。刀身からは神聖でありながらも強い力を感じ、2人はこの剣がただの剣ではないことをすぐに理解した。

 

「この剣からはすさまじくも神秘的な力が感じられます」

「初めて見る剣じゃ、いったいどこでこの剣を?」

 

レグルスは森の奥深くの小屋で床下に隠されていたことを伝えた。

 

「よく見つけることが出来たのぅ」

「私を呼ぶ気配のようなものを感じた」

「すさまじい力は感じられますが…私にはその、呼ぶような気配は感じられません」

「剣がレグルス様を主と見ているのかもしれんのぅ。フォルケン王ならこの剣について何か知っておるかもしれん」

「分かった、父上に聞いてみるとしよう。ところで、小屋の、剣の持ち主に何か心当たりはないか?小屋自体は使われなくなってから長い年月が経っているようだった」

 

ナバラは昔、一度だけ見たことがある若夫婦とその小屋で生まれたであろう赤子のことを思い出していた。

 

「うむ、確か夫婦が住んでおったはずじゃ。子供も生まれてのう。9年近く前の話じゃが」

「今、その人たちは住んでないの?引越ししたのかしら?」

「そうじゃのぅ、ある時から見かけなくなったのじゃが…そういえばその頃にアルキード兵の軍勢を見たことがあったのう」

「アルキード兵が何故テランに?その事は兵士や父上には伝えたのか?」

 

レグルスは自国領土内に他国の軍勢がいたことに不快感を覚えながらも、当時のテランの国力では軍隊が来てもどうしようもなかっただろうと感じていた。

 

「無論、驚いて城の兵士に伝えたのじゃが、兵士と一緒に戻った時にはすでにおらんかった」

「もしかして、そのご家族は連れていかれてしまったのではないでしょうか?」

「分からん、アルキード兵とその家族がどういう関係だったのか、今となっては確かめようがないからのう」

「…そうか、この剣の持ち主について知りたかったのだが、残念だな…何かわかったことがあれば教えてくれ」

 

メルルとナバラに別れを告げたレグルスは、伝説や伝承に詳しい父親に剣のことを尋ねるため、城へ戻り玉座の間を訪れた。

 

「父上、この剣について何か知っていることはありますか」

 

フォルケン王はレグルスが抱える長剣を見ると、内心驚きながら脳裏にある一つの剣を思い浮かべた。以前フォルケン王が読んだ竜の騎士の本、その中に騎士のみが扱うことを許された武器についての記述があった。神々によって作られ、神々の金属オリハルコンで出来た剣、その剣の名は真魔剛竜剣。その剣の特徴がレグルスの持つ長剣と一致していたため、フォルケン王は内心驚いたが、努めて冷静にレグルスの問いに答えた。

 

「いや、残念ながら私もこの剣については心当たりがない」

「そうでしたか…父上が知らないのであれば誰も分からないでしょう。残念です」

 

レグルスには自身の正体が竜の騎士であることは隠しているため、フォルケン王は真実を伝えられないことに申し訳なさを感じながらも、真魔剛竜剣について知らないふりをした。

 

「もしかしたら、本に記載があるかもしれん。後で調べてみるとしよう。ところでレグルス、この剣はどこで見つけたのだ?」

「森の奥の小屋で見つけました。ナバラ殿に確認したところ、以前その小屋には夫婦と子供の家族3人が暮らしていたようです。もしかしたらその家族の持ち物かもしれません」

「そうか…家族が住んでいたのだな(竜の騎士様はこの世に1人しか存在しない。この3人家族とは別のタイミングで竜の騎士様がその小屋にいた可能性はあるかもしれんな。…だが、なぜ剣だけが小屋に残されているのだ?)」

 

フォルケン王は小屋に伝説の剣が残されていたことについて、なぜ剣が隠されていたのか、いつから剣があったのかについて考えていたが、続くレグルスの質問に意識を向けた。

 

「あと、父上。以前この国にアルキード兵が来たことがありましたか?」

「うむ、確かに以前アルキード兵を見たとの報告があったな。兵士カナルに確認するよう向かわせたのだが、すでに姿はなかったはずじゃ」

「その家族はアルキード兵を見かけた後から姿が見えなくなったとナバラ殿がおっしゃってました」

「アルキードか…こちらも確認してみるとしよう。レグルスよ、その剣はそなたが管理するのがよかろう。ただし、剣について他の者に話さないほうがよいだろう。その剣はおそらく名剣。話が伝われば、よからぬ輩を招く原因になるかもしれん」

「分かりました」

「今は難しいと思うが、大きくなったらその剣を振るえることが出来るようになろう」

「はい!私もこの剣を振るえる日を楽しみにしています!」

 

 

 

玉座の間から退出したレグルスは長剣を抱え自室に戻ると机の上に重たい長剣を置いた。そわそわしながら剣を鞘から抜くと、現れた素晴らしい刀身にレグルスはじっと眺め続けながら剣の手入れや将来について考えていた。

 

(父上に剣を手入れするための道具を用意してもらおう。毎日手入れして、大切に扱い、そして、いつかこの剣を持って旅に出よう)

 

レグルスは将来、大きくなった自分がこの剣を背中に背負い旅に出る姿を想像し、胸を躍らせた。その日からレグルスの日課に剣を眺めること、手入れすることが含まれるようになった。

 

 

 

一方、フォルケン王はレグルスが退出した後、玉座にて兵士カナルを呼び出し、以前報告にあったアルキード兵のことについて確認した。確認後、9年前にアルキード王国で何があったかの調査を命じ、兵士カナルはテランを出発した。

 

2週間後、兵士カナルはどこか怒った様子で帰国した。フォルケン王にアルキード王国で起きたある事件、ソアラ姫誘拐事件、誘拐犯の魔王の生き残りの処刑について、そして処刑された後にドラゴンが現れて死んだ男を連れ去った話をした。その話を聞いたフォルケン王はショックを受けながらも、9年以上前に各国から送られてきた大量の指名手配書の中から、処刑された魔王の生き残りの手配書を見つけ、フォルケン王は今回レグルスが見つけた剣がなぜあの小屋に隠されていたのか理解した。

 

フォルケン王が震える手で掴んでいる10年前にアルキード王国から送られてきた指名手配書。その手配書に書かれている手配犯の名前はバラン。名前の下に描かれた似顔絵は成人男性のものであったが、その絵がどこかこの国の王子レグルスの成長した姿に似ていた。




真魔剛竜剣ゲット!ただし、重すぎて今の主人公には扱えません。

原作ではアルキード兵にバランが捕まる際、真魔剛竜剣を装備していないので、小屋のどこかに隠していたのではないかと考えこの話が生まれました。
ちなみに作中に登場した小屋はダイ君(ディーノ)が生まれた場所になります。
主人公の言葉遣いは国王であるフォルケン王には丁寧な言葉遣いにしていますが、普段はバランの口調に近づけています。

報告:誤字脱字修正しました!報告ありがとうございます。
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