地底魔城から少し離れた岩場にて、ヒュンケルの執事であるモルグと別れたダイ達一行は地底魔城の入口付近へ向かって歩いていた。レグルスが人間の気配を感じたため、その場所へ向かい様子を確認すると、そこには地底魔城入口付近で別れたバダックが周囲をキョロキョロと見渡しながら歩いていた。
「バダックさーんっ!!!」
ダイが手をブンブン振りながらバダックに大声で呼びかけると、声に気付いたバダックが笑顔を浮かべ、ダイ達の元へ走り出した。
「おおっ!ダイ君!ポップ!ラーハルト!クロコダイン!皆、無事じゃったか!」
「おう!じいさんも無事だったか!」
「ワシは大丈夫じゃ!クロコダインが敵を倒してくれたおかげじゃの!」
バダックがダイ達の元へ辿り着くと、新たに増えた仲間に驚いた後、ニコッと笑ってダイ達を見た。
「人質は皆助ける事が出来たのじゃな!いや〜急に火山が噴火したから心配したんじゃぞう!…おや?人質は2人と聞いてたのじゃが…1人多いのう?」
人質は2人と聞いていたため、3人もメンバーが増えていることにバダックは首を傾げながらレグルスとマァムとヒュンケルを順に見渡した。
「……」
ヒュンケルはバダックがパプニカの兵士だと気付くと目を逸らし、気まずげに眉を顰めた。
「3人とも俺達と同じでアバン先生の弟子だよ!1人は地底魔城で出会ったんだ!」
「おお!そうじゃったか!!魔王軍との戦いに頼りになりそうじゃな!!ダイ君、不死騎団はどうなったか分かるかの?急に死火山が噴火してのう…奴らも無事では済まないはずじゃ!」
「……」
ヒュンケルは顔を上げるとバダックを見つめ、落ち着いた声で話しかけた。
「…不死騎団は滅んだ…敵はダイ達が倒し、地底魔城はマグマに沈んだ…それにアンデッド達も巻き込まれている…もう、パプニカが不死騎団に襲われることはないだろう…」
バダックはヒュンケルの言葉にぎょっと目を見開くとダイを見つめ、フルフルと体を震わせるとダイの両肩に手を置いた。
「な…なんと!人質を助けただけではなく…不死騎団も倒したとな!?ほ…本当か?ダイ君!?」
「うん、本当だよ!不死騎団は…俺達が倒した!」
ダイがチラリと視線を移すと、ヒュンケルは小さく頷いて問題ないと合図を送った。
「不死騎団を…倒した!倒したとな!!…ダイ君!他の皆も!本当に!本当によくやってくれた!ありがとう!!ありがとう!!!」
バダックは目尻に涙を浮かべながらダイ達に何度もお礼を述べた。
「みんな疲れたじゃろ!隠れ家で休むとするかの!姫様の捜索は明日からじゃ!」
「そうだね、レオナは心配だけど…今日は疲れちゃった…」
「今日はしっかり休んで、明日から探しましょ!」
バダックの案内でダイ達は隠れ家に向かって歩き出し、戦いで疲れたポップもぐったりしながらバダックの後を追った。
「疲れた〜やっと休めるぜ…腹も減ったしよ…」
「ほほっ!戻ったら、食事を用意しようかの!」
ポップの疲れた表情に、バダックがニッコリ笑いながら答えた。レグルスはダイの後を歩いていたところ、不快な視線を感じたため、そちらに顔を向けた。
(ん?…何か、視線を感じる…この気配は!)
レグルスは視線の先に居る悪意ある気配に気づくと顔を険しくし、ダイに声をかけた。
「ダイ…少し離れる…レムオル!」
「えっ?…レグ?」
声をかけられたダイが後ろを振り向いた時にはレグルスの姿は消えていた。
魔王軍の居城である鬼岩城、玉座がある部屋には魔軍司令ハドラーの呼び掛けにより、各国を侵攻していた軍団長が集まり、パプニカの戦況をザボエラから聞いていた。
「地底魔城は壊滅したそうじゃ…突然の死火山の噴火にみまわれての…」
地底魔城壊滅の報告を聞いたフレイザードはニタァと笑うと、大袈裟に発言した。
「へええっ…そいつぁ不運だねぇ…クククッ!まあ、いいんじゃないですか?敵を道連れの相討ちなら…あの坊やにしちゃあ良くやったよ!クックックッ!!」
口では褒めているように言うが、実際にはヒュンケルを馬鹿にしたような物言いのフレイザードにヒュンケルと軋轢があったハドラーとザボエラ、人間を見下しているガルダンディーは口元をニヤリと歪ませた。
(フフフッ…こいつめ…)
(キヒヒヒヒ…)
(ククククッ!)
唯一、師弟関係があったミストバーンだけが、ヒュンケルがやられたことを馬鹿にすることはなかったが、発言することはなく沈黙を保った。
「……」
「さあっ!それじゃあヒュンケル亡き後のホルキア大陸攻略は俺に任せてもらおうか!!…もっともレオナ姫とかいう小娘を探し出し、首をとりゃオシマイ!なんとも歯ごたえのねぇ仕事だけどな!ウヒャハハハハッ!!!」
部屋にはフレイザードの楽しげな笑い声が響いた。ひとしきり笑ったフレイザードはパプニカで見たクロコダインの姿をふと思い出すとついでに報告した。
「そういえば…もう1つ報告があったなぁ…ここに戻る途中、クロコダインを見かけたぜ!」
「なんじゃと?パプニカでか?」
「ああ…ガルーダに掴まって飛んでいやがった」
クロコダイン発見の報告に玉座に座っていたハドラーは眉を顰めた。
「蘇生液から抜け出した後、消息不明だったが…クロコダインはここに戻らず、何をしている?」
「俺もどこに向かったかは知らねぇなぁ…」
「悪魔の目玉に捜させますじゃ」
ザボエラが悪魔の目玉にクロコダイン捜索の指示を出すと、パプニカ各地にて活動していた悪魔の目玉は移動し、クロコダインを探し始めた。暫くすると悪魔の目玉の声が部屋に響いた。
「発見!クロコダイン様を発見しました!…ですが、クロコダイン様は勇者一行と共に行動しております!」
悪魔の目玉が壁に埋め込まれた巨大な水晶越しにクロコダインを発見したと伝えたが、勇者と行動しているとの報告にその場にいた者たちは驚愕し、ざわついた。
「な…なんだとぉ!?」
「どういうことじゃ!?」
「映し出します」
巨大な水晶に映像が映し出されると、そこには地底魔城で死んだと思われていた勇者一行と不死騎団長ヒュンケル、そしてクロコダインが行動を共にし、岩場を歩いていた。
「ヒュンケル!勇者のガキ共!あいつら…あの状況でどうやって生き残った!?」
「おいおい!あいつら噴火で死んだんじゃなかったのかよ!」
「な…なぜ、クロコダインが勇者と一緒にいるんじゃ!?」
「ば…馬鹿な!まさか…あのクロコダインが…裏切ったとでも言うのか!!?」
「……」
勇者一行は生き残り、軍団長であったヒュンケルとクロコダインの裏切りにその場は紛糾した。
「と…とにかく奴らの後を追うのじゃ!」
「かしこまり―」
ザボエラが勇者一行の後を追うよう指示を出したところ、水晶に映っていた映像は何も映さなくなった。
「おいおい!何も映らなくなったぞ!!」
「…通信が途絶えました…現場にいた同胞はやられたと考えられます」
「すぐに他の者たちを現場に向かわせるのじゃ!」
「かしこまりました…ホルキア大陸にいる他の悪魔の目玉を向かわせます」
ハドラーは歯を食いしばり、何も映さなくなった水晶を睨みつけた後、パプニカ攻略の後任となったフレイザードに声をかけた。
「フレイザードよ…ホルキア大陸攻略だが、ヒュンケルとクロコダインが敵に回った以上、お前だけでは荷が重い!この件は全軍団で対処する!」
フレイザードはハドラーの言葉に驚愕すると慌てて弁解した。
「ま…待って下さいよハドラー様!敵の戦力を確認するため、まずは俺にやらせて下せぇ!」
「却下だ!すでに2軍団が抜けている…これ以上、我ら魔王軍の戦力を低下させるわけにはいかん!」
「ぐっ…!」
フレイザードは悔しげに顔を歪め、ハドラーはその様子に気付きながらもあえて無視し、玉座から立ち上がるとその場に居る軍団長に大声で指示を出した。
「全軍団長に告ぐ!戦いの準備をせよ!次の戦いで勇者一行ならびに裏切り者のヒュンケルとクロコダインを始末する!!!」
ハドラーが下した命令にザボエラとガルダンディーは驚いた顔をしたが、すぐにガルダンディーはニヤリと笑うと楽しそうな声を上げた。
「クククッ!総力戦ってわけか…面白ぇ!」
「ザボエラよ!勇者共の居場所が分かり次第報告せよ!そこを奴らの墓場とする!!!」
「キヒヒヒヒ…承知しました!」
ザボエラはニヤリと笑いながら次の戦いでどれだけの戦力を投入するか思考を巡らせた。
(くそっ!面白くねぇ!)
一方のフレイザードはホルキア大陸攻略を任されるはずが、総力戦となったことで手柄が分散される事態に苛立っていた。
(こいつらも参戦したんじゃ俺の手柄が減っちまう…!俺が手柄を独り占めするためには…こいつらが気付く前に勇者共を始末するしかねぇ!)
フレイザードはニヤリと笑うと勇者を倒す方法を考案した。
急に居なくなったレグルスを心配してキョロキョロと周囲を見渡していたダイ達だが、程なくしてレグルスがダイのすぐ側で姿を現すとホッと息を吐いた。
「よかった…レグ!急に居なくならないでよ!」
先程まで不在であったレグルスは険しい表情を浮かべると皆が見えるように腕を突き出し、掴んでいるものを見せた。
「…こいつを見つけた」
「こ…こいつは…!」
「悪魔の目玉!!!」
レグルスが掴んでいたのは息絶えたモンスターである悪魔の目玉であった。それを見たクロコダインとヒュンケルは驚愕の声を上げ、ダイ、ポップ、マァムもロモスで見たことあるモンスターに眉を顰めた。
「こいつが…我らを監視していた」
「…悪魔の目玉は魔王軍の監視役と偵察役、連絡役を担っている…恐らく我らを見張っていたのだろう!」
ヒュンケルの言葉にポップは焦った様子で悪魔の目玉を見た後、周囲を素早く見渡した。
「やべぇじゃねえか!俺達がここに居るのがバレた!」
「じゃあ、敵がここに来るってこと!?」
「な…なんじゃとおっ!大変じゃすぐに敵が来るぞっ!皆、武器を構えるのじゃ!」
ポップとダイとバダックは焦った様子で周囲を警戒し出し、レグルスは掴んでいる悪魔の目玉をじっと見つめた後、落ち着いた様子で話した。
「恐らく敵はすぐには来ないだろう…だが、隠れ家の場所が特定されるのは避けたい。皆は一時的に別の場所で待機して居るように!その間、私とラーハルトで周囲にいる悪魔の目玉を一掃する!」
「承知しました!」
ラーハルトは役に立てることを嬉しく思いながらレグルスに対して小さくお辞儀をし、ポップも頷くことで了承した。
「おう!分かったぜ!なら俺たちは別の場所に行くか」
「それならパプニカの神殿はどうかしら?魔弾銃も回収したいし」
「おお!それならワシも神殿に残された食料を取りに行きたいのぅ…この人数じゃと隠れ家の食料だけでは足りぬだろうからのぅ」
ポップ、マァム、バダックの会話を聞いたレグルスは頷いた。
「パプニカの神殿だな…ではそこで合流するとしよう…行くぞ、ラーハルト!」
「はっ!!」
「ま…待って!」
レグルスとラーハルトが駆け出そうとした所、ダイが2人を呼び止めると側に近寄った。
「俺もレグと一緒に行く!俺も役に立ちたい!」
真剣な表情で共に行くと申し出たダイにレグルスは修行の一環にもなると考えると、見つめ返して頷いた。
「そうだな…空裂斬の修行にもなるか…良いだろう!ダイ、共に行くぞ!」
「うん!ポップ!皆!後でね!」
「おう!気をつけて行けよ!」
レグルスとダイとラーハルトは悪魔の目玉を倒すためパプニカの神殿に向かって駆け出した。
「まずは神殿とその周辺の敵を倒す…!」
「分かった!」
「かしこまりました!」
レグルスたちは道中の敵を倒しながら神殿へ目指し、神殿の敵を一掃すると敵の気配を察知して近くの森に入った。レグルスは敵の動きを感じ取り先回りすると木の影に隠れ、ダイとラーハルトも同じ様に木の後に隠れた。
「ダイ…前方から敵が来るが…気配を感じ取れるか?」
「う〜ん…分からない」
ダイは目を凝らして敵が居ると言われた前方の森を探すが見つけられず、眉を寄せると首を横に振った。
「ダイ…目をつぶり、心の目で探すのだ…ラーハルトも試してみよ」
「心の目…心の目……やっぱり…分からないよ…」
「……俺も試してみましたが…やはり感じ取れません…」
ダイは目をつぶり気配を探そうとするが何も感じ取ることが出来ず、ラーハルトも眉をひそめると首を横に振った。
「悪魔の目玉は気配が小さい…訓練には不向きか…隠れろ…敵が来るぞ」
ダイ達が草木に身を隠すと悪魔の目玉が木の枝を伝って、先ほどまでダイ達がいた岩場に向かって移動していた。
「来た!倒すよ…海波斬!」
ダイが攻撃すると、悪魔の目玉は地面に落ち、動かなくなった。
「次は…こちらだ!」
レグルスが駆け出すとダイとラーハルトも後ろを着いて行き、走りながらダイは前方を走るレグルスに声をかけた。
「ねぇ、レグは気配を感じ取れるけど…空裂斬は使えるの?」
レグルスは走りながら首を横に振った。
「いや…私は闘気を扱えない…その為、闘気を扱う技…空裂斬とアバンストラッシュは覚えられなかった…」
「えっ?闘気扱えないの?」
「ああ…闘気は感じ取れるが、闘気を出すことは叶わなかった…」
「俺もレグルス様と同じで闘気を出すのは苦手です…その分、スピードでカバーしましたが…」
ダイは2人の実力者が闘気を扱えないのを意外に感じた。
「そうなんだ…」
「戦士が必ずしも闘気を扱えるわけではない…闘気を扱えるだけでも凄いことだ…その点、ダイは闘気を扱える…気配を感じ取れればすぐにでも空裂斬を覚えられるだろう」
「うん!俺、闘気を感じ取れるようになって、早く空裂斬を覚えるよ!」
「ダイ様なら直ぐに習得出来ることでしょう!」
「…止まれ…敵がもう時期ここを通過する…ダイ、あちらの方角から敵が来るが―」
ダイ達は闘気を感じ取る訓練を行いながら悪魔の目玉を倒して行った。
パプニカの崩壊した神殿にてマァムは以前の戦いで無くしていた魔弾銃を瓦礫の隙間から見つけると笑顔を浮かべた。
「見つけたわ!」
マァムは瓦礫の隙間に手を伸ばすと魔弾銃を拾った。
「おお!見つかったか!」
近くで魔弾銃を探す手伝いをしていたポップは駆け寄ると、マァムの手の中にある魔弾銃を見つめた。
「いや〜見つかって良かったぜ!…先生の、大切な形見だもんな…」
「ええ…本当に良かったわ…ヒュンケル!魔弾銃は見つかったわ!」
「そうか…」
マァムは少し離れた場所で探す手伝いをしてくれたヒュンケルに声をかけた。呼び掛けで体を起こしたヒュンケルはマァムとポップに歩いて近寄った。
「あとはダイ達が戻るのを待つだけだな…あ〜、腹減った…」
「そうね…私達もバダックさんの所へ行って手伝う?何か食べられるかもしれないわ!」
「おっ!それいいな!よし、行くか!」
「ヒュンケルも一緒に行きましょ!」
「…ああ」
ヒュンケルは覇気のない声で返事をし、歩き出したポップとマァムの後ろを着いて行った。ポップとマァムは元気が無い様子のヒュンケルをチラッと見た後、ヒュンケルに聞かれないよう小声で話した。
「ヒュンケル大丈夫かしら…思い詰めてないといいけど…」
「崩壊したパプニカ見て気にするなってのも無理だろうしよ…こんな事ならダイ達の所に行かせれば良かったぜ…しょうがねぇ!何か話題振って気を逸らすぞ!」
「ええ!」
マァムとポップは後ろを振り向くとヒュンケルに話題を振った。
「ヒュンケル!ええっと…好きな食べ物は何かしら?」
「特に無い」
「…そう」
マァムとポップは前を向くとヒュンケルに聞かれないよう小さな声で話した。
「おいっ!話終わっちまったぞ!しかも何で食べ物の話だよ!」
「しょうがないじゃない!私達の共通の話題は魔王軍と先生の話だけど、どっちもヒュンケルにとっては辛い過去を思い出させてしまうわ!そうしたら食べ物とか趣味とか、そういったありきたりな話になってしまうのよ!」
「…それもそっか…うーん、しょうがねぇなあ…話膨らませっか…」
話し合いが終わったマァムとポップは後ろを振り向くとヒュンケルに再度、話題を振った。
「ヒュンケル!…子供の頃はよ、何食ってたんだ?バルトス…親父さんに食べ物を外から持ってきてもらってたのか?」
「…そうだな…持ってきたのもあったが…父が作ってくれた事もあった」
「作った?もしかして…料理をしたってこと!?」
「親父さんアンデッドだろ!?味わかるのかよ?」
「味覚はなかったが…料理はレシピ通りに作っていた…だから、味に問題はなかった…」
「へえー、味が分からないのに器用なもんだな」
ヒュンケルは少しの間目をつぶり、子供の頃のバルトスが作った手料理、そして、自身が初めて作った料理を思い出すと、ぽつりと静かに語りだした。
「……子供の頃…俺は父の為に料理を作った事があった…父は俺が作った料理を美味しい美味しいと言って…食べてくれた」
「えっ、でもさっき味覚が無いって…」
「そうだ…その時の俺は父に味覚が無いことを知らなかった…後で味が分からないと知り、何故美味しいと言ったのか…父に尋ねた…」
「…お父さんはなんて?」
「味は分からなかったが…俺が父の為に作ったのが嬉しかったと…例え味覚が無かったとしても、味が分かったような気がしたと…」
マァムとポップはヒュンケルの料理を嬉しそうに食べるバルトスを想像すると笑顔を浮かべた。
「へぇ!素敵な話じゃない!」
「いい親父さんじゃねぇか!」
「!…ああ…俺と父の…数少ない大切な思い出だ」
ヒュンケルは元気が出たようで少し笑みを浮かべ、それを見たマァムとポップは前を向き、目を合わせると小声で話した。
「ヒュンケル、少しは元気になったかしら?」
「どうだろうな…事が事だからよ…それでもあいつが落ち込んでいる時は俺達が支えてやればいいんじゃねぇか?」
「ええ!そうね!」
ヒュンケルは前方を歩く2人の背中を見ながら小さく笑みを浮かべた。2人の小声はずっと聞こえており、自身を元気づけようとしてくれるマァムとポップにヒュンケルは温かい気持ちを抱いた。
(マァム…ポップ…ありがとう)
3人は神殿の貯蔵庫でバダックとクロコダインに合流し、食べ物を分けてもらうと、外が見える場所に移動し、並んで食べながらダイ達が戻ってくるのを待ち続けた。
「あいつら遅いな〜」
「そうね、そろそろ暗くなるわ……ねぇ!あれを見て!」
周囲が夕焼けに照らされる頃、ダイが森から現れると、手を振りながら神殿までの道のりを走り、ポップ達に駆け寄った。
「ポップ!皆!ただいま!」
「ダイ!おかえり!」
レグルスとラーハルトはダイの後を歩いて追いかけ、ポップ達がいるパプニカの神殿に到着した。レグルスは疲れた様子もなく淡々とポップ達に現状報告を行った。
「周囲にいる悪魔の目玉は一掃した…これで隠れ家に行っても問題ない」
「おお!これで安心じゃのう!」
「3人ともありがとう!…じゃあみんな、合流した事だし…行きましょう!」
全員が合流し、マァムが声をかけると一行は隠れ家に向かって歩き出した。
「俺、お腹すいたよ…戻ってもすぐにご飯食べられないよね…」
「おめぇはずっと動いていたからな…俺たちはちょっと食ったけどよ」
「何か食べ物あるの?ポップ!俺も食べたい!」
お腹を空かせたダイは何か食べられるとワクワクした表情でポップを見上げた。
「おう!もちろん…って…あれ?そう言えば…全部食っちまったっけ…」
「………えっ!?全部食べちゃったの!?ポップずるい!俺達、頑張って戦っていたのに…」
ダイが膨れっ面で見上げていると、ポップがプッと小さく噴き出し、懐から食べ物を取り出すとダイの手のひらに置いた。
「冗談だよ!心配しなくても、ちゃんとおめーの分もあるからよ!」
「やったぁ!いただきます!」
食べ物を受け取ったダイは余程お腹が空いていたのかニコニコしながら食べ物を頬張った。
「お前さん達の分もあるぞ!ほい、レグとやらと、ラーハルトの分だ!」
クロコダインが背後から腕を伸ばすと、レグルスとラーハルトの手のひらに食べ物を置いた。
「ああ」
「感謝する」
3人は食べながら歩き、ダイ達が食べているのを見ていたヒュンケルがクロコダインに声をかけた。
「クロコダイン…食べ物はまだ余っているか?」
「おう!まだあるぞ!」
「おっ!ヒュンケル、おめぇそれが気に入ったのか?」
ヒュンケルはクロコダインから受け取った食べ物を齧ると小さく笑い、ポップを見た。
「これは以前にも食べた事がある、普通の素朴な食べ物だ…だが…誰かと一緒に食べるのが…こんなにも美味しく感じるとはな…」
ヒュンケルが穏やかな声で話すのを聞いたポップとマァムは互いを見ると声を出さずに小さく笑みを浮かべた。夕焼けにより周囲が赤く染まる中、一行はバダックの隠れ家に向かって歩き続けた。
鬼岩城にて勇者一行の行方を探すように指示されていたザボエラは良くない捜索結果に眉をひそめ、言いづらそうに魔軍司令ハドラーに報告を行っていた。
「勇者一行の行方ですが…未だに居場所を特定出来ておりません…どうやら勇者共が悪魔の目玉を倒している様ですじゃ…ホルキア大陸に居ることは間違いないのですが…」
「ふん…やつらこっちの動きを察知したようだな…」
「あともう1つ…ホルキア大陸北部のバルジ島にてパプニカの王女レオナ姫が居ることが分かりました」
「そいつらは後回しでもよい…最優先すべきはアバンの使徒共を倒すことだ!」
ハドラーの発言を聞いたザボエラはニヤリと笑うと自身が考え出した策を提案した。
「キヒヒヒヒ…それなのですが…ハドラー様、ここは1つワシが考えた策を採用しませんかのぅ?」
「ほう?…申してみよ」
ハドラーは興味深そうにザボエラに尋ねると、ザボエラは不敵に笑いながら作戦内容を提案した。
「バルジ島でやつらを待ち伏せするのですじゃ…!勇者共はパプニカの姫を助けるため、向こうから島にやって来る…事前にバルジ島に罠を仕掛ければ…こちらから行かずとも向こうから罠にかかるというわけですじゃ!キヒヒヒヒ!」
「なるほど…良い考えだ!…ザボエラ、その策を採用する!」
ハドラーはザボエラの策を了承した。ザボエラは自身の策が採用されたことに笑みを浮かべ、丁寧に辞儀をした。
「ははぁ!では…」
「そうだ!全軍団長に伝えよ!…バルジ島を奴らの墓場にする!!!」
「キヒヒヒヒ!かしこまりました!すぐさま伝えます!」
ハドラーの勇ましい指示にザボエラはニヤリと笑うと部屋を退出し、他の軍団長に作戦を伝えるため悪魔の目玉に指示を出し始めた。
悪魔の目玉からザボエラの作戦を聞いたフレイザードはニヤリと笑うとすぐにその場から歩き出した。
「バルジ島か…!クックックッ!!他の軍団長に手柄はやらねぇ…!パプニカの姫とかいう小娘も!憎たらしい勇者共も!裏切り者も!!俺が全部始末してやるぜぇ!そして…俺が魔王軍で一番の手柄を手に入れる!!!クックックッ…ウヒャハハハハッ!!!」
フレイザードは鬼岩城を後にすると、部下を引き連れバルジ島に向かって移動した。
原作を読んでいて見たかった光景の一つが、ついに実現しました!クロコダイン、ヒュンケル、バラン(生まれ変わり)、ラーハルトが共に行動し、仲間としてダイたちを支える!本当はバランがいいけど、それはまだ先かな?
この時点で、すでにフルメンバーに近いです!あとはレオナと数人が加われば、私が考える理想のメンバーが揃います!
今回はバルジ島編から始まり、その後カール王国編へと展開していきます。物語が長くなったため、今回は更新を月曜日と金曜日の2回に分けて投稿します!