ギャグ多め。あとがきにおまけあり。
レオナ姫捜索のため、合図に使われる火薬玉を取りにダイ達一行はパプニカの神殿に向かって歩いていた。ダイは一緒に行動しているが、魔法で姿が見えないラーハルト達3人が何処にいるか探し、キョロキョロしながら周囲を見渡すと隣を歩くレグルスに小声で声をかけた。
「ねえ、レグ…ラーハルト達は近くにいるんだよね?」
「ああ、魔法で姿を隠し、一定の距離を保ちつつも近くにいる…ダイ、これも修行の一環だ…気配を感じ取り、何処にいるか探してみよ」
「分かった!うーん…、………あそこかな?」
目をつぶり気配を感じた気がしたダイは何もない場所を指さし、レグルスはその場所を見ると首を横に振った。
「残念ながら、そこには何もない」
「違うの?えっと…じゃあ、あっちかな?」
「いや、そこでもない」
「うーん…どこだろう?」
キョロキョロ周りを見渡してラーハルト達を探していること、ポップとマァムがダイに近づいた。
「ダイ、空裂斬の練習か?」
「あっ、ポップ!そうだよ!気配を探る修行をしているんだけど…うまく出来なくて…」
「確か先生が空裂斬で一番難しいのは気配を探ることだって言っていたわ…先生も習得するのに時間がかかったって」
「うん…今朝も訓練したけど、間違えてラーハルト攻撃しちゃったし…」
「まっ、時間はかかるだろうよ!気長にやろうぜ!…その点、レグは楽だよな!おめー、最初から気配を感じ取れたんだろ?」
「そうだな…剣を持つ頃には周囲の気配を察知出来たな…」
「レグってそんな小さい時から気配を探れたの!?…俺、全然習得できないのに…なんか、ちょっとへこむ…」
「気にする必要ねぇぞ、ダイ!気配を探れる奴なんか俺はアバン先生とレグ以外に見たことねぇぞ!」
「そうよ!私やポップ、ラーハルトとヒュンケルも習得してないわ!」
「ラーハルトには1年間、気配を探る修行を行っているが…習得できていない…簡単に習得できないのは間違いないだろう」
「い、1年……そっか…みんなも習得するのに苦労しているんだね…分かった!俺は俺のペースで習得してみせるよ!出来れば、なるべく早くね!」
「おう!その意気だ!」
パプニカの神殿に到着するまでダイは姿が見えないラーハルト、ヒュンケル、クロコダインの気配を探る修行を続けた。神殿に到着後、ダイ達は火薬玉が格納されている地下倉庫の入り口を瓦礫の中から探していた。
「うへぇっ!こりゃ大変だぜっ!!この中から地下倉庫の入り口を探すなんてよ…」
神殿の屋根が崩落し、大量の瓦礫が散乱した周囲をポップはげんなりしながら見渡した。
「確かにこの辺りのはずじゃが…うーん!!!この岩、大きくて動かんわい!」
バダックは人の背丈ほどの大きな岩を動かそうとしたが、岩はびくともしなかった。
「ふう…しょうがない、他のところからやるかの…」
大きな岩が動かなかったため、バダックは別の場所へ移動し、手ごろな岩を持ち上げては地下がないかを覗き込んだ。
(じいさん!この大岩は俺が運んでおく!!!)
バダックが覗き込んでいる背後では先ほどバダックが動かすことができなかった大岩をクロコダインが音を立てずに持ち上げると別の場所へ移動した。
「ここにもないのう…おや?さっきの岩はどこ行ったのじゃ?」
バダックが振り返ると先ほどまであった大岩がなくなっていたため、首をかしげると岩があった場所をうろうろした。
「変じゃのう…?」
(この岩はあの辺りでよいか…よし、レグルス様の手伝いに戻るぞ!)
「……ん?い、今、石が動いていたような……?」
ラーハルトは岩を離れた場所へ放り投げるとレグルスの元へ戻り、投げた石は誰もいない場所でほかの石にぶつかりながら地面に転がり、バダックは転がる岩を見て寒気を感じた。
「だ、誰も…お、おらん…!岩がひとりでに動いておった…!!ま、まさか!この場所で亡くなった方の…ゆ、幽霊の仕業では…!!い、いや!そんなはずはない!…幽霊など、そんなものは、おらん!…おらんのじゃ!!」
バダックは鳥肌が立ちながらも幽霊は居ないとブツブツと自身に言い聞かせた。
(この布は邪魔だな…別の場所に移すか)
ヒュンケルは岩の上に落ちていたカーテンを拾うと別の場所に移動した。
「幽霊などおらん…!おらん…!ふう、よし作業に戻るとするか…の…………ぎょええええ!お、お化け!!!」
悲鳴を上げたバダックの視線の先では白いカーテンが風もないのに宙を浮き、移動すると離れた場所の地面に落ちた。悲鳴を聞いたヒュンケルはちらりとバダックに目をやるが、気にせず元の場所に戻ると作業に戻った。
(幽霊か…アンデッドやゴーストがいるなら、幽霊がいてもおかしくない)
ヒュンケルは脳裏に部下のアンデッドや以前の師であるミストバーンの部下のゴーストを思い出しており、バダックの悲鳴の原因が、自身が運んだ白いカーテンのせいとは思いもしなかった。
「あ…、あわわわわっ」
「じいさんどうした?すんげぇ悲鳴上げてよ」
「バダックさん、何かあったの?」
悲鳴を聞きつけたポップとマァムは震え上がっているバダックに声をかけると、バダックは顔を青ざめ、声を震わせながら2人に近づいた。
「ゆ、幽霊じゃ…!こ、ここには幽霊がおるんじゃあああ!!!さっきも風がないのにカーテンが移動しておったり…!誰もいないのに、岩が勝手に動いたのじゃ!き、きっと……ここで亡くなった者たちが…わ、ワシらに何か伝えようとしてるんじゃあぁ!!」
「幽霊?じいさん、何言っているんだよ?」
「私たちは何も見てないわ…?」
「本当に!……本当に何も見ておらんのか?」
「ああ!何も見てねぇな…じいさん、疲れてんだよ…気のせいだよ!気のせい!なぁ、マァム!」
「ええ!バダックさん、幽霊なんていないわ!私たちだけよ!」
「そ、そうか……そうじゃな!気のせいじゃのう!幽霊などおらん!きっと、見間違えたのじゃな!」
ポップとマァムはバダックに対してニコッと笑顔を浮かべていたが、内心、原因を作ったラーハルトとヒュンケルとクロコダインに小言を言っていた。
(おいいいいいっ!あいつら何してんだ!姿隠しているんだから自重しろよ!)
(バダックさんは誤魔化せたけど…パプニカの人達の前では誤魔化せるとは思えないわ!お願いだから、ばれるようなことだけはしないで…!!!)
パプニカの人たちの前で正体がばれるのはまずいと考えていたが、バダックの前で3者に声をかけるわけにもいかず、ポップとマァムは心の中で『頼むから余計なことをしないでくれ!』と、強く願った。
「あった…!!」
「地下の入り口を見つけた!」
「ほんとか!」
ダイとレグルスの地下倉庫入口発見の合図にポップ達はダイの元へ集まった。地下への入り口は見つかったが、そこは大量の瓦礫で塞がれており、ポップは瓦礫の隙間から下へ続く階段を見るとレグルスに視線を向けた。
「レグ、この隙間から入れるか?」
「やってみよう………駄目だ!…隙間の奥は更に狭い!通り抜けるのは無理だ…」
「レグが入れないんだったら俺でも駄目だよね…上の瓦礫を退かさないと!」
「でも…これを退かすのはちょっと無理じゃない…?」
マァムは高く積み上げられた大量の瓦礫を見上げると眉をひそめた。マァムの表情を見たダイはある事を思い付くと笑顔をうかべた。
「俺に任せてよ!みんな離れて!俺が瓦礫を吹き飛ばしてやるっ!!」
ダイが嬉しそうにはしゃぎながら駆け出し、離れた場所に立つと腕をブンブンと振り回した。全員、指示通り地下倉庫入り口から離れ、ダイが何をするのか様子をうかがった。マァムは張り切っているダイを見ながら隣にいるポップに小声で話しかけた。
「なんか、ずいぶん張り切っているわね!ダイったら…!」
「自分の力を試したくってしょうがねえんじゃねえの?紋章の力無しでヒュンケルを倒したっていう話をしてやったからさ」
剣を装備したダイは新技を試せる機会に思わず口角を上げると瓦礫を睨みつけた。
(よおしっ!出来るかできないか!…あの技を試してやるぞっ!!!)
ダイは剣に魔力を込めた。
「むんっ!!メラッ!!!」
ダイの剣に炎が灯された。
「げえっ!!!」
炎の剣を見たポップとマァム、バダックは驚愕の表情を浮かべ、レグルスも驚いて目を見開いた。
「はああぁあーーーっ!!!」
「まずいっ!」
「バッ…バカ!やめろっ!!!」
「火炎―」
ポップが叫ぶ中、レグルスは駆け出すと技を繰り出そうとしているダイに近寄り、利き腕関節部分を抑えると技が繰り出される前に動きを封じた。
「うぇっ!?レグ、何?」
「ダイッ!地下には火薬がある、炎は危険だ!」
「火薬?えっと…つまり?」
「火薬に火が付けば爆発するって言ってるんだよ!!!ふう…あぶなかったぜ…おめえ、よりによってとんでもない技使おうとしやがって…!」
ポップは怒りながら近づき、レグルスが手を離すとダイは剣を持つ腕を下ろした。ダイはポップが怒っている理由が分からず、首を傾げた。
「えっと…ごめん?」
「あぶなかったのう…肝が冷えたわい…」
ポップとバダックがほっと息をつき、マァムは視線を移すと、いまだ鎮座している瓦礫を見上げた。
「この瓦礫はどうしましょうか…」
「通常の大地斬などで少しずつ破壊するしかないだろう…」
「ちょっと時間がかかりそうだね」
「しょうがねぇだろ…」
ダイ達がげんなりしながら瓦礫を見上げていると、話を聞いていたラーハルトとヒュンケルとクロコダインの3者がそれぞれ動き出そうとしていた。
(レグルス様とダイ様のお役に立てるチャンスだ!お二人のため、このラーハルト!瓦礫を取り除いて御覧に入れましょう!!!)
ラーハルトは顔に喜色を浮かべ、槍を装備すると頭上で高速回転を始めた。
(ここ、パプニカの神殿が崩壊したのはもともと俺のせいだ…ならば!俺がこの始末をつける!)
ヒュンケルは瓦礫を睨みつけ、魔剣を鞘から引き抜くと剣を構え闘気を溜め始めた。
(力仕事なら得意分野だ!俺に任せろ!むうっ…カアアアアッ!!!)
クロコダインは得意げに笑い、右腕に闘気を溜めると腕を膨張させた。
「むっ?…闘気の高まりを感じる…!ダイ、今から技が繰り出される!特に2つの技は闘気が巨大だ…!気配を感じ取るのに、これほどうってつけの技はないだろう」
「分かった!えっと…2つの巨大な闘気…巨大な闘気…」
レグルスの話を聞いたダイは目をつぶり闘気を感じ取ろうとし、ポップは意味を理解すると口を大きく開け唖然とした。
「レ、レグ!…それって―」
ポップが最後まで言葉を発する、その前に3者の技が瓦礫に向かって繰り出された。
(ハーケンディストール!!!)
(ブラッディースクライド!!!)
(獣王痛恨撃!!!)
3つの大技は地下倉庫入口を塞いでいた瓦礫に当たると、瓦礫は爆散、周囲には爆音が響き渡った。
「ぎょえぇえええぇっ!!!」
「えええぇーーーーっ!!?」
「バッカヤローーーーー!!!」
バダックとマァムは急に瓦礫が爆散したことで驚愕の叫び声を上げ、ポップは頭を抱えながらやらかした3者に対して怒りの叫び声を上げた。
「あ…レグ!今、クロコダインの気配が分かった気がする!」
目を開けたダイはクロコダインの気配を一瞬感じ取れた気がしたため、期待しながら隣にいるレグルスに小声で声をかけた。
「本当か!ちなみに何処にいるか分かるか?」
「あそこかな?」
「!!そうだ!合っている、クロコダインはそこに居る!凄いぞ、ダイ!」
「やったあ!」
ダイは初めて気配を感じ取り、褒められたことでニコニコしながら喜び、レグルスも笑みを浮かべながらダイの頭を撫でた。
(おい!俺一人で十分なのに、なんでお前まで攻撃するんだ!!!)
(お互い姿が見ないのだ!仕方ないだろ!!!)
(2人とも喧嘩はよさぬか!)
一方、攻撃を行ったラーハルトとヒュンケルは小声で言い争いをしており、それをクロコダインが止めに入っていた。
「な……なにが起きたのじゃ!?何故…急に爆発したのじゃ?」
バダックは口をあんぐり開けながら瓦礫がなくなった地下倉庫への入口を呆然と見つめた。倉庫の入口からは煙が立ち上っており、それを見たマァムはすごく嫌な予感を感じながらダイ達に振り向いた。
「ねえ…!入口から煙が上がっているわ!」
「でも、火は使ってないよ?」
「あれだけの衝撃だ…火花が散ったとしても不思議ではない」
「冷静に言っている場合かぁ!?火薬に火がついた!!!」
「な、なんじゃと!?皆、逃げろ!爆発するぞっ!!!」
全員その場から慌てて駆け出し、地下倉庫の入口からできるだけ離れようとした。
(レグルス様!ダイ様!失礼します!)
ラーハルトは途中、レグルスとダイの腰に腕を回し抱えると、誰よりも速くその場から離れた。
全員の背後で地下倉庫が爆発した。
倉庫入口からは合図に使われる火薬玉が爆音を響かせながら次々と打ち上がり、上空まで上がると赤色を含めた様々な色の煙が空を彩った。入口から離れた場所にてダイ達は空を見上げ、次々と空に浮かぶ色とりどりの煙を唖然と眺めた。
(げっ!!)
爆発が落ち着く頃、視線を空から地面に下ろしたポップはとんでもないものを見て、頬を引き攣らせた。少し離れた場所ではダイとレグルスが四つん這いの変な体勢で宙に浮いており、それを見たポップは慌てて駆け寄ると2人を抱えているであろうラーハルトに小声で声をかけた。
「ラーハルト!早く2人を下ろ―」
「うぎゃああぁああぁぁぁ…………」
悲鳴を聞いたポップがギクッとしながら後ろを振り返るとバダックが宙を浮いているダイとレグルスを見て叫び声を上げ、そして、白目を向くと後ろに倒れた。
「じ、じいさん!どうした!?」
「……あちゃー」
クロコダインは倒れたバダックに心配しながら駆け寄り、ポップはため息をつきながら手で顔を押えた。
「…気絶しているだけよ、怪我とかはないわ」
マァムがバダックに近寄ると容態を確認し、ダイはラーハルトに抱えられた状態で倒れたバダックを見ると首を傾げた。
「バダックさん、どうしたんだろ?大丈夫かな?」
「規模の大きい爆発だ…バダック殿には刺激が強かったのかもしれん」
「バダック殿が気を失って下さったおかげで俺は2人と会話出来ますね!」
バダックが気を失った原因であるラーハルトは自分が原因とは一切気付かず、レグルスとダイを抱えながら嬉しそうに話かけた。
「……もういいや、知らねぇ」
ポップは怒る気も失せ、疲れた表情で爆発によりスッキリした地下倉庫入口や気絶したバダック、宙に浮いているダイとレグルスを見渡した。
地下倉庫の火薬を確認しに中に入ったラーハルトとヒュンケルが入り口から出てくると、聞きたそうに待機していたポップとマァムに対して首を横に振った。現在、ラーハルトとヒュンケルとクロコダインの魔法の効果は切れ、3者の姿は見えるようになっている。
「火薬玉らしきものは何一つ残ってはいなかった」
「…そう」
「…だろうな、全部吹き飛んじまったんだろうよ」
ヒュンケルから予想通りの結果を聞いたマァムは落ち込み、ポップは頭を掻きながら溜息を吐いた。
「でも、とりあえず信号弾は上がったんだし、レオナ姫たちに知らせることはできたんじゃないのかしら?」
「どうかな、あの無茶苦茶な色じゃ…怪しんじまって出てこねぇんじゃねえの…」
「出てこない場合はしょうがない…別の方法で探すまでだ!」
「…おめぇ…少しは反省しろよ…」
反省の様子がないラーハルトにポップはため息をつくとゴロンと横になり、いまだ気絶しているバダックとその近くで休んでいるクロコダインを見た後、視線を移し、離れた場所で剣の訓練をしているダイとレグルスをなんとなく眺めた。
「いいぞ…!以前より剣の動きが良い!」
「ほんと!」
「ああ!ヒュンケルとの戦いでレベルが上がったのだろう!……そろそろ、休憩を挟むか。何があるかわからないからな」
「そうだね!これから戦いがあるかもしれないしね」
2人は剣を下ろすと力を抜き、レグルスは先程の魔法剣を思い出すと、確認する為、ダイに声をかけた。
「ダイ、先ほど剣に炎を灯していたな?もう一度見せてもらってもよいか」
「いいよ、見てて!むんっ…メラ!」
ダイが魔力を込めると剣に炎が灯された。それをじっと眺めていたレグルスは自身の剣を構えると、魔法を唱えた。
「なるほど…こうか、メラ!」
レグルスの剣に炎が灯された。自身の剣と同じようにレグルスの剣が魔法で灯されたのを目の当たりにしたダイは目を見開き、驚愕の声を上げた。
「ええええぇっ!!レグも出来ちゃった!」
2人のやり取りを見ていたポップは口をあんぐりさせ体を起こすと、目を丸くしながら2つの炎の剣を見つめた。
「…まじか、レグのやつも魔法剣を出しやがった!!」
他の者もレグルスの剣が燃えている事に気付くと目を見開き、ヒュンケルは以前ダイが炎を灯した時同様、またもあり得ない状況に声を震わせた。
「ば…馬鹿な…!レグも魔法と剣を同時に繰り出す、だと…あいつも人間以上の存在だとでもいうのか…!?」
「!……人間以上の存在…」
ヒュンケルの独り言のようなつぶやきを聞いたラーハルトは考え事をしながら眉をひそめるとレグルスを見つめた。クロコダインとマァムは驚きつつもダイとレグルスに近づくと2人の魔法剣を興味深く眺めた。
「信じられん!魔法が剣に宿るなど…!!」
「これって剣で攻撃しながらメラでも攻撃できるってことでしょ?…不思議よね」
皆がダイとレグルスの魔法剣を見ていると、上空から気配を感じたレグルスが空を見上げ、あることに気づくとラーハルトとヒュンケルとクロコダインに対して魔法をかけた。
「レムオル!…皆、空を見ろ」
ラーハルトとヒュンケルとクロコダインは透明になり、全員が空を見上げると見たことないものが空を浮いていた。
「…何かしら?」
「モンスター!!?」
「人間の気配を感じるが…」
「じいさん!起きてくれ!」
ポップが気絶しているバダックの体をゆすって起こすと、バダックが目を覚ました。
「…うーん、…はっ!ここは…そうじゃ!ゆ、幽霊!幽霊はどこじゃあ!?」
「幽霊なんていねぇよ…じいさん、あれを見てくれ!」
ポップの指さす先の空に浮かぶ物体を見たバダックは望遠鏡を取り出し覗き込むと、布できた巨大な風船の乗り物を確認した。その布にはバダックにとって馴染みのある紋章、パプニカ王家の紋章が描かれていたため、バダックは目を輝かせた。
「あれは…パプニカの気球船じゃ!!」
「ほんとかっ!!」
バダックの嬉しい報告に、ダイとマァムとポップは喜びの声を上げた。一方のレグルスは内心不味い状況に焦りを感じていた。
(…陸路を行くものだと考えていたが、まさか空から来るとは!…これではラーハルト達と分断されてしまう!)
気球はゆっくりと降下すると地面に着地し、ダイ達が見守る中、気球のバスケットから1人の女性とパプニカの衣装を着た魔法使い2人が現れた。
「おおっ!!」
気球から降り立った美しい女性を見たポップは目を丸くし、顔に喜色を浮かべながら、彼女をじろじろと見つめた。そんなだらしない表情をしているポップに気付いたマァムは不機嫌そうにムッと顔をしかめた。
「エ…エイミ殿ではないか…!」
「バダックさんあなただったのね。あの信号弾は…!」
バダックとエイミという女性のやり取りを聞き、知り合いと判断したポップは笑顔を浮かべながらバダックの肩に手を置いた。
「なんだい知り合いかよ!なぁ、じいさん紹介しろよ!なっ!なっ!」
「バカモン!恐れ多いぞっ!このお方こそパプニカ三賢者の一人、エイミ殿じゃっ!!」
「ええっ!?こんな若い子があっ…!?」
ポップは口をあんぐりさせるがすぐに咳払いをし、キリッと真面目な顔をするとエイミに自己紹介を始めた。
「オッホン!失礼しました!ぼくはポップと言います!よろしくお願いします!」
「初めまして、私はパプニカの賢者、エイミと言います」
「エイミさん…!」
エイミはニッコリ微笑みを浮かべながら自己紹介し、ポップはその美しさにうっとりした。
(もう…!だらしない顔して…!)
マァムはイライラしながら腕を組むと、指で自身の腕を何度も叩いた。
「いや~しかし、驚いちゃいましたよ~エイミさんが空から降りてきた時…ぼくは貴方がお姫様なんかじゃないかと思っちゃいました!」
「まあ!いやだわ!姫様は私なんか比べ物にならないくらいお美しい方よ!」
「へえ~~~!!」
ポップは顔を赤くするとだらしない表情を浮かべた。
「そりゃ素晴らしいですね!早くお会いした―…い、痛たたたたっ!」
「ポップ!!!こっちに来なさい!!!」
マァムは目を尖らせ苛立ちながらポップの耳を掴むと無理やりその場から離れた。
「いたたたたっ!ま、待ってくれ!マ、マァム!耳離し―」
「いいから!黙ってついてきなさい!!!」
怒り心頭のマァムと引きずられるように連れていかれたポップをダイ達は呆れながら、エイミ達は戸惑いながら離れていく二人を見つめた。
「エイミ殿…失礼しました…ところで、エイミ殿、もしかして合図を見て、来て下さったのかのぅ?」
申し訳なさそうな表情を浮かべたバダックの謝罪を聞いたエイミはクスッと笑うと小さく頷いた。
「ええ、そうよ…変な信号弾だったけど、気になったから調べに来たの…姫様はアポロとマリン姉さんに任せて、ね」
エイミの口からレオナ姫の名前が出たことでダイはハッと顔色を変えた。
「レオナ…!レオナは何処にいるんですか!!?」
「……貴方は?」
「俺、ダイっていいます!レオナとは…友達なんです!!」
笑顔を浮かべて自己紹介したダイの名前を聞いたエイミは驚き、目を見開いた。
「…ダイ!!?あ…貴方が…!!?」
バダックはダイに近づき、肩に手を置くと目を輝かせながらエイミ達に嬉しそうに報告をした。
「そうじゃ!!!この子が、姫様がいつも話しとった勇者の少年なのじゃ!すでにこの大陸を襲っとった不死騎団はこの子と仲間たちによって滅ぼされておる!皆、もう安心なんじゃよ…!!」
「な…なんと…!!」
「不死騎団を…滅ぼしたとは…!!?」
「……本当に貴方が…勇者ダイなの…!?」
驚いた表情を浮かべるエイミ達に対してダイは頷き、腰に差しているナイフを取り出すとエイミに手渡した。エイミ達はナイフに嵌められている宝石を確認し、そこに刻まれているパプニカ王家の紋章を見ると大いに驚いた。
「こっ…これは紛れもなく…パプニカ王家の武具だ…!」
「レオナに貰ったんだ!俺の宝物さ!」
エイミはナイフを確認すると頷き、ダイに返却した。
「…分かったわ…姫のところへ案内するわ!気球に乗って!行きましょう!」
エイミが出発の声掛けを行い、魔法使いたちが出発の準備を始めると、レグルスは焦りながら目的地についてエイミに訊ねた。
「お待ちください!エイミ殿…!これからどこへ向かうか…目的地をお聞きしたい!」
「これから向かう場所はバルジ島よ!そこに姫がいるわ…!」
「バルジ島…!」
レグルスは懐から世界地図を取り出すと大げさに広げて場所を確認した。まるで周囲の者に目的地を分かりやすく説明するために。
「バルジ島は…ここ神殿を北上し、ホルキア大陸の北に位置する島か…!途中の海には“バルジの大渦”があり、泳いで渡るのは厳しいな…」
レグルスは地図を片手に持つと後ろにいる人物に対して行き方をつぶやきながら現在位置と目的地を指でなぞって説明した。
「ふふっ、大丈夫よ!気球があれば問題なく行くことが出来るわ!さあ、姫の所へ行きましょう!」
「…ああ」
エイミに返事を返したレグルスは地図を畳み、懐にしまう振りをしながら素早く後ろの人物に地図を手渡すと、気球に向かって歩き出した。
一方、少し離れた場所ではポップとマァムが口喧嘩をしていた。
「いててて…おめぇ、もうちっと手加減しろよなぁ…!」
ポップはひりひりと痛む耳を擦りながらマァムを不満そうに見つめ、マァムは不機嫌を隠さずにポップを睨みつけた。
「まったく、鼻の下のばして…!ポップが悪いのよ!初対面の女性に対してジロジロ見つめて…!失礼じゃない…!」
「うっ…!しょ、しょうがねぇだろ!男としては、気になっちまって…つい、見ちまうんだよ…!!!」
「もう…!」
怒りながら腕を組んだマァムはポップに対して不満を感じながら小さくボソッとつぶやいた。
「そんなに見たいなら…私を見てればいいのに…」
「ん?何か言ったかマァム?」
「別に、何でもないわよ…!」
マァムはそっぽを向き、ポップを無視すると気球船に向かって大股で歩き出した。
「ま、待てよ、マァム!そんな怒んなよ…」
ポップは先を行くマァムに駆け出して追いつくと、焦りながら機嫌を取ろうと声をかけた。
気球が空高く上がり、小さな黒い点になる頃、地上に取り残された3者の魔法が解け、姿が現れた。ラーハルトは地図を片手に持ちながら、唖然と遠く離れていく気球を見上げていた。
「すぐに皆を追いかけるぞ!!!」
「どうする!?走って追いかけるか?」
「俺に任せろ!デルパァッ!!」
「クワワァッ!!」
クロコダインは魔法の筒から相棒であるガルーダを呼び出した。ガルーダは元気に翼を広げるとキリッとやる気に満ちた表情でクロコダインからの指示を待った。
「ガルーダ!俺達全員を運んで、あの気球を追いかけてくれ!」
「……クワッ…?」
ガルーダは運ぶ対象であるクロコダインとラーハルトとヒュンケルを順に見ると、過去にない重量に気弱な鳴き声を上げた。
ダイ達一行の中で、一番の常識人はポップです!
以下は本編とは全く関係ない、あるキャラ同士の雑談です!
【バランとソアラの雑談】
「バランとソアラの〜雑談コーナー!」パチパチパチ
「…」
「ほら、あなた!一緒に拍手しましょ!」
「う…うむ…」
ソアラはニコニコしながら拍手、バランは戸惑いながら拍手。
「ところで、ソアラよ…このコーナーは一体なんなのだ?」
「これはね、今の時点では私たちを本編にかけないから…せめて、後書きに登場させたくて書いた、作者の気まぐれコーナーよ!ちなみに、この小説は冒険ファンタジーでもあるけど…恋愛小説でもあるの!」
「恋愛もあったのか…?ちなみに私が主人公だとすると、ヒロインは…ソアラ、君か?」
「ええ、そうみたい。ただ、私たちの場合は恋愛よりも、家族愛として書くみたいね。他にも原作にあった組み合わせで恋愛を入れる予定よ!」
「そうか…早く本編で、ソアラに会いたいものだな…」
「そうね…私も早くあなたとディーノに会いたいわ!…ただ…この小説の私が気がかりね…ディーノを悲しませなければいいのだけど…」
「私も、今は子供で記憶も完全には戻っていない…今後のことが心配ではある。…だが、子供の姿で良かったことがある」
「あら、それは何かしら?」
「ダイと友人になれたことだ。剣の稽古も、一緒に過ごすのも、会話も違和感なく出来ている。これは原作では叶わなかったことだからな…」
「ふふっ!そうね!2人が仲良いと私も嬉しいわ!」
「原作ではあの子を悲しませてばかりだったからな…この世界ではあの子が笑って過ごせるよう、出来る限りのことをするつもりだ」
「私も…この世界では生きているわ…あなたとディーノが笑顔でいられるよう…生きて、2人を支えるわ」
「ああ…共に生きて、あの子を支えよう、ソアラ」
「ええ、あなた!…それでは、以上、雑談コーナーでした!」