あとがきにおまけあり。
ダイ達を乗せた気球はレオナ姫がいるバルジ島を目指し、北へと進んでいた。ダイは気球からの眺めをはしゃぎながら見渡し、パプニカの魔法使いも喜ぶダイをニコニコしながら見ていた。
「わあーーーっ!!!すっげーっ!すっごい乗り物だねっ!」
「はははっ!そりゃそうさ!パプニカにだって一つしかない気球船なんだぞ!」
「へえーーーっ!!」
下を覗く為、ダイが気球のバスケットから体を乗り出すとレグルスが慌てて腰ベルトを掴んだ。
「ダイ!落ちたら危ない!もう少し離れなさい!」
「へーきー!へーきー!島でよく木に登っていたから!これぐらい平気だよ!」
ダイは注意されるが気にせず下を眺め、レグルスは何かあった時の為に腰ベルトを力強く握り締めた。ポップとマァムは気球が来た方角、神殿があった方を見ながら離れ離れになってしまったラーハルトとヒュンケルとクロコダインのことを考えていた。
「彼らは大丈夫かしら…?一緒に行くはずだったのに、別れてしまったわ…」
「目的地は伝えてるんだ、現地集合でいいだろ…それにアイツらなら問題ねぇさ!なんかあっても簡単にはやられないだろ!」
「ええ、そうね!」
しばらく北へ進むと眼下に海が見え、海には巨大な大渦、その先には島があり、島中央に塔がある事に気づくとダイが真剣な表情をした。
「あれが…バルジ島…!!」
「ええ!そして、あれが“バルジの大渦”よ。あの渦のせいでバルジ島は滅多に人の寄らない場所になっているの…島に行くにはすごく遠回りをして渦をさけて行かなきゃならなしね」
「おまけに島にあるのはバルジ塔だけじゃからな。まさかあそこに姫様がおられるとは…」
(あそこに…レオナが…!)
ダイがバスケットに乗り出しながら、レオナがいるであろうバルジ塔をじっと見つめていると、突然、塔の最上階が一瞬明るくなった。そして、柱の隙間から煙が立ち上るのを目にしたダイは、驚愕の声を上げた。
「塔から煙が上がってるよ…!!!」
「えっ!?」
「何…?」
一同は塔の最上階から煙が上がっているのを確認すると目を見開き驚愕した。
「もしや…姫の身に何か…!?」
「確認する!」
視力のいいレグルスが最上階を睨みつけるようにじっと見ていると、地底魔城に現れた敵の姿を見つけ、顔を険しくした。
「フレイザードッ…!!!最上階にフレイザードがいる!!」
「ええっ!!!」
「フレイザード?…まさか!」
「魔王軍の軍団長だっ!俺達が不死騎団と戦っていた時も現れたんだ!!」
「な…なんじゃとおっ!!?ひ…姫様っ!」
エイミやバダック達パプニカの者は仲間や主君であるレオナ姫の危機に焦りながら最上階を見つめ、ダイもレオナの危機に焦りながら塔や周辺を見渡し、塔の最上階を指さした。
「急いで!早くあそこへ!!!」
「仕方がないわ!屋上に着けて…!」
「はっ!」
気球はバルジ塔の屋上に向けて飛行し、その僅かな時間、レグルスは周囲にいる皆を見渡すと声を上げた。
「作戦を伝える!」
バルジの塔最上階では魔王軍、氷炎魔団長フレイザードの襲撃を受けたパプニカの者達が危機に瀕していた。レオナ姫は怪我を負い地面に倒れ、フレイザードはニヤッと笑うとレオナを見下ろした。
「クカカカカ!!これで、あんたの命を刈り取っちまえばパプニカも終わりだなぁ…」
「っ…!」
「このまま殺したいところだが…今すぐには殺さねぇ!あんたは勇者をおびき寄せるための餌になってもらうぜぇ」
(勇者…?もしかして…ダイ君?)
フレイザードは氷の手を伸ばし、レオナ姫の首に触れようとした、その時、飛んできたナイフが氷の腕に刺さったことでフレイザードは驚愕しながら手を引いた。
「ウッ!!?」
(あのナイフは…!!?)
レオナはフレイザードの腕に刺さった見覚えあるナイフを見ると目を見開いた。
「レオナから…離れろ!!」
「この声は…!」
聞き覚えのある声にフレイザードはニヤッと笑い振り返ると、少し離れた場所にいる、睨みつけてくるダイと対峙した。フレイザードは氷の掌に冷気を発生させると先が鋭く尖った巨大な氷柱を作り出した。
「クカカカカ…来やがったなぁ…!ダイ!」
「ダイ君…!!!」
レオナはダイの姿を見ると笑顔を浮かべた。
「レオナに手を出すな…!」
「あ~?手を出したら…どうするってんだよ!!!」
フレイザードは腕を思いっきり振ると手にしていた氷柱を勢い良くダイに投げつけた。
「手を出したら…」
ダイは右手を飛んでくる氷柱に向けるとメラの炎で氷を瞬時に溶かした。
「ただじゃ済まさないからな…!!」
「この…ガキッ!」
フレイザードはダイを睨みつけながら、腕に刺さったナイフを抜くと地面に放り捨てた。フレイザードの背後で倒れているレオナはダイが魔法を使ったことに目を見開いた後、目じりに涙を浮かべた。
(すごい…すごいよダイ君!魔法もちゃんと使えるようになったんだね!ちょっぴり安心しちゃった…)
魔法が使えなかったダイが魔法を使えるようになり、そのことで助けられた安心感もあり、レオナは安堵の涙を指で拭いながら微笑んだ。
「ダイ!」
「大丈夫か?」
屋上からロープで作られた階段を下りてきたマァムとポップは心配しながらダイに声をかけた。
「皆!ケガをしている人たちを…!!その間、あいつの相手は俺がする!!」
「はいっ!」
「任せろっ!」
「なめやがって!!この俺に手出しができるもんならやってみせろっ!!」
ダイはフレイザードに駆け出すと剣で切りかかり、フレイザードもダイに対して腕を振るい攻撃を仕掛けた。気球を守っているバダック以外はロープでレオナ達がいる最上階に降りると、すぐさま倒れているケガ人のもとに駆け寄った。
(俺たちはケガ人を気球まで運び、ダイはフレイザードの野郎の気を引く!…レグ、姫さんの救出は頼んだぞ!)
ポップはフレイザードの背後にいるレオナ姫をちらりと見た後、ケガ人を肩に担ぐと屋上から垂れ下がっているロープに向かった。
一方、魔法で姿を消したレグルスは足音を立てずにフレイザードの背後に回るとレオナを指差し、小声で魔法をかけた。
「レムオル」
(えっ…?)
レオナは自身に起こった変化に気づくと、手を目線まで持ち上げた。手が透明になり、向こう側の景色が透けて見えることにレオナは驚き、息をのんだ。
「これは…?」
「しっ!…レオナ姫、私はダイの仲間のレグと申します。魔法で姿を隠しました。今のうちにここを離れましょう」
「!…分かったわ」
「こちらへ」
魔法で姿を隠したレオナとレグルスはフレイザードに気づかれることなくその場を離れ、ロープまで移動するとレオナだけロープを上り、屋上に到着した。
「ひ…姫えぇぇっ!よくぞ、ご無事で!」
「バダック!あなたも無事だったのね!」
魔法が解け、気球の近くで姿を現したレオナにバダックは口を開けポカンとしていたが、すぐに顔をゆがませると喜びの声を上げた。
「ケガ人の回復は私が行うわ!戦況は逐一報告して頂戴!」
「分かりましたぁ!」
レオナは気球のバスケット内に入ると運ばれてくるケガ人の治療を行い、バダックはケガ人をポップ達から途中で受け取ると気球に運びその都度、レオナへ戦況の報告を行った。
フレイザードとダイが戦っている最中、レグルスはダイの側に姿を現した。ダイは先程までフレイザードの背後に居たレオナが居ない事を確認するとレグルスに視線を向けた。
「レグ!レオナは…!?」
「問題ない!レオナ姫は安全な場所だ!」
「な…なにっ!?」
フレイザードは慌てて背後を振り返り、そこにいたはずのレオナの姿がないこと気づくと唖然とした。
「ば…バカなっ!いつの間に…!!?」
「ケガ人の搬送にはもう少しかかる…ダイ!共に戦うぞ!!」
「うん!レグ、一緒にこいつを倒そう!!」
「寝言ぬかしてんじゃねえ!!このクソガキ共が~~~~っ!!!」
フレイザードは怒りと苛立ちを含む声で叫ぶと、氷の掌に魔力を込め、魔法を発動した。
「マヒャド!!!」
「うっ!」
氷の掌から繰り出される強風と冷気がダイとレグルスに襲いかかり、2人の体と武器はたちまち凍りついた。フレイザードは2人の身体や武器が凍りつく様を大笑いしながら見つめた。
「ギャッハハハッ!凍れ凍れェッ!!!ウヒャハハハッ…!…ハッ!」
フレイザードが笑いながら見つめる先でダイの剣に起こった変化に気づくと笑うのをやめ、目を見開いた。ダイの剣に付着した氷は音を立てながら急速に溶け、氷が全て蒸発すると剣が燃え上がった。炎が灯ったことで、剣を中心に周辺の温度が上がり、ダイとレグルスに付着した氷は溶けた。
「ゲエッ!!?な…なんだ…その剣は!!?」
炎が灯ったダイの剣をフレイザードは驚愕しながら見つめた。
「…魔法剣!」
「なんだと…!!?だったら…逆に熱くしてやるよっ!!ベギラマ!!!」
フレイザードは炎の掌に魔力を込め、魔法を発動させると、ダイとレグルスに巨大な炎が襲いかかった。
「くっ…!」
「ギャッハハハッ!燃えろ燃えろッ!!!」
「ヒャド!!」
レグルスはダイの前に出ると剣に冷気を宿し、氷で炎の熱を防いだ。
「ハアッ!!?な…何なんだよ!てめぇもかよ!!!」
「!…氷の剣!」
氷を宿したレグルスの剣をフレイザードとダイは驚愕しながら見つめた。
「私は炎の体を対処する!ダイは…!」
「俺は氷の体をやればいいんだね!」
「ああ!」
ダイとレグルスはフレイザードに対峙する形で横に並ぶとダイは炎の剣を、レグルスは氷の剣を構えた。
「行くぞ、ダイ!」
「行くよ、レグ!」
2人は同時に走り出し、地面を蹴り飛び上がるとフレイザードの腕へ技を繰り出した。
「くらえっ!!!火炎大地斬ッ!!!」
「氷結大地斬ッ!!!」
「ウオォッ!!」
フレイザードは迫りくる攻撃に防御しようと構えたが効果はなく、ダイは剣を振り下ろすとフレイザードの氷の腕を、レグルスは炎の腕を切り落とした。
「ぐあああぁっ!!」
「このまま畳みかけるぞ!足を狙い、動きを止める!!」
「分かった!」
ダイとレグルスは地面に着地するとすぐさま横切りでフレイザードの足をそれぞれ切断した。
「ぎゃあああっ!!」
両腕両足を失ったフレイザードは体勢を崩すとその場で尻もちをついた。ダイとレグルスはコアがあるフレイザードの中央部分を睨みつけると剣を振り上げて飛び上がった。
「今だっ!!!」
「この機会を逃すなっ!フレイザードを倒―」
コアが破壊される危機にフレイザードは目を見開くと体を光らせた。
「させっかよぉっっ!!!氷炎爆花散!!!」
2人の剣が届く直前、フレイザードは自身の体を爆発させた。
「っ…ダイ!」
レグルスは咄嗟に隣のダイを突き飛ばした。
フレイザードは爆発時の衝撃を利用し、体の岩石を全方向に一斉発射する攻撃を行った。レグルスは至近距離で被弾したことで岩石の多くが全身に当たり、地面に転がるころには意識はかろうじてあるが瀕死の重傷を負ってしまった。
「……………っ……がぁ…」
「レグ!」
突き飛ばされたダイはすぐさま体を起こし、レグルスを見た後、フレイザードを睨みつけた。フレイザードは斬られた腕と足が元に戻っており、ダイに対してニヤッと笑うと倒れているレグルスの背中を足で踏みつけた。
「っ…!」
「クククッ!お前らはもう負けだよ…!」
「なにっ!?」
「今のはな…攻撃技であると同時に俺の部下たちへの合図でもあったのさ!地獄のバトルを始めるための…な!!!」
フレイザードは足を振り上げるとレグルスの腹部を思いっきり蹴り飛ばした。ダイは素早く移動し、蹴り飛ばされたレグルスが壁の柱に激突する前に受け止めた。
「レグ!大丈夫!?」
「…………」
ダイは心配そうに顔を歪めながら、腕の中でぐったりとしているレグルスに呼びかけた。レグルスは激痛に顔を歪め、ダイへ返事する余裕すらなかったが、目線だけはフレイザードを睨みつけていた。
気球がある屋上ではマァムがロープを上った先で、三賢者の一人であるアポロを待機していたバダックに託していた。
「バダックさん!お願い!」
「任せておけ!ところで…下では何が起こってるんじゃ?」
「それが、レグがやられ―…きゃあ!な、何!?」
突然地面が大きく揺れたため、マァムは落ちそうになりながら揺れるロープに慌ててしがみついた。
「じ…地震かっ…!?」
「いったい何が…皆!あ、あれを見て!」
「えっ!?」
気球のバスケットから顔をのぞかせたレオナはバルジ島の離れた場所を指さすと、そこでは地面から炎で出来た塔が生えてくるところであった。
「なんじゃ!あれはっ…!!?」
反対側からも音が聞こえたため、マァムとレオナとバダックが振り返るとバルジ島の離れた場所で氷の塔が地面から生えてくるところであった。
「ぎょえぇぇえっ!!!な…なんじゃ…あのでっかいのは…!!?」
「炎の塔と…氷の塔…!?」
「いったい…何が始まろうとしているの!?」
最上階ではダイがレグルスを抱えながら突然の地震に周囲を見渡し、ポップはひっくり返りそうになりながらもその場にしゃがみ、エイミ達パプニカの者たちも慌ててケガ人を床に下ろすと地震をやり過ごした。
「な…なにが起こったんだ!?」
ダイ達の焦りようにフレイザードはニヤッと笑った。
「さあ…楽しいショータイムの始まりだぜっ!!」
炎の塔と氷の塔がバチバチと音を発生させながらバルジの塔を囲むように結界を繋げ、円形となると島全体が光り輝いた。あまりの眩しさにダイたちは目を瞑り、腕で光を遮った。
「っ…!」
光が収まるころ、地震は収まり、塔には静けさが戻っていた。
「地震が…やんだ…!?」
マァムは地震が収まったためロープから降りると警戒しながら周囲を見渡した。
「い…今のはなんだ!!?いったい何をした!?」
ダイの問いかけにフレイザードはニヤッと笑いながら腕を上に伸ばすと指を立てた。
「…氷炎結界呪法!!!」
「…氷炎…結界呪法…!?」
「これこそ我が氷炎魔団の不敗を支える究極の戦法!もはや、てめえらにゃ全く打つ手はねぇ!のたうちまわりながら全滅するしかねぇのさ!」
フレイザードが中指を立て、嘲笑うような笑みを浮かべると、ポップはムカッとして声を荒げた。
「ふざけんな!ちょっと地震を起こしたぐらいで、なんで俺たちを全滅出来んだよっ!!」
「クカカ…じゃあ試してみな」
「よおしっ!!」
ポップは杖を構えると魔法を唱えた。
「ギラッ!!!…………!!?」
魔法は発動されず、ポップは顔色を悪くしながら杖を見つめた。
「なっ…なんだ!?どうなってんだ!!?呪文が…ギラが出ねぇぞ…!!?」
「ま…まさか…!!?」
「クックックッ…!やっとルールが呑み込めたみたいだな!!」
「…そんなバカな!…ポップ、レグをお願い!」
「おう!」
ダイからレグルスを受け取ったポップは肩に担ぐと気球へ移動し、ダイは武器を振り上げるとフレイザードに切りかかった。
「うおおぉぉおーーーっ!!!」
「クククッ!」
振り下ろした剣はフレイザードの体に当たったが、攻撃を行ったダイに先ほどまでの力はなく、傷をつけることすらできなかった。
(くっ…くそっ!力がっ…力がまるで入らない…!!!)
フレイザードはニヤッと笑うと腕を振り、ダイへ反撃を開始した。
「じいさん!レグを頼む!」
「おう!任せるんじゃ!」
ロープを上ったポップはレグルスをバダックに託すと、すぐさま下に降りて行った。
「…………バダック殿…」
「レグ君!ずいぶんひどいケガじゃの…!大丈夫か?」
「…………道具袋から……薬草を…」
「おお!待っておれ…と、あったあった!レグ君!口に入れるぞ!」
「……ああ」
「レグ君はここで休んでおるんじゃ!姫!この子をお願いします!」
「ええ!そこに寝かせて!…といっても魔法が使えないから出来ることは限られるけど…」
バダックは気球のバスケット内にレグルスを置くとロープが垂れ下がる入り口に戻り、下の様子を覗き込んだ。レオナは先ほど自身を助けたのが子供であったことに意外だと思いながらレグルスを観察した。
(この子がさっき私を助けてくれたのね…てっきり大人かと思ったけど…ダイ君よりチビじゃない!)
薬草を食べているレグルスを見ながら内心失礼なことを考えたレオナは、綺麗な布を持つと、怪我の治療を始めた。
「うがぁっ!!!」
攻防の末、ダイはフレイザードの攻撃を受け、地面に仰向けに倒れた。フレイザードは倒れたダイの腹部を足で踏みつけ、その一連の流れを見ていたマァムと、ロープを降りながら戦いを見ていたポップは驚愕の声を上げた。
「ダ…ダイッ!!!」
「ど…どうしたってんだ!?フレイザードの野郎、急に強くなりやがった!!!」
「違うな!てめぇらが弱くなったのさ!!」
「!!」
フレイザードは炎の塔と氷の塔を指さした。
「あの炎魔塔と!あの氷魔塔が!俺の体のコアに作用してこの辺り一帯に強力な結界陣をはっているのさ!この結界においては俺以外の奴は、力も呪文も全て封じられるんだよぉ!!」
フレイザードは踏みつけているダイを見てニヤッと笑い、足に力を込めると、グリグリと地面に押し付けた。
「つまり!こいつの戦闘力は今、並の人間以下…5分の1にまで激減しているのさ…!!!」
「そ…そんな!」
踏みつけられたダイは痛みに顔を歪めながらフレイザードを睨みつけた。
「く…ぐっ…き…汚いぞ…フレイザード…正々堂々と…戦えないのか!」
「うるせぇなあ…俺は戦うのが好きじゃねぇんだ…勝つのが好きなんだよォッ!!!」
フレイザードはダイをマァムに向かって思い切り蹴り飛ばし、マァムは激突してきたダイを受け止めた。
「皆殺しだぁっ!!!行くぜぇっ!!!」
駆け出したフレイザードは腕を振るうとダイとマァムに対して攻撃を仕掛けた。2人は攻撃を避けつつも反撃の機会を探り、マァムは大きく下がったタイミングで魔弾銃を構えトリガーを引くが、魔法は発動しなかった。
(駄目だわ!魔弾銃も作動しない…!)
マァムは魔弾銃を仕舞うと武器を構えフレイザードに向かって駆け出した。
一方、ケガ人の搬送を担当しているエイミ達パプニカの者たちが最後のケガ人を気球に運び終わるとポップに声をかけた。
「ポップ君!ケガ人は全員運んだわ!」
「おう!エイミさん達は先に気球に行ってくれ!直ぐ出発出来るように準備だけ頼みます!」
「分かったわ!」
エイミ達がロープを上るのを確認したポップはフレイザードの攻撃で地面に転がったダイに近づくと小声で話しかけた。
「ダイ!ケガ人は全員運んだ!あとは俺達だけだ!こっから脱出するぞっ!」
「ポップ!俺、逃げるなんていやだよ!あんな卑怯な奴に負けたくないっ!!」
「違ぇぞ、ダイ!勝つために逃げるんだ!俺達の目的は姫さん達を助ける!そのためにここに来た!だろ?」
「勝つため…逃げる?」
「そうだ!戦略的撤退ってやつだな!姫さんを救出すれば、たとえ戦いに負けても俺たちの勝ちだ!それに、わざわざあの野郎の土俵で戦う必要はねぇ!…姫さんもおめーのこと、待っているだろうしよ」
「!…レオナ……分かった、ポップ!俺とマァムであいつの隙を作る!ポップは先に行って!」
「おう!先行くぜ!」
ポップがマァムに視線を向けるとマァムも小さく頷き、ポップはロープを上ると気球に乗り込んだ。フレイザードは周囲を見回し、ダイとマァム以外居ないことに気付くと小さく舌打ちし、2人に向けて魔法を発動しようとした。
「さっきからコソコソしてるのは分かってるんだよォ!せっかく結界をはったのに逃がすわけねぇだろぉっ!!マヒャ―」
「だあああぁっ!大地斬っ!!!」
「ウオッ!」
ダイは魔法が発動する前に、剣に力を込めて振り下ろすとフレイザードの氷の腕を切り落とし、振り返ってマァムに合図をした。
「今だっ!」
「ええっ!!」
気球に乗るため駆け出したダイとマァムはロープに掴まり、それを見ていたフレイザードは、氷の腕の再生を後回しにして指先に炎を灯した。
「ふざけるなっ!逃がすかぁーーーっ!!!」
マァムは指先の炎を見ると魔弾銃の弾をひとつ取り出し、フレイザードの指先に向かって弾を投げた。
「メラゾーマッ!」
フレイザードが魔法を発動したタイミングでマァムが投げた弾が指先に突き刺さると、フレイザードの指先を中心に大爆発が起こった。
「ウガァァアッ!!!」
ダイとマァムはロープにしがみつき爆風に耐え、気球に乗って下の様子を見ていたバダックは大声で操縦者に指示を出した。
「いまじゃあっ!」
パプニカの魔法使いは気球を操作し、ガスの元栓を一気に緩めると気球は上空へ浮かび上がった。ダイとマァムはロープを上りバスケット内に入ると、その場では歓声が上がった。
「よっしゃあぁっ!全員脱出成功だぁ!」
「全員生きているのは奇跡だ!」
「勇者御一行様!我らを救って頂き、ありがとうございます!」
「皆!無事?」
「ダイ君!」
呼びかけられたダイが視線を向けると、レオナが笑みを浮かべながらダイを見つめていた。
「レオナ…!」
レオナの元気な姿にダイは安心してホッと息を吐き、笑顔を浮かべた。
「無事で良かったよ!」
「ダイ君も無事で良かったわ!」
レオナはダイ達や部下のパプニカの者達を見渡すと、激励の言葉を述べた。
「私達を救ってくれてありがとう!皆よくやったわ!ダイ君かっこよかったわよ〜〜!やられそうになった時、ダイ君の姿見て安心しちゃったもん!もう…立派な勇者ね!」
「へへへっ!」
褒められたダイは照れくさそうに笑みを浮かべ、レオナは周囲の部下を見渡すと指示を出した。
「さあ!このまま、南下してパプニカを目指すわ!バルジ島から脱出よ!」
「はっ!」
ポップはダイに近づくと嬉しそうに肩に腕を回し、マァムも笑顔を浮かべながら2人に近寄った。
「はははっ!やったな、ダイ!フレイザードの野郎は倒せなかったけどよ、どうせ向こうから来るんだ!そん時こそ倒せばいいんだよ!今頃あいつ、塔でブチ切れているだろうぜ!」
「うん!今回は倒せなかったけど…次あいつが来た時は必ず倒す!」
「ケガはあったけど…みんな生きてる!無事、脱出出来てよかったわ!」
「そうだ!レグはケガ大丈夫?」
ダイは視線をバスケットに寄りかかり立っているレグルスに向けた。
「歩けるほどには回復した。結界から抜けたら魔法で治療するから問題ない…ダイ、皆を助けることが出来たな…よくやった!」
「へへっ!みんなのおかげだよ!」
気球では戦いの直後で緊張感があったが、塔から脱出したことで喜びに満ちた雰囲気が流れていた。
「ウギアアァアッ!!」
塔の最上階ではフレイザードが吹き飛ばされた炎の肩部分を抑えるため氷の手を伸ばそうとした。だが、ダイに腕を切り落とされていたことを思い出し、両腕がないことで苛ついて舌打ちをすると、地面に散らばる魔弾丸の欠片を睨みつけた。
「…そうか、あの中にはギラが詰まっていたのか!それが、俺の呪文の超高熱で誘爆を…あの女、可愛い顔して結構やりやがるぜ…!」
フレイザードは塔から離れていく気球を忌々しく思いながら見ていると、その気球に近づく影を見つけ、露骨に嫌な顔をした。
「あの野郎…!もうここに来やがった!…俺の手柄を横取りする気か!?クソがっ!」
フレイザードは飛行する影を睨み付けると、もう一度、悔しそうに舌打ちした。
バダックはバスケット内の楽しげな雰囲気をニコニコと笑みを浮かべながら見ていた。
「皆、水を差すようじゃが、まだ島から出ておらんからのう…最後まで気を引き締めるんじゃぞ!」
「はいっ!」
ダイとパプニカの人達は元気よく返事を返した。
「姉さん…島から出たら回復するから、もう少しの辛抱よ」
エイミは姉であり、同じ三賢者の1人であるマリンの怪我の様子を確認した後、ふと顔を上げ、空を見た。太陽の光の中、上空に金色の何かが飛んでいるのを見つけると、エイミは眉をひそめた。
「あれは…何かしら?」
「ん…?どうしたんじゃ?エイミ殿」
「空に何か…こっちに近づいてくるわ…!」
「空?」
金色に光る何かは気球に向かって飛行し、気球の上空に近づく頃、レグルスが慌てて顔を上げた。
「っ…!上空から敵だっ!」
「な…なんじゃとおおぉっ!!?」
「マジかよ…ここまで来てっ!」
「皆!敵襲に備えて!」
「はっ!」
気球内は慌ただしくなり、皆、武器を構えると敵襲に備えた。敵は気球より上空を飛行していたが、徐々に高度を落とし、気球と同じ高さまで下がるとその正体に人々は驚愕、バスケット内にどよめきが起こった。
「ス…スカイドラゴンッ!!!」
「鳥人間も居るぞっ!」
バスケット内の驚いている人々の顔を見た鳥人間、ガルダンディーはスカイドラゴンのルードの上から人間を観察し、その中に勇者一行の姿を見つけるとニヤリと笑った。
「おいおいおいおい!何かが飛んでると来てみれば…驚いたぜ…!まさか、勇者一行だとはよォ!それに、よく見ればお姫様も居るじゃねぇか!クククッ!」
レグルスは鳥人間とスカイドラゴンを観察しながら昨夜クロコダインから聞いた他の軍団長の特徴を思い返していた。
(黄色い鳥の獣人族に…黄金のスカイドラゴン!…あの者が…クロコダインが話していた、超竜軍団長ガルダンディーか…!?馬鹿な!他の軍団長が来るには早すぎる!我らが着いたのはつい先程…!…………まさか…この島は…)
短時間に2つの軍団長が現れた状況に最悪を想像したレグルスは冷や汗をかいた。
スカイドラゴンは驚く人間を見つめながら気球の周りを旋回し上昇すると気球の上部近くに漂った。
「せっかくフレイザードの奴が結界をはったんだからよぉ…帰らずにこの島で楽しんで行けよ!!」
「や…やべぇ!ダイ!レグ!奴を止めてくれ!」
「くっ…無理だ!ここからでは…」
「攻撃したら、気球に当たっちゃう!」
「クハハハッ!てめぇらに止められるかよぉっ!やれ!ルードッ!!!」
「グオオオッ!!!」
指示を受けたスカイドラゴンのルードは口いっぱいに炎を溜め、そして、気球に向かって口から勢い良く炎を吐き出した。炎は気球の上部に引火、炎は気球を包み込むように広がると、あっという間に全体が燃え広がった。
「あああっ!!!熱い!!!」
一部のパプニカの者は混乱し、火を消そうと魔法を唱える者もいたが、未だフレイザードが張った結界内に居たため、魔法が発動することはなかった。
「ヒャ…ヒャダルコ!ヒャダルコ!ヒャダルコッ!!!っ〜〜〜!誰か!火を消してくれぇ〜〜〜っ!!!」
炎に包まれた気球内部の空気が高温となったことで気球は一気に急上昇、バスケット内部では悲鳴が上がった。
「うわあああっ!!!」
「制御が…気球の制御が効きません…!」
「いやあぁぁあっ!姉さんっ!!!」
エイミは気絶している姉のマリンを抱きしめた。
「姫ぇっ!せめて、このバダックがお守りしますっ!!!アチチチッ…!」
「っう…!バダック…!せめて…魔法が使えたら…!」
バダックは炎から守るようにレオナ姫に覆いかぶさった。
「ゲホッ!ゲホッ!あの鳥野郎…!!!許せねぇ!!!ゲホッ、ゲホッ!…い…息が…出来ねぇ…」
「!…ポップ!!!」
マァムは気球に搭載しているガスが入った金属の入れ物が炎に包まれているのを見るとポップを胸に抱き寄せ、腕で守るように頭を抱きしめた。ポップはマァムの胸の中で目を見開いた。
「熱いっ…!ゲホッ!ゲホッ!」
ダイは炎で喉を焼かれながらも、呼吸ができずに苦しみ、咳き込んでいた。レグルスはガス缶が燃えていることに気付くと慌てて咳込んでいるダイに指示を出した。
「!!ダイ!今すぐ、しゃがめ!」
「ゲホッ!…こ…こう?」
ダイがその場でしゃがむと、レグルスはダイに覆いかぶさり、ギュッと強く抱き締めた。
気球に搭載されていたガス缶は炎の熱で溶けると、中のガスに引火、火だるまとなっていた気球はバルジ島の空高くで大爆発した。
「うわあああっ!!!」
「きゃあああっ!!!」
爆発の衝撃で気球に乗っていた人々は上空で散り散りになると、悲鳴を上げながらバルジ島各地に墜落した。
「クワッハハハハッ!!!クハハハハハッ!!」
「グルルッ!」
ガルダンディーは悲鳴を上げながら地面に落ちていった人間達を指差すと、腹を抱えて大笑いした。ルードも楽しそうに喉を鳴らした後、フレイザードが居るバルジ塔近くまで飛行した。
「よお、フレイザード!ザボエラの奴、怒ってたぜ?勝手に行動したってなぁ…クククッ!」
「…ケッ!てめぇらが居るってことは…ハドラー様はここに到着したのか」
「ハドラー様はすでに配置についてるぜぇ…クククッ、俺たちが居て良かったな!でなきゃ…勇者共を逃して大目玉だったろうからなぁ!…手を貸したんだ、代わりに…勇者の命は俺達がもらう!」
「…」
フレイザードは黙ってガルダンディーに対して中指を立て、それを見たルードは歯をむき出しにして唸った。
「グルルルルッ!!」
「クハハハッ!どうやら機嫌が悪いようだな!行け!ルード!目指すは勇者が落ちた森だ!」
ルードはフレイザードを睨みつけた後、ダイが墜落した森を目指して飛行した。
「あのクソ鳥ィ…いつか焼き鳥にしてやる!」
フレイザードは離れて行くガルダンディーを睨みつけた後、居る必要のなくなったバルジ塔を出るため階段を降り始めた。
一方、ダイ達とはぐれてしまったラーハルト、ヒュンケル、クロコダインはガルーダに掴まり、バルジ島を目指してホルキア大陸上空を飛行していた。
「クエェ〜〜……ケェエ〜…」
3者を運んでいるガルーダは息を切らしながら必死に翼を動かしていた。
「先程、遠くの方で光ったぞ!」
「何かあったに違いない!おい!もう少しスピードは上がらないのか!?気球はとっくに見えなくなったぞ!?」
「無茶を言うな!定員オーバーだ!!!」
ガルーダは3者の声を何処か遠くで聞いていた。
「クエェ〜……ケエェ〜〜……………カクッ」
ガルーダは目を回すと気絶した。
「ん?おい、ガルーダ!大丈夫か―…おわあああっ!」
ガルーダが気絶したことで3者と1羽は地面に向かって落ちていった。
「ガルーダ!しっかりしろっ!」
「まずい!墜落する!」
「全員、衝撃に備えろ!!!」
ラーハルト達はホルキア大陸の森に大きな音を立てて墜落した。
原作読んで思ったこと、ダイ君たちを逃したくないなら気球を破壊すれば良かったんじゃ…?
レオナ姫救出は主人公がいるので真っ先に助けちゃいました!まあ、状況は原作より悪いけどね!
やっとダイ君と主人公のペアで戦闘シーンを書くことが出来ました!やっぱりこの二人のペアは書いてて面白い!
おまけ(if)
フレイザードがザボエラの指示通りに動いていたら。
「ちっ…ザボエラの作戦は気に入らねぇが…ハドラー様の手前、指示通り動くか」
翌日、ハドラー率いる魔王軍はバルジ島に到着した。だが、島中を捜してもダイたちはおろか、レオナ姫やパプニカの者はいなかった。ザボエラは冷や汗をかきながらハドラーに報告した。
「ハ、ハドラー様…申し訳にくいのですが…どうやら、パプニカの姫と勇者一行は、このバルジ島を離れ、パプニカに戻ったようですじゃ…」
「な、なんだとおっ!!!」
人間が誰も居なくなったバルジ島でハドラーの怒鳴り声が響いた。
おまけ(if)
本当に全員で行動していたら。ご都合主義。
「作戦を変更する…全員で行動するぞ!色々と問題はあるだろうが、何とかなるだろう!」
「うん!分かった!大丈夫、きっと何とかなるよ!」
気球船が到着、エイミ登場。エイミは魔族のラーハルトと獣人族のクロコダインを見ると疑問を口にした。
「えーと…彼らは…?」
「俺たちの仲間だよ!みんな、魔王軍と戦うために協力してくれるんだ!強くてとっても頼りになるよ!!!」
「なら、大丈夫ね!みんなで姫様のところに行きましょう!」
「はーい!」
バルジ塔にて、フレイザードの姿を発見。レグルスが前衛メンバー全員に魔法をかける。
「バイキルト!」×人数分
バルジ塔に到着。フレイザードと対峙する。
「クカカカッ!てめぇらを倒し!大金星を手に入れ―」
「開幕早々、アバンストラッシュ!!!」
「海波斬!!!」
「ハーケンディストール!!!」
「ブラッディースクライド!!!」
「獣王痛恨撃!!!」
「うぎゃああああ!!!」
フレイザードはコアごと爆散した。フレイザードは死亡した。
「やったあ!俺たち勝ったよ!」
「ダイ君ありがとう!さあ、パプニカに帰るわよ!」
フレイザードを倒したダイたちはバルジ島を後にした。
その後、人間が誰も居なくなったバルジ島でハドラーの怒鳴り声が響いた。