あとがきにおまけあり。
気球がバルジ島上空で爆発、レグルスは咄嗟にダイの手首を掴んでいた為、爆発時の衝撃で吹き飛ばされたが2人は一緒に落ちていた。爆発時に負った背中の火傷に顔をしかめながらもレグルスは迫り来る地面に対処するため剣を構えた。
「ダイ!武器を構えろ!地面に衝突の瞬間、技を繰り出して衝撃を抑える!」
「っ…分かった!」
レグルスは手首を離し、ダイは地面を睨みつけながら剣を構えた。
「タイミングが全てだ!」
「何時でもいいよ…!」
地面は目前まで迫っていた。
「今だっ!大地斬!」
「大地斬!!」
地面に激突の瞬間、2人の技が炸裂した。
「ぐあっ!!!」
技を駆使して衝撃を抑えることができたが、それでもなお、激突時の衝撃は凄まじく、レグルスは数回バウンドして地面に転がった。
「っ…!」
バルジ島の森に墜落したレグルスは全身のズキズキとした痛みに顔を歪めながらも、すぐさま身体を起こすと周囲を見渡した。
(ぐっ!…衝突の瞬間、技を出すことで衝撃を抑えたが…それでもかなりのダメージを負った…敵に遭遇すれば勝ち目は無い!…見つからないようにしなければ…)
レグルスはふらつきながらも気配を頼りに走り出すと、少し離れた場所に倒れているダイの近くにしゃがみ、声をかけながら肩を叩いた。
「ダイ!ダイッ!しっかりしろ!!!」
「……うっ…」
レグルスの呼びかけにダイは顔をしかめながら目を開き、痛めた手足を庇いつつゆっくりと体を起こした。
「レグ…何とかなったね…いっ!…つっ……そうだ!レグ、皆は!?レオナは!ポップは!?マァムは!?」
「皆は―…!!!…この気配は…!ダイ、動けるか?今すぐ茂みに隠れるぞ!敵が来る!」
「!!分かった!」
レグルスはダイを支えながら茂みに隠れ、2人は息を潜めながら茂みの隙間から様子をうかがった。隠れてすぐ、先程までダイが倒れていた場所に気球を襲った魔王軍のガルダンディーとスカイドラゴンのルードが現れると、周囲をキョロキョロと見渡した。
「勇者はここに落ちたはずだ!ルード!捜せっ!」
「グルル」
(あいつは、さっき気球に現れた…!)
(ここに居れば、敵に見つかるのも時間の問題だ…今すぐ離れなければ)
敵が木々の隙間を縫うように移動しながら捜すのを見たレグルスは道具袋から消え去り草を取り出した。見慣れないアイテムにダイは不思議そうにすると、レグルスの手元を見た。
「レグ、これって何?」
「消え去り草、一時的に姿を消すことが出来るアイテムだ。まさか、使うことになるとはな…レムオルが使えるため、必要ないと思っていたが…用意してくれた父上に感謝しなくては…ダイ、この場を離れ、1番近くの海岸を目指す!あっちの方角に進むぞ!」
「分かった!」
レグルスは消え去り草を自身とダイに使用し、透明になると、足を怪我したダイの腕を肩に回し、支えながら音を立てずにその場を離れた。
「くそっ!何処だ!?ぜってぇ近くにいるはずだ!ルード!人間の臭いを捜せ!」
「グルッ……?」
ルードは指示を受け、匂いを嗅いだが、周囲からは人間の臭いを感じ取れなかった。周囲には人間でない者の臭いと、少し人間に近いが人間ではない者の臭いしかなく、ルードは首を傾げながらガルダンディーに報告した。
「グルゥ」
「何?近くに人間の臭いはない…だと!?」
「グルル」
「そんな筈ねぇだろ!ついさっきここに落ちたのをお前も見ただろうがっ!」
叱られたルードは悲しげな声を上げた。
「クーン…」
「…ちっ、分かったよ!とりあえず、近くを捜すぞっ!」
ガルダンディーとルードはダイが落ちた場所を中心に低空飛行で周囲を飛び回った。
森の中、海岸に向かって進んでいたダイとレグルスは、ガルダンディー達から無事に離れることができると、ホッと息を吐いた。
「さっきは危なかった…」
「近くに敵の気配はない…とりあえずは一安心だ」
「ねえレグ、みんなの気配は感じる?」
「……レオナ姫とバダック殿、それにパプニカの者3名の気配はあるが…ポップとマァムの気配は近くにない…」
「レオナは近くに居るんだね!…ポップとマァムは無事だといいけど…」
「ポップとマァムは島の何処かに落ちたはずだが…爆発の衝撃で離れたか…」
「皆を助けないと…ところでレグ、なんで海岸に向かっているの?」
「海岸なら魔法が使える可能性が高いからだ」
「でも…結界があるんじゃ?」
「フレイザードが発動した氷炎結界呪法は禁呪法の一種、おそらく、結界の効果範囲は炎と氷2つの塔より内側だ。なら、塔より外側…つまり島の海岸なら結界の範囲外となり…」
「魔法が使える!」
「そうだ!魔法で怪我を治したら…レオナ姫を助けに行くぞ!」
「分かった!」
ダイとレグルスは互いを支えながら、森の中を海岸に向かって進んだ。
気球がバルジ島上空で爆発した際、マァムはポップを抱きしめ、爆発の熱からポップを守った。爆発時の衝撃で吹き飛ばされた2人だが、マァムはポップを抱きしめ続けていたため、2人は一緒に落ちていた。
「あつっ…!」
「マァム!無茶しやがって…!」
「しょうがないじゃない!体が勝手に動いちゃったのよ!」
地面が近づいているのを見たポップはマァムの腕から抜け出すと、逆にマァムの頭を自身の胸に押しつけた。
「くそっ!イオラで衝撃を抑える!」
「でも、結界が…!」
「ダメ元でやるしかねぇ!落ちた先は魔法が使えるかもしれねぇしよ!」
「…分かった!」
地面は目前まで迫っていた。
「行くぞ、イオラ!!!」
ポップは右手を地面に向け呪文を唱えたが、魔法は発動せず、そのまま地面に勢いよく激突した。ポップの意識は闇に包まれた。
「………ポップ……ポップ…しっかり!しっかりして!」
(……この声…は…マァム?)
ポップは呼びかけにゆっくりと目を開けると、そこは薄暗い森の中であり、マァムが癒しの魔法をかけながら心配そうに顔を覗き込んでいた。
「ポップ!良かった…やっと目が覚めた!」
心配そうに見つめるマァムの目を見ながら、後頭部に感じる感触とマァムの姿勢で、ポップは自分の状況を瞬時に理解した。
(……頭の後ろが…温かくて柔けえ…俺、今…マァムに膝枕されてる…)
ポップは寝起きでボーッとしながら後頭部に意識を集中し、膝枕を堪能した。マァムはポップが起きた事で安心すると、徐々に顔をしかめて苦言を呈した。
「もう!無茶して…!ポップは魔法使いで私より体力がないのだから無理する必要なかったのに…!」
「………マァムは…怪我、なかったか?」
ポップの心配する言葉にマァムは目を見開き、そして、くしゃりと顔をゆがめると、ポップの上半身を持ち上げギュッと抱きしめた。抱き締められたことで、ポップはマァムの胸に顔を押し付ける状態となった。
「ポップのお陰で…怪我、しなかったわ…ありがとう…」
(うおおおおぉお!!!胸が…!胸が!マァムの胸が!俺の顔に…!あ〜〜〜、柔けえ……いい匂い…これがマァムの匂いか…スーハー…スーハー…)
ポップはマァムの胸の中でゆっくり深呼吸をした。
「もう……こんな無茶しないで…貴方が目を覚まさない間……不安でしょうがなかったのよ…」
(……マァム?もしかして…泣いているのか?)
マァムの体が震え、声も涙声である事に気づいたポップは少し動揺しながら腕をマァムの背中に回すと安心させるためポンポンと優しく叩いた。
「マァム…あの時はあれが最善だったんだ。結界内じゃ俺は魔法が使えねぇ…なら、戦士で回復魔法が使えるマァムが無事でいてくれりゃ…助かる可能性が高いって…そう考えたんだよ」
「ポップ…」
「実際、こうやっておめぇが俺を助けてくれただろ?結果オーライじゃねぇか!」
「ポップ…あなたはいつも頼りになるわね…私を助けてくれるし…ありがとう」
マァムが腕の力を弛めたため、ポップは名残惜しく思いながら胸から離れるとマァムの顔を見た。マァムは涙を流しながら笑顔を浮かべており、それを見たポップはドキドキしながら手を伸ばし、マァムの頬に触れた。
(マァムが俺を思って泣いている…涙が…綺麗だ…)
「ポップ?」
マァムは頬に触れる手の上に自身の手を重ねると、不思議そうにポップ見つめた。
「マァム…」
ポップは顔が熱くなるのを感じながら涙に濡れる目を見つめ、ゆっくりとマァムに顔を近づけた。マァムもドキドキしながらポップを見つめ返し、徐々に近づいた2人の距離は鼻先が触れそうになるほど接近した。
「良かった!2人とも無事だったのね!!!」
森の中、茂みからエイミとエイミに背負われたマリンが現れた。
「おわあぁあっ!!!」
「きゃあぁっ!」
「……」
ポップとマァムは悲鳴を上げると互いに距離を取り、頬を引き攣りながらエイミに顔を向けた。
「エ、エイミさん無事でよかったぜ!」
「よ、良かったわ!すぐに合流出来て!お姉さんの怪我は大丈夫?」
「………私たち…お邪魔だったかしら?」
「ち、違っ!」
「わ、私たちそんなんじゃ…!」
2人の慌てる様子にクスッと笑ったエイミは背中のマリンを地面に下ろすと気絶している姉に回復魔法をかけた。
「本当なら気を利かせて…2人きりにさせたいのだけれど…今はそんな余裕、無いから…島から脱出したら好きなだけ続きをしてちょうだい」
「エイミさん!違います!!俺達、ほんと、そんなんじゃ…!」
「私とポップは…仲間です!」
「はいはい、分かったわ」
狼狽えながら弁解するポップとマァム、それを照れ隠しと受け取り笑うエイミ、気絶し回復魔法を受けているマリン。
「発見、勇者一行の仲間を発見致しました」
そんな4人を木の枝にぶら下がった悪魔の目玉がじっと観察していた。
氷魔塔にて魔軍司令ハドラーと魔影軍団長ミストバーンは悪魔の目玉から勇者一行発見の報告を受けていた。
「勇者一行の仲間を発見致しました。ここから少し離れた森の中にいます」
悪魔の目玉が映す映像にポップの姿を見たハドラーは以前デルムリン島でアバン抹殺を散々邪魔された事を思い出し、顔を顰めた。
「あの魔法使いの小僧はデルムリン島にいたやつか…勇者はどうした?」
「捜しておりますが…未だ発見の報告はありません」
「勇者は行方が分からない…ならば…!勇者の前にあの小僧を始末する!アバンの使徒共は全て皆殺しだ!!!デルムリン島での雪辱を果たしてくれる…!行くぞ!ミストバーン!」
「……」
ハドラーの号令に周囲にいた部下のアークデーモンは移動を開始し、ミストバーンも暗黒闘気を使い、さまよう鎧を動かし始めた。
森の中ではエイミの回復魔法によりマリンが目を覚ました。
「う……エイミ?」
「姉さん…!良かった!気が付いたのね!」
マリンは上半身を起こすと周囲を見渡した。
「エイミ、ここは、何処…?そうよ!姫様は!?」
「ここはバルジ島の森よ…魔王軍の襲撃にあって、みんな散り散りになってしまったの…姫様は行方が分からないわ…」
「そう…ところで貴方達は?」
マリンは近くに居るポップとマァムに視線を向けた。
「俺は勇者ダイの仲間のポップだ!よろしくな!」
「私はマァム!よろしくね!」
「この2人は姫様がおっしゃっていた勇者ダイの仲間なのよ!」
「勇者ダイ…!じゃあ彼もここに居るの?助けに来てくれたのね…!」
「おう!…まあ、塔から脱出する途中、敵に襲われて皆バラバラになっちまったけどな…」
「マリンさんも目が覚めた事だし、そろそろ皆を捜しに行きましょ!」
「そうね!姫様を捜さないと…!アポロや他の皆も!」
「ダイとレグも見つけて、全員でここから脱出しようぜ!!」
「ええ!!」
全員笑顔で立ち上がり、出発しようとした矢先、森の奥でキラリと明るくなったのを見たポップは大声を上げた。
「全員避けろ!!!」
ポップの指示に全員瞬時に駆け出すと、先程いた場所は巨大な熱線により燃え上がった。
「あつっ…!!」
「敵…!」
ポップ達は凄まじい熱量にゾッと冷や汗をかきつつも熱線が来た方向に身体を向けると戦闘態勢をとった。森の奥から黒いマントを羽織った魔族が不敵に笑いながら歩いて来ると、ある程度の距離で立ち止まり、ポップ達に対してニヤリと笑った。
「俺のベギラマに気づくとはな…クククッ…小僧、褒めてやろう!」
「ま、魔族!!!」
エイミ達は魔族の姿を見ると冷や汗をかきつつも睨みつけ、ポップは唇を噛みながらハドラーを睨みつけた。
「久しぶりだなぁ小僧!アバンと戦った時以来だ!」
「ポップ!こいつは…!」
マァムは魔族を警戒しつつ、視線をポップに向けた。
「こいつは…こいつがハドラーだ!魔王軍、魔軍司令ハドラー!!!」
「ハ、ハドラーって…15年前の魔王!!?」
「そ、そんな…!」
「!!!こいつが…先生の、かたき!」
エイミとマリンは顔を青ざめ、マァムは怒りで歯を食いしばるとハドラーを睨みつけた。
「貴様らが勇者を捜しに行くことは無い!!!ここで俺に殺されるのだからなぁ!!!」
ニヤリと笑ったハドラーの背後からミストバーン、複数のアークデーモンとさまよう鎧が現れ、ポップ達と対峙した。
「そんな…こんなにも、敵が…」
(た…多勢に無勢だ…ハドラーも居やがるし…ダイとレグが居ねぇ今の状況じゃ勝ち目は……や、やべぇかもしれねぇ…!)
ポップは絶望的な状況に内心焦るが表情には出さず、敵の戦力を確認しながらこれからの戦い方を考えた。
海岸に辿り着いたダイとレグルスは結界の外側にある僅かに生えた草木の下に行き、見つからないよう隠れた。
「レムオル!ホイミ!」
姿を隠す魔法を使用後、レグルスはダイに対して回復魔法をかけた。ダイは回復魔法を受けながら周囲の海岸を見渡し、眉をひそめた。
「ここ…海岸からだと敵に見つかっちゃうね…」
「結界の外に出たらすぐにレムオルで姿を隠すしかない」
「レグ、ここからレオナの居場所分かる?」
「ああ、離れた場所に気配がある」
(…レオナ)
目をつぶったダイはレオナの気配を感じ取ろうと意識を集中した。先程、クロコダインの気配を感じ取った際の感覚を思い出しながら。
(心の目で…レオナを見つけるんだ…)
ダイは心穏やかに周囲の気配を探ると、近くに感じる変わった気配に気付いた。
(!!気配を感じる……この気配はレグ?……レグの気配って…なんか変わっている…?)
レグルスの気配を感じたダイはそのまま意識を森の方へ向けた。
(たくさんの気配を感じる…これは悪意ある気配、敵の気配だ!…こっちは、気配は小さいけど…強くて優しい気配…もしかして、レオナ?)
目を開けたダイは、レオナが居ると思われる方角の森をじっと見つめた。
「ダイ、怪我はどうだ?」
「もう大丈夫だよ!ねぇ、レグ!レオナの気配分かったかもしれない!」
小さく目を見開いたレグルスは驚きながらダイを見た。
「本当か…!ちなみに、レオナ姫がいる方向はどっちだ?」
「あっち!」
ダイは森の中を指さし、その先にレオナの気配があるのを感じとったレグルスは、ダイが気配を感じ取れるようになったことを驚き、喜んだ。
「!!そうだ、合っている!レオナ姫がいるのはその先だ!少し待て、最低限の回復を行う…!ホイミ!」
レグルスは自身に回復魔法をかけた。
「ちゃんと回復したほうがいいんじゃ…」
「大きな怪我を治せば、あとは走っているうちに回復する!…それよりも、敵に見つかる前に早く行かねば…!」
「レグも走っていれば体力回復するんだね!」
「…ダイもか?」
「うん!よく、元気すぎる!って、じいちゃんに言われた」
「…普通の人は、走ると体力が減るらしいな…ラーハルトからそう聞いた時は…正直、驚いた」
「俺も皆が走ると疲れると知った時、びっくりした!」
「ふむ…個人差もあるのかもしれんな…よし、これぐらいで良いだろう!」
「行こう!レオナを助けに…!」
「ああ!」
2人は森に向かって駆け出し、途中悪魔の目玉を倒しながらレオナの気配を頼りに森の中を進んだ。
「居た!レオナ!!!」
気配を頼りに走り続け、その先で地面に倒れ気絶しているレオナを見つけたダイは駆け寄り声をかけた。
「レオナ!レオナ!!!……ダメだ、気絶している!」
「海岸に運び治療を行う!ダイは上を持て!私は下を運ぶ!」
「分かった!」
ダイはレオナの背中側から腕を回し上半身を持ち上げ、レグルスはレオナの足を組み持ち上げると駆け足で走り出した。
「はぁ…はぁ!…お、重い…!レオナ、もしかして…太った?」
「はぁ…はぁ…結界内は力が落ちる…そのせいだろう……あと、ダイ…女性に対して太ったと言わないほうが良い…嫌われるぞ」
「えっ!?わ、分かった!絶対言わない!」
森の中走り続け、海岸に到着した2人はレオナを地面に下ろした。レグルスは息を切らしながら手のひらをレオナに向けると魔法を唱えた。
「はぁ!…はぁ!…レムオル!ホイミ!」
「…はぁ…次に一番近いのはバダックさんかな…?」
「……」
レグルスは森に居るバダックや他のパプニカ3人の気配を感じると眉を顰めて考え込み、ダイへの返事をあえてしなかった。
「……う、…ここは?」
魔法により姿は見えなかったが、レオナの動きから起きた事に気付いたダイは嬉しそうに笑顔を浮かべると声をかけた。
「レオナ!気が付いた?」
「えっ…だ、誰!?」
声は聞こえるのに姿が見えない事にレオナは警戒し、慌てて上半身を起こすと周囲を見渡した。
「レオナ!俺だよ!ダイだよ!」
「ダイ君?」
「うん!そうだよ!」
「レオナ姫、現在魔法で姿を隠しております。ここにはダイと私、レグがおります」
「!…そう、貴方の魔法だったのね」
ダイの声に安心して警戒を解いたレオナは、現在地を確認するため周囲の海岸を見渡した。
「ダイ君…ここはバルジ島で合っている?」
「うん…ここはまだバルジ島だよ」
「今の状況を教えて」
「現在、我らは遭難中となります…気球にて脱出時、敵の攻撃を受け墜落。気球に乗っていた者は全員、バルジ島各地に散らばりました」
「…最悪の状況ね」
「レオナ!皆を助けに行こう!バダックさんがあっちにいるんだ!」
「バダックが…!ええ!そうね、行きましょう!」
「……その事だが、2人に相談したい事がある…森の中で話そう」
レグルスはダイとレオナを敵に見つかりにくい、草木が生い茂る森の中に案内し、魔法の効果が切れ互いの姿が見えるようになると真剣な表情で2人に話しかけた。
「この後の事だが…ポップとマァムの救助を優先すべきだと私は考えている」
「えっ…?」
「ま、待ってよ!レグ!バダックさんはどうするの!?ほかにも3人いるんだろ!?その人達はどうするの?」
「ポップ、マァム両名を救出後、順次に助ける」
「待って…それって…」
自身の部下が救助を後回しにされることに気付いたレオナは目を見開き、キッとレグルスを睨みつけると、会話に食いついた。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!私は貴方の案を断るわ!私の部下が4人近くにいるのでしょ?助けてから2人を助けに行けばいいじゃない!なんで私の部下を後回しにするのよ!!!」
「生き残る確率を上げるためだ!…私も、可能であれば皆を救出してからポップとマァムを捜しに行きたい…だが、現状ではそれが出来ないのだ…」
「…どういうこと?」
「レグの事だから…何か考えがあるんだよね?」
ダイに対して頷いたレグルスは脳裏にガルダンディーとフレイザードの姿を思い返すと険しい顔で2人を見た。
「…気球を襲った鳥の獣人族、あの者の特徴に覚えがある…!魔王軍の超竜軍団長ガルダンディー!それがおそらく奴の名だ!…そして、塔を襲ったのは氷炎魔団長フレイザード!…おかしいと思わないか?この狭い島に軍団長が2つも居たことに…」
「!!!…まさか!」
「レオナを…襲いに来たんでしょ?パプニカの姫だから…」
「いえ…おそらく違うわ」
「魔王軍は一つの国に対し、一つの軍団で対応していた…狙いは、レオナ姫ではない」
「…敵の狙いは―」
レグルスとレオナは、ダイを見つめながら難しい表情を浮かべた。
「ダイ君…敵の狙いは君よ」
「!…俺」
「ダイはすでに百獣魔団、不死騎団を倒している…六軍団のうち2つをだ…魔王軍が各国侵略よりも勇者打倒を優先した…そう、考えるのが妥当だろう」
「2つの軍団長がいたという事は…他の軍団長もいる可能性があるってことね…貴方は…レグ君は、それを懸念した…だから戦力増強のため、仲間の救助を優先したい…そういったところかしら?」
「そうだ!分かってくれたなら―」
「その前に!…1つ聞かせてちょうだい…貴方の仲間は近くに居るの?どこに居るか分かっているの?」
「…!!」
真剣に見つめてくるレオナから気まずげに視線を逸らしたレグルスは、周囲の気配を再度探り、ポップとマァムの気配がない事を確認すると、首を横に振った。
「いや…現在、行方不明だ…」
「どこにいるかも分からないなら、捜している間に時間だけが経ってしまう…助けなかった人達の犠牲も増えるわ!貴方の案は…リスクが大きいのよ!!」
「…それでも、全滅するよりはましだ!私は生き残る確率が高い方を選ぶ!ポップとマァムの救助を優先し、敵との戦いに備える!!!」
「いいえ!私の部下を救助してから助けに行く!!!」
「ね…ねぇ、2人とも…落ち着いてよ」
睨み合う2人をダイは戸惑いながら見つめた。
「このままでは時間だけが過ぎる…」
「ホントね!私達では埒が明かないわ…こうなったら」
レグルスとレオナは勢い良くダイに振り向いた。
「ダイ!お前が決めなさい!」
「ダイ君!君が決めて!」
「いいっ!!?…お…俺ぇ?」
いきなりの無茶振りにダイは驚き、困惑しながら2人を見た後、唸りながらどうしようかと考えた。
「うーん……全員が助かる可能性が高いのは、どっち?」
「レオナ姫の案だ…ただし、全滅する可能性が高いのもそちらだ」
「全滅するとは限らないでしょ!上手く行けば皆助かるのよ!」
「……なら、俺はレオナの案がいい!皆を助けて、全員で島から脱出しようよ!」
ダイの答えにレオナは喜び、レグルスは顔を顰めた。
「ダイ君、分かってる〜!そうよ!皆で一緒に脱出しましょ!誰1人欠けるなんて許されないわ!」
「…理想ではあるが…故に危険も多い。本当に良いのだな?ダイ」
「うん…ポップとマァムはもちろん心配だよ?でも、俺、信じてるんだ!」
「信じる?」
「ポップとマァムなら敵と戦っても絶対に切り抜けられるって!俺は仲間を信じる!だから俺に出来ることを精一杯やる!それに…ラーハルト達もここに向かっている!きっとすぐ来るよ!」
「…!!」
「ラーハルト?どっかで聞いた名前ねぇ…」
「レグの言っている事も分かるよ?…それでも俺は皆とまた会いたいんだ!!この島から出る時は全員一緒がいい!」
「…」
「ダメ…かな?」
ダイがおずおずと困り顔で見てきたため、レグルスは安心させるため小さく笑うとダイの頭を撫でた。
「分かった…ダイの言う通り、私も仲間を信じるとしよう…ポップとマァムなら無事でいてくれると…ただし!近くの者達を救出次第、ポップ達を捜しに行く!…そして、皆でバルジ島から脱出する…それで、よいな?」
「うん!」
「貴方…私とダイ君とで…態度違い過ぎない?」
レオナはダイの頭を撫でているレグルスをジト目で見つめた。ダイの頭を撫で終わったレグルスは気まずく思いながらレオナに話しかけた。
「レオナ姫、先程は失礼な態度をとってしまい…申し訳ありません…」
「別にいいわよ。貴方の考えも分かるし」
「よし!バダックさん助けに行こう!」
「ええ!」
バダックの元に向かって走り出したダイの後を追うように、レオナとレグルスも走り出した。走りながら、レオナは先程聞いたラーハルトの名前に心当たりがあったため、確認のため前を走るダイに話しかけた。
「ねぇ、ダイ君!さっき言っていた仲間のラーハルトって…もしかして半魔族でテラン兵士のラーハルトだったりする?」
「うん!そうだよ!」
「…ふぅん」
レオナは隣を並走するレグルスに探るような視線を向けた。
「テラン…ねぇ?」
「…」
何か言いたげな視線に気付いたレグルスだが、レオナに目線は合わせず、あえて気付かないフリをした。
「バダックさん!!!」
地面に倒れているバダックを見つけた一行は、バダックに駆け寄り、肩を叩きながら呼びかけたが、意識は戻らなかった。
「バダック!目を覚ましなさい!…ダメね、意識が戻らないわ!」
「海岸に運ぶぞ!レオナ姫…私とダイだけでは時間がかかります…御協力を!」
「ええ、もちろんよ!お互い協力しましょ!…それと、私のことはレオナって呼んでちょうだい!敬語もなしよ!さもないと…貴方のこと、レグルス王子って呼ぶわよ!」
レグルスはレオナが自身の正体を見破ったことに、予想していたとはいえ、驚いて目を見張った。
「!!…気付いていたか」
「まあね」
レグルスが王族であることに気づいたレオナに、ダイは驚いて大声を上げた。
「ええ!レオナ、なんで分かったの?俺たち言ってないのに!」
「ラーハルトの名前聞いて気付いたわ。ラーハルトってテランのレグルス王子の付き人じゃない!レグルス王子って魔法も剣も出来て、剣は達人の域って聞いたことあるし…あとは年齢や言葉づかい、名前からかしら?」
「へぇ〜、レオナ凄いね!バレちゃったのレオナが初めてだよ!」
「ふふん!まぁね!」
ダイはキラキラした目でレオナを見つめ、一方のレオナは嬉しそうに胸を張った。
「…分かった。では…レオナ!バダック殿を共に運ぶぞ!ダイと共に上半身を!私は足を運ぶ!」
「分かったわ!」
3人はバダックを海岸に運び、地面に降ろすとレグルスが姿を消す魔法をかけ、レオナは回復魔法をかけた。怪我が治ったバダックは起き上がると周囲をキョロキョロと見渡した。
「ここは…何処じゃ?」
「バダック!急に動かない方がいいわ!!」
バダックは周囲から姿が見えないのに声だけが聞こえた事で叫び声を上げた。
「ぎょええええぇえ!!!お…お化け!!!」
「バダック!静かになさい!私よ!レオナよ!」
「こ、この声は…ひ、姫ぇ!!!」
「ええ、そうよ!今、魔法で姿を隠しているの!」
「ご無事でなによりじゃああぁあ!!!」
「よし!次の人助けに行こう!」
「ああ!」
「バダック!着いてきて!」
「承知しましたぁ!!!」
ダイ達は気配を頼りに森を走ると地面に横たわる賢者の格好をした男性を見つけた。
「アポロ!!!」
「ア…アポロ殿ではないか!!!」
「アポロは確か、パプニカ三賢者の1人だったな」
「よし!みんなで運ぼう!!!」
「ええ!」
4人はアポロを海岸まで運ぶとレグルスが姿を消す魔法を全員にかけ、レオナは気絶しているアポロに手をかざすと回復魔法をかけた。
「アポロ…今助けるわ!ベホマ!」
「今のところ順調だね!……!!ねぇ、レグ!敵の気配が!」
敵の気配を複数感じたダイは森を見つめながら周囲の気配を探り、レグルスもダイが言いたいことを理解すると周囲を見渡し、眉を顰めた。
「…さっきよりも敵が増えてる!」
「あと2人森に居るが…このままでは敵に見つかるのも時間の問題だ」
回復魔法をかけながら話を聞いていたレオナは、ダイに向かって指示を出した。
「ダイ君達は先に行って、他の2人をここに運んでちょうだい!私はアポロの回復を続けるわ!」
ダイは驚くと、レオナがいる方向へ振り返った。
「えっ!?で、でも…レオナが1人になっちゃうよ!?」
「な…なんじゃと!?姫!それはなりませぬ!危険ですじゃあ!!!」
「いいから行って!時間がないわ!皆を助けるのよ!私の部下を…私の民を救って!頼んだわよ!私の、小さな勇者さん!!」
「!!」
ダイはレオナの指示に従って、この場所を離れるべきか迷ったが、最終的に覚悟を決めると頷いた。
「レオナ……分かった!皆を助けてくる!」
「ええ!」
レグルスは道具袋から消え去り草を取り出すとレオナの近くに置いた。
「レオナ、横に消え去り草を置いた。魔法が切れたらこのアイテムを使い、姿を消すように…なるべく早く戻る!バダック殿、行こう!…レオナの判断は正しい。1人でも多く助け出すには、作業を分担し、効率化を図るのが一番だ!」
「っ〜〜〜!!!分かったわい!姫はいつも正しいことを言っておった!今回もきっとそうじゃ!姫!皆を助けてすぐ戻ります!!!」
「行こう!」
「皆、頼んだわよ!!!」
ダイとレグルスとバダックは森へ駆け出し、気配を頼りに進んだ。
「!…2つの気配はお互い、近くに居るようだ!」
「よかった!あまり離れてなくて」
気配があった場所に辿り着くとそこにはパプニカの兵士が2人おり、1人は意識があるがぐったりした様子で地面に座り込み、1人は気絶し地面に横たわっていた。
「怪我は大丈夫ですか!?」
意識がある兵士に近づき、ダイが心配そうに呼びかけたところ、兵士は疲れ切った表情でゆっくりと顔を上げ、ダイを見ると驚いて目を見開いた。
「あ……貴方は、勇者様…!来てくださったのですね……!お願いします…こいつを助けてください!……俺は…もう、動けそうにありま―…むぐっ!?」
「薬草だ!食え!」
レグルスは意識があるパプニカ兵士の口に薬草を押し込み、兵士は目を白黒させながら薬草を咀嚼した。
「もう大丈夫じゃ!皆で安全な所へ行くんじゃ!」
「お前は我らの後をついてこい!」
「よし!レオナの元へ戻ろう!」
ダイとレグルスとバダックは意識のない兵士を持ち上げ、レオナがいる海岸へ向かって運びだした。もう1人の兵士は怪我した足を引きずりながら、ダイ達の後をついて行った。
一方、ダイとレグルスが最初に墜落した場所付近ではガルダンディーとルードがイライラしながら森の中を低空で飛行し、ダイ達を捜し回っていた。
「くそっ!くそっ!くそっ!勇者はどこだ!?どこにいやがる!!?」
「グルルルル!!!」
「これだけ捜して、なんで居ねぇんだよ!くそがぁっ!移動した後か!?ネズミみたいにチョロチョロしやがって…!!!」
ギリギリと歯を食いしばったガルダンディーは高度を落とし、地面に足をつけると森に向かって大声を上げた。
「悪魔の目玉!出てこい!!!」
しばらくすると木の枝を伝い、悪魔の目玉が現れるとガルダンディーの前で止まった。
「ガルダンディー様、お呼びでしょうか?」
「ザボエラに繋げろ!」
「かしこまりました」
炎魔塔にて、部下のあくま神官と共に待機していた妖魔士団長のザボエラは悪魔の目玉から呼び出しを受けていた。
「ザボエラ様、ガルダンディー様より通信が入っております」
「キヒヒヒッ!…やっと勇者共を見つけたかの?繋げるのじゃ!」
「かしこまりました」
悪魔の目玉に映像が映し出されると、怒り心頭のガルダンディーが表示され、すぐに大音量の声が流れた。
「ザボエラ!!!勇者共が居やがらねぇ!どうなってやがる!!!」
「…うるさい奴じゃの…なんじゃ、おぬし…まだ見つけておらんかったのか?」
「こっちはずっと捜しているんだっ!!!てめぇも捜すの手伝え!!」
「これだけ捜しても見つからんのなら、勇者はすでに別の場所に移動した後じゃろ…人間を捜すのなら、もう少し頭を使うのじゃな」
「俺はそういうのは苦手なんだ!!!ザボエラ!俺に知恵を貸せ!!!」
「キヒヒヒッ!…仕方ないのう」
自身の知恵が頼りにされ、恩を売れる状況にザボエラはニヤリと笑った。
「実はお前さんが勇者を捜している間、こっちでも人間を1匹捕えたんじゃ…地面に転がっていたのを見つけてのぅ」
「そうか!そいつを殺して、奴らに見えるよう、さらせばいいんだな!」
頭の悪い回答にザボエラは内心呆れ、溜息を吐いた。
「…そんなことをすれば、なおさら隠れるじゃろ…人質というのは生かすからこそ利用価値がある、殺しては意味がないのじゃ…殺すのではなく、そいつを使って、敵をおびき寄せるのじゃ!」
「…あ?どうやって?」
「キヒヒヒッ!…それはのう…」
ニヤッと笑いながら、ザボエラは計画の内容を伝え、内容を理解したガルダンディーは楽しげにニヤリと笑った。
気絶した兵士を運ぶダイとレグルス、そしてバダック。その後ろをついていく足を引きずる兵士と共に、一行はレオナがいる海岸に向かって進んでいた。
「この辺りの人はみんな助けられたね!」
「ああ!2人を治療後、ポップとマァム、他の人を捜しに行くぞ!」
ダイとレグルスは敵を警戒し、周囲の気配を常に探っていた。そのとき、離れた場所から人間の気配を感じ取り、2人は顔をその方向に向けた。
「!!…レグ、これって!」
「どうしたんじゃ?2人とも」
「離れた場所に人間の気配を感じる!気配から恐らくパプニカの者だろう」
「おお!早速見つけたのかの!すごいのう!」
「よかった!すぐに見つかって!あの人も助けて―……えっ!?まって、この人の後ろから何か…何かがこの人を追いかけている!!!」
離れた場所で感じ取った人間の気配の背後には悪意ある敵の気配があり、パプニカの者は敵から逃げていることに気づくと、ダイとレグルスは顔を険しくした。
「な…なんじゃと!?敵か!!!」
「この気配!…敵の気配はドラゴンだ!…パプニカの者はドラゴンに追いかけられている!」
「ド…ドラゴン!!?」
「そんな!!?」
ダイとバダック、話を聞いていたパプニカの兵士はドラゴンの名前を聞いて顔を青ざめた。一方、レグルスは人間を追いかけているドラゴンの足が通常よりも遅いことに気づき、疑問に感じた。
「(…何かおかしい…ドラゴンの足の速さは人間より速く、しかも人間のほうは怪我をしているのか通常よりもスピードが遅い…この状況でドラゴンが人間に追いつけないはずがない…恐らく、これは罠だろう…我らをおびき寄せるための…!)ダイ!これは敵の罠―」
「あの人を助けないと!!!レグ!その人、お願い!」
ダイは気絶している兵士を地面に下ろすと、ドラゴンに追いかけられている人を助け出すため駆け出した。
「!!!待て、ダイ!!これは敵の罠だ!!!」
レグルスは慌てて止めようとしたが、ダイは制止を聞かず、森の奥へと消えていった。
「くっ!!!バダック殿!!!この者たちを安全な場所へ!薬草と消え去り草も渡しておく!!!ダイッ!!!」
薬草と消え去り草をバダックに押し付けたレグルスはダイを追い、駆け出した。
「ダイ君!レグ君!」
アイテムを渡されたバダックは気絶している兵士と怪我をしている兵士と共に森の中に置いてけぼりとなり、2人が消えた森を唖然と見つめた。
剣を装備したダイは気配を感じ取りながら走り、ドラゴンに追いかけられている人がレオナのいる海岸に向かっていることに気づくと顔を険しくした。
「このままだと…レオナが危ない!」
海岸ではレオナの回復魔法により賢者アポロが目を覚まそうとしていた。
「っ…ここは…」
「アポロ!気がついた?私よ、レオナよ!」
「この声は…姫!!!ご無事でしたか…!ここは…何処になりますか?それに…姫の姿が見えませんが…」
「ここはバルジ島の海岸よ!私達の姿は魔法で隠しているわ!」
「そうでしたか…そうだ!敵はどう―」
「うわあぁああ!!!や…やめろぉ…来るなぁ…!」
「「!!!」」
男性の悲鳴にレオナとアポロが離れた海岸に目を向けると、森から魔法使いの格好をした男性が慌てて海岸に出て、砂に足を取られて地面に転がった。
「ひっ…ひぃっ!!!」
「グルル!」
男性を追うように森から地響きと共にドラゴンが海岸に現れ、転倒している男性を睨みつけると、口を大きく開け、今にも噛みつこうとした。
「グオオオッ!!!」
「うわあぁああ!!!」
「あの人を助けないと!!!ヒャダルコ!!!」
「ヒャダルコ!!!」
レオナとアポロがドラゴンに対して魔法を放つとドラゴンは口を大きく開けた状態で凍り付き、動かなくなった。
「はぁ…!はぁ…!な…なにが…」
殺されそうになったところ、目の前でドラゴンが凍りついたことで魔法使いは唖然と口を開いた。
「そいつは一時的に凍らせただけだ!!!」
「早くこっちに来て!!!」
「この声は…ひ、姫様!!!アポロ様!!!」
転倒していた魔法使いは聞き覚えのある声に笑顔を浮かべると声を頼りにレオナとアポロの近くに移動した。
「助けてくださりありがとうございます!!!」
「お前が無事でよかった!」
レオナは怪我をしている兵士に回復魔法をかけた。
「ベホマ!いいのよ!あなたが無事でよ―」
グォオオォォ!!
その時、レオナ達がいる海岸の上空から動物の大きな唸り声が響き渡ったことで、レオナ達は驚いて上空を見上げた。青空が広がる上空ではスカイドラゴンのルードとその上に乗る超竜軍団長のガルダンディーがニヤニヤしながらレオナ達がいる場所を見下ろしていた。
「やっと見つけたぜぇ!!!ネズミ風情がてこずらせやがって!!!」
「ひっ!!!ま、魔王軍!!!」
「っ…とうとう見つかった!」
「行け!ルード!」
「グルルル!!!」
ガルダンディーの指示を受けたルードはレオナ達がいる場所に向かって急降下すると口に炎をため始めた。
「姫!お下がりください!!!」
「勇者がいないのは残念だけどよぉ…まずはてめぇらから遊んでやる!やれ!ルード!!!やつらを丸焼きにしろ!!!」
賢者であるアポロがレオナと魔法使いの前に出ると、フバーハを唱えようと構えた。ルードはレオナ達に向かって、口いっぱいに溜めた炎を勢いよく吐き出した。
「グオオオッ!!!」
「海波斬!!!」
ルードの炎がレオナ達に着弾する前に、森の奥からレオナの聞き覚えある声と共に斬撃が飛んで来ると、炎を切り裂き、レオナ達を守った。
「なにっ!?」
「レオナに手を出してみろ!!!ただじゃ済まさないぞ!!!」
森から現れたダイは大きく跳躍し、レオナ達の前に立つと剣を構えガルダンディーとルードを睨みつけた。
「ダイ君!!!」
レオナはダイの登場に、自身をルードの炎から守った勇者の登場に喜びの声を上げた。その頃にはレオナとアポロにかけられたレムオルの魔法が解け、2人の姿が現れた。
「クククッ!!!やっと現れたな!勇者ダイ!!!」
ガルダンディーも勇者の登場にニヤリと笑ったところ、ダイ達から少し離れた浜辺にルーラ特有の着地音が響いたため、全員が視線を向けた。
「な、何!?」
ルーラにより浜辺に現れたのは魔王軍妖魔士団長のザボエラと複数のあくま神官であり、ザボエラはダイの姿を見るとニヤリと笑った。
「キィ~~~ッヒッヒッヒッ~~~ッ!!やっと勇者を見つけることが出来たのう!」
「なんだ!?おまえらは!!!」
ダイは新たに現れた敵を睨みつけ、ザボエラはニヤッと笑うとダイに対して名乗りを上げた。
「ギョヘヘ!ワシは魔王軍の妖魔士団長ザボエラ!!」
「クククッ!俺は超竜軍団長ガルダンディー!!」
「…妖魔士団に…!!」
「超竜軍団だと!!?」
「…レグ君の言う通り、他の軍団長もいたようね…!」
アポロと魔法使いはショックを隠せない様子でザボエラとガルダンディーを見つめ、ダイとレオナは事前に聞いていたとはいえ、実際に魔王軍の軍団長と対峙すると緊張感から冷や汗をかいた。
「キヒヒヒッ!お前たちがそこのパプニカの姫を助け出すためこの島に来ることは分かっておった…!目障りな貴様らをこの機に乗じて始末するため、この島に罠をはっていたというわけじゃよぉ…まんまと引っかかったのう!ヒヒヒッ!!!」
「ぐっ…!」
「いかに勇者といえどもこれだけの数では手の打ちようもあるまい!魔王軍の恐ろしさを思い知りながら…死ねいっ!!イオラ!!!」
『イオラ!!!』
ザボエラと複数のあくま神官は魔法を発動すると巨大な爆炎がダイ達に襲い掛かった。
「っ…!」
「真空海波斬!!!」
森から風をまとった複数の斬撃が飛んでくるとザボエラ達の魔法を切り裂き、ダイ達を敵の攻撃から守った。
「な…なんじゃとお!?」
魔法を切り裂かれたザボエラは驚愕の声を上げた。
「今のは…!」
「ダイ!危ないところだったな!」
「レグ!」
聞き覚えのある声にダイが喜びながら振り向くと、剣を装備したレグルスが森から出てくるところであった。レグルスはダイに怪我がない事を確認した後、攻撃してきたザボエラ達を冷たく睨みつけた。
「…やつは?」
「妖魔士団長ザボエラ!レグの言う通り、罠だった!」
「ザボエラ…ダイの育ての親を誘拐し、クロコダインに人質にするよう作戦を提案したやつだったな…」
レグルスはザボエラが立案した卑怯な作戦に対し、不快感を覚えながら睨みつけた。
「レグ!協力してあいつらを倒そう!」
「ああ!」
「私たちも戦うわよ!」
「はっ!」
「姫様は我らがお守りします!」
ダイとレグルス、レオナ、アポロ、そしてパプニカの魔法使いは戦闘態勢をとり、ザボエラとガルダンディーを睨みつけた。ガルダンディーは睨みつけてくるダイたちをニヤニヤ笑いながら見下ろし、楽しそうに大声を上げた。
「クククッ!意気込んでいるみてぇだがよぉ…てめぇらの相手は俺らだけじゃねぇんだわ!!!」
ガルダンディーは懐から黒い縦長の筒を複数取り出すとニヤリと笑い、ダイは以前自身も使った見覚えのある筒に驚き、目を見開いた。
「あ…あれは!魔法の筒!!!モンスターを閉じ込めることが出来るアイテムだ!」
「モンスターを…閉じ込める!?」
「まさか…!」
「デルパァッ!!!」
空中に魔法の筒を複数放り投げながらガルダンディーが言葉を叫ぶと、筒からモンスターが飛び出し、地面に現れた。現れた複数のモンスターの姿を見たダイたちは呆然、もしくは恐怖に顔を歪ませながら声をあげた。
「ひっ!ド、ドラゴン!」
「モンスター…最強の生物」
さらに、先ほど凍り付いたドラゴンも復活しドラゴンの群れに合流すると、ダイ達をまるで逃がさないように取り囲んだ。
「囲まれた!!!」
「ドラゴンが…10匹!!!」
「嘘…」
「あ…悪夢だ…」
唖然とドラゴンの群れを見つめるダイたちを見て、ガルダンディーは空中で腹を抱えると大笑いした。
「クハハハハハッ!!!間抜けな顔だな!!!せっかく、てめぇらのために準備したんだ!せいぜいこの状況を楽しもうぜぇ!!!」
レグルスは冷や汗をかきながら周囲を取り囲むドラゴンを見渡した。
(くっ…!かなり厳しい状況だ…!何かないか!?この状況を打破する方法は!!?このままでは…)
レグルスは歯を食いしばりながら打開策を考えるが、現状を改善できる策は思いつかなかった。
絶望がダイ達に襲い掛かった。
一方、ガルーダが過労で気絶し、墜落したラーハルトたちはバルジ島を目指し、ホルキア大陸を北へ向かって走り続けていた。
「くそっ!バルジ島はまだか!?早くあのお方のもとに行かねば!……おい!ヒュンケル!何している!遅いぞ!早くしろ!」
ラーハルトは後ろを振り向くと遅れてやって来たヒュンケルを急かした。ヒュンケルはラーハルトの隣に到着すると息を切らしながら睨みつけた。
「はぁ…はぁ…お前の足の速さを俺達に求めるな!…クロコダイン!大丈夫か!?」
ヒュンケルは後ろを振り向くとドスドスと走って来たクロコダインに声をかけた。
「ぜぇ!…ぜぇ!…ああ!まだ行けるぞ!」
「これでは時間がかかる…何か方法は…そうだ!クロコダイン!ガルーダが入っている魔法の筒を借りたい!」
「ああ!いいぞ!ガルーダも体力が回復した頃だろう!」
クロコダインから魔法の筒を受け取ったラーハルトは空き地に筒を向けた。
「デルパ!」
「…クワッ」
筒からガルーダが飛び出すと、ガルーダはまた重労働させられるかもと警戒しながらラーハルトを見つめた。ラーハルトはガルーダの探るような視線を無視して魔法の筒をじっと見た後、クロコダインに筒を見せた。
「クロコダイン!頼みがある!この魔法の筒に入ってくれ!」
「な…なんだとぉ!!?しょ…正気か!!?」
クロコダインは口を大きく開け、驚愕した。
「このままでは時間がかかる!クロコダインが筒に入ればガルーダで飛んでいける!ずっと早くつけるはずだ!!!頼む!」
「ま…待て!ガルーダは俺の言う事しか聞かない!俺を筒に入れたらガルーダは連れて行ってくれないぞ!なぁ、ガルーダ!!!」
「クワッ!」
クロコダインの確認に、ガルーダは鳴くことで了承の意を示した。ラーハルトは必死な様子でガルーダを見つめた。
「ガルーダ、選べ!クロコダイン含めて運ぶか…クロコダインを筒に入れ、俺とヒュンケルを運ぶか…さあ、どうだ!!」
「クワッ…?」
ガルーダはクロコダインとラーハルトをキョロキョロ見比べた後、少し考えてから、ラーハルトの方を向いてキリッとした。
「クワワワッ!」
「よし!!!」
「ガ…ガルーダ!!?」
ガルーダが選んだ回答にクロコダインはちょっとショックを受けた。
(こ…このままでは魔法の筒に入れられてしまう!)
焦ったクロコダインは止めてくれそうなヒュンケルに頼み込んだ。
「ぬうっ…ヒュンケル!お前も止めてくれっ…!」
「…クロコダイン、お前には悪いと思うが…マァム達が危険に晒されている可能性がある以上、移動に時間をかけられん!…理解してくれ」
「ヒュンケル…お前もか!…むう…」
クロコダインは少し悩むが、直ぐに気持ちを切り替えると頷いた。
「分かった!…俺を筒に入れろ!ただし…!バルジ島に近づいたら俺を筒から出せ!必ずだ!!」
「クロコダイン!ああ…約束する!入れるぞ…!」
ラーハルトは筒の先をクロコダインに向けた。
「来い!!!」
「イルイル!」
ラーハルトが言葉を唱えるとクロコダインは魔法の筒に吸い込まれ、その場にはラーハルト、ヒュンケル、ガルーダだけとなった。
「クワッ…」
ガルーダはクロコダインがいなくなった事で寂しそうに鳴き、ヒュンケルはガルーダを慰めるためポンポンと翼を優しく叩いた。
「バルジ島に近づいたら出す…少しの辛抱だ」
「行くぞ!早くダイ様達の元へ行かねば!」
「ああ!」
「クワッ!!!」
ラーハルトとヒュンケルがガルーダの足に掴まると、ガルーダは翼をはためかせ、バルジ島目指し飛び立った。
原作では魔王軍総攻撃、と言いつつも現存する全軍団が集まってなかったので、超竜軍団を追加してみました!ドラゴンの軍団が出ると絶望感はかなり高まりますね!
おまけ(ギャグ)
ポップはパーティメンバーであるマァムとエイミとマリンを見渡した。
(いよっしゃああああ!!!このパーティ、サイコーじゃねぇか!!!マァムに賢者の美人姉妹で4人パーティとか!男なら、誰もが夢見るハーレムパーティだ!!!ムフフフッ!!!…これは、あれだな!敵が現れて、俺様がサクッとやっつけると…ポップさん、すごーい!とか…ポップ、頼りにしているわよ!とか言われちゃったりして!!ああ…最高だ!!!…………まずは、パーティの実力を確かめるか!…どっかに、手ごろなモンスターが居ねぇかな…)
「小僧!久しぶりだな!!!」
元魔王ハドラーが現れた!
「てめぇ!ふざけるなよ!!!なんでせっかくのハーレムパーティで、最初に戦う相手が元魔王なんだよ!!!空気読めよ!!!」
「貴様の都合なんぞしるか!!!女とイチャイチャしやがってっ!!!リア充爆発しろ!!!イオナズン!!!」
「ぎゃーーーー!!!」
ポップを中心に大爆発が起こった。
おまけ2(ギャグ)
レオナはパーティメンバーである、ダイ、レグルス、バダック、アポロ、魔法使いを見渡した。
「ふふん!こっちはパーティメンバーで唯一の女性は、姫である私だけ!だから…逆ハーレム状態なのよ!しかもこっちには勇者と王子がいるんだから!姫である私はチヤホヤされるわよね!……………本来なら……」
レオナはジト目でレグルスとダイを見た。
「ダイ、お腹は空いていないか?喉は乾いてないか?怪我はないか?」
「うん!大丈夫だよ!レグ!」
「そうか…何かあれば私に言うのだぞ」
レグルスはダイの頭を優しく撫でた。
「ちょっとそこ!!!なんで姫である私を差し置いて、勇者と王子がイチャイチャしているのよ!!!」
「イチャイチャ…?」
「私にとって、最優先すべきことはダイを守ることだ…それに、私の愛すべき姫は地上でただ一人!……それは、レオナではない」
レグルスはレオナから視線を外すと、ダイの世話を再開した。
「ダイ、疲れているだろう…良かったら仮眠をとるといい。私の膝を枕代わりに使うか?」
「い、いや…眠くないから大丈夫だよ!」
「む~~~っ!!!レグ君、ずるい!!!私もダイ君とイチャイチャする!!!」
レオナは膨れっ面をすると、ダイに駆け寄った。ダイは世話を焼くレグルスとレオナに対し、戸惑っていたが、しばらくすると照れ臭そうに、そして少し嬉しそうに笑った。
※誤字の報告ありがとうございます。内容を一部修正いたしました。