ダイの大冒険 ―次世代の竜の騎士ー   作:キャットテールの鈴

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バルジ島の各地に散らばっていたダイたち一行。ダイとレグルスはレオナ、アポロ、そしてパプニカの魔法使いと合流し、一方、ポップとマァムはエイミとマリンと合流した。しかし、彼らが再会の喜びに浸る間もなく、魔王軍が現れた。魔王軍の総攻撃が始まろうとしている。
あとがきにおまけあり。


34_バルジ島編_魔王軍総攻撃

氷魔塔から少し離れた森では、ポップ、マァム、エイミ、マリンが警戒しながら魔王軍と対峙していた。一方、ポップたちと対峙する魔王軍は、ハドラー、ミストバーン、部下のアークデーモン、そしてさまよう鎧で構成されており、ハドラーは不敵な笑みを浮かべながらポップたちを見つめていた。

 

「クククッ…ダイは居ないようだが…まあ良い!どのみちアバンの使徒はここで全滅するのだ!勇者の前に貴様らで遊んでやる…!」

「こいつが…!こいつが、アバン先生を殺した男…!」

「そうだ…!!…だが、まさか…魔軍司令であるこいつが自らやってくるとはな…!」

「ククッ…目障りな貴様らを一気に叩き潰し!裏切り者も始末する!…つもりでいたのだがな…かかった獲物が小さいんでがっかりした」

「う…うるせぇ!!!獲物が小さいって侮ったこと後悔しろ!!!先生の恨み、てめぇに刻み付けてやる!!!」

「そうよ!許せないわ!!!あの優しかった先生の命を奪ったお前だけは…!!!」

 

マァムはハドラーを睨みつけ、武器を強く握りしめた。

 

「フン!根本的な勘違いをしているようだな小娘よ…」

 

ハドラーは口を大きく開けると、人の死を馬鹿にするような下品な笑い声をあげた。

 

「アバンの命を奪ったのはオレではない!その優しさとかいう低次元なサルにも劣る感情なのだっ!!!クハハハッ!!!」

「っ!!!」

 

マァムはアバンの死を馬鹿にしたハドラーに憤慨し、怒りに震えながら武器を構え、飛びかかろうとした。だが、飛び出そうとしたマァムをポップが腕を伸ばして動きを止めると、笑うハドラーに対し、ポップも馬鹿にしたように笑みを浮かべた。

 

「へっ!ずいぶん余裕ぶっこいているけどよ…先生と戦っている時、あんたに余裕があるようには見えなかったぜ!むしろ…先生にやられないよう、必死で動き回っていたなぁ?」

「…なに?」

 

ハドラーはポップの言葉に笑うのをやめ、眉をひそめた。

 

「接近戦は先生の方が上だったしよ…魔王って言うからどれほどのもんかと思ってたけど、実力は案外大した事ねぇんだな!」

「なんだとぉ!!?」

「今となっては別の魔王の使い魔になっちまったしなぁ〜!部下が居ないと俺たちアバンの使徒ともまともに戦えねぇ…かつての魔王の威厳は地に落ちちまった…そう思うだろ?”元”魔王さんよぉ!!!」

「き…貴様ぁっ!」

 

頬を引きつらせ、激高したハドラーはポップを睨みつけた。

 

「許さんっ!許さんぞっ!!!何が使い魔だ!何が元魔王だ!!!よくもこの俺を侮辱したなぁ!!!アバンの弟子どもは皆殺しだ!!!ミストバーン!貴様らは手を出すな!!!」

 

ミストバーンやアークデーモンなどの部下たちは後方に下がり、ハドラーの戦いを見守った。その様子を見て、ポップはこの状況に希望を見出した。

 

(よし!何とかハドラーとだけ戦うよう仕向けたぞ!!!流石にあいつら全員と戦えば勝ち目はねぇ!…他の奴らが邪魔する前に、ハドラーを倒す!!!)

 

激怒したハドラーから噴き出す殺気にマァム、エイミ、マリンは心臓をバクバクさせながら冷や汗をかいた。しかし、ポップは気にする様子なく、小声で隣のマァムに話しかけた。

 

「マァム、落ち着け…あいつの格闘は先生より大した事ねぇっても、それでもかなりの腕だ!無策で挑むほど甘いやつじゃねえ!!一緒に戦うぞ!」

「…ポップ、貴方すごいわ…ハドラーの殺気にも怖気付かないし…」

「ん?殺気?」

「いつも冷静に考えているし…頼りにしているわ!ポップ!策があるなら教えて!」

「お、おう!(やべぇ…レグの殺気、普段から浴びているせいか…ハドラーの殺気、気にも止めてなかった…レグの殺気おかしいだろ!なんで元魔王よりやばいんだよ!?)」

 

ポップは脳裏に子供の姿を思い浮かべた後、マァムとエイミとマリンに作戦を素早く伝えた。伝え終わるとポップは右手に魔力を溜めながらハドラーを睨みつけた。

 

「行くぞ!イオラ!!!」

 

ポップが魔法を唱えると、イオラの光球がハドラーに向かって放たれた。飛んでくるイオラに対して、ハドラーはニヤッと笑いながら相殺するため同じ呪文を唱えた。

 

「イオラ!」

 

2つのイオラは空中で衝突すると爆発が起こり、煙によって一時的に視界が悪くなった。

 

「フン!この程度の魔法がこの俺に―」

「たあああぁっ!!!」

「ぐっ!なにっ!」

 

ハドラーがポップに向けて魔法を放とうとしたその時、煙からマァムが飛び出すとハドラーに攻撃し、血は流れなかったが腕に怪我を負った。マァムは攻撃後すぐにハドラーから離れ、ハドラーは攻撃してきたマァムを睨みつけながら、握り拳を振り上げて接近した。

 

「小娘が!よくもこの俺に傷を付けたな!!!死ね!」

「「ヒャダルコ!!!」」

 

ハドラーがマァムに接近する前に、エイミとマリンの攻撃によりハドラーは凍りついた。

 

「エイミさん!マリンさん!ありがとう!」

「いいのよ!」

「お互い協力し合いましょ!」

 

動けなくなったハドラーは怒りで顔を歪ませ、エイミとマリンを睨みつけた。

 

「貴様らぁ…!よくもこの俺を!!!先に死にたいか…、ぐほぉっ!」

 

ハドラーの腹部にマァムの武器がめり込んだ。

 

「よそ見している場合!?あの2人の下には行かせないわ!!!」

「マァムさん!ありがとう!」

 

マァムは攻撃後、すぐにハドラーから距離をとった。

 

「この!小娘がぁっ!!!」

 

腹部に攻撃を受け、怒り狂ったハドラーは気合いで氷を壊すと、手に魔力を溜め始めた。

 

「殺す!!!虫ケラの分際でたてついた罪だ!!!消し炭にしてくれる!!!」

「あ…あれは…ベギラマ…!!!」

「俺の高熱地獄で死よりも辛い苦しみを味わうがいい…!!!」

「マァム!避けろ!」

 

ポップは顔色を悪くしてマァムの元へ駆け出し、マァムも攻撃を避けるため走り出したが、ハドラーは見逃さなかった。

 

「逃すかぁっ!!ベギラマ!!!」

 

マァムに向かって高温の熱線が放たれた。

 

「っ…!」

「マァム!!!」

 

ポップは走りながら右手に魔力を溜めた。

 

「俺なら出来る!…俺なら出来るっ!俺が、マァムを守るんだぁあっ!!!ベギラマ!!!」

 

ポップが魔法を唱えると右手からベギラマが発動し、ハドラーのベギラマと衝突した。

 

「な、なにぃ!?」

「ベギラマが…出来た!!!」

「ば…馬鹿な…!!うおおおっ!!!」

 

ポップの魔法とハドラーの衝突するベギラマは、空中で激しく拮抗した。しかし、徐々にポップの魔法が優位に立ち、押し返したポップの魔法が勝利を収めた。

 

「ま…まさか、あんなガキの呪文が俺の魔力を上回るとはぁっ…!!!」

 

火傷により右手を痛めたハドラーはポップとマァムを睨みつけた。その様子を見た部下のアークデーモンが心配そうに近づき、ハドラーに声をかけた。

 

「ハ…ハドラー様!大丈夫ですか!!?」

「ええい!うるさいっ!!」

 

頭にきたハドラーはアークデーモンを八つ当たりで殴りつけた。

 

「ポップ!凄いじゃない!ベギラマ出来るようになったのね!」

「おう!なんか今の俺なら出来そうな気がしたんだよな!」

「助けてくれてありがとう…ポップ、かっこよかったわよ!」

「お、おう!!!」

 

笑顔を浮かべて感謝を述べるマァムと照れ笑いを浮かべるポップを見たハドラーは額に青筋を立て、両手に魔力を溜め始めた。

 

「殺す!!!貴様らは必ず殺す!!!骨の一片も残らないよう消し炭にしてくれる!!!」

「あ…あの呪文は!」

「まさか…!」

「や…やべえ!」

 

ハドラーの両手から火柱が上がり、アーチ状の形を作ったのを見たエイミとマリンは青ざめ、ポップも焦りながら指示を出した。

 

「エイミさん!マリンさん!ヒャダルコで相殺するぞ!」

「「分かったわ!」」

「思い知るがいい!上には上がいることをな…!!ベギラゴン!!!」

「「「ヒャダルコ!!!」」」

 

ポップとエイミ、マリンは氷の呪文を唱え、一方のハドラーは炎の呪文を放った。呪文は空中で衝突し、魔法がぶつかり合う場所では白く光り輝きながらパチパチと音が鳴り響いた。

 

「ぐ、ぐぐぐっ!!!」

「ば…馬鹿な!ベギラゴンを…抑えるだと…!!?お、おのれぇ!!!」

 

周囲には風が吹き荒れ、草木も風により大きく揺れると葉っぱの一枚が呪文の衝突場所に落ち、そして、一瞬で消滅した。

 

(今…葉っぱが燃えるでもなく、凍るのでもなく…消えた?)

 

葉っぱが一瞬で消えるのを見て、ポップは疑問を抱いたが、すぐに気持ちを切り替えて魔法を出すことに集中した。

 

 

 

炎魔塔から少し離れた海岸では、超竜軍団と妖魔士団の猛攻が続き、ダイたちはピンチに陥っていた。

 

「キ〜ヒヒヒッ!ほれほれ、逃げろ逃げろ〜!ベギラマ!」

「はぁ…!はぁ…!避けてぇ!」

 

ザボエラの攻撃に気づいたレオナが声を上げ、全員が慌てて避けたところ、先ほどまでいた場所に熱線が通り過ぎた。炎が収まると浜辺が焼け、砂の一部はガラスに変わり、煙が上がった。

 

「海波斬!」

「ぎょえええっ!!!」

 

ダイがザボエラに向けて技を繰り出すが、ザボエラはすぐさまドラゴンの巨大な体の陰に身を潜め、ダイの攻撃を巧みにかわした。ダイの斬撃はドラゴンに当たったが、その鋼鉄のような皮膚には傷一つつかなかった。

 

「くそっ!!!」

「キ〜ッヒッヒッヒッ!残念じゃったの!!!」

 

ドラゴンの背後から、ザボエラが馬鹿にするような笑顔で顔をのぞかせ、ダイが悔しそうに顔をゆがめると、ザボエラは可笑しそうに笑った。

 

「少し危険だが…やるしかない!」

 

レグルスがザボエラの前に立つドラゴンに指先を向けると魔法を唱えた。

 

「メタパニ!!!」

「グゥウ!!?」

 

ザボエラの前に立つドラゴンは混乱した。

 

「キ〜ッヒッヒッヒッ!お前達に勝機はな―」

「グルルルル!!!」

「ヒョッ?…ぎょええええ!!!」

 

混乱したドラゴンは腕を振り上げ、ザボエラに攻撃した。慌てたザボエラが頭を下げると、頭上を巨大な爪が通り過ぎた。

 

「ヒィッ!な…なにするんじゃ!」

「グルルルッ!」

「ぎょええええ!!!」

 

混乱したドラゴンがザボエラを追いかけ、ザボエラは悲鳴を上げてその場から離れた。ザボエラが逃げ出したのを見たレオナはこのチャンスを生かすため、ドラゴンに対して魔法を唱えようとした。

 

「はあ!はあ!今よ!ヒャダルコ!」

「「ヒャダルコ!」」

 

レオナ、アポロ、そして魔法使いはドラゴンに対して魔法を唱えたが、上空にいたガルダンディーはニヤリと笑うとドラゴンに指示を出した。

 

「ドラゴン共!!!奴らを丸焼きにしろ!!!」

「グオオオォッ!!!」

 

上司の指示を受けた5匹のドラゴンが口から炎を吐き出し、ダイたちに向かってブレス攻撃を仕掛けた。

 

「そんな…!ヒャダルコが…!」

 

レオナたちが発動した氷の魔法は一瞬で溶け、ドラゴンが放った多少威力の弱まった巨大な炎の塊がレオナたちの目前に迫っていた。

 

「海波斬!!!」

「真空海波斬!!!」

「フバーハ!!!」

 

ダイとレグルスがドラゴンのブレス攻撃を斬撃で切り裂き、アポロがドーム型のバリアで味方を守ったおかげで、ダイたちはダメージを受けずに済んだ。

 

「グオオオッ!!!」

 

炎が収まると、別のドラゴンがすかさず腕を振り上げ、ダイたちに向けて攻撃した。

 

「避けて!!!」

 

ダイの警告により、一撃目の爪を使った攻撃は全員が避けきったが、その直後に繰り出された尻尾攻撃にレオナ、アポロ、そして魔法使いは避けきれず、その攻撃を受けてしまった。

 

「きゃああぁっ!!!」

「うああぁあっ!!!」

 

巨大な尻尾ではたかれたレオナ、アポロ、魔法使いは大きく吹き飛ばされ、地面に落ち、動かなくなった。

 

「ああっ!そんな…レオナ!みんな!!!」

「ダイ!集中しろ!次の攻撃が来るぞ!」

「グオオオ!!!」

「ぐっ!!!」

 

複数のドラゴンが腕で、尻尾で、連続で攻撃するのをダイとレグルスは息つく暇もなく必死で避けた。ガルダンディーはルードの上から、必死でドラゴンの攻撃を避けるダイとレグルスをニヤニヤ笑いながら見下ろした。

 

「ほれほれ!逃げろ〜逃げろ〜ドラゴンに食われちまうぞ?ハハハッ!」

 

ダイとレグルスは続くドラゴンの連続攻撃をすべて避けきると、少し距離をあけてドラゴンたちと対峙した。

 

「ドラゴンの攻撃を全部避けるなんてやるねぇ!だが…味方はどうかな?」

「レオナ…!目を覚まして!」

 

ダイの呼びかけにレオナは反応しなかった。

 

「あ〜ららっ?お仲間はやられちまったようだなぁ?クククッ!テメェらに勝ち目はねぇ…仲良くドラゴンの餌にしてやるよ!クハハハッ!」

「くっ!」

 

敵のドラゴンはほとんど無傷、ガルダンディーとルードは上空で高みの見物、あくま神官たちも万全の状態でいつでも攻撃できるよう構えていた。一方、ダイとレグルスはダメージを負っていないが、攻撃を受けたレオナたち3人は気絶し倒れており、レオナを見たダイは不利な状況に動揺し、レグルスも顔を険しくさせた。

 

「なんとか…なんとかしないと!!!」

(ぐっ…!まずい状況だ!……このままでは…全滅する!!!……せめて、ダイだけでも逃さなければ…!)

「!!!レオナ!!!」

 

倒れ伏しているレオナに1匹のドラゴンが近づくのを見たダイは、すぐさま走り出すと跳躍し、ドラゴンの顔面に技を繰り出した。

 

「レオナに近づくなっ!!!大地斬!!!」

「グオッ!」

 

剣はドラゴンの顔面を斬りつけたが、ドラゴンの皮膚は硬く、鼻先に傷を付けただけに終わった。

 

(くっ…硬い!)

 

攻撃によりドラゴンは一瞬怯み、レオナからダイに標的を変え睨みつけると、巨大な腕を振り下ろしてダイに攻撃した。

 

「グオオオォッ!!!」

 

ダイは剣を構えてドラゴンの攻撃を受けとめた。

 

「ぐっ…!ぐうううっ!」

 

ドラゴンの腕を受けとめたダイは歯を食いしばりながら剣を抑えるが、ドラゴンの力は強く、ダイの体は少しずつ砂の中に押し込まれていった。

 

「ぐっ…!ぎっ…!!」

「ダイッ!!!」

 

レグルスはダイの危機に焦りながら駆け出したが、進行方向にドラゴンが立ちはだかり、攻撃を仕掛けてきたため足を止めざるを得なくなった。

 

「おのれぇ!」

「グオオオッ!!!」

 

レグルスはドラゴンの腕を振り下ろす攻撃を紙一重でかわした後、攻撃の隙をついて、ドラゴンの口の中へ爆炎をまとった剣で攻撃した。

 

「どけええええっ!!!爆裂大地斬ッ!!!」

「グオッ!!?」

 

レグルスの攻撃によりドラゴンの口の中が爆発し、ドラゴンは口から煙を吹き出して気絶した。レグルスはドラゴンが倒れる前に駆け出し、ダイの元へ向かおうとしたが、再び妨害に遭った。

 

「ザラキ!!!」

 

魔法を放って攻撃したのはドラゴンに追いかけられていたはずのザボエラであった。離脱していたザボエラは戻ってきており、ダイの元へ向かおうとしたレグルスに死の言葉を浴びせた。

 

「ぜぇ…ぜぇ…よくもこのワシをこけにしてくれたのう!ヒヒヒッ!これは冥土からお前を誘う死の言葉!その声に負けた時…お前の命は尽き―」

「邪魔をするなあぁっ!!!海波斬!!!」

 

レグルスは妨害してきたザボエラに対して殺気を込め睨みつけると、斬撃を飛ばした。

 

「ぎょえええっ!」

 

頭を下げ、ギリギリで攻撃を避けたザボエラは殺気に当てられたことで怖気づき、さらに魔法が効いてない様子のレグルスに冷や汗をかいた。

 

「な、なんでじゃ!?ザラキが、効いてない…じゃと!!?」

 

焦ったザボエラはあくま神官達に指示を出した。

 

「お、お前たち何しておる!早くあやつを攻撃するんじゃっ!!!」

『はっ!イオラ!!!』

 

ザボエラの指示であくま神官達は一斉に魔法を唱え、レグルスを攻撃した。

 

「先ほど私が防いだことを忘れたか!!!真空海波斬!!!」

 

レグルスは風をまとった複数の斬撃で魔法を切り裂き、さらに敵を攻撃するため連続で技を繰り出した。

 

「真空海波斬!!!」

「ぎょええええ!!!」

 

ザボエラが慌てて地面に伏せると、複数の斬撃は後ろにいたあくま神官達を切りつけた。あくま神官の裂傷から血が噴き出し、うつ伏せになっているザボエラの体に降り注いだ。

 

「ひ…ヒィッ!」

 

部下の血を浴びたザボエラは、冷や汗をかきながら鼻水を垂らし、数体のあくま神官は血を流しながら地面に倒れた。

 

「ぐ…ぐぐぐっ…!!!レ…レオナ!」

 

ドラゴンの攻撃を防いでいるダイは倒れ伏しているレオナに視線を向けると、レオナの瞼が震え、意識を取り戻すところであった。目を開けたレオナはダイに視線を向け、弱々しい声を出した。

 

「ダ…ダイ君…」

 

意識を取り戻したが、レオナには戦うだけの体力も、起き上がるだけの体力も残っておらず、地面に倒れ伏したまま弱々しくダイを見つめていた。そのとき、別のドラゴンがレオナに近づいていった。

 

「や…やめろぉ!レオナに…近づくなぁ!!!」

 

ダイの悲痛な叫びが辺りに響き渡ったが、ドラゴンは足を止めず、様子を見ていたガルダンディーは腹を抱えて笑い、ドラゴンに指示を出した。

 

「クハハハッ!!!やめろって言われて、やめるやつが何処にいる!?やれ!ドラゴン!勇者の前でお姫様を血祭りに上げろ!!!」

 

ドラゴンはレオナの側に移動し、口を大きく開けて噛みつこうとした。

 

「ぐ…ぐぐっ…!」

「!!?」

 

ダイを押さえつけていたドラゴンは、押し返される力が徐々に強くなるのを感じたため、驚愕して相手をじっと見つめた。その時、ドラゴンの視線の先で、ダイの額が徐々に青く輝きだした。

 

「うおおおおっ!!!」

「グオッ!!?」

 

ダイが剣を力強く押し返すと、ドラゴンはよろめきながら後ろに下がった。

 

「たああああっ!!!」

 

足に力を込めて跳躍したダイは一気にドラゴンに距離を詰め、腕に闘気を込めると、目の前にいるドラゴンを思いっきり殴りつけた。

 

「グオオオッ!!?」

 

殴りつけられたドラゴンは勢いよく吹っ飛び、レオナを捕食しようとしたドラゴンに激突するとそのままの勢いで森に突っ込み、2匹のドラゴンは木々をなぎ倒しながら森の奥に消えていった。

 

「………………はっ?」

 

一部始終を見ていたガルダンディーは何が起きたか理解できず、唖然とくちばしを開け、ドラゴンが消えた森を見つめた。

 

「ひょええええっ!こ、今度はなんじゃ!!?」

 

頭を低くしてレグルスから少しでも離れようと場所を移動していたザボエラは、巨大なドラゴンが森に吹き飛ばされたことに驚愕の叫び声をあげた。ザボエラはドラゴンを吹き飛ばしたダイの額を見て、以前ロモスでクロコダインと戦った際に見せた額の輝きと同じものを見ると、鼻水を垂らした。

 

「あ…あれは!あの紋章は…クロコダインと戦った時に見せた…!あれのせいで、クロコダインは負けたのじゃ!!!いったい…あれは何なのじゃ!!?」

 

レグルスはダイの額に浮かび上がる紋章とその青い輝きを見て、故郷に伝わる伝承を思い出し、驚きと動揺が混じる表情を浮かべた。一方で、その光景には心が揺さぶられた。

 

「あれは…竜の紋章!…竜の騎士だけが持つ…神々の力……ぐっ!!?」

 

竜の紋章を見ていたところ、突然、額が痛み出したことで、レグルスは手で額を抑え、苦痛に顔をしかめた。

 

(っ…!なんだ…?急に頭痛が…こんな時に…!)

「レグ!今のうちにレオナを!こいつらは…俺がやっつける!!!」

「あ、ああ!分かった、レオナ達は任せろ!」

 

ダイの指示を受けたレグルスは、戦いに支障が出るほどの痛みではなかったため、頭を振って痛みを無視し、倒れているレオナたちに向かって駆け出した。上空ではガルダンディーがルードの上で混乱し、喚いていた。

 

「くそっ!くそっ!くそっ!いったい何が起こってやがる!!?なんで急に勇者は強くなりやがった!!?ドラゴンが吹っ飛ぶなんて…おかしいだろうがぁ!!!くそっ!ドラゴン共!!!勇者に攻撃しろ!!!全員でかかれぇ!!!」

 

混乱し、怒りと恐怖を感じたガルダンディーは頭の羽をグシャグシャにすると、すべてのドラゴンにダイを攻撃するよう大声で指示した。

 

「グオオオオオッ!!!」

 

命令を受けたドラゴンはダイを睨みつけ、一斉に攻撃を仕掛けた。

 

「来い!俺が相手だ!!!」

 

額に竜の紋章を浮かび上がらせたダイが、ドラゴンの群れと対峙した。

 

 

 

ホルキア大陸北部の切り立った岸壁に位置する横穴に住む大魔道士マトリフは、海を隔てた対岸にあるバルジ島の様子を静かにうかがっていた。

 

「いったい、あの島で何が起きていやがる…」

 

バルジ島には元々中央に塔がそびえ立っていたが、その塔とは別に、炎の塔と氷の塔が新たに出現したことでマトリフはその塔が禁呪法で作られた可能性を疑った。

 

「あの塔は禁呪法で作られているな…なら、あの島に居るのは魔王軍か…フン、魔王軍が居たとしても、どうでもいい…俺には関係ないね…」

「デルパァ!」

「ん?」

 

普段人気のない崖の上から声が聞こえたことで、マトリフは上の様子を窺うと、そこには人間、魔族、獣人族、そしてガルーダが集まっているのを目撃した。驚いたマトリフは見つからないよう岩の後ろに隠れると、警戒しながら話を盗み聞きした。

 

「移動するためとはいえ…筒に入れてすまなかったな」

「プハァ!大丈夫だ!筒の中は思ったより快適だったぞ!」

「そうか、それはよかったな」

「クワッ!クワッ!」

(なんだ、あいつらは…人間と魔族と獣人族が一緒とか、どういう組み合わせだ?まさか…魔王軍の仲間か?)

 

崖の上にいる3者と1羽は、崖下にいるマトリフに気づいた様子はなく、バルジ島を見ながら慌てているようだった。

 

「急ぐぞ!あの様子では、すでに戦闘は始まっている!」

「おう!あの塔に見覚えがあるぞ!フレイザードが作り出したものだ!奴が島にいるのは間違いない!」

「奴だけとは限らん…悪魔の目玉に我らのことは見られているからな…ほかの軍団長がいる可能性もある!マァム達が危ない!」

(…マァム?)

「行くぞ!!!あの一帯の森が光っている!!!そこに向かう!!!」

「クワッ!!!」

 

ガルーダは3者を足で捕まえると、切り立った崖を飛び出し、氷の塔近くの森目指して飛んで行った。

 

「マァムって…もしかして、あのマァムか?……ロカ…レイラ」

 

マトリフはガルーダ一行の後姿を見つめながら、かつて共に旅した仲間とその娘の姿を思い浮かべた。少し迷った後、マトリフは装備品を取りに洞窟内に入った。




ダイ君の紋章は、レオナを助ける時に輝きますよね!
そして、その竜の紋章を主人公が見つめるという…。

ちなみに、ポップが強敵にビビらないのは、レグルスが訓練中、気づかれないように少しずつ殺気を上げていった結果です。レグルスはポップが恐怖心から動けなくなることを危惧し、訓練を通じて殺気に慣れさせました。竜の騎士の殺気は作中トップですから、これほど恐怖心を鍛えるのに適した相手はいないでしょう!ちなみに、アバン先生とラーハルトも同様のことが言えます。


おまけ(過去、修行中の出来事)
ポップは訓練を通じて、レグルスの殺気に慣れたころ。森の中でライオンヘッドと遭遇した。

「お~よしよし!」
「グ、グルルル…」

ポップはニコニコ笑いながらライオンヘッドの毛並みを撫でた。

「はははっ!なんかこうやって触っていると、結構かわいいもんだな!」
「グルルル……ニャ…ニャーン…」
「ポップ!流石にもう少し警戒したほうが良いですよ!」
「あいつ…以前なら真っ先に逃げていたのにな…」

アバンとラーハルトはライオンヘッドを撫でているポップを少し心配しながら見ていた。レグルスは警戒心がない様子のポップを見ながら、内心、冷や汗をかいていた。

(ポップに良かれと思い、殺気に慣れる訓練をしたが…やりすぎたか?流石に警戒心がなさすぎる…今後は、少し殺気を抑えるか)
「……………ニャーン…」

ライオンヘッドは頭を下げ、ポップにたてがみを撫でられていたが、その目線はびくびくしながらもレグルスを見上げていた。
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