ダイの大冒険 ―次世代の竜の騎士ー   作:キャットテールの鈴

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バルジ島にて、ダイたちとポップたちはそれぞれ魔王軍の攻撃を受けていた。ポップたちはハドラーと激しい魔法戦を繰り広げ、一方のダイは額に竜の紋章を輝かせ、ドラゴンの群れと対峙していた。


35_バルジ島編_集う者たち

氷の塔近くの森では、ポップ、エイミ、マリンのヒャダルコとハドラーのベギラゴンが激突し、強風が吹き荒れる壮絶な戦いが繰り広げられていた。

 

「うおおおっ…!」

「この…虫けらがぁっ!!!よくも俺のベギラゴンを…!」

 

ハドラーは自身が誇る最強の呪文、ベギラゴンでポップたちを仕留められないことに激怒していた。一方、マァムは魔弾銃に弾を装填し、魔法が激突し白く輝いている場所に向けてトリガーを引いた。

 

(ヒャダルコ!!!)

「な…なにっ!!?」

 

魔弾銃から発射されたのはヒャダルコだった。元々拮抗していたところに、魔弾銃の魔法が追加されたことで均衡が崩れ、ポップたちの魔法が一気に優勢となった。

 

「ぐ、ぐうううう!!!」

 

ハドラーはベギラゴンをかけ続けるが、ヒャダルコの冷気が一気に迫ってくると、指先から徐々に凍り付いていった。

 

「い…いける!」

「このままハドラーを氷漬けにする!!!」

 

指先から徐々に凍りついていくハドラーを見たポップたちは、勝てるかもしれないと希望を見出した。

 

「お…おのれっ!!!」

 

指先に付いた氷が徐々に腕にまで広がるのを見たハドラーは、かつてアバンに封印された忌々しい記憶を思い出し、背筋をゾッとさせた。

 

「認めん…認めんぞ!たかが人間如きが…!この俺を上回るなぞ!!!断じて認めん!!!」

 

後方で待機していたアークデーモンたちはハドラーが凍り付いていくのを焦りながら見守っていた。

 

「ま、まずいぞ!このままではハドラー様が…!」

 

ハドラーは指先から徐々に凍り付き、体の半分が凍る頃、後方で傍観していたミストバーンがついに動き出した。

 

「…」

 

ミストバーンは手のひらをマリンに向けると、衝撃波を放ち、呪文を唱えていたマリンを吹き飛ばした。

 

「きゃあああああ!!!」

「ね…姉さん!!!」

 

吹き飛ばされたマリンは背中を木の幹に叩きつけられ、気絶してその場に崩れ落ちた。

 

「な、なんだ!今のは!!?」

「まさか、掌圧!?」

「…」

 

ミストバーンはエイミに人差し指を向け、鋭い爪を高速で伸ばして首に巻き付けると、エイミの体を持ち上げた。

 

「!!……あ……ぐっ…!」

「エイミさん!!!」

「や、やろう!!!」

 

エイミは苦しみながら首に巻き付いた爪を外そうとしたが、ミストバーンの爪はびくともしなかった。ハドラーは体を動かす事で自身についた氷を砕き、後ろを振り向くとミストバーンを睨みつけた。

 

「ぐっ…ミストバーン、余計な真似を!」

「…」

「まあいい…邪魔者が消えた以上、これで貴様らは消し炭だ!!!」

「や、やべえ!!!」

 

マリンとエイミの呪文が途切れたことで、ハドラーのベギラゴンは勢いを増し、一気に冷気を押し返し始めた。

 

「ぐぐぐっ!…ヒャ、ヒャダイン!!!」

(ヒャダルコ!)

 

ポップはヒャダルコより一つ上のヒャダインを繰り出し、マァムは魔弾銃で追加の魔法を放った。

 

「なにぃ!この土壇場で呪文のランクを上げた…だと!?」

「に、人間追い詰められれば…新しい呪文の一つや二つ…いけるもんだな!」

「ぬかせ!」

 

呪文は拮抗していたが、マァムは最後のヒャダルコの弾を使った事で顔を曇らせ、ポップに小声で話しかけた。

 

「ポップ…今のが最後のヒャダルコよ…」

「2発分しか用意してなかったからな…こんな事ならたくさん用意しておけば良かったぜ…マァム、お前は逃げろ…俺のヒャダインじゃ、ベギラゴンを防ぐのは無理だ…ハドラーは何とかギリギリまで引きつけておくからよ…出来ればマリンさんを拾って―」

「そんなの嫌よ!!!一緒にいるわ!!!」

「マァム!頼む!このままじゃ、全滅しちまう!お前は逃げるんだ!!!」

「でも…!」

 

マァムはハドラーを睨みつけ、ある決心をすると、目元は泣きそうな表情を浮かべながらも笑みをポップに向けた。その笑顔を見たポップは嫌な予感がして、冷や汗をかいた。

 

「…マァム?おい…何考えている?」

「ポップ…あなたを1人にさせないわ!ハドラーを攻撃して、呪文を止める!私が…何とかして見せる!」

「や、やめろ!お前1人だとやられるだけだ!!!」

「どのみち、このままじゃ全滅よ!…ポップ、後はお願いね!」

「待て!行くな…!マァム!」

 

マァムは武器を構えて駆け出し、呪文を避けながらハドラーの側面に回った。

 

「バカめ!貴様の動きは筒抜けだ!」

 

ハドラーはマァムの動きに気づいており、ニヤリと笑いながら呪文の対象をポップからマァムに変更した。

 

「っ…!!!」

「や、やめろおおおっ!!!」

 

マァムの視界いっぱいに灼熱の炎が迫っていた。

 

「焼け死ねぇ!!!ハーッハハハ―」

「海波斬!!!」

 

マァムとベギラゴンの延長線上に上空から鎧をまとった人物が落下した。その人物はハドラーの呪文を切り裂き、さらにその身で炎からマァムを守った。

 

「ハーッハハハ……何っ!!?」

「ブラッディースクライド!!!」

「…!!」

 

さらに、その人物はミストバーンに向かって技を放ち、エイミを宙吊りにしていた爪を切断した。爪から解放されたエイミは地面に転がり、咳き込みながら息を吸った。

 

「…ゴホッ!ゴホッ!!…はぁ…!はぁ…!」

「エイミさん!よかった!」

 

マァムはエイミが呼吸をしていることを確認し、安心すると、自身を助けてくれた人物に笑顔を向けた。

 

「ヒュンケル!!」

 

魔剣の鎧をまとったヒュンケルは振り向いてマァムに小さく頷いた。

 

「マァム、危ない所だったな」

「ええ!おかげで助かったわ!」

 

ハドラーは歯を剥き出しにして、妨害したかつての軍団長を睨みつけた。

 

「ヒュンケル!!!この…裏切り者がぁっ!!!」

「…」

 

ヒュンケルはマァムに怪我がないのを確認した後、ハドラーを睨みつけ、魔剣を構えた。ポップはマァムが無事だったことに安心しつつ、仲良さげな2人を見て少しムッとした後、ヒュンケルに向かって大声を上げた。

 

「ヒュンケル!おめぇ、遅いぞ!何処で油を売ってやがった!!!」

「遅いか…これでも、急いで走ったのだかな…」

「えっ?…走って?」

「おめぇ…まさか、ここまで走って来たのか!!?」

「途中まではな」

「そうだ!ラーハルトのやつはどこ―」

 

ポップの発言を遮るように、離れた場所から大きな音が響いた事でその場にいた全員が音の発生源の方へ向いた。

 

「あ…あれは!」

「ば…馬鹿な!氷魔塔が…崩れる!!!」

 

大きな音の正体は禁呪法で作り出された氷魔塔がバラバラになりながら崩れ落ちる音であった。ハドラーは巨大な塔が崩れ去る様子を唖然と眺めた。

 

「ラーハルトならあそこにいる」

 

ヒュンケルは崩れ落ちる塔を見ながら答えた。

 

「おー…分かりやすいな…」

 

ポップ達は塔が崩れるのを眺め、少し時間が経った頃、ハドラーの部下たちが苦しみながら倒れ出した。

 

「うがぁ!」

「ぐううっ!」

「…!」

 

ハドラーの部下であるアークデーモンは悲鳴を上げると倒れ、ミストバーンの部下であるさまよう鎧は大きな音を立てて崩れ、地面に転がって動かなくなった。

 

「な…なんだ!何が起きている!!?」

「…!」

 

ハドラーとミストバーンは部下達が倒れた原因が分からず、警戒しながら周囲を見渡した。

 

「敵が…倒れていく…!」

「敵に見つからず、倒すやつなんか限られるな…」

「ポップ!マァム!無事のようだな!」

「うおっ!」

 

ラーハルトはポップの横に姿を現すと、2人に怪我がないことを確認し、笑顔を浮かべた。ポップは突然のラーハルトの出現に驚いて仰け反った。

 

「い、いきなり出てくるなよ!…おめー、相変わらずはえーな」

「足の速さには誰にも負けん自信がある!…ところで、あの方とダイ様はどちらに?」

 

ラーハルトがレグルスとダイの姿がないことに疑問を持ちながら問うと、ポップは首を横に振った。

 

「分からねぇ…俺たちは逃げる途中、気球を襲われてバラバラになっちまったんだ…この島のどっかにはいると思うけどよ…」

「そうか…」

 

ラーハルトはレグルスとダイが行方不明と聞き落ち込んだが、すぐに気持ちを切り替え、ハドラーとミストバーンを睨みつけた。ヒュンケルは周囲に視線をやり、クロコダインの姿が見えないことに気付くと疑問を口にした。

 

「ラーハルト、クロコダインはどうした?」

「離れた場所で戦いが起こっていたようでな…クロコダインはそちらに向かった!」

「じゃあ!もしかして…ダイとレグは…!」

「そこにいるかもしれんな」

「ポップ!マァム!お前達は怪我人を連れてここから離れ、ダイ様の元へ…炎の塔の方角へ向え!こいつらは俺とヒュンケルで相手をする!!!」

「ま、待てよ!ラーハルト!相手はかつての魔王ハドラーだ!流石のおめーでも…」

「黙って貴様らを見逃すと思うか!!」

 

部下を倒され、氷魔塔も壊され、怒り心頭に発したハドラーは、両手に魔力を溜め、ラーハルト達を睨みつけた。

 

「全員まとめて…始末してくれる!!!」

「ま、まずい!あの呪文は―」

「苦しみながら死ぬがいい!!!ベギラゴン!!!」

 

ハドラーが呪文を唱えると、巨大な炎がポップ達に迫ったが、ラーハルトは槍を、ヒュンケルは魔剣を構え、それぞれの技を繰り出した。

 

「海鳴閃!!!」

「海波斬!!!」

 

2人の技は巨大な炎を切り裂いた。ハドラーは自分の最大呪文が容易く防がれたことに驚愕し、目を見開いた。

 

「な、なにぃ!!?」

「流石の俺でも…何だ?」

 

構えを解いたラーハルトは、ポップに向かって得意げにニヤリと笑みを浮かべた。

 

「…分かったよ、俺たちはダイ達の元へ向かう!ここは任せた!マァム、行くぞ!」

「ええ…」

 

マァムは心配そうにヒュンケルに視線を向けると、ヒュンケルは彼女を安心させるため小さく笑った。

 

「マァム…俺とラーハルトなら大丈夫だ」

「ヒュンケル…分かったわ!ポップ!行きましょう!」

「おう!」

 

ポップとマァムは、動けないエイミと気絶しているマリンを抱え、その場から離脱した。

 

「我らもこいつらを倒し、ダイ様の元へ向かうぞ!!!」

「…油断するな、ラーハルト。相手はハドラーと魔影軍団長ミストバーン…簡単に倒せる敵ではない」

 

ラーハルトとヒュンケルは武器を構え、並び立つと相手を睨みつけた。

 

「若造がぁ…!魔王軍を舐めるなよぉ…!!!貴様らを始末し、アバンの使徒共は皆殺しだ!!!ミストバーン!貴様も協力しろ!!!」

「…」

 

魔軍司令ハドラーの呼びかけに応えて、宙に浮いていた魔影軍団長ミストバーンは地面に降り立ち、ハドラーの横に並んだ。

 

 

 

ポップとマァムは、動けないエイミと気絶しているマリンを森の中に運び、エイミに回復魔法をかけた。

 

「ベホイミ!」

 

マァムの回復魔法により、エイミの表情が和らいだ。

 

「エイミさん、大丈夫か?」

「…ええ、ありがとう…先程、私達を助けてくれた人達は…?」

「2人は味方よ!鎧を着ていた方がヒュンケル。もう1人はラーハルトっていうのよ!」

「その…ラーハルトっていう人は、魔族のように見えたけど…?」

「テラン兵士のラーハルト…って言えば分かるか?あいつは俺達と同じでアバン先生の弟子なんだ!」

「…!テランって…ええ、知っているわ!まさか、彼がパプニカの為に動いてくれるなんて……マァムさん、ありがとう…ここまでしてもらえば大丈夫よ!2人は姫様を助けに行って!私は姉さんの治療を行うわ!」

「分かった!俺達は炎魔塔の方に向かうぜ!マァム、行こう!」

「ええ!」

 

ポップとマァムはその場を離れ、炎魔塔に向かって駆け出した。

 

「2人とも気をつけて!!!」

 

エイミはマリンの治療を行いながら、2人の背中を見送った。

 

「くそ〜っ、結界を避けなちゃいけねぇのが面倒くせぇな」

 

結界を避けるために、海岸近くの森を炎魔塔に向かってポップとマァムは走っていた。

 

「ホントね!ダイ達を助けて、炎魔塔も破壊しましょ!」

「おう!…マァム、さっきヒャダルコ使っちまっただろ?補充するから弾丸をくれ!」

「はい!お願いね!」

「任せろ!ヒャダイン!!!」

 

ポップは移動しながら弾に呪文を込めた。呪文の詰め込みが終わり、2人が並んで走っているその時、結界の内側、森の奥からポップ達に向かって魔法が唱えられた。

 

「ベギラマ!!!」

「っ!!!ベギラマ!!!」

 

飛んできた魔法をポップは同じ魔法で相殺した。

 

「クカカカッ!やっと見つけたぜ!」

「お、お前は!」

「フレイザード!!!」

 

森の奥からフレイザードが現れると、ポップとマァムに向けてニヤリと笑みを浮かべた。

 

「探しても見つかんねぇからよお…俺もハドラー様の所に行こうとしてたんだぜぇ?ここを通ってくれて助かったよ…カカカッ」

 

フレイザードは小さく笑った後、表情を凶悪に歪め、ポップ達をギッと睨みつけた。

 

「よくもこの俺を手こずらせてくれたなぁ!!!テメェらを始末し!勇者のやつも俺が始末してやる!!!」

「…ポップ!」

「ああ、やるしかねぇ!ここで…フレイザードを倒すぞ!」

「ええ!」

 

ポップとマァムは武器を構え、フレイザードと対峙した。

 

 

 

森の中で、バダックは気絶したパプニカ兵士を1人で運び、大きな岩の後ろに回ると、その岩影に隠れた。そして、その後ろから足を引きずる兵士も同じように岩陰に身を隠した。

 

「ふぅー、ここなら見つからんじゃろう」

「姫様は無事だろうか…」

「大丈夫じゃ!勇者であるダイ君が必ず姫様を救ってくださる!!!不死騎団を倒したダイ君を信じるんじゃ!」

「はい!」

 

バダックと怪我をした兵士はお互いに笑顔を浮かべていたが、突然木々が薙ぎ倒される大きな音が響いたため、バダックたちは大いに驚いた。

 

「ぎょええええ〜っ!!!」

「い、今の音はなんだ!!?」

 

バダックと兵士はそっと岩陰から顔を出して様子を伺うと、木々が倒れている中、地面に2匹のドラゴンが倒れているのが見えた。

 

(あ…あれは、ドラゴン!!!)

 

2匹のドラゴンはふらつきながら立ち上がり、海岸に向かって歩き出したが、そのうちの1匹のドラゴンが鼻を鳴らし、周囲の臭いを嗅いだ。そして、バダック達が隠れている岩を睨みつけた。

 

「グルルルッ!!!」

「こ…こっちに気付いた!」

 

ドラゴンはバダックたちが隠れている岩に向かって走り出した。バダックは後ろを振り返り、怪我をした兵士と気絶している兵士を見ると、岩陰から飛び出した。

 

「こ…こっちじゃあああっ!!!」

「バ…バダック!!?」

「わ、ワシがドラゴンをひきつける!!!お主は隠れておるんじゃあ!!!」

 

バダックはドラゴンの視線の先に出ると、海岸へ向かって全速力で駆け出した。ドラゴンは歯をむき出しにし、怒りながらバダックの後を追いかけた。

 

「ぎょええええっ!!!」

「グオオオッ!!!」

 

バダックは恐怖を感じながらドラゴンから逃げるために必死で走っていたため、気づかないうちに、ダイたちがいる海岸とは別の方向に向かっており、逃げる先には炎魔塔がそびえ立っていた。

 

「はぁ!はぁ!はぁ!こ、ここは何処じゃ!だ、誰もおらん!!!」

 

森を抜けると、そこは炎魔塔の近くの海岸で、周囲に味方が誰もいない事に気付いたバダックは顔を青ざめ、後ろを振り返った。森から後を追っていたドラゴンが現れ、バダックを凶暴な目つきで睨みつけると、歯を剥き出しにして唸り声を上げた。

 

「グルルル!!!」

「こ…こうなれば!」

 

バダックは冷や汗をかきながらも、剣を抜いた。

 

「パプニカ一刀流の技の冴え!ひ、久々に見せてやるわぁ!!!どええええっ!!!」

「グオオオッ!!!」

 

剣を振り上げ、大声を上げながら、バダックはドラゴンに向かって突進し、ドラゴンはバダックが到着するタイミングで腕を振り下し、切り裂こうとした。

 

「うおおおおおっ!!!」

 

ドラゴンの爪がバダックに触れようとしたその瞬間、上空から落下してきた人物により、巨大な斧がドラゴンの首に向かって振り下ろされた。斧の一撃でドラゴンの首は切断、巨大な首は地面に転がった。

 

「ぎょえええっ!ド、ドラゴンの首が…取れたぁ!!!」

「じいさん!危ない所だったな!」

「お…お主は…クロコダイン!!!」

 

バダックは上空から現れ、ドラゴンを倒した人物であるクロコダインの姿を見て、驚いた後、目尻に涙を浮かべた。

 

「ク、クロコダイン…わしゃ、もうダメかと思ったぞ…助けてくれて、ありがとうのぅ!!!そうじゃ!みんなが危ないんじゃ!皆を助けるため、手を貸してくれい!」

「おう!もちろんだ!だが、その前に…!」

 

クロコダインはそびえ立つ炎魔塔を睨みつけ、腕に闘気を溜め始めた。

 

「あの塔を先に破壊する!むん…かああああっ!!!」

「ぎょえええ!う、腕が!」

 

クロコダインの腕が闘気によって膨張すると、バダックは目を見開き、驚愕の表情で両手を上げた。

 

「獣王痛恨撃!!!」

 

クロコダインの大技が炎魔塔に炸裂した。巨大な闘気の渦は炎魔塔の根本を根こそぎ削り、不安定となった塔は横に傾き、大きな音を立てて地面に倒れた。

 

「な…なんちゅう凄い技じゃあ…!」

 

唖然と塔があった場所を見ていたバダックは、クロコダインが放った不穏な技名を思い出し、物申したくなった。

 

「しかしのぅ…クロコダイン、”痛恨撃“とは物騒すぎていかんのぉ!“獣王会心撃“とでも改名したらどうじゃ!?」

 

クロコダインはバダックの提案に驚いたが、豪快に笑うと快く承諾した。

 

「ワッハッハッハッ!そいつはいいな!!ありがとう!じいさん…!!」

「なんのなんの!ワシらの仲じゃないか!!!ようし…!姫様達を助けに行くぞおおぉっ!!こっちじゃ!」

「おう!!!」

 

クロコダインとバダックは、ダイ達の元へ向かって走り出した。

 

 

 

ドラゴンと戦うダイは、額に竜の紋章を輝かせ、剣を構えるとドラゴンの首に向かって技を繰り出した。

 

「アバンストラッシュ!!!」

「グオオ…ッ」

 

首を大きく切り裂かれ、血を吹き出したドラゴンは断末魔の叫びを上げ、その場に倒れた。

 

「ダイ君…すごい…」

 

レグルスの回復魔法を受けながら、ある程度意識が戻ったレオナはダイの壮絶な戦いを見て、唖然とした。

 

「レオナ、ここからは自身で回復した方が早い!」

「ええ、ありがとう!レグ君は2人をお願い!」

「ああ…ホイミ!…レオナ、ダイの戦いを見ておくと良い…!我らは今…伝説の竜の騎士様の戦いを目撃している!!」

 

レグルスはアポロに回復魔法をかけると、嬉しそうにレオナに話しかけた。

 

「ベホイミ!…竜の騎士って?…それってダイ君のこと?」

「そうだ!竜の騎士様は我がテランの伝承として伝えられている伝説の騎士だ!!!竜の神の生まれ変わりとも云われており、テランの民は皆、竜の騎士様を神として敬っている!……まさか、この目で騎士様の戦いを見ることができるとは、信じられない思いだ…!!!」

 

レグルスは目をキラキラさせ、興奮しながらダイの戦いを見つめていたが、一方のレオナはダイの戦いを驚きと小さな不安を感じながら見つめていた。

 

(レグ君、凄い嬉しそう…私はダイ君の戦いちょっと怖いわ…何だかいつものダイ君じゃないみたいで…)

「たあああっ!!!」

 

レグルスとレオナが注目する中、ダイはドラゴンの頭部に飛び蹴りを放ち、それによりドラゴンは気絶するとその場に倒れた。ダイは倒れたドラゴンの尻尾を掴み、レグルスたちに声をかけた。

 

「レオナ!レグ!伏せて!!!」

 

レグルスとレオナが頭を下げると、ダイはドラゴンの尻尾を大きく振り回した。

 

「うおおおおっ!!!」

「グオオオッ!!?」

 

ドラゴンを激しく振り回すことで、その巨大な体が周囲のドラゴンたちに衝突し、攻撃を受けたドラゴンは外側に弾き飛ばされた。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

ダイは息を切らしながら、掴んでいたドラゴンの尻尾を離し、周囲の敵を睨みつけた。一方的にドラゴンがやられる様を上空から見ていたガルダンディーは唖然として声を震わせた。

 

「あ…ありえねぇ…何がどうなってやがる…どうしたら人間がドラゴンを振り回せるんだ!!?おかしいだろ!!!」

「グルル!!!」

「何?あのガキからは人間の匂いがしなかった…だと!!?人間じゃねぇんなら何だ…!?魔族か?獣人族か!?ドラゴンか!?どっちにしてもありえねぇだろ!!!」

「グルゥ…」

 

ガルダンディーはイライラしながら頭の羽を掻きむしり、一方のルードはガルダンディーを心配して小さく鳴いた。

 

「くそおっ!このままじゃ…ドラゴンが全滅する!!!……っ!!?なんだ、今の音は!!!」

 

離れた場所から大きな音が響いたことで、その場にいた全員が音の発生源の方へ向くと、炎魔塔が徐々に横に倒れていくところであった。ザボエラは木の後ろから顔を出し、その光景を唖然と見つめた。

 

「な…なんじゃ!!?炎魔塔が…倒れる!!!」

 

炎魔塔が地面に倒れると、周囲には大きな音が響き渡った。

 

「…………はあ!!?」

「だ…誰じゃ!!!あんな事をしでかしたのは!!!」

 

炎魔塔が倒れたことによりガルダンディーは頭を抱え、ザボエラは驚愕の叫び声を上げた。一方、ダイは息を切らしながらも嬉しそうに、倒れた炎魔塔を見つめた。

 

「はぁ…はぁ…誰かが塔を破壊したんだ!」

「さっき、氷の塔も破壊されたわ!…これで、島全体で魔法が使える!!!」

「塔を倒したのは、もしかしたらラーハルト達かもしれんな!どちらにしても、希望が見えてきた!!!」

 

ダイとレオナ、そしてレグルスは炎魔塔が破壊されたことを喜び、希望を胸に抱いた。

 

「くそっ!くそっ!くそっ!!!」

「ガルダンディー!!!」

「あ?」

 

呼びかけられたガルダンディーが森に視線を向けると、木の後ろからザボエラが顔を出し、指示を出そうとしているところであった。

 

「何をしておる!ドラゴンを勇者に向かわせても倒されるだけじゃ!!!塔を倒したやつが来る前に…まずは、勇者以外の数を減らすのが先じゃ!」

「っ〜〜〜!くそっ!ドラゴン共!!!勇者は後回しにしろ!!!何でも良い!敵を一匹でも倒せ!」

「グルルルッ!」

 

ドラゴンはダイから一定の距離を取り、レグルスたちを攻撃するためのチャンスをうかがった。

 

「はぁ…はぁ…っ!」

 

ダイは疲労のために目眩を感じ、足元がふらついた。

 

「ダイ君、大丈夫?」

「はぁ…はぁ…大丈夫だよ、レオナ…俺の側から離れないでね…」

 

ダイは息を切らしながらも、後ろを振り返り、心配そうな表情でレオナに声をかけると、レオナは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにその背中を見つめながら小さく笑みを浮かべた。

 

(なんだ…ダイ君は、ダイ君じゃない!…少し驚いたけど、強くて優しい…いつものダイ君だわ!)

 

レグルスは、ダイの荒い呼吸とふらつく足元を見て、眉を顰めた。

 

(ダイのふらつきは、疲労からくるものか…紋章の力は強大だが、その分体力の消耗が激しい可能性があるな…出来ればダイの回復をさせてやりたいが…隙を見せればドラゴンの攻撃を受ける…!…何か良い方法は…)

 

ダイはレオナたちの側でドラゴンが襲ってくるのを警戒していたが、その時、森から聞き覚えのある声が聞こえたため、ダイとレグルスとレオナは森の方角に顔を向けた。

 

「まっとれよ〜!姫様!ダイ君!レグ君!パプニカの剣豪と言われたこのバダックが来たからにはもう安心じゃ!!!」

「この声…!もしかして、バダック!」

「まずい!!!バダック殿、来るな!!!」

「バダックさん!戻って!来ちゃダメだ!!!」

 

ガルダンディーは叫ぶダイたちを見てニヤリと笑うと、ドラゴンに指示を出した。

 

「クハハハッ!ドブネズミがノコノコ来やがった!ドラゴン2匹で声の主を殺せぇ!!!他は勇者共を囲んでいろ!!!」

 

ダイたちを囲んでいた複数のドラゴンの中から2匹が指示を受け、バダックの元へ向かって走り出した。ダイはバダックを助けるために足に力を込めた。

 

「バダックさん!」

「おっとぉ?勇者がそこを離れたらどうなるか…分かるよなぁ?クククッ!あいつの代わりに、姫様が喰われちまうぜぇ?クハハハッ!」

「ぐっ…!」

「バダック!逃げてぇ!!!」

「戻れ!!!バダック殿!!!……ん?後ろから見知った気配を感じる…」

 

ダイたちが叫ぶ視線の先では、森からバダックが姿を現し、剣を頭上に掲げた。

 

「皆の者!!!パプニカの剣豪、バダックが来たからにはもう安心じゃぞっ!!!」

 

バダックが現れると同時に、ドラゴンは腕を振り上げ、バダックに向かって攻撃しようとした。

 

「グオオオッ!!!」

「人間を血祭りに上げろぉ!!!クハハハッ!!!」

「獣王会心撃!!!」

 

ドラゴンの爪がバダックに触れる、その前に、森から突如として、巨大な渦の闘気が飛んでくるとドラゴンに激突した。大技をまともに受けた2匹のドラゴンは大きく吹き飛ばされると、地面に転がった。

 

「クハハ…ハ…………はあ!!?」

「あ…あやつは!」

 

ガルダンディーは吹き飛ばされたドラゴンに驚愕の叫び声をあげ、ザボエラはバダックの後ろに現れた人物を見て目を見開いた。

 

「獣王クロコダイン!!!」

 

クロコダインの側にいたバダックはレオナに対し、誇らしげに胸を張った。

 

「姫様〜!!!このバダック、助っ人をお連れしました!!!これで百人力ですじゃ!!!」

 

ダイとレグルスは、クロコダインの姿を見て驚き、喜びの声を上げた。

 

「クロコダイン!来てくれたんだね!!!」

「彼は…?」

「あの者はクロコダイン!我らの心強い味方だ!!!バダック殿!よくぞ連れて来てくれた!!!」

 

ガルダンディーとザボエラからは、元軍団長の登場に怒りの声が上がった。

 

「てめぇ!クロコダイン!この…裏切り者がぁ…!!よくも俺のドラゴン共を…!!」

「き…貴様ぁっ!魔王軍を裏切り、アバンの使徒どもに助太刀とは…気でも触れたか!?」

「グフフッ…あまりに多勢に無勢なのでちと見かねてな…!!」

「な…なんじゃとおっ!!?」

「くっそ〜!テメェら!まずはこの裏切り者から片付けろ!!」

 

ガルダンディーの命令に従い、ドラゴンたちは一斉にクロコダインに襲いかかった。

 

「片付けるだと?笑止なっ!!!」

 

クロコダインはドラゴンに向かって駆け出し、レグルスは斧を構えるクロコダインに向けて指先を向けると魔法を唱えた。

 

「バイキルト!!!」

 

クロコダインの攻撃力は2倍に上がった。

 

「貴様ら如きに雑兵にー!!この獣王が倒せるかあっ!!!」

 

クロコダインが力強く斧を振り下ろすと、至近距離にいたドラゴンの体が一刀両断され、その切り口から血が噴き出した。さらに、クロコダインが別のドラゴンを殴りつけると、そのドラゴンは後ろに吹き飛び、他のドラゴンにぶつかった。

 

「な…な…っ!」

「あああっ!テメェもかよ!!?」

 

ドラゴンが倒されると、ザボエラとガルダンディーは驚愕し、目を見開いた。

 

「姫様〜!ご無事でよかったですじゃあ〜!」

 

バダックは笑顔を浮かべながら、ダイたちに駆け寄り、ダイとレオナも嬉しそうに笑顔を浮かべた。

 

「貴方も無事で良かったわ!」

「はぁ…はぁ…良かった!…皆、生きて……うっ」

 

額から紋章の輝きが消え去り、ダイは息を切らしながら、疲れ果てるとその場に崩れ落ちた。

 

「ダイ君!!!」

 

レオナは地面に倒れこんだダイに駆け寄ると、ぐったりとしている彼の腕に触れ、心配そうに呼びかけた。

 

「ダイ君!しっかりして!」

「体力の限界にきたのだろう…レオナ!治療を!」

「ええ!ベホマ!」

 

レオナはダイを抱きかかえ、回復魔法をかけた。

 

(…!…頭痛が治まった)

 

ダイの紋章が消えた途端、先ほどまでの頭痛が治まるのを感じたレグルスは、レオナの腕の中で治療を受けているダイの額を見つめ、今は見えなくなった竜の紋章を思い出した。

 

(…もしや、ダイの紋章が頭痛の原因か?…竜の紋章には周囲の人間に何かしらの影響を与えるのかもしれんな…)

 

ダイの治療をレオナが行い、一方でレグルスの回復魔法によってアポロが目を覚ました。

 

「う…ひ、姫様…ご無事ですか?」

「アポロ!ええ!無事よ!」

「アポロ殿!ここからは自分で治療しろ!」

「わ…分かった…ベホイミ!」

 

レグルスが魔法を止めると、アポロは自分に回復魔法をかけた。レグルスはアポロから離れると疲れた表情で治療を受けているダイに近づき、膝を折り、視線を合わせながら、ある方角に向けて指した。

 

「ダイ…あちらの気配を探るんだ!」

「あっち…?」

 

ダイはレグルスが指差す先の気配を感じると、人の気配が2つに、悪意ある敵の気配が1つあることに気づき、目を見開いた。

 

「!!もしかして、この気配…!」

「ああ!ポップとマァムの気配だ!2人は戦っている…!そして相手はフレイザードだ!」

「フレイザードが…!」

「ダイ!体力回復後、ポップ達の元へ向え!今のダイならあの技を使えるはずだ…!」

「!!空裂斬!」

「ポップとマァムではフレイザードと相性が悪い!…2人を頼んだ、ダイ!」

「うん!ポップとマァムは任せて!フレイザードは俺が倒す!!!」

 

ダイの力強い意志と視線に応え、頷いたレグルスは、次にバダックに視線を向けた。

 

「バダック殿!レオナ達を連れて先程の兵士2人の元へ向え!怪我人の治療を優先して行ってもらいたい!!」

「分かったわい!姫様、ご案内しますぞ!!」

「ええ!」

「…レグはどうするの?」

 

ダイが視線を向けると、レグルスは剣を手に立ち上がり、クロコダインの横に並んだ。

 

「私は…クロコダインと共にあの者らを…倒す!」

 

剣を構えたレグルスは周囲のドラゴンやガルダンディーたちを睨みつけた。クロコダインは隣に並んだレグルスに頷くと、ダイ達に対してニッと笑いかけた。

 

「おう!こいつらの相手は俺達に任せろ!ダイはフレイザードをぶちのめしてこい!」

「レグ!…クロコダイン!…分かった!」

 

回復魔法により体力が満タンに戻ったダイは頷いて立ち上がり、レオナたちもそれぞれ立ち上がると、行動を開始した。

 

「レオナ!回復ありがとう!俺、行くね!!!」

「ダイ君、気をつけてね!私達も行きましょう!」

「はっ!」

「こちらですじゃ!」

 

ダイはポップたちの元へ向かって走り出し、一方でレオナたちは気絶している魔法使いを運ぶと、バダックの案内で森の中へと入って行った。

 

「くっそ〜!!!絶対に許さねぇ!テメェら全員バラバラにしてやる!!!」

「ぜ、全員で囲むのじゃ!」

 

ガルダンディーとザボエラは怒りながら命令を出し、指示を受けたドラゴンたちはうなり声を上げながら、レグルスとクロコダインの周囲を囲んだ。

 

「…お前さんもダイたちと行っても良かったのだぞ?」

「流石のクロコダインでもドラゴンと戦うのは骨が折れるだろう…私のことは気にするな、自分の身は自分で守れる!」

「フフフッ!お前さんの心配などしておらんさ!実力はヒュンケルとラーハルトから聞いている!むしろ、一緒に戦うのを楽しみにしていたのだぞ?」

「フッ…私も獣王と共に戦うのは光栄だ!…行くぞ、クロコダイン!」

「おう!」

 

レグルスとクロコダインは互いに背中を預け、武器を構えてドラゴンたちと対峙した。




原作の軍団長、この小説の軍団長、全員集合!

ちなみに、気球に乗る際にレグルスとラーハルトを引き離したのは、ラーハルトとヒュンケルのペア、レグルスとクロコダインのペアで戦ってもらいたかったからです。通常、ラーハルトは主人公と行動を共にしようとするので、無理やり引き離す必要がありました。

※誤字の報告ありがとうございます。内容を一部修正いたしました。
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