ダイの大冒険 ―次世代の竜の騎士ー   作:キャットテールの鈴

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魔王軍の本拠地である鬼岩城。そこではバルジ島から帰還した軍団長の面々が状況確認のために集まろうとしていた。
注意! ガルダンディーが可哀想な目にあいます!


40_バルジ島編_動く鬼岩城

真っ暗な闇の中、ガルダンディーは何も無い空間で周囲を見渡し、兄弟のように育ったスカイドラゴンの姿を探した。

 

「ルード!何処だ!?ルード!返事をしろ!」

 

ガルダンディーの声が周囲に響いたが、返事が返ってくることはなかった。周りには何もなく、空も地面も真っ暗な世界では、ルードの気配も、生き物の気配さえもなかった。

 

「ガルダンディー」

 

だが、何も無いはずの闇の中から声が聞こえた事で、ガルダンディーは目を見開くと、慌てて声が聞こえた方へ振り向いた。

 

「て、てめぇは!」

 

振り向くと、先程まで何もなかった場所に、バルジ島で敵対した小さな子供が立っていた。その子供は無表情でガルダンディーを見つめていた。

 

「貴様の兄弟はここにいる」

 

子供が横に移動すると、その背後から、先程まで何も無かったはずの場所にスカイドラゴンのルードが現れた。

 

「う…嘘だ…」

 

ルードは首が切断され絶命しており、その巨大な体は地面に転がっていた。

 

「あ…ああああっ!!!ああアアァアあアッ!嘘だ…嘘だ!!!!ルードォッ!」

 

絶望、恐怖、悲しみ、色々な感情でぐちゃぐちゃになったガルダンディーは泣き叫びながらルードの体に縋り付いた。ガルダンディーの側に子供が移動すると、泣き叫び縋り付く様を無表情で見下ろしていた。

 

「このドラゴンは多くの人間を殺した。だから、死んだ」

「…っざけんじゃねえ!!!」

 

激怒したガルダンディーは立ち上がり、サーベルを構えて剣先を子供に向けた。

 

「殺す!!!殺す殺す殺す!殺してやる!!!テメェは拾いきれないほどバラバラにして殺してやる!!!」

「私を、殺すのか?」

「殺す!!!人間風情がぁ!!!!楽には殺さねぇ!!少しずつ切り刻んで殺してやる!!!」

 

目は血走り、狂った獣のような形相をしたガルダンディーがサーベルを構えた。しかし、子供は無表情のまま、ゆっくりと腕を上げると、ガルダンディーを指差した。

 

「その体で、どうやって私を殺すのだ?」

 

その言葉に、ガルダンディーは頭から冷水を浴びたかのように血の気が引き、恐る恐る自身の手を見下ろした。すると、先程まであった腕が肘から先がなくなっていることに気づき、ガルダンディーは混乱と恐怖に支配され、絶叫した。

 

「あ…あ、あ、あ、ああああアァアッ!!!腕が…俺の腕がぁ!!!」

「背中を見ると良い」

 

子供の言葉に、ガルダンディーは鼻水を垂らしながら背中を振り向くと、自慢の翼が両翼とも根本からなくなっていた。その光景に、ガルダンディーは深い絶望に襲われた。

 

「う…あ…嘘だ…嘘だああっ!ああアァアッ!!!俺の…俺の…翼が!!!」

「その体では私から逃げる事も、戦う事も出来まい」

 

子供はガルダンディーに近づき、顔を彼の顔の近くに近づけた。

 

「ひっ!」

「他者にした行いは、いずれ自身に降りかかる。今の現状は貴様が散々人間にしてきたことだ」

 

子供の手にはいつの間にか剣が握られており、無表情で剣を振り上げると、ガルダンディーの目を見つめた。

 

「貴様を生かすつもりはない」

「や…やめ…っ…」

 

恐怖に震えるガルダンディーは、くちばしをカチカチ鳴らしながら子供を見つめた。

 

「さらばだ、超竜軍団長ガルダンディー」

「やめろおおおおおおお!!!」

 

子供が振り下ろした剣が首に当たった瞬間、ガルダンディーの意識は闇に包まれた。

 

 

 

「うわあああああ!!!」

 

魔王軍の本拠地である鬼岩城のあてがわれた寝室にて、ガルダンディーは叫び声を上げながら飛び起きた。荒い呼吸をしながら、無事な両腕を唖然と見つめ、背後を振り向き、そこに翼があることに気付くと、ガルダンディーの目には涙が浮かんだ。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…腕…うで、俺の…腕……腕がある…翼も……うっ……ううっ……」

「グルゥ…」

 

悲鳴を聞いたスカイドラゴンのルードが心配そうに鳴き、大きな頭をガルダンディーの体に優しく擦り付けた。

 

「…ルード…なのか?」

「グルル!」

「お前…生きていたんだな…」

「グルル?」

 

ルードは生きているか聞いてきたガルダンディーを不思議そうに見つめ、ガルダンディーはルードに触れながら周囲をキョロキョロと見渡した。

 

「あ、あのガキは何処だ…!あ、あのガキが…!俺を殺しにくる!俺を殺すんだ!何度も!何度も!何度も何度も…!俺を殺しにくる!!!」

「グルル!グルル!」

「逃げても、無駄だった!戦っても無駄だった!命乞いをしても無駄だった!あいつは何をしても俺を殺しにきた!!!何度も!何度も…俺を…こ、殺しに……あ、…あ、あああっ…!うああああぁあっ!!!」

 

頭を抱えて叫び声を上げたガルダンディーは自身の羽を鷲掴むとブチブチと抜き、周囲には黄色の羽が散らばった。

 

「うっ…ううううっ…!……なあ…俺は…生きているのか…?俺はあのガキから逃げられたのか!!?……本当は…本当は!………俺は、死んでいるんじゃねえのか…?俺はあの島であのガキに殺されて…ルード…お前もあのガキに殺されて…ここにいるのは俺が見ている都合の良い夢、なんじゃ……?…っ…う…ううっ…」

「クーン…」

「……うううっ!…ああああぁああっ!!!ああああっ!!!」

 

泣き叫ぶガルダンディーにルードは悲しげに鳴き、体を常に触れさせ、寄り添い続けた。

 

 

 

鬼岩城にて軍団長集結の命をハドラーより受けたザボエラは、玉座の間へと続く通路を歩いて移動していた。

 

(此度の遠征では散々な目にあったわい…作戦を立案した以上、何かしらのお咎めがあるかもしれんのう…)

「父上!」

「…これから大事な会議があるというのになんじゃ!ザムザ!」

 

背後から呼びかけられたザボエラが苛立ちながら後ろを振り向くと、そこには同じ魔族であり息子のザムザが手に本を持ち、息を切らしながら駆けつける所であった。

 

「も、申し訳ありません、父上…ですが、どうしても父上にお伝えしたい事が…」

「そんな事よりじゃ!指示を出していた超魔生物の改良は出来たのかのぅ?」

「い、いえ!そちらは、まだになります…」

「全く!何をしておる!このワシが指示を出しても、まともにできないとは…役に立たない奴じゃのう!」

「っ…!…も、申し訳、ございません…超魔生物と機械の融合は難しく、時間がかかります故…」

「ならば急いでかかるのじゃ!」

「は、はい!あの…父上、私の話も聞いていただき―」

「お主の話は会議後、聞くのでのぅ!」

「…は、はい…かしこまりました…」

 

ザムザは眉を寄せ何か言いたげな表情をしていたが、ザボエラは無視してその場を離れた。父親に一方的に話を打ち切られたザムザは、大事な情報を魔王軍に伝えられない事に不安を、父親に無下に扱われた事に悲しみと怒りを覚えた。

 

「…少しぐらい、俺の話を聞いてくれても良いではありませんか!…この情報は魔王軍にとって何より大事なものなのに…!」

「おい!そこ!道を塞いで何をしている!?」

 

背後から呼びかけられたザムザが慌てて振り返ると、そこにはハドラーとその部下達がおり、部下達は道を塞いでいたザムザを睨みつけていた。

 

「!!も、申し訳ございません!」

 

ザムザが急いで壁に寄ると、ハドラー達は移動を開始した。しかし、ハドラーはザムザの近くで立ち止まると、興味深そうに話しかけた。

 

「お前は以前会ったな…確か、ザボエラの息子だったな?」

「!!!ハドラー様が俺のことを覚えていて下さった!…はい!お久しぶりです!ハドラー様!!!俺はザボエラの息子のザムザです!」

「やはりそうか!久しいな!ザボエラの研究も素晴らしいが、お前の研究も素晴らしいと聞き及んでいる!」

「!!!ハドラー様が俺の研究を…誉めてくださった!」

「これからも我ら魔王軍に貢献するように!」

「は、はい!ありがとうございます!!!」

 

褒められたことで気持ちが向上したザムザは、少し躊躇しつつも、本を握りしめて、移動しようとしていたハドラーを引き留めた。

 

「……あ、あの、ハドラー様!少しお時間を頂けないでしょうか?お伝えしたい事がございます!それも勇者に関する重要な情報でございます!!!」

「勇者に関する重大な情報…?なんだ?申してみよ!」

「はい!」

 

ザムザは嬉々として手にしていた本のあるページを開き、ハドラーに見せた。そのページには竜の頭の形をした紋章と、その種族に関する記述が載っていた。

 

「父上に命を受け、勇者ダイについて調べておりました!父上は勇者ダイと戦った際、額にこの紋章が浮かび上がったのを目撃しております!」

「この紋章は…?」

 

ハドラーは見たことない形の紋章に眉を顰めた。

 

「この紋章は……勇者ダイの額に浮かび上がっていたこの紋章は、竜の紋章!この紋章を額に抱く者…勇者ダイは伝説の、竜の騎士ではないかと考えられます!!!」

「な、なんだとぉっ!!?」

 

ハドラーはザムザから本を引ったくるように掴み、竜の騎士の記述内容を確認した。その内容を見て、ハドラーは愕然と目を見開いた。

 

 

 

玉座の間に移動したハドラーは、その場にザボエラとミストバーンの2団長しかいない事に眉を寄せ、ザボエラに不在の軍団長について確認した。

 

「ザボエラ!ガルダンディーはどうしたのだ!まだ治療は済んでおらんのか?」

「いえ…治療は済んでおりますが…どうやら前回の戦闘で勇者側に手酷くやられたようでしてのぅ…戦える状態ではないようなのですじゃ。ここに呼び出さない方がよいかと…」

「では、なにか…?」

 

ハドラーは現状、動かせる軍団が2つだけであることに冷や汗をかいた。

 

「クロコダイン、ヒュンケルが裏切り…フレイザードが死に…!ガルダンディーが戦える状態ではない!…これでは戦力が半減したどころではないではないか!!!」

「…」

「…」

 

ザボエラ、ミストバーンの両名が無言を貫いていたところ、何処からともなく不気味な笛の音が響き渡った。

 

「このメロディーは『死神の笛』の音…!?」

「キャハハッ!キャハッ!キャハッ!」

 

闇の中から子供の様な笑い声と共に笛の音がハドラー達に近づいてきた。

 

「ね!ね!だから言ったでしょ!!ハドラーの軍団はガタガタだって…!!」

「いい子だね、ピロロ!よくこのボクに教えてくれた…」

 

姿を現したのは、巨大な鎌を横笛のように吹く死神の格好をした仮面の人物と、死神の肩に乗りニコニコ笑っている一つ目ピエロのピロロであった。

 

「グッドイブニ〜〜〜ング!鬼岩城の皆さん…!」

「…しっ…死神っ…!」

「……キルバーン!」

 

死神の登場にハドラーは冷や汗をかき、ほとんど口を開かないはずのミストバーンが死神の名前を口にしたことで、ハドラーは驚愕した。

 

「こ…こいつがキルバーン…!魔王軍の死神として恐れられ、大魔王バーン様直属の殺し屋として…その意にそぐわぬ者闇に葬るという…!…しかし…なぜこの男がこの鬼岩城に…!!?」

「…誰か不始末でもしでかしたかな…?」

 

ミストバーンの言葉に、ハドラーはギクリと動揺したが、キルバーンはミストバーンが口を開いたことに驚いた。

 

「…やあ、驚いたなミスト…君が話しているのを見るなんて何十年ぶりだろうね。まったく君ときたら必要がないと百年でも二百年でもだんまりなんだからなぁ…」

「フッ…貴様がおしゃべりすぎるのだ…キル…」

「…かもね!…ウフフフフフッ…!」

 

キルバーンとミストバーンがまるで旧知の仲のように会話する様子に、ハドラーは疑問を抱き、眉を顰めた。

 

(なっ…なんだ、こいつら…!?顔見知りなのか…!!?)

「…ところで…ハドラー君!」

 

ミストバーンから視線を逸らしたキルバーンは、ハドラーを睨みつけた。

 

「最近、君は戦績がすぐれないみたいだねぇ…」

「そうそう!てんでだらしないんだよ!!」

 

キルバーンの背後からピロロがひょっこり姿を現し、楽しそうに笑いながら魔王軍の惨状を語り始めた。

 

「勇者ダイを撃ち漏らして以来、魔王軍は次々と倒されるわ!ロモス、パプニカを奪還されるわで、もうボ〜ロボロ!おまけにこの間は全軍総がかりでダイ達にやられちゃったんだよ〜!キャハハッ!!」

「だ…だまれっ!!!」

「わわっ!!!」

 

怒鳴られたピロロは慌ててキルバーンの背後に隠れると、ハドラーに対して侮辱するかのようにあっかんべーをした。

 

「…本当かね?キミ」

 

キルバーンがハドラーにギロリと睨みつけると、ハドラーは冷や汗をかいた。

 

「ムウ…げ…現在も勇者ダイ抹殺計画は進行中なのだ…!」

「ウフフッ…そう?」

「…だが、その前に!大魔王バーン様に至急ご報告したい話がある…!勇者ダイの正体についてだ…!!!」

「勇者ダイの正体?…面白そうだねぇ…なんだい、それは?」

 

馬鹿にするように聞き返したキルバーンを無視し、ハドラーはザムザから借りた本を広げると、目つきを鋭くしてキルバーンを睨みつけた。

 

「ロモス、そして今回のバルジ島にて勇者ダイは急激に強くなり、クロコダイン、そして、ドラゴンの群れを倒している!急激に強くなった際、ダイの額にはこの紋章が浮かび上がっていた!」

「!!この紋章…!」

「そうだ!この紋章は竜の紋章!…やつは…勇者ダイは…竜の騎士である可能性が高いのだ!!!」

 

ダイの正体が竜の騎士であることは、その場にいる者たちに衝撃を与えた。

 

「ド…竜の騎士とは…まさか、あの…伝説の!!?」

 

ザボエラはショックを隠しきれない様子で唖然とした。一方でキルバーンの表情は変わらなかったが、肩にいたピロロは目を大きく見開き、驚いた表情を浮かべた。

 

「ウフフッ…なるほど…ダイが竜の騎士じゃあ確かに分が悪いねぇ…ハドラー君が負け続けるのもしょうがないかもね?」

「ぐっ!」

 

ハドラーは悔しそうに顔を歪め、キルバーンはダイが竜の騎士であることから、ダイについて思索した。

 

(それにしても竜の騎士か………新たな竜の騎士が生まれたか…それとも…あの時の子供か…)

 

ダイの正体が竜の騎士であるという事実から、キルバーンはダイの出自に興味を持ち、ザボエラとハドラーに対して複数の質問を投げかけた。

 

「ダイの年齢は?」

「た…確か、12歳のはずじゃ…」

「へぇ…ダイの出身は?」

「デルムリン島だ…そこで奴はアバンに師事しておった!」

「…なるほどねぇ…デルムリン島はロモスの南にある…怪物島なんて呼ばれているから赤子が流れ着いても助からないと、捜索はしなかった場所だ…まさか、生きていたとは…」

 

キルバーンがダイについて知っているかのような口ぶりを見せると、ハドラーとザボエラは不審そうな表情を浮かべ、眉をひそめた。

 

「その口振り…!貴様!ダイを知っているか!?」

「ウフフッ…ああ、知っているよ…知っていると言っても彼の出自についてだけどねぇ…ダイは竜の騎士かもしれない。けど、正統な竜の騎士ではないのさ」

 

キルバーンの言葉に疑問を感じたザボエラは、竜の騎士について質問をした。

 

「どういう事じゃ?竜の騎士はこの世に1人しか現れないはず…竜の騎士に正統もないと思うがのぅ…」

「その通り!…本来なら、竜の騎士はこの世に1人しか生まれない…けれど、そんな竜の騎士に例外が起こったのさ…ダイという例外がねぇ」

「なんだ!?勿体ぶらずに早く言え!」

「フフッ…ダイは本来の正統な竜の騎士ではない…」

 

キルバーンは楽しそうに目を細め、驚いているハドラーとザボエラを見た。

 

「ダイは12年前、当時の竜の騎士バランと人間であるアルキードのソアラ姫との間に生まれた混血児なのさ」

「な、なんじゃとぉ!?」

 

本来、竜の騎士はこの世に1人しか存在せず、マザードラゴンにより産まれるため、竜の騎士は親の顔を見ることはなく、子供を作ることもしない。しかし、ダイが竜の騎士の子供であるという事実に、ハドラーとザボエラは驚き、目を見開いた。

 

「に…人間との混血児!?竜の騎士は…子供を作れたのか!!?」

「ダ、ダイの父親が竜の騎士なら…そやつも現れるのではないか!!?」

 

ダイの父親が竜の騎士であれば、彼が息子を助けに現れる可能性を考えたザボエラは、恐怖によってサーッと血の気を引いた。

 

「フフッ…もしかしたら、ダイの父親がボク達を倒しにすぐ近くまで来ているかもね?」

「…ヒィッ…!!!」

 

ザボエラが短く悲鳴を上げると、周囲を挙動不審に見渡し、キルバーンはその様子に指先を口元に軽く当て、小さく笑い声を上げた。

 

「フフフッ!…冗談だよ…竜の騎士が現れることはない…ダイの父親であるバランは11年前に死んでるよ…人間に殺されてね」

 

ハドラーとザボエラは、竜の騎士が人間によって殺されたことに疑問を抱き、訝しんだ。

 

「なに?人間に…?」

「竜の騎士が、なぜ人間なんかに殺されるのじゃ…?」

 

竜の騎士が人間によって殺されたことで、その強さに疑問を抱いたザボエラは、ニヤリと笑い、軽蔑の表情を浮かべた。

 

「ヒヒヒッ!なんじゃ!伝説と呼ばれた竜の騎士じゃが…人間に殺されるとは、案外たいしたことないのかもしれんのぅ!」

「………確かにバランは人間に殺されたけど…あまり、竜の騎士を甘く見ないほうがいい…なんせ、バランは冥竜王と戦い、勝利しているのだからねぇ…」

「め、冥竜王!!?」

 

冥竜王ヴェルザーはかつて魔界の覇権をめぐり大魔王バーンと争っていた事がある最後の知恵ある竜であり、魔族なら名前ぐらいは聞いた事がある伝説の存在である。その名を聞いたハドラーは目を見開き、ザボエラは驚愕して鼻水を垂らした。

 

「冥竜王!!?まさか、あの…冥竜王ヴェルザーか!!?」

「それも伝説のような話ではないか…!!?」

「冥竜王が倒されるなんて驚くよねぇ…ボクも最初聞いた時は驚いたよ……なんにせよ、バランが人間に殺されたのは妻子を守る為だった…とボク達は考えている。もっとも、守りたい者を守れてないようだけどね…ウフフッ!」

 

キルバーンが馬鹿にしたように笑い、背後にいたピロロはキルバーンの肩から乗り出すと、悪魔のような顔をしてニヤニヤと笑った。

 

「キャハハッ!マヌケだよねえ〜!アルキードのソアラは喪失感から精神が壊れちゃったし!ダイは島送りになった!だ〜れも守れてない!バランはなんで死んだんだろうね?無駄死にかな〜?キャハッ!キャハッ!キャハッ!」

「ダメじゃないかピロロ、バランは命をかけたんだから…無駄死に、なんて本当のことを言っちゃあ、彼が哀れだよ…フフフッ!」

 

キルバーンとピロロはおかしそうに笑い、ハドラーはアルキードの名前が出てきたことから、侵攻作戦を展開しているザボエラに確認をとった。

 

「アルキードを担当しているのはお前だ、ザボエラ!…ダイの母、ソアラの居場所は掴んでいるか?」

「いえ…調べたところ城にはおりませんでした…どうやら療養のため何年も前から場所を移動しているようですじゃ…何処にいるかまでは掴んでおりません」

「ならば…」

「おっと、話し合いは後でゆっくりしてもらおうか…取り急ぎボクは要件を済ませたいんだ」

 

キルバーンは懐からバーンから預かった鍵を取り出し、壁に掛けられたバーンの顔を模した飾りに近づいた。

 

「裏切り者の軍団長たちはこの鬼岩城の場所を知っているからね…直ちに移動せよとのバーン様の命令なのさ」

「い…移動じゃと…!?」

 

キルバーンが壁飾りの口部分に鍵を差し込んで回すと、鬼岩城は大きな地響きを響かせながら動き出した。

 

「ううっ…!!」

「き…鬼岩城が…動く…!!?」

「ウフフッ!さあっみんなで楽しい世界旅行と洒落込もうよ」

「わーい!わーい!キャハハハハッ!!!」

 

鬼岩城は大きく揺れ、周囲の岩を崩しながら移動を開始した。

 

 

 

ギルドメイン山脈中央部に位置する鬼岩城に向かっていたクロコダインとヒュンケルは、到着すると鬼岩城の姿がないことに唖然として目を見開いた。

 

「きっ…鬼岩城が消えている…!!?こっ…こんな馬鹿なことが…!!?」

「あれを見ろ…!」

 

ヒュンケルが指差す先には、鬼岩城があった場所から巨大な足跡が残されており、足跡は北西に向かって進んでいた。

 

「…鬼岩城は…移動したのだ…!!」

「おいおい!冗談はよせ!まさか…城に足が生えて動き出したとでもいうのか!!?」

「いや…ありえん話ではない…大魔王バーンの巨大なる超魔力を考えれば…!!」

「ウ…ムゥ…」

「クロコダイン!お前はこの事をダイ達に伝えに行ってくれ!!」

「お前はどうするのだ…!!?」

「おれは、あの巨大な足跡を追ってみる…何かとてつもなく恐ろしい事が起りそうな気がする」

 

ヒュンケルとクロコダインはその場で別れ、ヒュンケルは足跡を追い北西へ、一方でクロコダインはテランに向かうために移動したのだった。

 

 

 

その夜、“世界の果て”と呼ばれる“死の大地”に近い海上で一隻の大型船が何らかの襲撃を受け、沈没した。生き残りの船員達は恐怖に慄きながら口を揃えてこう言ったという。

 

「海に巨大な人影が立っていた」と。




ザムザ登場!
ザムザに関しては、活躍の場を増やそうかなと考えています!

ちなみにハドラーが竜の紋章を知らないのは、知恵者であるザボエラが竜の紋章を知らないなら、ハドラーも知らない可能性が高いからです。原作でハドラーが竜の騎士を知っていたのは部下にバランが居て、事前にバーンから聞いていたからだと思われます。長生きしているザボエラが竜の騎士を伝説扱いするなら、竜の紋章を知らないのが普通かなと…。ちなみにバーンたちは竜の騎士を原作ほど警戒していないです。バランが生まれ変わっていたとしても、子供の竜の騎士など脅威にはなりえないと考えているからです。

報告:誤字脱字修正しました!報告ありがとうございます。
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