ダイの大冒険 ―次世代の竜の騎士ー   作:キャットテールの鈴

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マァムは武闘家になるため、一時的にパーティを離れることになった。ポップは送り役を買って出て、マァムをロモスの山奥まで送り届けようとしていた。


41_バルジ島編_また逢う日まで

パプニカの屋敷の近くで、マァムは修行のために故郷であるロモスの山奥に向かおうとしていた。ポップは送り役としてマァムの隣に立ち、ダイ、レオナ、レグルス、ラーハルトは別れの挨拶をするために集まった。

 

「じゃね、みんな!強くなって戻ってくるから!」

「マァム!頑張ってね!待ってるから!」

「戻ったら恋バナしましょ!」

「武闘家になったら手合わせを頼む…体調には気をつけるように」

「ではな、マァム!…ポップ、頼むぞ!」

「おう!」

 

ポップは左手を挙げてダイ達に合図を送り、右手でマァムの肩を掴んだ。

 

「んじゃ、行くぜ!ルーラ!」

 

呪文を発動するとポップとマァムはその場から姿を消し、ダイ達は空を見上げて、ルーラ特有の軌道を見送った。

 

「…行っちゃったね」

「さっ!私達も戻るわよ!」

 

ダイ達はその場を離れ、屋敷に向かって歩き出した。

 

「あの2人上手く行くかしら?私はマァムにそれとなく伝えたけど」

「ポップには私から伝えましたが…あの2人はなかなか自分の気持ちを言葉にしないですから…少し、難しいかもしれません」

「ん〜、上手く行くといいけど」

「俺、2人には自分のペースで進んでほしいから…今回上手くいかなくても俺達は見守れば良いんじゃないかな?」

 

レオナは素直な言葉に目を輝かせ、微笑みながらダイの顔を覗き込んだ。

 

「ふふっ!ダイ君優しいのね!君のそういう純粋な所…私好きよ!」

「うえっ!?えっと…その…あ、ありがとう…」

 

ダイは赤らんだ顔をして照れくさそうに視線を逸らし、それを見たレオナは胸が高鳴った。

 

(赤くなっちゃって!…ダイ君、かわいい〜!)

 

レオナはダイが照れる様子を見て、表情には出さず、心の中で喜んでいた。

 

「とりあえず、考えるのはポップが戻ってからでもよいのではないか?」

「そうね!じゃあ、ポップ君の帰りを待ちましょ!戻ったらお茶とお菓子を用意するわ!」

 

屋敷に戻ったダイ達はお茶とお菓子を食べながら雑談し、ポップの帰りを待つのだった。

 

 

 

ラインリバー大陸の山奥に向かっていたはずのポップのルーラは目的地を外れ、代わりに魔の森に向かうと木々を揺らしながら地面に激突した。

 

「痛ったぁ〜〜いっ!!」

「わっ…悪い…まだ着地が下手で…」

 

薄暗い森の中、痛みに顔を歪めながらも、ポップとマァムは立ち上がり、周囲を見回した。

 

「ここ…山奥じゃないわよ…!」

「この場所は…魔の森…!なんでまた、こんなところへ…」

 

樹木の間から差し込む光に照らされた薄暗い森。その場所に見覚えがあったポップは目を見開いた。

 

「そっか!この場所は…!俺たちが初めて会った場所だよっ!!!」

「あっ!そういえば…!」

 

ポップとマァムは周囲を見渡しながら、この場所で出会ってから今までの旅を懐かしく感じながら思い出した。

 

「そっか…ルーラって目的地のイメージ化が大事だもんな…俺にとってこの場所は…マ、マァムと出会った場所だから…」

「そうね…会うなり、いきなり喧嘩しちゃったけど…私たちが出会った、思い出の場所ね…」

 

少しの間、2人は思い出に浸っていたが、マァムは目的の場所が近くにあることに気づくと、ポップの肩に手を置いた。

 

「ここからならあの場所も近いわ!行きましょ!」

「えっ、行くって…山奥にか?」

「ほら!寄りたいところがあるって言ったでしょ?この近くだから歩いていきましょ!」

 

マァムは深い森の中を歩き出そうとしたが、ポップはマァムの手首を掴むと歩みを止めた。

 

「ポップ?」

「ここから近いっても歩くのは危険だ。なら…俺がおめぇを運んでやるよ!」

「でも…ルーラは一度行った場所じゃなきゃ行けないでしょ?」

「ルーラの応用で空を飛べるようになったんだ!トベルーラっていうんだけどよ…これなら魔の森の上を飛んでいける!歩くよりは安全だろ?」

「空を飛べるの!?…凄いわ、ポップ!じゃあ…お願いするわね!」

「おう!しっかり掴まれよ!」

 

ポップは胸を高鳴らせながらマァムの腰に腕を回し、マァムもポップにしがみつくと、その場を飛び立った。ポップの魔法により森の上を飛ぶと、マァムは感動に打ち震え、喜びの声を上げた。

 

「わぁっ…!私たち…空を飛んでいる!」

「すげえだろ!!!俺も空を飛べた時は感動したなぁ」

 

マァムは風になびく髪をなでつつ、周囲を見渡すと、開けた森を指した。

 

「あそこよ!あの森が開けた場所!」

「あそこだな」

 

ポップが高度を落とし、開けた場所にゆっくりと着地すると、そこは花畑であった。風が花を揺らし、太陽が優しく降り注ぐその場所は、とても美しい光景だった。

 

「魔の森にこんな場所があったのか…!」

「ポップ!こっち!」

 

マァムはポップの手を繋いで歩き、花畑の中央に生えている大きな木に案内した。

 

「とても綺麗でしょ?ここはね…父と母の思い出の場所なの…」

 

マァムは手を離すと少し歩き出し、後ろを振り向くとポップと向かい合った。

 

「いつか、ポップと一緒に来れたら良いなって思ってたの…今日はここに来れて本当によかったわ!」

 

マァムは優しく微笑むとポップを見つめ、その笑顔に心奪われたポップは心臓をドキドキさせた。

 

(マァムはそんな大事な場所を俺だけに案内したのか…周りは美しい花畑…マァムの両親との思い出の地で2人っきり…け、結構いいムードじゃねえか…こ、告るなら今しかねぇ!)

 

花畑の中で、ポップは決心した。花の匂いを嗅ぎながら深呼吸したポップは、マァムに告白しようと意思を固めた。

 

「マ…マァ―」

「ポップにね、お願いがあるの」

「えっ!!?なっ、何が…!!?」

 

ポップは勇気を持って告白しようとした矢先、マァムが話を切り出したため、ポップは焦った。しかし、マァムは気にする様子なく、懐から魔弾銃を取り出すと、ポップの手を優しく掴み、その掌に魔弾銃と弾を置いた。

 

「この…魔弾銃をポップに預かってほしいの」

「…えっ!けど…これは先生がおめぇに渡した…先生の形見じゃねえか!」

「私はこれから修行だから使う機会がないわ…けれど、ポップ達は違う!これからも魔王軍との戦いがある!…魔弾銃があれば魔力の消費を抑えられるし、使えない呪文を込められる!きっとポップ達の役に立つわ!」

「マァム…」

 

ポップはマァムから託された魔弾銃を見つめ、それを大切そうにギュッと握りしめた。

 

「…分かった!有難く使わせて貰うぜ!」

「ええ!」

 

マァムはポップの掌にある魔弾銃の上から手を乗せると、ずっと共にあった相棒を優しく見つめた。

 

「……この魔弾銃が、ポップ達を守りますように…!」

「マァム…」

 

魔弾銃から手を離したマァムはポップを見ると笑みを浮かべた。

 

「ポップ…そろそろ…」

「マァム!ず、ずっと言いたかったことがあるんだ!!!」

「えっ…?」

「その…えっと……」

 

ポップは顔を赤くしながらも言葉に詰まり、言い出すのに躊躇した。しかし、マァムはポップが言おうとしていることに気付いたのか、目を見開いた。

 

「お…俺は……出会った時から…お前のことを…ずっと…」

 

マァムは小さく微笑むとポップに近づいた。

 

「…す…す…すっ…―!!!」

 

マァムはポップの頬に手を添え、顔を近づけ優しく触れるだけのキスを送った。そして、顔を離すとポップに優しく微笑んだ。

 

「……この話の続きは…私が修行から戻った時に聞かせて……だから…それまで絶対に生きてね、ポップ!」

「………」

 

ポップは何が起きたのか分からず、マァムのことを唖然と見つめていた。しかし、マァムは次第に恥ずかしさを感じたのか、顔が徐々に赤くなり、頭から煙が出てきそうになるほど真っ赤になると、ポップに背を向け、花畑の中を走り出した。そして、森の入り口で立ち止まったマァムは後ろを振り向き、ポップに向かって大きく手を振った。

 

「じゃ…じゃあね!ポップ!」

 

ポップは唖然としながらも手を上げ、小さく振り返した。

 

「おう…」

「また逢いましょ!」

「おう…また、逢おうぜ…」

 

ポップはマァムが暗い森の中に入るのを唖然としながら見送り、魔弾銃を持っていない手で自分の唇を触った。

 

「…俺…マァムと……」

 

ポップは段々とキスしたことに実感が湧いてくると、胸には嬉しさと幸福感が満ち、思わず魔法を発動してその場を飛び立った。

 

「は、はははははっ!!!やったああああ!」

 

ポップの大声は魔の森に響き渡り、山奥に向かって歩いていたマァムの耳にも届いていた。

 

「いやっほーーー!!」

「もう…ポップったら…」

 

ポップが喜ぶ声に立ち止まったマァムは恥ずかしさと嬉しさで顔を赤くするが、少しして落ち着くと木々の隙間から飛んでいるポップを見つけ小さく笑った。

 

「待っててね、ポップ!…私、強くなるから!」

 

暗いはずの魔の森は、樹木の間から差し込む光によって、いつもよりも明るいように感じられた。

 

 

 

ダイ、レオナ、レグルス、ラーハルトはポップの帰りを待ちながら、パプニカでお茶とお菓子を楽しんでいた。その間、ポップとマァムについての会話が弾んでいた。

 

「ねえ、ラーハルト。あなたはポップ君になんて言ったの?」

 

レオナは紅茶を一口飲むと、楽しそうにラーハルトに尋ねた。

 

「俺はポップに…マァムを諦めるならヒュンケルを応援するぞ!…と伝えました。かなり怒られましたがね」

「あらら?それは効果ありそうね!……フッフッフッ!私はね!マァムに積極的になるのよ!…って言って、その方法を伝授したわ!上手くいったかしら?」

「2人とも楽しそうだね…」

 

ダイはレオナとラーハルトが楽しそうにしているのを見て、少し呆れつつも心の中でポップたちの成功を応援していた。

 

「私も…ポップに伝えた」

 

小さな呟きがレグルスから発せられ、レオナはレグルスが否定的な態度から一転して助言をしたことに意外さを感じた。

 

「レグ君はポップ君になんて伝えたの?」

「…私はポップに…後悔のないように行動しろ…と伝えた。我らはいつ死ぬか分からない…ポップには後悔してほしくないからな…」

「へぇー!良いこと言うじゃない!こんなに色々したんだから絶対に何か進展あるわよね!ポップ君、早く戻ってこないかしら?」

 

ポップの帰りを待っていた所、建物の外からルーラの着地音が聞こえたため、全員が席を立った。

 

「この気配、ポップだ!」

「きゃ〜!きたきた、噂をすれば!早くポップ君連れて来て!追加の紅茶を用意しなくちゃ!」

 

魔の森から戻って来たポップを部屋に案内すると、レオナとラーハルトは何があったか聞き出した。しばらくすると部屋の中から歓声が上がった。




これにてバルジ島編完結です!次はカール王国編になります。

ちなみに、ポップの精神を強くしたのは、カッコいいポップを見たいというのもあるけど、マァムがポップを好きになってもらうためでもあります!
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