ラーハルト編中編、戦闘シーン多め。
原作開始3年前。ダイ(9)、主人公レグルス(7)。
ラーハルトがテランにたどり着いて1か月ほどたったころ、メルルは今日も訓練をしているレグルスとラーハルトのために食事を用意するため数少ない食材を扱うお店に行こうとテランの舗装されていない森の中の道を歩いていた。
(今日は何を作ろうかしら?お肉はレグルス様とラーハルトさんが用意してくれるから、パンと野菜と…)
考え事しながら歩いてたところ、悪意のある気配を前方から感じ取ったメルルは立ち止まり、道の先の木々を不安な気持ちを抱えながら見つめた。木々の間から現れたもの、それはテラン王国内で見たことがないガラの悪そうな屈強な男たちが20人ほどおり、隠れて待っていたことから通行人が通るのを待ち構えていたことが伺えた。メルルに気づいた男たちは顔を見合わせると、面白そうなものを見つけたと言わんばかりにニヤニヤしながら近づき、メルルは恐怖を感じながら近づいてくる男たちから少しでも離れようと後ずさりした。
「こんな寂れた国にも可愛い子いるじゃねーか!」
「そこのねーちゃん、俺たちは魔族の男を探してるんだがよ、見たことねーか?」
魔族の男と聞いてこの男たちが探しているのはラーハルトだとすぐに気づいたメルルは、こんな男たちに友人のことを話してなるものかと内心動揺しつつも務めて無関心を装った。
「いえ、知りません」
「ちっ、はずれかよ。まーいいや。ねーちゃん、どっかに酒場はねえのかよ。俺たちとそこで一緒に飲もうぜぇ!」
「私急いでるのでー」
「つれねーな!俺たちと酒が飲めねっていうのかよっ!」
男はメルルの細腕を掴み無理やり自分の元へ引き寄せるとメルルの顔を覗き込んだ。いきなり男に腕を掴まれ、顔を覗き込まれたメルルは、何をされるか分からない恐怖に軽いパニックになりながら、掴まれた腕を引き剝がそうと暴れた。
「やめて!離して!」
メルルの悲鳴が森の中で上がったが、屈強な男たちはそんなメルルに意に介さずに笑って眺め、腕を引くと無理やり森の奥へ引きずりながら連れて行こうとした。たが、その時、一人の怒りを含んだ男性の声が森に響き渡った。
「おい、性懲りもなく俺を追ってテランまで来たのか?パプニカから遠くまで、わざわざご苦労なことだな」
その場に響いた声にメルルと男たちは勢いよく声が聞こえた方に顔を向けた。そこには練習用の槍を持ったラーハルトが怒りの表情で男たちを睨みつけていた。
「魔族!てめぇ、やっと見つけたぞ!手こずらせやがって」
男たちがラーハルトを囲むように移動すると、武器を取り出し、刃先をラーハルトに向けながら構えをとった。男たちが構えた剣は少し濡れており、ラーハルトは濡れた剣を見ながら以前自身が負った毒が塗られているのだろうとあたりをつけると警戒を強めた。
「ふん、貴様らが勝手に探していただけだろう。だが好都合だ、ここで貴様らに引導を渡してくれる!!!」
「それはこっちのセリフだ!やれ!魔族を殺せ!!!」
「(だめ!いくらラーハルトさんでも一人では危険です…!)離して!」
「あっ、こら!待ちやがれ!!!」
ラーハルトの出現で自身に意識を向けていなかった男をメルルは思いっきり突き飛ばすと、男からの拘束から逃れ、城に向けて走り出した。
(早く!レグルス様に知らせないと!)
「このくそ女!」
「あぐっ!!」
「メルル!」
メルルを捕らえていた男が逃げる背中に向けナイフを投げると、メルルの肩辺りにナイフが突き刺さり、傷口から血が飛び散った。メルルは肩にナイフが刺さった痛みに泣きそうになりながらも、痛みに耐えながらその場を離れるため森の木々の間を走り続けた。ナイフを投げた男は逃げたメルルを追いかけるため走り出そうとしたとき、ラーハルトが誰よりも早く駆けるとメルルと男の間に割り込んだ。
「貴様っ!!!」
「ぎゃあああ!!!」
ラーハルトは怒りの感情に任せてメルルにナイフを投げた男の胸を槍で横薙ぎに切り裂いた。血を吹き出しながら倒れる男には目も向けず、ラーハルトは近くにいた別の男に切りかかる。
「ぎゃあ!!!」
「こ、こいつ!以前より強くなってやがる!」
「複数人で攻撃するんだ!!!」
普段は静かな森の中、男たちの罵声と金属を打ち合う音が鳴り響いた。
テラン城の訓練場では今日もラーハルトと鍛錬をするため、レグルスは剣の手入れをしながら稽古相手が来るのを待っていた。そんな時、走る足音を聞いたレグルスは音が聞こえる訓練場入り口を見て表情をしかめた。
(カナルが走るとは、何があった?)
足音と気配から兵士カナルと判断したレグルスは、普段落ち着いて行動しているカナルが走って急ぐからには何かあったのだろうと考えると、すぐさま片手剣を持ち、訓練場入口に向かって駆け出した。入口付近でばったり会った兵士カナルは入口にいたレグルスに驚いた表情をしたが、すぐに険しい表情をすると普段なら出さない大きめの声で話しかけてきた。
「レグルス様!ラーハルトが賊に襲われております!」
「なんだと!」
「メルルが怪我をした状態で城まで来て知らせてくださいました!」
カナルと共に城から出ると城門付近の地面に座り込んだメルルが顔色を悪くしながら自身の肩付近にホイミをかけていた。武器を持ってやってきたレグルスに気づいたメルルは泣きそうな表情をすると必死な声で訴えかけた。
「お願いです!ラーハルトさんを助けてください!私を助けようとして…!」
「もちろんだ!ラーハルトは今どこにいる?」
ラーハルトの場所を聞いたレグルスは肩に刺さっていたというメルルの手の中にある小型ナイフとメルルの顔色を見て表情を曇らせた。
「キアリー。カナル、ラーハルトを助けてやってくれ。私も後から行く」
「はっ!」
カナルが行くのを見送ると、キアリーをかけながらメルルの表情や傷口を観察し、症状が以前小屋で治療した際のラーハルトの症状と同じものであることに気づいた。
(メルルの表情や傷口からこの毒は以前ラーハルトが負った毒と同じもの。なら相手はパプニカの賞金稼ぎか)
「レグルス様!私は大丈夫ですから…」
「キアリーをかけ終わった後は自分でホイミをかけよ。そのあと、城の者に言って薬草と毒消し草、人手を集めて来てくれ。ラーハルトなら大丈夫だ。以前より遥かに強くなっている。賊ごときに遅れはとらないだろう」
「そうですよね、私なんかと比べてラーハルトさんは強い方です!」
「…メルル、お前は弱くはない。力はなくともラーハルトを助けるためにこのような怪我を負いながらも知らせてくれたのだろう?とても勇気ある行動だ。私たちに知らせたことは正しい判断だった、感謝する」
「あ、ありがとうございます」
「もう大丈夫だろう。私は行く。よいか、自身にホイミをかけることを先にするのだぞ」
「はい、お気を付けて!」
レグルスは片手剣を持つとラーハルトが待つ場所まで全速力で走り出した。指定場所近くまで行くと怒声と金属を打ち合う音が聞こえたため、姿を見られないように茂みに隠れながら様子をうかがう。すでに5人ほどの荒くれ物が血を流して倒れ、ラーハルトは荒くれと距離を保ちながら戦っており、得意のスピードで翻弄し善戦していた。一方で兵士カナルは防戦一方で苦戦しており、険しい表情で賊の剣を受け止めていた。2人とも浅い傷をつけ顔色が悪いことから毒を食らっている様子がみてとれ、あまり長引かせないほうがよいだろうと考えながら荒くれの一人に指さした。
「メタパニ」
「うわぁ!いつの間に俺の隣に魔族が!くたばれ」
「え?ぎゃあ、やめろ俺だ!」
同様に2人ほど他の賊に同じ魔法をかけるとメタパニにより荒くれ者同士の同士討ちが始まり、その場は大混乱に陥った。その隙にレグルスは別の荒くれを指さした。
「ラリホー」
「なんか急に眠気が…」
「これは魔法か!…そこに居やがるな!」
一番身体が大きな荒くれ者が腕を振りかぶりながらレグルスのいる茂みめがけて突っ込んできたため、攻撃を避けるため茂みから飛び出たレグルスは荒くれ者たちを鋭い目で睨みつけた。
「ガキだと!?」
「お前がこの者たちのリーダーか?誰の許可を得てこの国に立ち入った?誰の許可を得てこの国の民に蛮行を働いた!」
「はっ!威勢のいいガキだな!こんな寂れた国に許可なんて必要ないだろ!俺たちはパプニカの賢者テムジン様の部下だぞ!そこにいるパプニカで罪を犯した魔族を差し出せ!」
「この者はすでにこのテラン国民、この国の、この私の許可なく連れ出すことは断じて許さん!」
「…レグルス様!」
「何も知らないガキが引っ込んでろ!」
「貴様こそ、身の程を知れ!」
リーダー格の男が突進しながら拳を振り下ろしてきたのをレグルスはすれすれで避けるとすれ違いざまに男の足首を剣で攻撃した。力は弱いため傷は浅かったが、怪我を負ったリーダー格の男は激高し、腕と足を使って再度攻撃してきた。レグルスは向かってくる攻撃をすべてぎりぎりで避け怪我を負うことはなく、逆にリーダー格の男は小さいながらもたくさんの傷がついてきていた。
「このガキ~!ちょこまかと避けやがって!何見てやがる!てめえらも加勢しろ!」
「へ、へい!」
リーダー格の男に怒鳴られ、離れたところにいた荒くれ者が2人加勢し、3人がかりでレグルスを攻撃し始めた。1人や2人なら剣の技術だけで捌ききれたが3人となると相手の手数が増え、避けきれないとレグルスは悟った。
「(くっ、複数人相手では剣は不利だ!)ギラ!」
「ぎゃあ!熱い!!」
「こ、こいつ、ただのガキじゃねえぞ!」
「なんでこんな小さなガキが剣だけじゃなくて魔法も使えるんだよ!」
「知るかよ!」
「てめえら!攻撃するときは小さく攻撃して手数を増やせ!一撃でも当たればこっちのもんだ!」
「「へい!」」
レグルスは移動し、躱しながら剣や魔法で攻撃して戦っていたがそのうち3人だった荒くれ者が5人に増えていた。周囲を見渡すと兵士カナルが血を流して倒れており、カナルを倒した荒くれ者が加勢に来たことを理解したレグルスは焦りを感じた。
「(カナルは無事か!?ラーハルトも姿が見えない!くっ、さすがに多勢に無勢だ!)イオ!」
「ぎゃあ!」
イオによって周囲に煙が立ち込め、一時的に視界が悪くなったタイミングで空気の揺らぎを感じたレグルスはまずい!と思いながら後ろにバックステップで下がろうとしたが、避けきれずに煙から出てきたリーダー格の男の膝けりをお腹に受け、体が軽い分、後ろに大きく吹っ飛んでしまった。
「がぁ!」
お腹に受けた攻撃で一瞬視界が白く染まり、レグルスは地面に転がりながら見た先でリーダー格の男が攻撃しようとこちらに突っ込んでくるのが見えた。
(まずい!追撃される!ぐっ、動けない!)
攻撃を避けるため体を起こそうと痛みに顔をしかめながら地面に両手をつけようとしたが、上半身も腕も受けたダメージが大きかったせいで思うように動かすことが出来なかった。内心焦りながらも避けようともがくが、その場から動くことができず、地面にうつぶせの状態でリーダー格の男が突っ込んでくるのを見ていることしかできなかった。
(このままでは、やられる!)
「死ねぇ!」
リーダー格の男がレグルスの頭に足を振り下ろそうとしたその時、男の腕にナイフが突き刺さった。
「ぎゃあ!」
リーダー格の男は叫びながらも腕に刺さったナイフを抜き、投げられた方向を見る。そこには、全身に浅い傷をつけながらも左手に槍を持ち、右手はナイフを投げた後の状態で立つラーハルトがいた。
「ラーハルト!」
「この魔族がぁ!」
「はぁ、はぁ、レグルス様にはこれ以上、指一本触れさせん!こちらで戦った部下は倒したぞ、あとは貴様らだけだ!」
「ぬかせ!この化け物が!」
リーダー格の男がラーハルトに向かって突撃し、連続で拳をたたきつけるが、ラーハルトは難なくすべての攻撃をよけ、距離を取ると槍を突いて攻撃した。荒くれ者の部下たちもリーダー格の男に加勢し、ラーハルトに対して攻撃を仕掛けていった。
(ラーハルト無事だったか!今のうちに!)
レグルスはホイミを自身にかけ体が動くようになると、ラーハルトの元へ駆けつけた。
「助かった、ラーハルト!」
「レグルス様、無事ですか!」
「問題ない。背後の敵は私が捌く、ラーハルトは前方の敵だけに集中せよ!」
「はい!」
お互い背中を預けながら戦い、背後の攻撃を気にしなくてよくなったラーハルトが前方の敵を一気に倒した。一瞬でやられた仲間を見た残りの荒くれ者は動揺し驚いた表情をしていたが、それもラーハルトの素早い槍捌きですぐに苦痛にゆがめて倒れることとなる。すべての部下を倒されたリーダー格の男は不利を悟り、顔を青ざめ、ラーハルトを指さしながら喚き、怒鳴り散らし始めた。
「くそ!くそ!くそ!この魔族が!化け物が!だがなぁ、俺を倒してもてめえに賞金がかかっている以上、首を狙いにほかのやつがくるぜ!てめえが生きているだけで周りのやつは不幸になる!てめえら魔族に居場所はねぇんだよ!!」
リーダー格の男の言葉にラーハルトは表情を曇らせた。パプニカにいた頃はこの場にいる者以外の賞金稼ぎにも追われており、この者たちを倒しても次の賞金稼ぎがやってくることは想像がついた。ラーハルト1人だけなら賊を返り討ちにすればよいが、今日のメルルの時みたいにテランの人々に危害を加えられる可能性があることを理解したラーハルトは自分のせいでお世話になった人々が傷つくことを恐れた。顔を曇らせたラーハルトを見たリーダー格の男は先ほどまでの青ざめた表情から馬鹿にしたようなニヤニヤした表情でラーハルトを見ていた。
「指名手配はてめぇが死ぬまでなくなることはないからよぉ!残念だったなぁ!せいぜい死ぬまで追われ続ける恐怖を感じろや!」
「ぐっ!」
「…醜いものだな、負けるとわかっていながら最後まで相手を罵ることはやめないとは」
「クソガキ!てめえもよぉ、俺たちの邪魔したことただじゃすまないからな!?」
「ほう?ただじゃすまないとは?」
「パプニカの重臣テムジン様の仕事を邪魔したんだからよぉ、てめえがしたことはパプニカ王家に対して喧嘩も売ってるも当然だぜぇ!」
「…哀れなものだな、先ほどから自分の発言がどのような結果をもたらすか分からないとは。お前の発言はもう十分だ、ラーハルトこの者を片付けろ、殺さぬようにな」
「…この者を殺さないので?」
「生かすことで役に立つこともある。お前の悪いようにはしない、ラーハルト」
「わかりました」
「この俺を!馬鹿にしやがってぇ!死ねえ!」
リーダー格の男が突っ込んでいき拳を振り下ろしてきたのをバックステップで避けた後、大きく跳躍したラーハルトは頭上で槍を高速回転させた。
「この国に来たこと、俺の友人を傷つけたことを後悔しろ!」
(あの技を出すか!対人で放つのを見るのは初めてだな)
その技は最近ラーハルトが一人で練習していた技で繰り出しているのを何度も見たことがあるが、打ち合いでこの技を出すのは見たことがないため、この実戦で初めて人に向けて放つ技となる。
「くらえ!ハーケンディストール!!」
「う、うおおおぉぉぉ!」
ラーハルトが放った大きく振り回して弧を描いた衝撃波はリーダー格の男の身体を縦に大きく切りつけた。血を吹き出しながら後ろに倒れ、ぴくぴくと痙攣して動かないことを確認した後、レグルスはラーハルトの傍に駆け寄った。
「よくやった、ラーハルト!怪我はないか?」
「俺は…大丈夫です」
「私はカナルの様子を見てくる。ラーハルトはこの者らから武器を取り上げておいてくれ」
「わかりました」
ラーハルトは表情に影を落としながらも倒れている賊から武器を取り上げ、一か所に集め始めた。レグルスは倒れ伏したカナルの元に行くと毒と怪我の治療を行い、癒しの光で目を覚ましたカナルは治療をしているレグルスを見て申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「レグルス様申し訳ございません。救援に来たつもりが何もできずに…」
「よい、カナルもよくやった。動けるようならロープを持ってくるのと人手を集めてくれ。私はこの者たちにラリホーを追加でかける」
「承知いたしました」
レグルスは賊にラリホーを追加でかけながら、ラーハルトの毒が治っていることに疑問を持ち、武器を運んでいるところ声をかけた。
「ラーハルト、先ほどは毒を食らっていたが、今は大丈夫なのか?」
「はい、以前賊に毒を食らいましたため、それから毒消し草を常備するようにしておりました」
「なるほど、準備が良いな」
「…レグルス様、この件が片付いたのち、俺はこの国から出るつもりでおります」
「ラーハルトに賞金がついている以上、賊がこの国に再び来るからか」
「はい、俺がいれば賊がやってきます。今回は犠牲者が出ませんでしたが…次はどうなるか分かりません」
「ラーハルト、私はお前をテラン国民として迎え入れた。お前が望んでこの国から出ていくなら止めないが、そうではないだろう。この国を居場所と思っているのなら、この国に暮らしたいと思ってくれているのなら、そのままこの国に居てくれ」
「…!!」
レグルスの言葉にラーハルトの心は温かい気持ちが広がった。そして、この国に来る前までの生活を思い出していた。
人間に見つかるまでは故郷の村から離れ、山奥の森の中で極力人間に見つからないように暮らし、夜に出かけたり顔を覆うことのできる大き目のマントで肌を隠して静かに過ごしていた頃を。
人間に見つかり住む場所を追い出されてからは、人間と目が合うたびに叫ばれたり、罵声をかけられながら石を投げつけられたり、武器を持った複数の人間に執拗に追いかけられ、寝たらその間に殺されるかもしれないという恐怖にまともに寝れない日々を送っていた頃を。
人里から離れた場所に居ても人間に見つかると追い出され、どこに行こうとも迫害を受け続けていた頃を。
自分を受け入れてくれる場所を探して、探して、ここならと思う場所も人間に追い出され、探して、探して、探しても見つけられなくて、やがてこの世界に居場所はないのではないのだろうかと思うようになった。
魔族の父は物心つく前に亡くなり、母も病で亡くなった。ずっと一人で生きて自分を迫害する人間を憎みつつも、孤独だった。
(俺は、ただ自分の居場所が欲しかった。誰にも迫害されず誰にも邪魔をされない場所が欲しかった。俺を―受け入れて欲しかった…)
「レグルス様…俺も、ここに居たいです。この国に、ずっと暮らしても…よいでしょうか?」
「もちろんだ。私もせっかく一緒に狩猟したり、修行する相手ができたのだ、居なくなっては困る」
「俺も、レグルス様と一緒に狩りをしたり、修行したり、メルルのご飯もたまに食べて、ずっと、ずっとここに…ですが…もし俺のせいで…」
「案ずるな、この程度の難題に対処できないようでは王子は務まらない。すでに考えはある」
「それは、どういうことですか?」
レグルスは今考えている計画についての内容を一通りラーハルトに話した。ラーハルトは驚いた表情をしていたが、次第に泣きそうな表情を浮かべると、レグルスに頭を下げた。レグルスは厳しくも仲間思いで優しいこの半魔族の青年を絶対に守ると誓い、ラーハルトの肩に手を置いた。
ラリホーを賊にかけなおし、武器を一か所に集め終わる頃、メルルとナバラ、カナル、そしてテラン国の男たち数人がロープや荷馬車をもってやってきた。
「レグルス様!ラーハルトさん!ご無事ですか?」
「メルルも無事で何よりだ!怪我は大丈夫か?」
「ええ、レグルス様が毒の治療をしてくださったあと、ホイミで傷は治しましたから、もう痛くはないですよ。…あと、あの時私を助けて下さりありがとうございました。ラーハルトさんかっこよかったです」
「メルルが助けを呼んでくれたからだ。俺一人ならやられていただろう。俺のほうこそ、ありがとう」
「こりゃあすごい!この人数をレグルス様とラーハルト殿が倒してしまわれたのですか!」
「いや、私ではなくラーハルトがここにいる賊をすべて倒してくれた。それどころか、怪我をして倒されそうになった私を助けてくれたのだ。ラーハルトは私の命の恩人だ」
「な、なんと!この賊どもはレグルス様に無礼を働いたというのですか!よくもレグルス様をゆ、ゆるせん!」
「ラーハルト殿!レグルス様をよくお守りした!お主とんでもなく強いのだな!」
「この賊はラリホーで眠らせているがいつ起きるか分からない。ロープで縛ったのち城の牢屋に連行せよ」
「はい!」
賊をロープで縛り荷馬車に乗せると城の牢屋に連行した。その夜、レグルスはフォルケン王と捕らえた賊とラーハルトの今後についての対策を話し合っていた。
「賊はパプニカ王国の重臣テムジンの部下と名乗ったのだな?」
「はい、あの賞金稼ぎのリーダー格の男がそう言っておりました」
「パプニカで発行されたラーハルトの指名手配書を確認したのだが、責任者がそのテムジンとなっておった」
レグルスはフォルケン王から渡された指名手配書を見てそこに記載されたラーハルトの罪状の多さに驚き、この罪状がすべて冤罪だと思うと不快な気持ちになり、手にした手配書を無意識に握りしめた。
「テムジンはパプニカであがめられている神を祀る神殿の司教を務めており、パプニカ国王の側近でもある。だが、それが今回の策にはうってつけでもある。心配なのはパプニカ王家に泥を塗る可能性があることぐらいかの」
「それでもラーハルトには救ってもらった恩義がある。…頼む父上」
「分かっておる、ラーハルトには民をレグルスを助けてもらった、それに出来る限り応えたい。それに…あまりわがまま言わないレグルスの願いでもあるからの」
フォルケン王はラーハルトを心配し、真剣な表情で頼み込むレグルスに対して安心させるように微笑みかけた。その夜、策を練り続けた話し合いは深夜まで続いた。
そして次の日、テラン王家による策略が実行された。
ラーハルトは賞金稼ぎに勝利した!
ラーハルトとバランの生まれ変わりが背中合わせになって戦うっていいよね!
原作では2人とも強すぎて1人で戦ってたからね、そもそも一緒にいるシーンがほぼ皆無。
ちなみに主人公(7才)がほかの人間より優れているところは剣の技術力、戦い方、知識、異常なまでに高い回復速度、広く浅い魔法(第一段階まで使用可能)ぐらい。
逆に力、防御力は低く、強力な魔法が使えないため、敵をなかなか倒せず、たった1撃食らっただけで瀕死になります。
1対1なら簡単にはやられませんが、複数相手では手数の多さでやられてしまうという設定です。