ダイの大冒険 ―次世代の竜の騎士ー   作:キャットテールの鈴

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アルキード城で敵に囚われていたソアラを助けようとしたレグルスとラーハルトは、逆に死神の罠にかかり怪我を負った。そんな時、ザボエラが秘策として自立型超魔生物を放ち、ダイたちの前に立ちはだかる。


54_竜の騎士編_脅威!超魔生物

アルキード城の玉座の間に現れた3体の超魔生物は、ザボエラの指示を受け、頭部の赤い目を光らせながら動き出した。

ラーハルトとレグルスはキルバーンの罠によって大怪我を負い、レオナは治療に専念していたため戦闘には加われず、ダイとポップの2人だけでザボエラの放った生物兵器に立ち向かわなければならなかった。

 

「ダイ!俺が足止めする!おめぇは援護してくれ!」

「分かった!」

 

ポップは魔弾銃を構え、超魔生物に向けてトリガーを引いた。

 

「これでも喰らえっ!!!ベタン!!!」

 

3体の超魔生物に超重力場が襲いかかり、その場に動きを封じた。部屋の床は沈み、天井には大きな穴が開いて、そこから夜空と満月が姿を見せた。ポップは敵の動きが止まったのを確認し、後ろを振り返ってレグルスたちの様子をうかがった。

 

「よし!動きを止めた!今のうちに治療を―」

「ポップ!!!」

「!!!」

 

ダイの叫び声にポップは慌てて振り返った。超魔生物はベタンの重力場の中で潰れることなく、ゆっくりと足を踏み出し、移動を始めていた。

 

「う、嘘だろ!!?ドラゴン数匹仕留められる…俺の最大呪文が…!!!」

 

ポップはその光景に驚愕し、ザボエラは満面の笑みを浮かべて喜びの声を上げた。

 

「キ〜ヒヒヒッ!!どうじゃ、ワシの超魔生物は!恐れ入ったか!だがのぅ…超魔生物の凄さはこれからじゃ!!!それに…お主、ワシらがいることを忘れているのではないかのぅ!」

 

そう言いながらザボエラはポップに指を向けた。

 

「メラゾーマ!!!」

「くっ…!」

 

ザボエラが魔法を放つと、巨大な火球がポップに向かって飛んできた。ポップは咄嗟に腕で顔を覆い防御姿勢を取ったが、ダイがすかさず前に出て技を繰り出した。

 

「海波斬!!!」

 

斬撃が火球を真っ二つに切り裂き、ダイはポップの前に立ちはだかって剣を構えた。

 

「ダイ!!!」

「ポップはそのまま、そいつらを抑えてて!こいつらは…俺がやっつける!」

 

ダイがザボエラに向かって走り出そうとしたその時、後方からハドラーが一気に駆け寄り、ヘルズクローを突き出してきた。

 

「ならば…俺の相手をしてもらおう!!!ダイッ!!!」

「ぐっ!!!ハドラー!!!」

 

ダイは剣でハドラーの爪を受け止め、激しい接近戦を繰り広げた。

 

「くそっ!ベタン!!!」

 

ポップは魔弾銃に弾を込め直し、再び超魔生物にベタンを放った。だが、ザボエラはそれを妨害するように、再び魔法を唱えた。

 

「ベギラマ!!!」

「やべえ!!!」

 

巨大な熱線がポップを襲った。

 

「真空海波斬!!!」

 

レグルスが斬撃を放ち、熱線を切り裂いた。

 

「危なかったな、ポップ!」

「レグ!サンキュー!」

 

治療をある程度終えたレグルスがポップの前に立ち、剣を構えてザボエラを睨みつけた。ザボエラはまたも邪魔をしてきたレグルスに苛立ち、足を踏み鳴らした。

 

「キィィイ!!!またお主か!何度も!何度も!このワシの邪魔しおって!!!」

「それはこちらのセリフだ!ザボエラ!!!ソアラ姫の誘拐、仲間を傷つけた貴様らを許してはおけん!ここで引導を渡してくれる!!!」

 

レグルスは剣を構え、腰を低くして駆け出そうとしたが、ザボエラは何かに気づいたようにニヤリと笑った。

 

「ギョへへへッ!!!死ぬのは…お前たちじゃ!!!」

「なに…?」

「レグ!!!1匹、ベタンから出てきやがる!!!」

「!!!」

 

ポップの叫びにレグルスがベタンの中心へ視線を向けると、重力場の中をゆっくり移動していた1体の超魔生物が、ついに片足を範囲外へ踏み出した。そしてそのまま完全に重力場の外へ出ると、巨体とは裏腹に俊敏な動きでポップとレグルスに向かって駆け出してきた。

 

「くっ!!!大地斬!!!」

 

レグルスはザボエラに背を向け、超魔生物の足の関節に向けて斬撃を放った。

 

(硬い…!)

 

攻撃は当たったが、わずかな切り傷しか与えられず、敵の動きを止めることはできなかった。超魔生物は勢いそのままに、ポップとレグルスのいる場所へ巨大な腕を振り下ろしてきた。

 

「ポップ!避けろ!!!」

「うわあああっ!!!」

 

2人はとっさに飛び退き、次の瞬間、超魔生物の腕が地面に叩きつけられ、床に大穴が開いた。その攻撃力の凄まじさに、レグルスとポップは冷や汗を流した。

 

「凄まじい力だ…この攻撃力はクロコダインに匹敵する…!」

「あ、ああああっ!!!!ベタンが解除される!!!」

「!!!」

 

ポップが超魔生物の攻撃を避けた際、ベタンは魔法が切れる寸前だった。本来ならすぐに追加の魔法をかけるつもりだったが、攻撃を避けることに精一杯で、詠唱の余裕はなかった。慌ててベタンを唱えようとしたものの、間に合わず、超重力が解除されてしまった。そして残りの2匹の超魔生物が、ゆっくりと動き出し、鋭い視線をポップとレグルスに向けた。その光景を目の当たりにした瞬間、2人の背中を冷たい恐怖が駆け抜けた。

 

「残りの2匹も動き出した!!!」

「や、やべえ!!!」

 

3体の超魔生物はポップとレグルスへ一斉に襲いかかり、2人は回避しながら走り出した。

 

「くっそ!メラゾーマ!」

「爆裂大地斬!!!」

 

ポップとレグルスは剣と魔法で応戦したが、超魔生物の動きは止まらず、まるで効いている様子がなかった。

 

「嘘だろ!?メラゾーマが効いてねぇぞ!!!」

「こちらもだ!皮膚は硬く…再生速度が速い!ダメージは少なく、傷をつけてもすぐに修復される!!!」

 

ポップとレグルスは攻撃の跡を観察したが、見る間に再生していく様子に絶望感を覚えた。敵はまさしく、常識の通じない“完全な化け物”だった。

 

「ポップ!!!レグ!!!」

「ダイよ!よそ見している場合か!?」

 

ダイは2人の危機に気づいて叫び、そちらに気を取られていた。その隙をハドラーが見逃すはずもなく、ダイの腹部に膝蹴りを叩き込んだ。ダイは吹き飛ばされ、部屋の壁に激突した。

 

「がはっ!!!」

 

その衝撃で、ダイの手から剣が弾き飛ばされ、遠くへ転がっていった。ハドラーは、地面に倒れ瓦礫に埋もれたダイを見下ろしてニヤリと笑った。

 

「クククッ!この俺が相手している限り、奴らの援護には向かえないと思え!!!」

「ぐっ…!」

 

ダイは腹部の痛みに顔を歪めながらも、気力を振り絞って体を起こした。そしてハドラー、さらに3体の超魔生物に視線をやり、静かに目を閉じた。自らの中に眠る力を呼び起こすため、額に意識を集中し、心の中で強く念じた。

 

(俺の中に眠る竜の力よ…!頼む!力を貸してくれ!みんなを守るために…これ以上、大切な人を失わないために!!!)

 

ダイは体の奥から力が湧き上がるのを感じ、額に竜の紋章が浮かび上がった。

 

「うおおおおっ!!!」

「げっ!!!」

 

ダイの額に紋章が現れると、爆発的な風圧が巻き起こり、周囲の瓦礫が吹き飛ばされた。ハドラーはその光景に驚愕し、思わず鼻水を垂らしていた。ダイは腰を低く落とすと、地面を蹴って一気に間合いを詰め、勢いよく拳を振るった。

 

「たあああっ!!!」

「がはあああっ!!!」

 

ハドラーは咄嗟に腕でガードしたが、ダイの一撃の威力は凄まじく、そのまま吹き飛ばされて部屋の奥の壁に叩きつけられた。

 

「ひょえええ〜!!!」

 

ザボエラはハドラーが吹き飛ばされる様子を見て悲鳴を上げ、慌てて部屋の奥の瓦礫に隠れ、様子を伺った。ダイはすぐに立ち上がり、落ちていた剣を拾うと、超魔生物に向かって駆け出した。

 

「うおおおおっ!!!アバンストラッシュ!!!」

 

超魔生物は腕で防御しようとしたが、ダイの斬撃によりその腕は切り落とされ、傷口から血が噴き出した。レグルスは攻撃を続けながら、ダイが竜の紋章を出してから額にズキズキとした痛みを感じたことで、これまで悩まされてきた頭痛の原因が自身の紋章にあるのではと考え始めた。

 

(以前から時折感じていた頭痛…まさか、ダイの竜の紋章と呼応して、私の中の紋章が共鳴しているのか?)

「やった!ダイが紋章を出したぞ!!!」

 

ポップは逃げながらも喜びの声を上げたが、別の超魔生物が蹴りを繰り出してきたのを見て、思わず叫んだ。

 

「うわあああっ!!!」

「ハーケンディストール!!!」

 

迫っていた超魔生物の足は斬撃を受け、切り裂かれた。そのため軌道が逸れ、ポップに当たらずに済んだ。

槍を構えたラーハルトがポップの前に立ち、敵に警戒しつつ声をかけた。

 

「ポップ!あまりよそ見するな!」

「ラーハルト、サンキュー!治療は済んだのか!」

「ああ!」

 

その直後、ラーハルトの治療を終えたレオナも駆け寄り、親指を立ててウィンクした。

 

「バッチリ!ベホマをかけたわ!ラーハルトの体力は全快よ!」

「さっすが賢者の卵!」

 

超魔生物に攻撃を加えていたレグルスもポップのそばに戻り、険しい顔で敵を睨んだ。

 

「レグ!どうだった!弱点はあったか!?」

「一通りの攻撃は試したが…弱点となる魔法は存在せず、急所も今のところ見当たらない!」

「やっぱりか!こっちも色々やったがダメだった!しかも、傷をつけてもすぐに再生しやがる!!!」

 

ポップはラーハルトが斬りつけた大きな傷口が再生していく様子を見て、顔を歪めた。ラーハルトも自分が与えた傷が塞がっていくのを目の当たりにして、目を見開いた。

 

「馬鹿な!あれほどの傷がすでに塞がれている、だと!?」

 

ダイも敵の腕が再生していくのを見て、眉をひそめた。

 

「こっちも腕が再生している!」

「これほどの再生速度だ…有効な攻撃は、再生速度を上回るスピードで斬り続けるか…体力を大きく削る強力な一撃を喰らわせるしかないだろう…!」

「厄介ね…弱点となる魔法はなく、防御力、再生能力が高い!…まったく!とんでもないものを作ってくれたわね!」

 

レオナは瓦礫の陰から顔を出しているザボエラを睨みつけた。ザボエラはニタニタと笑いながら、ダイたちの苦戦を楽しんでいた。

 

「キ〜ッヒヒヒッ!!!どうじゃ!ワシが作った超魔生物は!高い攻撃力!高い防御力!機動力!脅威の再生速度!お主ら如きがどう足掻こうと、ワシの最高傑作を倒せるはずないんじゃよ!!!やれ!超魔生物!奴らを皆殺しにするんじゃあ!!!」

 

超魔生物はザボエラの指示を受け、頭部の赤い目を光らせて構えた。

 

「来る!」

「ダイ、ラーハルトは前線で敵を攻撃!オメェら2人の力ならあのデカブツにダメージを与えられる!!!」

 

ポップの指示に、ダイとラーハルトは頷いた。

 

「分かった!」

「奴らは任せろ!!!」

 

2人は駆け出し、超魔生物へ攻撃を仕掛けた。

 

「俺も魔法で応戦する!レグと姫さんはみんなのサポートだ!」

「分かったわ!」

「ああ!バイキルト!」

 

レグルスはラーハルトに補助魔法をかけ、ラーハルトの攻撃力は一気に高まった。

 

「はあああっ!!!地雷閃!!!」

 

ラーハルトが先ほど斬りつけた足に追加で連続攻撃を浴びせると、足は切断され、転がった。片足を失った超魔生物はバランスを崩し、膝をついた。

 

「よし!これなら行ける!」

「ポップ、レオナ!敵は超魔生物だけではない…他の奴らの動きにも気をつけろ!」

 

レグルスはザボエラ、キルバーン、ハドラーの動きに警戒しながら2人に警告した。

ザボエラは瓦礫の陰から笑みを浮かべて様子を見ており、キルバーンはソアラのそばで死神の鎌を首に当てたまま座っていた。ハドラーは壁に叩きつけられたまま、ダイを睨みつけていたが、まだ動く気配はなかった。

 

「おうよ!!!姫さん!敵の1匹を凍らせて動きを止める!協力してくれ!ヒャダイン!」

「ええ!ヒャダルコ!!!」

 

ポップとレオナは魔法で足元を氷漬けにし、一時的に動きを止めたが、超魔生物はすぐに足を動かして氷を砕き、拘束を破った。

 

「ダメだわ!動きを止められない…!」

「メタパニ!」

 

レグルスは混乱魔法を放ったが、超魔生物は動じず、レグルスに赤い目を向けてきた。その様子に、レグルスは目を見開いた。

 

「メタパニが…効かない!」

「ヒヒヒッ!そりゃそうじゃろうよ!」

 

ザボエラは瓦礫の後ろから頭だけ出し、楽しそうに笑いながら、メタパニが効かない理由を告げた。

 

「この自立型、超魔生物はのう…元々はメタパニ対策で作られたのじゃ!キラーマシンと超魔生物を組み合わせることでメタパニが効かないようにしてのぅ!」

「メタパニ対策…バルジ島でのドラゴンの一件か!」

「そうじゃ!どれだけ力があろうとも、混乱してしまえば意味がないからのぅ…だが、そのおかげで自立して動くという機能を追加することもできたわけじゃ!アイデアを提供してくれたお主には感謝しないとのぅ!キ〜ヒヒヒッ!」

「くっ!」

 

レグルスは自立型超魔生物の誕生に自分が関わっていた事実に顔を歪め、ポップとレオナに小声で話しかけた。

 

「ポップ、レオナ!私は先にザボエラを倒す…!指揮しているザボエラを倒せば、超魔生物も動きを止めるかもしれん!」

「ええ!頼んだわ!」

「分かったよ!なら…目眩まししてやる!イオラ!!!」

 

ポップが超魔生物に向けて爆発魔法を放つと、爆風で一瞬だけ視界が悪くなった。

 

「今だ!行け!」

「ああ!レムオル!!!」

 

レグルスは魔法で姿を消し、超魔生物の脇をすり抜けてザボエラへ一気に迫り、剣を振り下ろそうとした――が、剣が届く寸前、超魔生物の赤い光の目と目が合った。

 

「なっ!…がああっ!!!」

 

ザボエラに届く前に、レグルスは超魔生物の強烈な蹴りを喰らい、小さな体は吹っ飛ばされて入り口近くの壁に叩きつけられた。

 

「っ…!…がはっ!」

 

レムオルが解除され、床に倒れたレグルスは全身の骨が砕け、激痛に震えながら口から血を吐いた。

 

「レグ!!!」

(レグルス様!!!)

 

ダイとラーハルトはレグルスが倒れる様子に驚愕し、声をかけたが、レグルスからは返事も動きもなかった。

 

「レグ君!今助けるわ!」

 

レオナは回復呪文をかけるため、急いでレグルスのもとへ駆け寄った。

 

「なんでだ!?…あいつは姿を隠していたはずだ!!!なんで居場所がバレた!?」

「ヒヒヒッ!これも対策の一つじゃよ!」

 

ポップが疑問を叫ぶと、ザボエラが瓦礫からまた顔を出し、誇らしげに笑いながら言った。

 

「そやつは魔法で姿を隠せるようじゃからのぅ…その対策として、熱を感知するモンスターを超魔生物の素材に使ったのじゃ!!!姿は隠せても…体から発する熱までは隠せんからの!前回の課題をクリアし、改良したというわけじゃよ!キ〜ヒヒヒッ!!!」

「モンスターを…素材に…?」

「おのれえええっ!!!」

 

ラーハルトはレグルスがやられたことに怒りを爆発させ、槍を握りしめたまま一気に敵へと駆け寄った。

 

「ハーケンディストール!!!」

 

ラーハルトの攻撃により、レグルスを蹴り飛ばした超魔生物の片足が切り落とされ、蒼い血が傷口から噴き出した。

 

「地雷閃!!!」

 

敵の反撃をかわしながら、ラーハルトはもう一方の足にも連続で攻撃を加えた。槍の攻撃力が高くないため、同じ箇所を何度も切りつけ、ついに両足を切断した。超魔生物はバランスを崩し、床に大きな音を立てて倒れた。

ラーハルトは倒れた敵の腕に近づき、見えない速さで槍を振るい、さらに攻撃を仕掛けた。

 

「地雷閃!!!…っ!槍が!」

 

超魔生物の腕を斬り落とすと同時に、金属音と共に槍が壊れた。ラーハルトはそれを見て、心の中で同僚のカナルに謝った。

 

(…すまないカナル…!)

 

すぐさま近くに転がっていた別の槍を拾い、感触を確かめながら装備すると、倒れた超魔生物の上に飛び乗り、槍を振り下ろして別の腕を斬りつけた。

 

「再生速度が早かろうと関係ない!再生速度を上回る速さで、バラバラに切り刻んでくれる!!!」

 

怒りに満ちた表情で敵を睨みつけ、ラーハルトは目にも留まらぬ速さで槍を振るい、超魔生物の肉体を連続で切り裂いた。

再生が追いつかず、体の部位が欠損していき、蒼い血と肉片が周囲に飛び散った。

 

「ラ、ラーハルトのやつ…おっかねぇな…」

 

ポップは切り刻まれる敵を見て思わず頬を引きつらせながら、迫ってきた別の超魔生物に魔法を放った。

 

「メラゾーマ!!!…やっぱ、駄目か!!!」

 

炎の呪文は直撃し、皮膚の表面を焼いたが、ダメージは瞬く間に回復されてしまった。超魔生物はなおもポップを追ってきたため、彼は走りながら周囲を見回した。

 

「魔法は効かねぇ…けど!ダイとラーハルトなら…!」

 

ポップがダイの方に目をやると、ダイは空に雷雲を呼び出し、呪文を唱えた。

 

「ライデイン!!!」

 

天井の穴から雷が落ち、ダイの剣に命中した。紋章の光が輝きを放ち、ダイは闘気を集中させて技を繰り出した。

 

「ストラッシュ!!!」

 

雷を纏った一撃が超魔生物を直撃し、黒煙が立ち上ると共に、敵の体は痙攣しながら震え始めた。しばらくして、赤い目の光が消え、巨大な体が地面に倒れた。

 

「よし!流石ダイだ!」

「はぁ…はぁ…!!!…け、剣が…!」

 

ダイは勝利を確信して剣を見下ろしたが、竜の紋章の力に耐えきれなかった剣はそのまま手の中でボロボロと崩れ落ちた。

その様子に唖然としたものの、すぐに気持ちを切り替え、ポップを追っていた超魔生物に駆け寄ると、紋章を光らせて拳を叩き込んだ。

 

「うおおおおっ!!!」

 

拳の一撃を受けた超魔生物は仰け反り、仰向けに床へと倒れ込んだ。

 

「ば…馬鹿な!ワシの…超魔生物が…!!!」

 

3体いた超魔生物のうち、1体は四肢をバラバラにされ、1体は機能を停止し、もう1体も倒れて動かなくなったことで、ザボエラは鼻水を垂らしながら顔を青ざめさせて呆然とした。

 

「…あの人形…いいところまでいったようだけど…竜の騎士の子供と魔族の青年相手では厳しいようだね…」

 

キルバーンは戦況を見つめながら、敗北の可能性を感じていた。その背後、瓦礫の陰から、相棒のピロロがニコニコと笑いながら姿を現した。

 

「キャハハハッ!このままじゃザボエラの人形が負けちゃうかもね〜!ねぇ!ねぇ!どうする?負けたら面白くないから手を貸そっか!」

「ウフフフッ!それは、良い考えだね…ピロロ!ここで奴らを確実に始末するためにも…手を貸すとしよう」

 

キルバーンはソアラの首筋に当てていた鎌を離すと、巨大な鎌を回転させ始めた。風を切る音と共に、玉座の間に人間には聞き取れない不気味な音が鳴り響いた。

 

「レグ君…怪我はどう?」

 

レオナはベホマをかけ続けながら声をかけた。レグルスは地面に倒れたまま、骨の修復を感じ取りながら答えた。

 

「…骨はあらかた修復した…あといくつかの骨を…」

「っ…!う…あ…!?な、なに…これ…!?」

「レオナ?」

 

レオナは突然呪文を中断し、頭を抱えて苦しみ出した。レグルスはその様子に目を見開いた。

 

「いやああああっ!!!」

「レオナ!どうした!?」

「ぐっ!…ああ…!な、なにが起きている!?…目が…!!!」

「!!!」

 

レグルスが視線を移すと、ラーハルトもふらつきながら頭を抱え、超魔生物の体から転がり落ちていた。

 

「う、わあああっ!!!こっちに来るなぁ!!!メラゾーマ!!!」

 

ポップも何もない空間に向かって魔法を放ち、悲鳴を上げていた。

 

「ポップ!!!レオナ!!!ラーハルト!!!どうしたの!?」

 

ダイは仲間たちの異常な行動に動揺していたが、他のメンバーのように混乱している様子はなかった。レグルスは先ほどまで部屋に鳴り響いていた音が原因だと察し、キルバーンを鋭く睨みつけた。

 

「まさか…死神!貴様の仕業か!?」

「!!!さっきの不気味な音!」

 

レグルスとダイがキルバーンに鋭い視線を向けると、キルバーンは鎌を肩に担ぎ、楽しげな声を上げた。

 

「ウフフフッ!正解〜!僕が装備しているこの鎌の名は《死神の笛》!」

「死神の笛!?」

「この鎌は振るうたびに、人間にはほとんど聞き取れない高周波の音を発するんだ。戦っている相手は知らないうちにその音によって聴覚から視界を狂わされ…やがて全身の感覚を奪われる!…という仕掛けさ。お仲間の人間や、魔族の坊やもそれでやられたってわけさ」

「くっ!」

 

レグルスはキルバーンを睨みながら、歯をギリッと食いしばった。

 

「それにしても…」

 

キルバーンはダイからレグルスへと視線を移すと、その反応から確信を得たように内心で笑った。死神の笛の効果も毒も効かず、どこかで見覚えのあるその顔に、先代の竜の騎士バランの面影を重ねた。

 

「今ので確信したよ…君、今代の竜の騎士だろう?」

「!!!」

 

レグルスの正体を見抜かれたことで、ダイとレグルスは驚きと焦りの色を浮かべた。

 

「ウフフフッ!やっぱりそうか!まさか…竜の騎士が生まれ変わり、しかも、息子であるダイの側にいたとはねぇ…道理で、父親が人間に処刑されたと言っても勇者君の動揺が少ないわけだ。そりゃ、父親の生まれ変わりが近くにいれば、ショックも少ないよねぇ?」

「…っ!」

 

ダイは動揺を隠しながらもキルバーンを睨み返し、キルバーンは楽しげに鎌の先をレグルスに向けて宣言した。

 

「ウフフッ!竜の騎士が子供の君でよかったよ…大人だったら始末も難しかったからね……覚醒していない子供のうちに…確実に、刈り取る!!!」

「くっ!これ以上…俺の大切な人を奪わせたりしない!!!うおおおっ!!!」

 

ダイは額の紋章を輝かせ、キルバーンに向かって駆け出した。だが、超魔生物が立ちはだかり、腕を振り下ろして攻撃してきた。

 

「ぐっ…!たあああっ!!!」

 

ダイは敵の腕を受け止め、闘気を纏わせた拳で超魔生物を殴りつけた。殴られた敵は吹き飛び、壁に激突した。

 

「はあ!はあ!はあ!」

 

息を切らしながらダイが睨んでいると、先ほどライデインを受けて機能停止していたはずの超魔生物が赤い目を光らせて再起動し、もう1体の超魔生物も傷を再生させた。そして3体全ての超魔生物が再びダイの前に立ちはだかった。

 

「くっ!早く加勢しなくては…!ホイミ!!!」

 

レグルスは焦りながら、自身に回復魔法をかけ、ダイの戦いを見つめた。

 

「はぁ…!はぁ…!うおおおっ!!!」

 

ダイはトベルーラで宙に浮きながら、何度も拳を振るい、敵を殴りつけた。

殴られた超魔生物たちは倒れこそしたが、いずれも致命傷には至らず、3体ともすぐに回復し、再びダイの前に立ち塞がった。

 

(超魔生物の回復が早すぎる!斬撃ならともかく、打撃では決定打にならない!このままでは…!)

 

レグルスが不安を感じていたその時、ダイが疲労から膝をついた。

 

「っ…!はぁ…はぁ…!」

 

その隙を逃さず、超魔生物が腕を振り下ろした。

 

「ダイ!避けろ!!!」

「うっ!!!」

 

攻撃をかわしきれず、殴られたダイは吹き飛ばされ、よろめきながら立ち上がったところを、超魔生物が腕を伸ばして捕まえた。

 

「ぐ、うああああっ!!!」

「ダイ!!!」

 

超魔生物は捕らえたダイを持ち上げ、握り潰そうと力を込めた。レグルスは助けに行きたくても自分の力では敵わないと分かっていたため、額にあるはずの紋章を思い浮かべ、心の中で必死に祈った。

 

(竜の紋章よ…!頼む!私に力を…!ダイを助ける力を私に…!)

 

しかし、どれほど念じても、レグルスの額に紋章が浮かび上がることはなかった。

 

「くそっ!!!なぜだ!?なぜ、紋章が出ない!!?このままでは…!」

「うっ…うううっ!!!」

「ダイ!!!」

 

ダイの苦しむ声に、レグルスは思わず立ち上がり、ダイのもとへ駆け出した。だがその前に別の超魔生物が立ち塞がり、巨大な足を振り上げ、攻撃を仕掛けてきた。

 

「ぐあっ!!!」

 

攻撃を完全には避けきれず、レグルスは蹴られて吹き飛ばされ、壁に激突した。

 

「っ!がはっ!……お…のれっ!!!」

 

血を吐きながらも、レグルスは激痛に震える体を奮い立たせ、回復魔法を唱えた。そして顔を歪めながら、超魔生物を睨みつけた。

キルバーンとピロロは、その様子を見て楽しげな声を上げた。

 

「ウフフッ!いい姿だねぇ…奥さんと子供の危機に、君は何も出来ず、地面に這いつくばるしかできない」

「情けない姿!こんなに弱っちいなんて、竜の騎士って大したことないね!仲間がやられても、だ〜れも助けられない!家族が苦しんでも助けられない!それで天下の竜の騎士なのは笑っちゃうね!キャハハッ!!!」

「くっ…!貴様ら…絶対に、許しはしないぞ…!!!」

 

レグルスは怒りで体を震わせながら、殺気を込めてキルバーンとピロロを睨みつけた。

ピロロは大げさに怯えたふりをして岩陰に隠れ、その後ろからニヤニヤと顔を覗かせた。

 

「うわわっ!怖い!怖い!弱いくせに生意気だ!!!」

「そうだね、ピロロ…けど、弱いのはまだ力を使えない子供だからだ…いずれ大人になれば、紋章の力を使えるようになり、僕たちにとって脅威となるだろうね」

「じゃあ、無力な子供のうちに始末しようよ!」

「ああ、ピロロ…そうしよう!ザボエラ、超魔生物にあの子供を始末するよう指示を――」

 

キルバーンが振り返ると、ザボエラとハドラーは死神の笛の影響で幻覚を見ており、異常な行動をしていた。

 

「ギョエエエェエ!!!ド、ドラゴン!?ワシは敵ではないわい!こっちに来るではない!!!」

「おのれえええ!アバン!貴様、生きていたのか!!!」

 

ザボエラは何かに追われるようにふらふらと走り回り、ハドラーは柱に向かってヘルズクローで切りつけていた。

 

「あれれ?笛の効果が出ちゃったみたいだね!」

「…笛の効果はすぐに切れる。放っておこう。竜の騎士を今すぐ始末できないのは残念だけど…まあいい、どうせ時間の問題だ」

 

キルバーンが視線を向ける先では、ダイを掴んだ超魔生物が力を込めていた。ダイの体からは骨の軋むような音が響いた。

 

「ぐああああっ!!!」

「ダイッ!!!」

 

ダイの苦痛の叫びに、レグルスは悲痛な声を上げた。

 

「ぐううぅっ…!」

 

ダイは紋章の力を徐々に強め、額の青い光が次第に増していき、やがてその輝きは爆発的に強まった。その輝きに呼応するように、レグルスの頭に激しい痛みが走った。

 

「うおおおっ!!!」

 

ダイの紋章が閃光のように輝くと、瞬間的に力が解放され、超魔生物の手を引きちぎった。肉片と血が飛び散る中、拘束から解かれたダイは地面に転がったが、紋章の力を使いすぎた代償で体力を使い果たし、立ち上がることができなかった。

 

「ダイ!立て!こちらへ来るんだ!!!」

「…レグ…もう…力が…」

 

レグルスは怪我でふらつきながらも、ダイに近づこうと駆け出した。ダイは疲れた表情でレグルスを見た後、力尽きて気を失い、額の紋章も輝きを失った。

それと同時に、レグルスの頭痛も消えていた。

 

「くそっ!ダイ!」

 

レグルスがダイに近づいたその時、またしても超魔生物に殴られ、壁に叩きつけられた。

 

「があっ!!!…っ…ダイ…!」

 

床に転がったレグルスは、気を失ったダイを見つめながら、悔しさに歯を食いしばった。

 

(くそっ!くそっ!くそっ!…今の私では…死神の言う通り、誰も助けることが出来ない…!)

 

ダイが気を失い、危機的状況であるにも関わらず、自身は怪我で動けない。

焦りと不安が胸を締めつけ、レグルスは心の中で、夢に現れた男――バランの姿を強く思い描いた。

 

(バラン!私の中にいるのだろ!?頼む!!!ディーノが!ソアラが危険な状態だ!みんなを助けるため、私に力を貸してくれ…!!!)

 

前世の自分であるバランに、何度も必死に呼びかけた。

だが、レグルスに何の変化も起きなかった。

 

(バラン!バラン!頼む!……くっ!どうすればいい…!?どうすれば皆を助けられる!!?)

 

その間にも、ダイは手を再生した超魔生物に再び捕まり、気絶したままぐったりと掴まれていた。

 

「ぐっ!ダイッ…!!!」

「ダイ様…!」

 

そこへ、死神の笛の効果から回復したラーハルトとポップが、ふらつきながらも体を起こし、ダイの危機に険しい顔を向けた。ポップは杖を構えて魔法を唱えようとし、ラーハルトはダイに向かって駆け出した。

 

「はぁ!はぁ!ベタ…ぐあっ!!!」

 

ポップがダイに当てないようベタンを発動しようとしたその瞬間、別の超魔生物が素早く腕を伸ばし、ポップを捕らえた。捕まったポップは魔法を唱えることができず、必死に手から逃れようと足掻いた。

 

「くそっ!!!…このデカブツ!手を離――ぐああああっ!!!」

 

超魔生物が手に力を込めると、ポップの体から骨の軋む音が鳴り、激痛にポップの絶叫が響き渡った。

 

「ポップ!!!」

「くっ!!!ポップ、後で助けに行く…!まずはダイ様を!」

 

レグルスはポップの苦しむ姿に顔色を悪くした。ポップの悲鳴を背に、ダイの近くへたどり着いたラーハルトは、超魔生物に飛び移ろうとした。だが、その瞬間、3体目の超魔生物が殴りかかってきた。

 

「!!!避けきれ…ぐあっ!!!」

 

ラーハルトは自慢の脚力で回避しようとしたが、死神の笛の後遺症で動きが鈍っており、攻撃を避けきれなかった。殴られたラーハルトは地面に転がり、その体を起こす前に、超魔生物が容赦なく踏みつけた。

 

「があああっ!!!」

 

ラーハルトの絶叫が響き渡り、レグルスはその光景に顔を悲痛に歪めた。

 

「ラーハルト!!!」

「うっ…ダイ君、ポップ君、ラーハルト…」

 

死神の笛の影響から立ち直ったレオナも、ふらつきながら起き上がり、周囲を見渡していた。そして、地面に転がっている魔弾銃に気づいた。

 

(魔弾銃!あの弾には以前、ベホマを入れたわ!それをダイ君に使えれば…!)

 

レオナは魔弾銃を拾おうと駆け出したが、レオナの動きに気づいたポップを捕らえていた超魔生物が、視線をレオナへと向けた。

その様子を見たレグルスが、即座に叫んだ。

 

「まずい!レオナ!避けろ!!!」

「きゃああっ!!!」

 

警告も虚しく、超魔生物の長い腕がレオナをはたき飛ばし、レオナは壁に激突して気を失い、床に倒れた。

 

(ダイ…ラーハルト…ポップ…レオナ…皆、やられた)

 

レグルスは、倒れた仲間たちを茫然と見渡した。挽回できる策もなく、絶望が胸を押しつぶし、レグルスはその場に項垂れた。

 

(…何故、私には力がない?…私は、誰も救えないのか…?)

 

力なく周囲を見渡したレグルスの目に、部屋の奥――キルバーンの足元で気絶しているソアラの姿が映った。

その姿を見て、レグルスは悔しさに歯を食いしばった。

 

(ソアラ…すまない…ディーノを…お前たちを守ると誓ったのに…)

 

レグルスはもう一度、竜の紋章を出そうと集中したが、何の反応も起きなかった。

無力感に襲われながら、両手を床につき、震える手を力強く握りしめた。

 

 

 

大魔王バーンの居城、バーンパレス。

玉座に座るバーンは、悪魔の目玉から送られてくるアルキード城の戦いの様子を、側近のミストバーンと共に鑑賞していた。

 

「まさか…次世代の竜の騎士が生まれ…それも、先代の竜の騎士バランの倅と共に行動していたとはな…偶然というには出来過ぎだとは思わぬか?」

「…」

 

バーンの問いかけに、ミストバーンは沈黙で応じた。バーンはその無言を気にする様子もなく、顎髭を撫でながら、映像に映る項垂れたレグルスを見つめていた。

 

「だが…竜の騎士とはいえ、所詮は子供。紋章の力を使えなければ、ただの人間の子供と変わらん…ワシの敵ではなかったようだの…このままいけば、我が軍の勝利は確実となる…だが…」

 

勝敗が見えたかに思える戦いだったが、バーンは歴史の中で、最後の最後に盤面をひっくり返す者が現れた例を知っていたため、油断することなく映像を見つめ続けていた。

 

「…この状況がひっくり返ることがあるとすれば…それは、勇者によるものか…あるいは…」

 

そう呟きながら、バーンはワインを口にし、再びレグルスを見つめた。

 

 

 

一方、超魔生物の戦いを見守っていたキルバーンのもとへ、死神の笛の効果が切れ、汗をかいたザボエラと怒りに燃えるハドラーが近づいてきた。

 

「まったく…酷い目にあったわい…!」

「死神!貴様、よくも我らを巻き込んだな!」

「事前に伝えれば、勇者側に不意打ちを喰らわせられないからね…それに…」

 

キルバーンはザボエラとハドラーから視線を外し、楽しげな声で勇者側に視線を向けた。

 

「おかげで…こちらの勝利は確実さ」

 

勇者側のメンバーは全滅寸前にまで追い詰められ、対する超魔生物は超再生によって傷を完全に回復していた。

その圧倒的な力と治癒能力に驚いたハドラーは、製作者であるザボエラに視線を向けた。

 

「ザボエラ!あのモンスター…」

「はい!自立型超魔生物でございます!」

「超魔生物とやらは、あの3体の他に作れるのか?」

「はっ!材料の関係で制作に時間はかかりますが…現在、超魔生物の製造に着手しており、10体製造予定です!」

「あれだけの力…増産できれば…間違いなく魔王軍の勝利は確実なものとなろう!ザボエラ!お前たち親子の研究成果は素晴らしいものだ!!!」

「ははーっ!!!ありがたく存じます!!!…ちなみに超魔生物の功績は…このザボエラだけにございます!!!」

「…ふん、そうか」

 

ハドラーは、実際の功労者がザボエラの息子ザムザであることに気づいていたが、あえてそれには触れず、再び超魔生物の戦いに目を向けた。その視線の先では、超魔生物がダイを掴み、さらに力を込めようとしていた。

 

「うっ…」

 

気絶していたダイは、体にかかる圧力に呻き声を上げた。その危機に、レグルスは叫び声を上げた。

 

「ダイ!!!」

「ピピィーーーー!!!」

 

ダイの友達である金色のスライム、ゴメちゃんがダイの危機に素早く近づくと、超魔生物の顔を翼でビシビシと叩いた。

 

「ピィ!ピピィ!!!」

「ゴメちゃん!避けろ!!!」

「ピィ?ピイィーー!」

 

超魔生物が手を動かすと、叩かれたゴメちゃんはレグルスの方角へ吹っ飛び、壁に激突する寸前にレグルスが手でキャッチした。レグルスは手の中に視線を向けた。

 

「ゴメちゃん!無事か!?」

「ピィ〜……」

 

ゴメちゃんは気絶し、目を回していた。レグルスは仲間たちが次々に倒れていったことに悲痛な表情を浮かべ、ゴメちゃんをそっと自分の胸に抱きしめた。

 

(私に力があれば…竜の紋章よ…頼む、力を!……バラン!頼む!ソアラとディーノを助けるために力を貸してくれ!)

 

レグルスは心の中で必死に願ったが、紋章もバランの記憶も、なんの反応も示さなかった。その時、ザボエラが威張りくさった態度で大声を上げた。

 

「キ〜ッヒヒヒッ!!!どうじゃ!ワシの超魔生物は!!!勇者なんぞ敵ではないわい!さて…そろそろお終いにするかのう!」

 

ザボエラはニヤリと笑い、超魔生物たちにダイ、ポップ、ラーハルトへとどめを刺すよう命令しようとした。レグルスは焦りを募らせ、さらに強く心の中で願った。

 

(誰も失いたくない…!頼む!家族を…友人を…仲間を救う力を私に!)

 

レグルスは目を強く瞑り、信仰する竜の神の姿を思い描いた。

 

(竜の神よ…!どうか…私に力を!!!)

 

レグルスは心の中で神に祈りを捧げた。

その瞬間、手に抱えていたゴメちゃんが小さく光を放った。

 

「ぐっ!!?」

 

レグルスの頭に、これまでにない激しい頭痛が走り、彼はその痛みに目を見開いた。

 

(っ…があっ!?なんだ…これは…!?……頭が!…割れそうだっ!!!)

 

ズキズキズキ……カチリ。

 

強烈な頭痛の後、何かが頭の奥で開かれるような音がした。次の瞬間、目の奥で白い光が点滅しはじめ、レグルスは思わず目を閉じた。

 

その白い光の中で、彼は自分が大人になった姿──バランの姿を見た。

 

(あ…れは…!あの姿は!)

 

レグルスは驚きながらも、とっさに手を伸ばした。

 

(バラン!!!)

 

その指先がバランに触れた瞬間、膨大な量の映像がレグルスの中に一気に流れ込んできた。

 

それは──先代の竜の騎士、バランの記憶だった。




ラーハルトの武器が使い捨てみたいになるのは、ラーハルトの高い実力に武器が耐えきれず、すぐ壊れてしまうからです。

レグルスの頭痛の原因は、ダイ君が出した紋章と共鳴したためです。ただ、共鳴だけでは記憶しか戻らないので、本当は使いたくなかったけど…ゴメちゃんを一度だけ使います!

神の子が神の涙を使い、神に祈りを捧げる。

報告:誤字脱字修正しました!報告ありがとうございます。
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