ダイの大冒険 ―次世代の竜の騎士ー   作:キャットテールの鈴

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前世の記憶を思い出し、竜の紋章を発現させたレグルスは、モシャスでバランに変身し、魔王軍との戦いに挑む。


56_竜の騎士編_竜の騎士の戦い

額に竜の紋章を輝かせた竜の騎士バランは、久方ぶりに装備した真魔剛竜剣の柄を強く握りしめ、小さく呟いた。

 

「待たせたな、真魔剛竜剣…再び、共に戦おうぞ!」

 

真魔剛竜剣からは、まるで主の帰還を喜ぶかのような、共に戦うことを喜んでいるかのような気配が感じられた。バランは剣を軽く振るい、囚われ気を失っている息子のダイに視線を向け、足に力を込め、一気に宙へと舞い上がった。

 

(ディーノ…必ず助け出す!)

 

跳躍とトベルーラを併用し、超速度で敵との距離を詰めた。そして、超魔生物が反応するより早く、バランはダイを捕らえている超魔生物の巨大な腕へ剣を振り下ろした。

 

「私の息子を返せ!!!」

 

振り下ろした真魔剛竜剣は、超魔生物の腕を一刀両断した。切り落とされた腕はダイを握ったまま崩れ落ちそうになったが、バランが素早く腕を伸ばし、巨大な手から息子を救い出して空中で抱きとめた。切り離された巨大な手は、重々しい音を立てて床へと落ちた。気を失ったダイを左腕に抱え、バランは必死に呼びかけた。

 

「ディーノ!ディーノ!!しっかりしろ!」

「…う…っ!…えっ!!?だ、誰!?」

 

ダイはゆっくりと目を開け、自分を抱きかかえる見知らぬ男性の姿に驚愕し、目を見開いた。

 

「私だ!レグルスだ!」

「えっ!レグなの!?」

「この姿はモシャスで変身した姿…先代の竜の騎士バランを模した姿だ!」

「バランって!…じゃあ、その姿は父さ―」

「ちょ、超魔生物よ!あの竜の騎士と勇者を倒すんじゃ!!!」

「!!!」

 

焦ったザボエラの指示を受け、ダイを捕らえていた超魔生物が無事な腕を振り上げ、バランとダイめがけて殴りかかってきた。

 

「危ない!!!」

 

ダイが叫ぶと同時に、バランは息子を抱えたまま空中で敵の一撃をかわした。そして、すかさず真魔剛竜剣を振るい、超魔生物の腕を切り刻みながら腹部へと急接近した。

 

「はあっ!!!」

 

バランは竜闘気を纏わせた渾身の蹴りを超魔生物の腹部に叩き込んだ。巨体は大きく吹き飛ばされ、そのままザボエラに向かって突っ込んでいった。

 

「ぎょええええぇえ!!!」

 

ザボエラは叫び声を上げながら慌てて横に飛び退いた。その直後、超魔生物はザボエラが立っていた壁へ激突し、轟音とともに瓦礫と煙を撒き散らし、壁には大きな穴が開いた。バランはダイを抱えたままソアラのもとへと移動し、そっと床に下ろした。

 

「ディーノ!ここに居なさい!母さんを頼む!」

「母さん…!鋼鉄の体…これは、アストロン…」

 

ダイはソアラの鋼鉄の体に触れながら振り向き、捕らわれたポップと踏みつけられるラーハルトを見て、不安げに叫んだ。

 

「レグ!ポップとラーハルトを助けて…!」

「ああ!二人は必ず助け出す!」

 

バランは小さく頷いて返事をすると、トベルーラで飛び立ち、ポップを捕まえている超魔生物へ急接近した。そして、真魔剛竜剣を高く振り上げ、竜闘気を纏わせて一気に振り下ろした。

 

「大地斬!!!」

 

振り下ろされた剣は、超魔生物の腕を容赦なく切り落とした。バランはすかさず、ポップを捕えていた巨大な手を掴み、そのまま床へと下ろした。拘束が解けたポップは、全身の痛みに顔をしかめながらも安堵の息を吐いたが、次の瞬間、視線の先にバランの背後から迫る敵の動きを捉え、慌てて指を差した。

 

「いつっ…!レグ!攻撃が…!」

 

バランは振り向きざまに剣を大きく振り抜き、反撃してきた超魔生物の腕を斬りつけて軌道を逸らした。そして跳躍して超魔生物の顔面に強烈な膝蹴りを叩き込むと、超魔生物は勢いよく仰向けに倒れ、巨大な体は床にバウンドしながら崩れ落ちた。

 

「お、おお…すげぇ…」

「ポップ、今助ける」

 

ポップは、あっという間に蹴り倒された超魔生物を唖然と見つめ、その手から自分を助けてくれた大人のバラン――レグルスの姿に目を移した。そして驚いたように、まじまじと彼を観察した。

 

「レグ、おめぇずいぶんデカくなったな…トベルーラもつかえるようになってるしよ…」

「竜の騎士に覚醒したことで、今まで使えなかった魔法が使えるようになったのだ。この姿はモシャスで変身したものだ」

「魔法が使えるようになったって…ええー!なんだよそりゃ!一瞬で強くなるなんてずりぃぞ!」

「…そう怒るな」

 

拗ねたように叫ぶポップに、バランは困ったような苦笑を浮かべた。怪我を負ったポップを抱えてレオナの元へと運び、そっと床に下ろすと、すぐさまラーハルトのもとへ向かった。

 

「ポップ!レオナを起こし、治療を行え!」

「おう!…姫さん!起きてくれ!」

「……うっ…」

 

ポップが肩を揺さぶると、レオナは小さく呻き、瞼を震わせて意識を取り戻しかけていた。バランはトベルーラで一気に加速し、ラーハルトを踏みつけている超魔生物の腹に向けて、凄まじい勢いで飛び蹴りを放った。

 

「その汚い足を退けろ!!!」

 

バランの鋭く重い一撃をまともに食らった超魔生物は、またもやザボエラの方へと吹き飛び、ザボエラは悲鳴を上げて必死にその場から逃げ出した。

 

「ヒョエエエエェエ!!!」

 

超魔生物が突っ込んだ衝撃で、ザボエラがいた壁には大きな穴が開き、煙がもうもうと立ちのぼった。息を切らしたザボエラは鼻水を垂らしながら、崩れた壁と倒れた超魔生物を呆然と見つめていた。

 

「…っう!」

「ラーハルト!無事か!!!」

「っ…はい!…助けていただき、ありがとうございます」

 

バランは床に倒れて怪我しているラーハルトを抱きかかえると、そのまま宙に飛び上がり、ポップとレオナの元へ向かった。ラーハルトは、自分を抱えて飛ぶバランの横顔をじっと見つめ、その面差しに主人レグルスの面影を感じ取っていた。

 

「貴方様は…バラン様で合っておられますか?」

「ああ。今はモシャスでバランの姿に変身している」

「その…記憶の方はどうなっているのですか?バラン様でしょうか?それともレグルス様でしょうか?」

「私はバランの記憶を全て思い出した…今の私はレグルスの記憶もバランの記憶も有している」

「……では、俺のことも……覚えておられますか?」

 

少し不安げなラーハルトの声に、バランは視線を落とし、優しく彼を見つめた。そして安心させるように、抱えている腕に静かに力を込めた。

 

「私が、お前を忘れるはずなかろう。ラーハルト」

「……! そう、ですか」

 

ラーハルトはレグルスの記憶が変わっているのではないかと心配していたが、バランから両方の記憶があると聞き、ほっと息を吐いて安心し、小さく笑みを浮かべた。バランは怪我をしたラーハルトを、目を覚ましたレオナのそばにそっと下ろした。

 

「あなた…レグ君よね?やっぱり、面影あるわね…」

 

レオナは自分に回復呪文をかけながら、不思議そうにバランの姿を見つめた。そしてふと、将来成長したダイの姿を思い浮かべた。

 

(レグ君とダイ君は似ているし…ダイ君も大きくなったら、こんな風になるのかしら?)

「皆は治療を優先するように。私は、奴らを倒す」

 

バランは真魔剛竜剣を構え、ラーハルトたちから距離を取り前へと進み出た。その背を見送りながら、ポップが心配そうに声をかけた。

 

「レグ!1人で大丈夫か!?俺たちの回復を待ってからでも…!」

「案ずるな、問題ない」

 

バランは振り向き、余裕を漂わせながら短く告げた。

 

「あとは私に任せろ」

 

ポップたちとのやり取りを聞いていたダイは、バランの大きな背中をキラキラした目で見つめていた。バランは歩き出し、部屋中央でポップを捕まえていた超魔生物の元へ向かった。ザボエラは恐怖でへっぴり腰になりながらも、バランが迫ってくるのに気づくと、倒れている超魔生物を怒鳴りつけた。

 

「な、何してるんじゃ!立て!立つんじゃ!!!その竜の騎士を倒すんじゃあああぁあ!!!」

 

仰向けに倒れていた超魔生物は赤い目を光らせて起き上がると、歩いてくるバランに視線を向けた。バランはある程度の距離で立ち止まると、柄を両手で握り、剣を頭上に掲げた。

 

「私の友人を傷つけておいて…タダで済むと思うな!」

 

玉座の間の天井はポップのベタンにより大きな穴が開き、そこから暗い夜空が見えていた。その上空では、バランが剣を掲げると急速に雲が集まり、雷鳴と共に稲光が夜空を照らした。ハドラーとザボエラは上空の雷雲に気づくと顔を上げ、冷や汗をかいていた。

 

「まさか…」

「ギガデイン!!!」

 

バランが魔法を唱えると雷の雨が轟音と共に空から降り注ぎ、剣に落ちた。

 

「っ…!!!」

 

雷を受けた剣はバチバチと音を立て、周囲には静電気のような電気が走り、ダイたちの肌をピリピリと刺すような小さな痛みが走った。バランは剣を構え、額の竜の紋章を輝かせると、跳躍とトベルーラを併用して一気に超魔生物の頭上へ接近し、竜闘気と雷を纏わせた真魔剛竜剣を振り下ろした。

 

「うおおおおおっ!!!ギガブレイク!!!」

 

雷鳴を轟かせながら剣を頭上から床まで振り下ろすと、超魔生物は縦に切断され、二つに割れた体は大きな音を立てて倒れ込んだ。切断面は一瞬蠢き再生しようとしたが、それもすぐに止まり、赤い目からは光が失われた。

 

「ヒイイィイイ!!!」

「…う…あ……」

 

超魔生物が一撃で倒されたことで、ザボエラは冷や汗を流しながら悲鳴を上げてうずくまり、ハドラーは恐怖で体を震わせ、奥歯をカチカチと鳴らした。

 

「す…すげぇ…」

「…彼も味方で、本当に!…本当に、良かったわ…」

「流石はバラン様!!!」

 

ポップとレオナは唖然としつつも冷や汗を流し、ラーハルトは手を握りしめてキラキラした目でバランを見つめた。

 

「凄い…これが竜の騎士の…父さんの力!」

 

ダイもソアラの側で、父親の圧倒的な戦いぶりに内心ワクワクしながら目を輝かせていた。バランは床に降り立つと、剣先をハドラーたちに向けた。

 

「次は貴様らの番だ…ハドラー!我が師、アバン先生を倒した貴様を私は許しはしない…!ザボエラ!キルバーン!貴様らは私の家族と友人を傷つけた…この場から生きて帰れると思うな!!!」

 

殺気を浴びせられ、死刑宣告を受けたザボエラは悲鳴を上げ、倒れた超魔生物がいる穴の淵に辿り着くと、大声を張り上げた。

 

「ヒ、ヒイイ!超魔生物よ!何をしておる!早くそこから出て、このワシを守るんじゃ〜!!!」

 

ザボエラの声に応じて、超魔生物二体は穴から這い出し、体を再生させながら赤い目を光らせてバランを睨んだ。ハドラーは恐怖で体を震わせつつも手の甲からヘルズクローを出し、キルバーンも無事な手で死神の鎌を構えた。

 

「お、お、おのれええぇえ!!!アバン!!!死してなお、この俺の邪魔をしおってえええっ!!!」

「フフフッ…本当にねぇ…本来1人しか存在しないはずの竜の騎士を、2人も弟子にするなんて…そんな芸当が出来る人間は2度と現れないだろう、ね!」

 

ハドラーとキルバーンは獲物を構え駆け出し、先に突進していた超魔生物二体も腕を振り上げ、バランに襲いかかった。しかし、バランは超魔生物の猛攻を真正面から受け止めると、まったくの無傷で踏みとどまり、次の瞬間、真魔剛竜剣を鋭く振り抜いた。鋭い一閃が走り、超魔生物の手を一瞬で切り裂いた。

 

(なにっ……!? あの超魔生物の攻撃を受けて無傷だとッ!!?)

 

ハドラーは目を見開き、息を呑んだ。強靭な肉体と圧倒的な戦闘力を誇る超魔生物の一撃を受けても傷一つなく、さらにその硬質な肉体を容易く切り裂くバランの剣――。自分との決定的な力の差を悟りながらも、恐怖を振り払うように目を血走らせ、咆哮を上げた。

 

「おのれえええッ!!化け物めがッ!!死ねえええッ!!!」

 

ハドラーはヘルズクローを、キルバーンは死神の鎌を閃かせ、竜の紋章を輝かせて迫るバランに猛然と斬りかかった。だがバランは、速度を緩めることなく二人に接近し、攻撃を紙一重でかわしながら横をすり抜け、剣を横一閃に振るった。

 

「…あ…がっ…!」

 

バランの剣撃は、二人の腹部を斬り裂いた。一拍遅れて、胴体を切断されたハドラーの顔に驚愕が浮かぶ。そして、ハドラーとキルバーンの身体は、腹部から上下に分断され、支えを失った上半身と下半身が床に崩れ落ちた。

 

「やはり……届かないか……」

 

胴体を斬られたキルバーンの目から、光が失われた。

 

「ヒイィィッ!ハ、ハドラー様ァァ!!」

 

ザボエラはハドラーが一瞬で倒れた光景に恐怖の悲鳴を上げた。一方、キルバーンの沈黙を確認したピロロは舌打ちし、冷たく吐き捨てるように魔法を唱えた。

 

「チッ……覚えていろよ、バランッ!!」

 

その言葉を残し、ピロロはその場から姿を消した。ハドラーは、上半身だけとなった体に激痛を感じながらも、震える手で懐からキメラの翼を取り出した。

 

(おのれ……竜の騎士め……!この屈辱、必ず……果たしてくれる!!)

 

心の中で怒りを噛みしめながら、ハドラーはキメラの翼を使いルーラで逃走した。戦場に取り残されたザボエラは、キルバーンが動かず、ハドラーも逃げたことで完全に戦局が傾いたのを悟り、慌ててルーラを唱え、逃げようとした。

 

「ル――」

「マホトーン!」

「あがっ…!」

 

だが、バランの方が一瞬早く魔法を唱えたことでザボエラは魔法を封じられ、声にならない悲鳴を上げた。バランが跳躍し、ザボエラの目前に降り立つと、迷いのない動きでその首を無造作に掴み上げた。

 

「次は貴様の番だ、ザボエラ!!」

「むぶっ!がっ……!!」

 

喉を締め上げられたザボエラは、酸素を求めて必死に足をばたつかせ、呻きながら、必死に命乞いをした。

 

「…お…お助け…を…」

「ことわ―」

「うわああぁあ!!!」

 

ポップたちの悲鳴が背後から響き渡り、バランは咄嗟に振り返った。そこには、二体の超魔生物がダイたちとポップたちめがけ、同時に襲いかかろうとしていた。

 

「くっ!!!」

「むぎゃっ!」

 

皆の危機に、バランはザボエラを無造作に投げ捨て、すぐさまダイとソアラの方へ向かおうとした。

 

(同時に助けることは出来ん!まずはディーノとソアラを…!!!…あれは…)

 

ダイの額が眩しく輝くのを目にしたバランは、瞬時に判断を切り替え、攻撃を受けようとしているポップたちの元へ向かった。超魔生物の前では、ラーハルトがポップとレオナを庇い、その身を挺して立ちはだかっていた。

 

「ギガデイン――ギガブレイク!!!」

 

敵がラーハルトたちへ襲いかかる寸前、バランは剣に落雷を宿し、超魔生物の背後から一気に迫った。雷光をまとった真魔剛竜剣が轟音とともに振り抜かれ、金属の首筋を横一閃に断ち切った。

 

「バラン様!!!」

 

ラーハルトは助けてくれたバランを嬉しそうに見つめた。切断された超魔生物の頭部は、金属音を響かせながら床に転がり、赤い目の光を失って完全に沈黙した。

 

「見て!あいつの動きが…!」

 

首を落とされた巨体は大きくぐらつき、そのまま重々しく床に倒れ込んだ。

 

「動きが止まった…」

「こいつの弱点は、あの機械の頭ってことか……!」

「どうやら、そのようね…」

 

倒れ伏した巨体を見て、ポップたちは敵の急所を悟った。バランはすぐさまダイとソアラの方へと視線を向け、額の紋章に竜闘気を集中させた。

 

「ぐっ…ぎっ…」

「ディーノ!!!」

 

ダイは竜の紋章を額に宿し、超魔生物の攻撃を必死に受け止めていた。背後では、アストロンの効果が切れたソアラが気絶し、床に倒れていた。

 

(守らなきゃ…母さんを…)

 

限界寸前の体で、ダイは歯を食いしばって踏みとどまった。だが体力は尽きかけ、押し返す力はもうなく、ただ攻撃を食い止めるだけで精一杯だった。

 

「紋章閃!!!」

 

バランは額に収束させた竜闘気を放ち、レーザーのような閃光が超魔生物の頭を貫通した。頭に穴が開いた敵は動きを止め、赤い目から輝きが失われると巨体は大きな音を立てて床に崩れ落ちた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

敵が沈黙すると同時に、ダイは紋章を消し、その場にへたり込んで息を整えた。バランはすぐに2人の元へ飛来し、荒い息をついているダイの頭に大きな手を置いてワシワシと撫でた。

 

「ディーノ…よくぞ母さんを守った!」

 

バランの言葉には、誇らしさと優しさが滲んでいた。ダイは荒い息をつきながらも、バランの言葉に嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「はぁ…はぁ…うん!」

 

バランはしばし息子の頭を撫でた後、静かに手を離した。そして表情を引き締め、再びザボエラの元へと歩み出した。

 

「ザボエラ…貴様の作り出した人形どもは、全て倒した。あとは、貴様だけだ!」

「ヒイイ!お、お助けを…!!!」

 

ザボエラは膝をつき、頭を深く垂れて必死に命乞いをした。バランは少し離れた場所に立ち、冷ややかな眼差しでその様子を黙って見下ろしていた。すぐに止めを刺しに来ないバランの態度に気づいたザボエラは、内心でほくそ笑みながら、頭の中で逃げる算段を巡らせた。

 

(ヒ、ヒヒヒッ…バカめ…!超魔生物はただの時間稼ぎ…すぐに殺さないところを見ると、こやつも他の間抜けな人間と同じじゃ!謝罪すれば改心したと考え、情けをかける…間抜けなやつよ!……!……よし、マホトーンの効果も切れた!ここに留まる理由はないわい!!!)

 

ザボエラはおどおどと顔を上げ、冷や汗を垂らしながらもどこか不気味な笑みを浮かべ、すかさず呪文を唱えた。

 

「ヒヒヒッ!じゃのう!ルーラ!!!」

 

しかし、呪文は発動しなかった。

 

「……っ!?な、なぜじゃ……?」

 

ザボエラの顔から笑みが消え、恐怖の色が浮かんだ。焦って何度も呪文を繰り返した。

 

「ル、ルーラ!ルーラッ!な、何故じゃ!?何故、発動せんのじゃ!!?マホトーンの効果は切れたはずじゃっ!!!」

 

声はやがて悲鳴に変わり、ザボエラは震えながらその場にうずくまった。そんな彼を冷たく見下ろしながら、バランは静かに告げた。

 

「今の貴様は呪文が使えん。唱えるための魔法力がないのだからな…」

「な、なんじゃと…!?どういう事じゃ!」

「自身の体をよく見るがいい」

 

慌てて自分の体を確認したザボエラは、背中に突き刺さった五本の白い羽を見つけた。羽先からはキラキラと光が微かに漏れており、それを鷲掴みにした瞬間、ザボエラはその羽が持つ効果を思い出し、愕然とした。

 

「こ、これは……ガルダンディーの白い羽……!い、いつの間にワシの身体に……!?」

「ガルダンディーの白い羽には魔法力を奪う効果がある。マホトーンが切れれば逃げようとするだろうと、あらかじめ予測していた」

「…………ッ!!」

「だからこそ、最初に首を掴んだとき、あの羽を刺した。マホトーンが切れる頃には、貴様の魔力は尽きている……そのようにな」

 

バランの言葉を聞いたザボエラは、鼻水を垂らしながら呆然と見上げた。バランは微動だにせず、その哀れな姿を冷ややかな目で見下ろしていた。

 

「言ったはずだ。この場から生きて帰れると思うな、と…魔法が使えぬ状況で、貴様が私から逃れることなど出来ん!」

「ひっ!!!」

 

バランの冷徹な声に、ザボエラは反射的に背を向けて逃げ出そうとした。だがその瞬間、バランの手が素早く伸び、ザボエラの首根っこを掴んで持ち上げた。床から足が離れ、宙吊りになったザボエラは、足をバタバタとばたつかせながら必死に命乞いした。

 

「ま、ま、待ってくれいっ!!!ワシが悪かった!今後は二度と魔王軍には協力しないと誓う!!!だから、この場から見逃し―…グエッ!!!」

 

バランはその言葉を遮るように、首を掴む手にさらに力を込めた。そして、燃えるような眼差しでザボエラを睨みつけながら、怒気を込めて言い放った。

 

「貴様は、私の家族と友を傷つけ……息子の育ての親を誘拐し……妻の故郷アルキードを滅ぼそうとした……!」

「…………っ!!」

「今さら謝罪や命乞いで許されると思ったか!!!竜の騎士に喧嘩を売った代償は貴様の命だっ!!!」

 

怒りを爆発させたバランは、ザボエラの体をさらに高く、頭上に掲げた。すると、上空から雷鳴が轟き、玉座の間の天井越しに空が光った。その異変に気づいたザボエラは、顔を真っ青にして震え始めた。

 

「ま、まさか……まさかっ……!!!」

「その身で思い知るがいい!!!竜の騎士が天を操った時の力がどれほどのものかをなぁ!!!」

 

ザボエラは、掴まれたバランの腕に必死に爪を立てて抵抗したが、竜闘気に守られたバランの手には傷一つ付かなかった。死を目前にしたザボエラは恐怖で体を震わせながら、叫び声を上げた。

 

「や、やめっ…!止めるんじゃあぁああ!!!!」

「ギガデイン!!!」

 

バランが呪文を唱えると、雷鳴とともに雷の雨が空から降り注ぎ、すべて掲げた手の先に収束した。玉座の間は凄まじい閃光に包まれ、轟音と衝撃が空間を揺るがした。

やがて雷が収まり、静寂が戻った。バランは無言で、手にしていたものを床に落とした。そこには、煙を上げながら黒焦げとなったものが横たわり――二度と動くことはなかった。

 

「……す、すげぇ…」

 

戦いを見守っていたポップとレオナは、竜の騎士の圧倒的な力に体を震わせ、唖然としながらバランを見つめた。ラーハルトは竜の騎士の戦いに高揚し、目をキラキラと輝かせながらバランを見つめていた。

 

「一方的に魔王軍を倒しちまった……なんつうか…レグの奴、おっかねえな…」

「…これが…竜の騎士の力…とんでもない力ね…」

「これほどの力を持っていれば…神話として語り継がれるのも頷ける!流石はバラン様!レグルス様!」

 

ダイもまた、竜の騎士の戦いを興奮と驚愕で冷や汗をかきながら見守っていた。

 

「すごい…レグが敵を全部倒しちゃった!竜の紋章にあんな使い方があったなんて!紋章閃…レグに後で教えてもらおっ!」

「……うっ…ディーノ…」

 

背後から母親の声を聞いたダイは、ソアラが目覚めたのだと思い、嬉しそうに振り返った。

 

「!…母さん!目を覚まして…」

「…はぁ…はぁ…うっ…!」

「…母さん…?」

 

だが、ソアラは目覚めてなどいなかった。冷や汗をかき、苦悶の表情でうめいており、明らかに毒に侵されていた。ダイはその異変に気づき、慌てて振り返り、バランを大声で呼んだ。

 

「レグ!!!母さんが…毒に!!!」

「なんだと!?ソアラ!!!」

 

バランは即座にトベルーラで駆けつけ、剣を床に置いてソアラに手をかざし、解毒のため魔法を唱えた。

 

「キアリー!!!」

「母さん!しっかり!しっかりして!!!」

 

ダイは泣きそうになりながら母に必死で呼びかけた。バランはソアラの毒が強力であることを確認し、冷や汗を流した。

 

(遅毒性の毒…それも極めて強力だ!おのれ!ザボエラめっ!!!このままでは…キアリーで解毒する前にソアラの体力が尽きる!)

 

バランはすぐに状況を察すると、額の竜の紋章を消し、真魔剛竜剣を掴んで自身の手首を迷いなく切りつけた。

 

「絶対に、死なせはせん!!!」

「えっ!?レグ、なにを…!?」

 

突然の行動に驚くダイをよそに、バランは手首から流れる赤い血を睨みつけ、体内の血を変化させた。流れる赤い血はやがて別の色へと変わり――竜の血へと変化した。

 

(ソアラ…今、助ける!)

 

バランは竜の血を口に含むと、ソアラの体をそっと抱き起こし、顔を寄せて口づけを交わした。そのまま、口に含んだ血をソアラの口へと静かに流し込んだ。

 

「…えっ?」

 

ダイは突然目の前で交わされた両親のキスに、目を丸くし、思わず口を開けて呆然とした。バランは顔を上げると、ダイに指示を出した。

 

「ディーノ!ソアラに声をかけ続けろ!!!」

「えっ?あっ、うん!母さん!母さん、お願い、目を覚まして…!」

 

我に返ったダイは母の手を両手で握りしめ、涙をこらえて必死に呼びかけた。ソアラの顔色はまだ悪く、意識も戻らないままだったが、竜の血の効果により、体力の消耗は明らかに緩やかになっていた。

 

「…母さん…俺、母さんに話したいことがいっぱいあるんだ!…俺ね、色んなところを冒険して友達が出来たんだ!」

 

ダイはこれまでの冒険で出会った仲間たちを思い浮かべ、泣きそうになりながらも笑みを浮かべた。

 

「辛いこともあったけど…苦しいこともあったけど…でも、みんな俺が困った時に助けてくれた!…俺が人間じゃなくても側に居てくれたんだ!…俺たちを悪く言う人なんて、誰もいないよ!だから安心して!」

 

声が震えながらも、ダイは必死に言葉を紡ぐ。

 

「……それに、俺、母さんの手料理、食べてみたいな!これからは一緒に居るから…だから、母さんも俺の側に居てほしい!………ねぇ、お願いだよ…母さん…目を覚まして…」

 

最後は涙声になりながらもダイは母の無事を祈り、震える手でソアラの手を強く握り締めた。

 

「ソアラ…我らの息子が…ディーノが呼んでいる。起きて、ディーノを安心させてやってくれ…今まで寂しい思いをさせてすまなかったな…これからは、私もディーノも側にいる…だから、頼む…ソアラ、目を覚ませ…」

「……っ…」

 

ソアラは、どこか懐かしい声に反応し、夫と息子の姿を思い浮かべながら、かすかにまぶたを震わせ、ゆっくりと目を開いた。

 

「……こ…こは…」

 

目を覚ましたソアラは、ぼんやりと視線をさまよわせたが、視界にバランの姿が入ると、目を大きく見開き、涙を滲ませながら顔を歪めた。

 

「…あなた…」

 

ダイとバランはソアラが目を開けたのを見て、安心してホッと息を吐き、声をかけた。

 

「よかった!目を覚ました!」

「ソアラ!私が分かるか?私だ!バランだ!」

 

ソアラはバランをじっと見つめ、震える手を伸ばしながら笑みを浮かべた。

 

「あなた…迎えに来てくれたのね…ずっと、待っていたわ…」

「!!!…そんな…」

(…ソアラ…まだ、記憶が…)

 

ソアラはアルキードの離宮で「夫が迎えに来るのを待つ」と言って残ることを選んでいた。そのため記憶が戻っていないと悟ったダイは、悲しげに眉を下げて俯いた。バランも動揺しながらも混乱させないように話を合わせ、ソアラの頬に手を伸ばしてそっと触れた。

 

「…ああ、そうだ。ソアラ、迎えに来た。遅くなってすまなかったな…これからは、私がずっと側にいる」

「…本当?…ずっと…ずっと、そばにいてくれる?」

「ああ、我らはずっと一緒だ…ソアラ、帰ろう。共に、テランへ…」

「!!!」

 

ソアラは夫の言葉に泣きそうな顔を歪め、バランの手に頬を押し付けて笑顔を見せた。

 

「…っ…ええ!ええ!私たちは、ずっと一緒よ!…お願い、あなた…もう…私のそばを離れないで…ずっとそばにいて…」

「ああ、ずっと一緒に居よう」

「よかった…良かったっ…!」

「…毒は治ったようだな…ベホマ」

 

ソアラの毒は解毒が完了し、バランは回復魔法に切り替えた。治療中だったが、体力が少し回復したソアラは体を起こし、誰かを捜すかのように周囲をきょろきょろと見渡した。

 

「あなた…ディーノを知らない?ディーノ、どこ?」

「!…ディーノは…」

「!!!…あ、あ、あの!…俺!…俺が!……俺が………」

「?」

 

ソアラがディーノの名前を口にしたことで、ダイは目を見開き、自分がディーノだと名乗ろうとしたが、以前に否定された記憶が蘇り、また拒絶されるのではという恐怖で言葉が詰まり、名乗り出せなかった。ソアラはそんなダイの様子に首をかしげたが、ダイの顔にどこか既視感を覚え、じっと見つめた。

 

「…あなたは…」

「ソアラ…分かるか?」

 

バランは落ち込む息子の肩に手を置き、真剣な表情をソアラに向けた。

 

「この子が私たちの息子、ディーノだ!」

「えっ?」

 

ソアラはバランの言葉に目を見開き、ダイをじっと見つめた。見つめられたダイは肩を小さく揺らした。

 

「ディーノ、なの?」

「…うん」

 

ソアラは手を伸ばし、ダイの顔や肩をぺたぺたと触れ、最後に頬を両手でそっと挟むと笑みを浮かべた。

 

「大きくなったわね…」

「…あっ……俺が、分かるの?」

 

ダイは動揺し、目を揺らしながらも期待を込めて母を見つめた。

 

「今、いくつになったの?」

「えっと…12歳になったよ…」

「12歳…そう、そんなに時間がたったのね…」

 

ソアラは悲しそうに眉を寄せながらも微笑んだ。ソアラは自分が死んだと思い込み、ここはあの世で死んだ息子ディーノに再会できたのだと考えていた。ソアラはダイに触れながら、やっと会えた喜びと、成長を見守れなかった悔しさを胸に、ダイの頬を撫でて泣き笑いを浮かべた。

 

「ふふっ…あの世は凄いわね…成長した息子にも会えるなんて…」

「……えっ?…あの世?」

 

ダイとバランはソアラの「あの世」という言葉に困惑の表情を浮かべた。

 

「ねえ…あの世って…?」

「ここに来て良かった…死んだ…夫と息子に会えたのだから…」

「まさか…ソアラ!記憶が戻ったのか!!?」

 

バランはソアラの記憶は戻っていないと思っていたが、ソアラの言葉から記憶が戻った上で、あの世にいると勘違いしていることに気づくと、ソアラの肩に大きな手を置き、真剣に顔を覗き込んだ。

 

「ソアラ!ここはあの世ではない!ソアラは生きている!私とディーノも!!!」

「?…でもあなたとディーノは…11年前に…」

「…確かに私は11年前に死んだ…だが!私は生まれ変わったのだ!!!ソアラとディーノに再び会うために…!もう一度、家族になるために!!!そして…この姿は本来の姿ではない!」

 

バランはモシャスを解除し、体が煙に包まれた。煙が晴れると、そこには子供の姿――レグルスが現れ、バランに似たその子供の姿にソアラは目を見開いた。

 

「あなたは…」

「これが…今の私の姿だ。私がバランとして死んだあと、生まれ変わった私はレグルスと名付けられ、テランで暮らしていた。今まで記憶は断片的だったが…つい先ほど全て思い出した」

「生まれ…変わり…?…ここは、あの世じゃないの?」

「違う。ここは現世、今はアルキード城にいる!ソアラ、お前は生きている!私も!ディーノも!!!」

「生きて…じゃあ!ディーノは!?ディーノは…船が難破して…」

 

ソアラは必死の表情でダイを見つめた。

 

「えっと…俺が乗っていた船は難破したけど…俺だけデルムリン島って島に流れ着いたんだ!赤ん坊だった俺をブラスじいちゃんが拾って育ててくれたんだよ!島は怪物島って呼ばれてて、モンスターしかいないけど、みんないいやつなんだ!!!」

「生きていた…!本当に!本当にディーノなのね!!!」

 

ソアラはダイの肩を掴み、食い入るように顔を覗き込んだ。ダイは母に見てもらえることがただ嬉しくて、笑顔を浮かべた。

 

「うん!本当だよ!あっ、そうだ!母さん、見てて!…むむっ〜!」

 

ダイは額に意識を集中し、竜の紋章を発現させた。青く輝く竜の紋章を見たソアラは、かつてバランが見せてくれた紋章と同じものであることに気づき、目を見開いた。

 

「夫と同じ、竜の紋章…!」

「ねっ!レグ…父さんと同じ竜の紋章で―」

「あ、ああっ…!ディーノ!!!」

「うわわっ!」

 

ソアラは感極まり涙を流しながらダイを抱きしめた。ダイは突然抱きしめられて驚いたが、母の体が震えているのを感じ取ると、そっと背中に手を回し、抱きしめ返した。

 

「生きていた…生きていたっ!!!ディーノ!ディーノッ!お母さん、すぐ気づけなくてごめんね…!あなたを一人にしてしまってごめんなさい!!!」

「!!!…ううん!いいんだよ!…今、こうやって、俺のこと…気づいてくれたから…っ…」

「ディーノ、生きていてくれて、ありがとうっ…!」

「うんっ!…っ…うん!」

 

ダイは泣きながら母を抱きしめ、ソアラも声を上げて泣き続けた。

 

「モシャス」

 

レグルスは自らに魔法をかけ、再びバランの姿に戻ると、ソアラとダイをそっと抱きしめ、小さく笑みを浮かべた。

 

「これからは家族ずっと一緒だ」

 

バランは愛する妻子と共に過ごせる奇跡に、心の中で母なる竜に祈りを捧げた。

 

(竜の神よ…マザーよ…この奇跡に感謝いたします)

 

 

 

竜の親子三人のやり取りを、ポップ、レオナ、ラーハルトは邪魔をしないように少し離れた場所から見守っていた。

 

「へへっ!ダイのやつ、涙で顔がぐちゃぐちゃじゃねぇか!…よかったな…ダイ…ぐずっ…」

「もう!君、ダイ君のこと言える?ポップ君も涙で顔ぐちゃぐちゃじゃない!」

「う、うるせぇやい!…仕方ねぇだろ!ダイにつられたんだよ!」

「フフッ!そうね、一時はどうなるかと思ったけど…ソアラさんとレグ君の記憶が戻って本当によかったわ!」

「ああ、ソアラ様を救い出し、レグルス様とソアラ様、お二人の記憶も戻った!…これからはレグルス様だけでなく、ソアラ様もお守りしなくては!」

「ソアラさんは護衛必要なの分かるけどよ…レグは絶対いらねぇだろ!さっきの戦闘見ただろ!」

「むしろ、私たちが守られた側じゃない…レグ君に護衛は今後、いらなそうね」

「おい!やめろ!そうしたらレグルス様の側にいる理由が減るだろ!!!俺は何があってもあの方の側にいたいのだ!!!」

「…あっそ」

「…貴方らしいわね」

「レグルス様…バラン様…ご家族が揃われたこと、心より祝福申し上げます!」

 

空を覆っていた雷雲は晴れ、満月の光が玉座の間に差し込み、竜の親子を優しく照らしていた。




眠れる姫を目覚めさせるのは、いつだって王子様のキスだよね!
バランの生まれ変わりのファーストキスは血の味です!
…ロマンチックとは程遠いけどね〜。建物はボロボロだし、周囲には死体もあるし。

この小説では、月の満ち欠けはバランとソアラの記憶の状態を表しています。月が欠けている時は記憶も欠けていて、満月となったこの日は記憶が戻ることを示唆していました。



以下、ネタ。
補足:この日は、カール王国でアバン先生が魔王軍を退けた日と同じ日です。

ハドラーはバランと対峙した時、恐怖に震えながらアバンに文句を言った。
「おのれええぇえ!!!アバン!!!死してなお、この俺の邪魔をしおってえええっ!!!」



カール王国フローラの部屋では、月の光が差し込み、部屋にはアバンとフローラの二人きり。
「くしゅん!」
「あら?アバン、風邪ですか?」
突然くしゃみしたアバンに、フローラは心配して声をかけた。
「いえいえ、風邪ではないので心配はいりませんよ!きっと誰かが私の噂をしているのでしょうね!私は人気者ですから!」
まさか噂していたのが元魔王ハドラーとは思いもせず、アバンはニコニコと笑った。
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