ギャグ多め!戦闘シーンなし!誰も死にません!
一部キャラ崩壊注意!主にレグルス!
ザボエラの隠れ家にて、ザムザは父であるザボエラに研究成果をお披露目しようとしていた。
「父上ー!超魔生物が完成しました!見てください!」
「ふん!やっと完成したのかのぅ…アルキード襲撃に間に合ってよかったわい」
「父上、こちらです!」
研究室の真ん中には巨大な超魔生物が鎮座し、ザボエラは研究成果を見上げた。
「ほう!」
「こちらはキラーマシンとさまざまなモンスターを組み合わせて創りました!名付けて――自立型超魔生物!これは、指示するだけで動かすことができます!」
「指示するだけで…動かせる!ヒヒッ!素晴らしい成果ではないか!」
「ありがとうございます!」
「じゃが…実際に動かしてみないことにはのぅ?」
「勿論です!起動せよ!自立型超魔生物!!!」
超魔生物は赤いライトを点滅させ、起動して動き出した。
「おお〜!」
「さらに!この超魔生物には特別な機能を追加しております!それは…自爆機能です!」
「じ、自爆じゃと!?」
「はい!敵に倒されそうになった時には自爆して敵を道連れに――」
ザムザが自信満々に説明していると、超魔生物の赤い目が光り輝き、機械音が鳴り響いた。
「ピピーーー!自爆シーケンス発動!爆発まで5秒前!」
「…ひょっ?」
「…えっ?」
ザムザとザボエラは驚いて超魔生物を見上げた。
「3秒前!」
「じ、自爆じゃと!!?な、何しておる!早く止めるんじゃ!!!」
「無理です!一度起動したら止められないようにしています!」
「1秒前!」
「なぜ止められないようにしたんじゃ〜!!!」
「0!メガンテ!!!」
ザムザとザボエラの隠れ家は爆発した。爆発の跡地には、煤で真っ黒になったザムザとザボエラが横たわっていた。
「す…すみません…父上…どこか設定を間違えたようです…」
「…この…馬鹿息子が…」
ザムザとザボエラは、しばらく動けない怪我を負った。
一方、ガルダンディーは毎晩、レグルスにボコボコにされる夢を見ていることで、精神的に参っていた。
「うわああぁあ!!!バラン様の生まれ変わり怖いーーー!!!なんで毎晩夢に出てくるんですかーーー!!?もう嫌だ!こんなところ、辞めてやる!!!」
「グル!」
ルードは、ガルダンディーの意見に賛同した。
バーンパレスにて、魔軍司令ハドラーは悪魔の目玉より報告を受けていた。
「ハドラー様!ザボエラ様が大怪我を負い、此度のアルキード襲撃には参加できないとのことです!」
「な、何っ!?」
「さらに、ガルダンディー様からも伝言を預かっております」
「何?ガルダンディーからだと?」
「お伝えします。『モウムリ!俺はここを辞める!!!』…だそうです」
「な、なんだとぉーーー!!?二軍団が抜けて、アルキード襲撃はどうするのだっ!!?」
ハドラーの絶叫が、バーンパレスに響き渡った。
ピロロはジャッジマンの調整を行いながら、キルバーンに話しかけた。
「ねぇ!ねぇ!アルキード襲撃はキャンセルだってさ!」
「それは残念!…せっかくのお仕事だったのにねぇ…」
「本当にねぇ…よし!調整完了っと!動け!ジャッジマン!」
ジャッジマンは目を赤く点滅させ、機械音が鳴り響いた。
「ピーッ!ピーッ!エラー!エラー!自爆シーケンスを発動する!」
「えっ!!?ちょっ!?はあっ!!?故障!!?」
「おや?調整が失敗したようだねぇ…」
「メガンテ!!!」
「ひいいいっ!!!リリルーラ!!!」
世界の果てといわれる死の大地にて、大きな爆発が起きた。そこでは、城の主人の怒号が上がった。
「おのれえええっ!キルバーン!!!」
爆発場所は食料貯蔵庫近くで、お気に入りの割れたワイングラスを見つめながら、大魔王バーンの怒鳴り声が死の大地に響き渡った。
アルキード城にて玉座に座る国王はボーッとしながら物思いに耽った。
「…暇だ…」
平和なアルキードで国王は欠伸をした。
ベンガーナのデパートにてレグルスは指輪が入ったショーケースを食い入るように見つめていた。デパートの店員は小さな子供相手でもニコニコしながら接客した。
「お客様!こちらはエンゲージリングになります!」
「エンゲージリング?それはなんだ?」
「婚約指輪、結婚の約束として男性から女性に贈る、愛の贈り物になります!」
「結婚の約束!!!」
レグルスは動揺しながらも脳裏に毎晩夢で見る女性を思い浮かべた。女性が指にエンゲージリングをつけ、ニッコリと微笑むのを想像したレグルスは食い気味に指輪を指差した。
「この指輪を購入する!!!」
「まいど、ありがとうございます!」
レグルスは花売り場の前を通りかかったところ、店員がバラの束を持って営業してきた。
「お客様!こちらバラ1000本はいかがでしょうか?」
「薔薇…何故1000本なのだ?何か意味があるのか?」
「バラ1000本には『一万年の愛を誓います』という意味があり、プロポーズなどの際には大変ロマンチックです!!!」
「一万年の愛!!!」
レグルスは脳裏に夢で見る女性が1000本の薔薇の花束を抱えて幸せに微笑む姿を想像し、財布を取り出した。
「その花束を購入する!!!」
「まいどありがとうございます〜!」
ダイ、ポップ、レオナ、ラーハルト、メルル、ナバラは花束と指輪ケースを持つレグルスを困惑しながら見つめた。
「おめぇ…それなんだよ?」
「エンゲージリングと1000本の薔薇だ!」
「えっ?何?レグ君、婚約するの?」
「こ、婚約!!?」
「そうだ!出来ればプロポーズしたいが…無理なら婚約する!」
「レ、レ、レグルス様!相手はどこの誰ですか!!?そいつの名前は?どこにいますか!?」
「名前は知らない。居場所はアルキードだ!」
「えっ…名前知らないのに、婚約するの…?」
「愛に名前など関係ない!!!私は今日中にプロポーズを成功してみせる!!!」
「え、ええっ!!?」
「ポップ!私の妻の元へ…アルキードへ向けて出発だ!!!」
「妻って…まだ結婚していないでしょ!」
「うーん…まあ、いいや!面白そうだから行くか!ルーラ!!!」
一行はアルキードに向けて出発した。アルキード王都から歩き、森の奥にあるレンガで出来た離宮前までレグルスたちは移動した。離宮前で護衛している兵士は暇そうに欠伸した。
「ふわぁ〜…早く交代、来ないかな―」
「邪魔ラリホー!」
「ふわぁ…急に眠気が…」
兵士2人は扉の前で眠った。魔法を唱えたレグルスはガッツポーズした。
「よしっ!」
「よしっ…じゃねぇだろ!!?」
「レグ!何してるのさ!!!」
ポップとダイが怒って注意するもレグルスは反省せずに言い返した。
「ふん!私の恋路を邪魔するのが悪い!!!行くぞ!私の妻の元へ!!!」
「ええっ!ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
「この兵士どうするんだよ!?おーい!…あいつをここに連れてきたのは間違いだったか!!?」
レグルスは仲間の制止を無視して離宮内に入り、ソアラがいる部屋の扉を勢いよく開けた。
「我が妻よ!迎えに来たぞ!!!」
「あら?初めまして!どちら様でしょうか?」
「私はそなたの夫だ!!!」
「…???…えっと…?」
ソアラは人形を抱えながらレグルスを戸惑いの目で見つめた。レグルスはソアラの目の前で膝をつくと薔薇の花束を差し出した。
「私はそなたに逢うために生まれてきた」
「…えっと…あの…?」
「好きだ。愛している!私と結婚して下さい!!!」
ダイは部屋に飛び込むと慌ててレグルスを背後から羽交い締めにした。
「レグ!ちょっと!何しているのさ!!!」
「ダイ!!?何をする!離せ!!!」
「レ、レグルス様、一体どうされたのですか…?」
ダイは見知らぬ女性からレグルスを引き離すも、レグルスは暴れ、ラーハルトはどうすればよいか分からず、あわあわした。ポップとレオナは人形を抱えた女性に謝りながら近づいた。
「すみません。こいつ、なんか変なものを食ったみたいでして…」
「変な物など食べておらん!!!」
「あの、大丈夫ですか?レグ君に変なことを言われてないですか?」
「変なこととはなんだ!私はその女性にプロポーズしただけだ!!!」
「レグ!ちょっと、黙ってろ!!!」
「ええい!!!ダイ!離せ!!!バイキルト!!!」
ポップが怒鳴るもレグルスは無視して暴れるとダイの腕から抜け出した。
「あっ!ちょっ!レグ!!!」
レグルスは再び女性の前に立つと、真剣な目で見つめた。
「愛している。私と結婚して下さい!」
「えっと…ごめんなさい。私には夫と息子がいるの…」
「その夫は私がなる!結婚して下さい!」
「夫と息子がいるの。ごめんなさいね」
「関係ない!息子は私たちの養子としよう!私と一緒に暮ら―」
しつこく食い下がるレグルスの頭にポップの拳骨が落ちた。
「おめぇ!いい加減にしろ!!!相手やがっているだろ!!!」
「あたっ!」
「しかも…相手、既婚者じゃねぇかよ…!」
レグルスは頭をさすりながらポップをジト目で見つめた、レオナは呆れてため息をついた。
「しつこい男は嫌われるわよ〜!この人が好きならちゃんと段階を踏みなさいよ!」
「…分かった。段階を踏めばいいのだな」
レオナの言葉に何か思いついたレグルスは女性に向き直り、たずねた。
「愛する女性よ…あなたの名前を教えて下さい!!!」
「…普通、そういうのはプロポーズの前に聞くことでしょ!!?」
「えっと…私はソアラと申します」
「ソアラ!美しい名前だ…!!!ソアラよ、私はレグルスと申す!!!是非、私の妻になってほしい!!!」
女性の名前を聞いたレグルスは顔を輝かせ、レオナは聞き覚えのある名前に疑問が浮かんだ。
「そういえば、アルキードの姫もソアラ姫よね?偶然かしら?」
「はい。私がアルキードの姫、ソアラです」
女性の名乗りにダイたちは目を見開いた。
「えっ!!?そうなの!アルキードのお姫様だったの!!?」
「はい」
ダイの質問にソアラはニッコリ笑って答えた。
「姫って!…ここにいたらまずくねぇか!!?入り口の兵士も眠らせているしよ…!」
「ええ!交代の兵士が来る前にここを出ましょう!行くわよ!レグ君!」
ポップとレオナはここを出ようとするも、レグルスはソアラと離れ離れになることを嫌がった。
「嫌だ!!!ソアラと一緒に私はいる!!!」
「ダメよ!ここにいたらまずいわ!!!」
「では、せめてソアラをテランに連れて行きたい!!!」
「ダメに決まってるだろ!それって誘拐じゃねえか!!!」
「レグ、行こう!」
「断る!!!」
レグルスはここに残ることを諦めず、兵士が来る前に離れたいポップたちは焦ってラーハルトに指示を出した。
「ああ〜っ!もう!時間がないってのに…!!!」
「ラーハルト!レグを無理やり連れてこい!!!」
「えっと…レグルス様!失礼します!!!」
ラーハルトはレグルスを抱え、全員、部屋から退出するため、扉に向かった。
「ラーハルト!何をする!!?下ろせ!!!」
「レグルス様、一旦引きましょう!今のままではあなたに勝ち目はありません!!!」
「っ〜!くそっ!!!」
レグルスはラーハルトに抱えられながら、ソアラに向かって叫んだ。
「ソアラ!迎えに行く!!!我らは共にいるべきだ!!!私はそなたを絶対に諦めない!!!必ず、迎えに行く!!!必ずだ!!!」
レグルスたちは退出し、部屋は静けさを取り戻した。ソアラはホッと息を吐くと、抱えている人形に笑いかけた。
「突然来て驚いたわね、ディーノ。…でも…さっきの子…どこか夫に似ていたわ…」
ソアラは驚いていたが、先ほど訪問してきた男の子2人、レグルスとダイを思い出し、久々に楽しそうな笑みを浮かべた。
テランに到着したダイたち一行、レグルスは父、フォンケン王にソアラのことを嬉しそうに報告していた。
「父上!私は運命の女性を見つけました!!!アルキード王国のソアラ姫です!!!」
「ゴホッ!!?…な、なんじゃと?ソアラ姫?」
「はい!ソアラ姫と結婚するため、アルキード王家に書状を書いてもよろしいでしょうか!!?娘さんを下さい、と!」
「おめぇ…まだ諦めてなかったのかよ…」
ポップは呆れてため息をついた。フォルケンは戸惑いつつも息子の申し出に頷いた。
「う、うむ…では、書いてみるとするかの。恐らく、断られると思うが…」
「よろしくお願いします!!!」
レグルスは元気よく父親に返事した。
アルキードにて国王は玉座に座り物思いに耽っていた。
「王位は弟の息子に譲るとして…ソアラはどうするべきか。今のまま離宮でずっと過ごさせるのもな…」
「国王!テラン王家より書状が届いております!」
「…なに?テランだと?」
アルキード国王はテラン王家から届いた書状を確認し、内容に顔をしかめた。
「ソアラをテランの王子に嫁がせたい…だと?ふん!娘をテランのような弱小国家に嫁がせるなど…!…いや…待てよ…ソアラを離宮でずっと過ごさせるぐらいなら他国の王族に嫁がせた方がよいか?」
アルキード国王はテラン王家に返答の書状を書いた。
テラン王国の王の寝室では、レグルスたちが集まりフォルケンから話を聞いていた。
「アルキード王家から返答が届いた…」
フォルケンは手紙から顔を上げると戸惑った表情を浮かべ、それを見たダイたちは内容を察した。
(やっぱり断られちゃったんだね…)
(そりゃそうだろうな…いきなり娘さんを下さい!といわれて許可出す奴はいねぇだろ)
(良かった。レグルス様はまだ10歳の子供…結婚など早すぎる!)
(王族の婚姻は周囲の反対もあり成立は難しいでしょうね…特にテランとアルキードだと国力差があるから尚更…)
レグルスはキラキラ目を輝かせながら父親を見つめた。
「父上!アルキード王家はなんと?」
「アルキード王家はレグルスとソアラの婚姻を…認める!とのことだ…」
「「「ええーーーっ!!!なんで!!?」」」
「レグルス様に結婚は早いのでは!!?アルキードは何故許可を出した!!?」
「ワシも驚いておる…」
ダイたちは驚愕の叫びを上げ、レグルスはニッと笑うと自信満々に胸を張った。
「アルキード王家は正しい判断を下した!!!ソアラに相応しいのはこの私だ!!!行くぞ!アルキードへ!我が妻、ソアラを迎えに行く!!!」
「えっ!ちょっと!?」
「レグルス様!本気ですか!?本気で結婚するのですか!!?」
「本気に決まっている!今日、私はソアラとの婚姻を成立してみせる!!!」
「行動が早い!!!」
「レグルス、待ちなさい。迎えに行くのは明日の方が良かろう。ソアラ姫の受け入れ準備もしたいことだしな…」
フォルケン王の言葉にレグルスは考え込んだ後、渋々了承した。
「…分かりました、父上。ソアラは明日迎えに行きます」
「うむ。それが良かろう」
「ほっ…それでしたらレグルス様、今日は湖にある竜の神殿に行くのはどうでしょうか?」
ラーハルトの提案に皆は頷き、ダイとレグルスは竜の神殿に向かった。
竜の神殿から戻ってきたダイとレグルスは驚きながら互いについて話していた。
「レグも竜の騎士だったんだ…俺と一緒だね!」
「私とダイが竜の騎士ならば、我らは血の繋がりがあるのかもしれんな」
「そういえば、俺たち街の人に兄弟と間違えられたことあったね。俺たち兄弟だったりして!」
「ふむ。兄弟か…」
レグルスは兄弟という関係にどこか違和感を感じていたところ、ダイが握り拳を作り、ワクワクと周りにいたレグルス、ポップたちに報告した。
「ねぇ!ねぇ!俺、コツ掴んだかもしれないんだ!見てて!」
「コツって…なんのだ?」
ポップたちが注目すると、ダイは目を閉じて額に意識を集中した。
「行くよ!むむむ〜っ…うおおぉおっ!!!」
ダイの額に竜の紋章が浮かび、その途端、レグルスは鋭い頭痛がしたことで、痛みに顔をしかめた。
「やった!紋章が出た!」
「す、すげえ!ダイが…戦い以外で紋章を出した!!!」
「これが、お二人に現れるという…竜の紋章…!」
「ダイ君!紋章出せるようになったの!!?」
ポップ、ラーハルト、レオナは竜の紋章を見つめながら驚き、ダイはみんなの様子に嬉しそうに笑った。
「うん!湖に潜った時、なんかコツを掴んだんだ!ようし!今日は紋章の特訓をするぞ!」
ダイは張り切って竜の紋章を出し続けて訓練を行った。レグルスはその間、ずっと頭が痛かった。
(頭が、痛い…)
しばらくして、レグルスはずっと続く頭痛の原因であるダイから距離を取ろうかと考えていたところ、ダイが疲れた様子でみんなの側に近づき額から紋章を消した。
「つ、疲れた…」
紋章が消えた途端、レグルスの頭痛は治り、痛みがなくなったことでレグルスは安堵のため息を吐いた。
(よし、頭痛は治っ…)
「レオナ!回復して!」
「いいわよ!はい!ベホマ!」
レオナはダイに回復魔法をかけ、ダイは体力が全回復した。
「レオナ、ありがとう!よし!体力全開!!うおおおっ!!!」
ダイは体力が回復したことで、一気に紋章の力を解放した。
「ぐあああぁあっ!!!」
その途端、レグルスに強烈な頭痛がおき、あまりの痛みにレグルスは叫び声を上げ、地面に倒れた。
「えええっ!!?」
「レ、レグルス様!!?どうなさいました!!?」
「なんか、急に叫んで倒れたぞ!!?」
突然倒れたレグルスにダイたちは驚き、容態を確認すると、レグルスは気を失っていた。
「気を失ってる…」
「なんでレグ君は急に倒れたの!!?」
「わかんねぇけど、とりあえず、部屋に休ませるぞ!」
ラーハルトは気絶したレグルスを寝室に運んだ。
翌日、目を覚ましたレグルスはベッド上で飛び起き、周囲をキョロキョロと見渡した。
「全て思い出した…!ソアラ!!!ディーノ!!!」
ベッドから抜け出したレグルスは今まで使えなかった呪文がいくつか使えるようになっていると感じると、目を見開いた。
「これは、呪文が使えるようになっている…!モシャス!!!やはりそうか!!!」
レグルスは呪文で大人の姿、バランに変身した。部屋で騒がしくしていると、寝室の扉をノックする音が響いた。
「レグルス様、どうされましたか?」
「あいつ、朝っぱらから何騒いでるんだ?」
「レグ、どうしたの?体調は大丈夫?」
部屋の外にダイとポップ、ラーハルトの気配を感じたバランは扉を勢いよく開けると、目を見開くダイと目があった。
「だ、誰!!?」
「ディーノ!!!」
バランはダイをギュッと抱きしめ、ダイは知らない大人に突然、抱きしめられたことで混乱した。
「えっ!?ええ〜!!?」
ラーハルトはレグルスに面影のあるバランを見ると目を見開き、ポップは知らない大人のバランを警戒し、大声を上げた。
「あなた様は…もしかして…」
「て、てめぇは誰だ!ここにはレグがいたはずた!!!てか、ダイを離せよ!!!」
「ディーノ!よくぞ無事でいてくれた!!!」
「おい!俺の話聞け!!!」
「お、おじさん…誰なの…?」
「私はお前の父だ!」
「えっ?」
「はっ?」
「はい?」
ダイとポップ、ラーハルトは唖然とし、バランはダイを離すと、魔法を解き、レグルスの姿に戻った。
「レ、レグ!!?もしかして、変身呪文のモシャスか!?」
「やはり、レグルス様でしたか!レグルス様、今のお姿は?」
「それに…俺の父さんって、どういうこと!?」
「父さん…!ディーノが私を父さんと!…コホン!詳しくは、父上たちを交えて話そう」
レオナたちも含め、レグルスたちはフォルケン王の寝室に移動した。レグルスは自身が先代の竜の騎士バランの生まれ変わりであり、バランはダイの父親であることを伝えた。
「つまり…オメェはバランの生まれ変わりで…」
「バランさんはダイ君のお父さんってことよね!?」
「先ほどのお姿は、先代の竜の騎士バラン様のお姿。そして、今朝、前世の記憶を思い出した、ということですか!」
「そうだ」
レグルスは皆の質問に頷き、ダイは動揺しつつもレグルスを見つめた。
「俺に父さんが…!えっ?じゃあ俺には、もしかして、母さんがいたりするの?」
「ああ、そうだ。今から私の妻を迎えに行くところだ!行くぞ、ダイ!」
「えっ!?待って!心の準備が…」
レグルスたちは訓練場からルーラで飛び立ち、到着したのはアルキードの森に建っている離宮前であった。ダイたちは見覚えのある建物に目を見開いた。
「ここって…アルキードのソアラ姫がいた場所よね!?」
「じゃあ!俺の母さんって…!」
レグルスは離宮前にいる兵士に近づくと、アルキード王家の手紙を差し出した。
「私はテラン王子レグルス。アルキードのソアラ姫を迎えにきた。アルキード国王の許可は得ている!」
「報告は受けております!お入り下さい!」
レグルスたちはソアラの部屋に入り、レグルスとダイはソアラに近づいた。
「あら?こんにちは!初めまして!」
「レグ、この人が…アルキードのソアラ姫が、俺の母さん?」
「ああ、そうだ。モシャス!」
レグルスはバランの姿に変身し、ソアラは夫バランの登場に目を見開いた。
「あなた…」
「ソアラ待たせたな、迎えに来た。共にテランへ帰ろう」
ソアラは唖然としていたが、バランが頬に手を触れ、撫でているとソアラは唇を振るわせながら笑みを浮かべ、涙を流し、喜んだ。
「っ…ええ!ずっと待っていたわ、あなた!帰りましょ、私たちの家へ!」
「ソアラ、これからはずっと一緒だ…」
バランはソアラに触れるだけのキスをし、ダイたちは突然のキスシーンに目を見開いた。
「!!!…レグがキスした!!?」
「よし、帰るぞ!テランへ!」
ダイたちはソアラを連れてテランへ帰って行った。
テランに着いたダイたち。バランとダイはソアラと向かい合い、ダイは人形を抱えているソアラにおずおずと照れ臭そうに話しかけた。
「えっと…俺のこと、分かるかな?」
「あなたは?」
「俺はダイ!あなたの…息子です!」
「ソアラ、分かるか?この子…ダイがディーノだ!」
「ディーノ?」
ソアラは不思議そうに首を傾げると、人形を抱え直し、笑顔を浮かべた。
「そう!その子もディーノという名前なのね!私の息子と同じ名前ね!」
「…えっ?」
「…何?」
ダイは唖然とし、バランは確認するためソアラに話しかけた。
「ソアラ、私のことは分かるな?」
「ええ!もちろんよ!」
「では…ディーノはどこにいる?」
「?…ディーノはここにいるわ!」
ソアラは人形をディーノと呼び、バランは動揺しつつもある仮説を立てた。
「…ソアラ、ディーノは今年、幾つになる?」
「ディーノは生後3ヶ月よ!」
「そうか…ダイ、こちらに来なさい」
バランは落ち込むダイと共にソアラから離れるとポップ、レオナ、ラーハルトの元へ集まった。
「ダイ、大丈夫か?」
「…母さん、俺が息子だって分からなかった…」
「バラン様、ソアラ様は一体…」
「私も詳しくは…レオナ、ソアラの現状について何か知っているか?」
尋ねられたレオナは、言いづらそうに口を開いた。
「…聞いた話では、ソアラさんは…二人を失ってから心を病んでしまったの…離宮にいたのも療養のためよ」
「そういえば、俺も聞いたことあるな…」
「そうだったのか…先ほどのソアラの返答…恐らく、ソアラの時間は昔のテランにいた時のまま…ディーノはソアラにとって赤子なのだろう…」
「じゃあ…母さんは、俺のこと分からないってこと?…これからも、ずっと?」
ダイは愕然と落ち込んでいたが、バランが突然、ダイを片手で抱え上げたことで目を見開いた。
「ダイ、まだ悲観するのは早い!」
「わっ!?父さん!…突然、何?」
抱っこされたダイは戸惑い、ラーハルトはバランに抱っこされるダイをじーっと見つめた。
(ダイ様…羨ましい…)
「ソアラが赤子しか分からないというなら、ダイも赤子になればいい!」
「えっ?どういう―」
バランは手のひらをダイに向けた。
「モシャス!」
魔法をかけると、ダイは赤子に変身した。
「バブ〜!!!(何これ!?)」
「ダイが赤ん坊になった!!?」
「きゃ〜ダイ君、可愛い!!!レグ君、抱っこさせて!」
「ああ」
バランは赤子のダイをレオナに渡し、レオナはニコニコ笑顔を浮かべて赤子に頬ずりした。
「ダイ君、ちっちゃい!頬っぺたプニプニ〜!可愛い〜!!!」
「バブバブ!!!(父さん何するのさ!!!)」
「レグ、ダイを赤ん坊にしてどうするんだ?」
「ディーノのすり替えを行う!」
「すり替え?」
バランは仲間に対し小さく頷くと、ソアラに近づいた。
「ソアラ、ディーノを抱っこしてもよいか?」
「ええ!はい、ディーノをお願いね」
「任せろ」
バランはソアラから赤子の人形を受け取り、抱え上げると、人形をあやしながらレオナに近づき、ソアラから見えないように背中を向けた時、人形に対し小声で魔法を唱えた。
「レムオル」
人形は魔法で透明になり、その人形をバランはレオナに差し出した。
「レオナ、ダイをこちらへ…この人形はソアラに見つからないよう隠してもらいたい」
「ええ!分かったわ!」
バランは赤子のダイを受け取り、レオナは透明となっている人形を受け取ると、部屋の箪笥に隠した。
「ディーノ、よしよし」
バランは抱っこしている赤子のダイをあやしながら小声で話しかけた。
「ディーノ、泣いたフリをするんだ!ディーノはいつも私が抱っこすると泣いていた!」
「(な、泣くって…赤ちゃんの泣き方なんて分かんないよ!ええっと…)う、うえーん…?」
「なんだその泣き方は!!?真面目に泣け!それではディーノだと分からんかもしれん!ダイがディーノだとソアラに認識してもらうため、しっかり泣くんだ!!!」
「え、ええーん!ええーん!」
「もっとこう、叫ぶようにだ!」
「(ええい!ヤケクソだ!)うえええぇえん!!!うええええぇえん!!!」
部屋に赤子の泣き叫ぶ声が響き渡った。
「よし!いいぞ!そのまま―」
「あなた!何をしているの!?さっきからディーノが泣いているじゃない!!!」
ソアラは少し怒りながらバランから赤子のダイを取り返した。ソアラは赤子のダイを抱え、あやしながら優しい声で話しかけた。
「よしよし、ディーノ…もう大丈夫だからね」
「バブ!(母さん!)」
ダイは母ソアラに息子のディーノと認識されたことで目を輝かせた。
「もう、あなたは相変わらず抱っこが下手ね」
「む…すまん。慣れたつもりだったのだが…」
怒られたバランは困った表情を浮かべていたが、内心では作戦がうまくいったことに安堵していた。見守っていたポップ、レオナ、ラーハルトも、ソアラが赤子のダイを抱えているのを確認してほっと息をついた。
「良かった!ソアラさん、赤ちゃんのダイ君、息子だって分かってくれたみたいね!」
「人形だけしか見てなかったらどうしようかと思ったぜ…にしても、ダイのやつ、赤子の真似うめぇな!」
「俺もバラン様に抱えてもらいた――コホン!失礼…このまま、様子を見よう」
ソアラは赤子のダイに笑顔を向け、優しくあやし続けた。
「ディーノ、よしよし」
「バブ〜(良かった、母さんが俺を見てくれて…)」
赤子のダイはソアラの腕の中で嬉しそうに笑顔を浮かべた。
3時間後。
「ディーノ、よしよし」
「…バブ(俺、いつまで赤ちゃんでいないといけないの?まさか、ずっと…?)」
赤子のダイは母ソアラに抱えられ続けていることで、ずっと赤子でいないといけないのかと不安になってきた頃、バランがダイを抱えるため、近づいてきた。
「ソアラ、ディーノを抱えて疲れただろう。紅茶を入れた、少し休むといい」
「あなた、ありがとう!」
バランはディーノを受け取り、ソアラは席に座ると紅茶を飲み、少し目を見開いた。
「あら?美味しい…!あなた、紅茶の入れ方上手くなったわね!」
「練習したのだ。ソアラに美味しい紅茶を飲んでほしくてな(本当はレグルスの時に覚えたものだがな)」
「ふふっ!私のためなの?ありがとう、あなた!」
ソアラは笑顔で紅茶を飲み、バランはソアラに背を向けると腕の中のダイに小声で話しかけた。
「ダイ、大丈夫か?」
「バブ〜(父さん、俺いつまで赤ちゃんやんないといけないの?)」
「もう少しだ。次は少し成長させる!モシャス!」
ダイはモシャスで先ほどより少し成長した姿に変身した。
「言葉を喋れるようになり、少し歩けるようになったはずだ」
「あ、ホントだ!喋れる!」
「ダイ、ソアラに母さんと言ってやれ!きっと喜ぶ!」
バランは少し成長した赤子のダイをソアラに近づけると、嬉しそうに報告した。
「ソアラ!今、ディーノが喋ったぞ!」
「えっ!本当!!?ディーノ!ママよ!ママって呼んでみて!」
「マ、ママ…!」
「きゃあ〜!ディーノ!凄いわ!喋れるようになったのね!!!」
「えへへっ!」
「ディーノ!私はパパだ!パパ!」
「…ツーン」
「ディーノ?パパはどうした?パパって呼んでくれないのか!!?まさか、イヤイヤ期!!?」
(…父さんは何、言わそうとしているのさ!)
バランはなんとかディーノにパパと呼んでもらえるよう説得したが、ダイはそっぽを向いて無視していた。
「ディーノ…パパが嫌いなのか…?」
(…もう、しょうがないなあ)
しばらくしてバランが落ち込みボソッとつぶやいた言葉にダイは無視するのをやめ、バランに笑いかけながら呼んだ。
「パパ!」
「!!!…ディ、ディーノオォッ!!!」
「ぐえっ!!!」
バランは感極まり、ソアラとダイを勢いよく抱きしめた。
「あなた!もうちょっと優しく!ディーノが潰れちゃうわ!」
勢いが良すぎたため、バランは妻に怒られてしまった。
その後もダイは少しずつモシャスで成長した姿に変身し、モシャスが必要なくなる12歳まで順調にいった。
「ディーノ、おいで!」
「母さん!」
ソアラは笑顔を浮かべ両手を広げ、ダイは駆け寄るとソアラに抱きつき、ソアラは微笑みながら息子をギュッと抱きしめた。
「ディーノ、大きくなったわね!今いくつだったかしら?10歳?」
「もう!母さん忘れちゃったの?俺は今年12歳だよ!」
「ああ!そうだったわ!ふふっ、子供の成長は早いわね!」
ダイはモシャスで変身せずともソアラに息子と認識されるようになっていた。ソアラの言葉にポップは口には出さないが、内心ツッコミを入れた。
(そりゃ、息子が3日ぐらいで赤ん坊から12歳になったら、成長早いと思うよな…)
一方のバランは、妻と息子が笑顔を浮かべ仲良くしている姿に感動していた。
「尊い…」
「失礼します。バラン様、国王陛下がお呼びです!」
「分かった。今、行く」
ラーハルトから知らされた父フォンケンの呼び出しに、バランはモシャスを解除し、レグルスの姿に戻ると扉へ歩き出した。ソアラはバランに似た子供のレグルスに気付き、目を見開いた。
「もしかして…あなた?」
「!!!…ソアラ、今…なんと?」
レグルスは立ち止まり、ソアラにバランと認識されたことに目を見開いた。
「子供の姿をしているけど…あなたよね?」
「そうだ!子供の姿をしているが、私はバランだ!ソアラ、私が分かるのか?」
「あなた、何故…子供の姿に…っ!」
ソアラは強い痛みに頭を抱え、脳裏にアルキードでバランが処刑されたこと、ディーノが乗った船が難破したことを思い出し、目を見開いた。
「…お…思い出した…夫は、父上に…ディーノは船が難破して……2人は、もうこの世には…!」
「モシャス!ソアラ!しっかりしろ!!!」
「母さん!俺はここにいるよ!」
「あなた…ディーノ…」
ソアラの側には変身したバランとダイが駆け寄り、必死で呼びかけた。
「私は確かに死んだ…だが!その後、生まれ変わったのだ!ソアラ!私は今、生きている!バランの記憶も取り戻している!!!」
「生まれ変わった…記憶もある…」
「母さん!俺が乗った船は難破したけど…俺は生きて、デルムリン島に辿り着いた!俺は死んでない!生きてたんだよ!」
「生きていた!…じゃあ…2人はここにいるのよね?生きているのよね?」
「ああ!私は生きて、ソアラの側にいる!」
「もちろん!俺も側にいるよ!」
記憶を取り戻したソアラは涙を流しながらバランとダイを抱きしめた。
「2人とも…生きていてくれて…側にいてくれてありがとう!ずっと、一緒よ!」
「ああ。ずっと、一緒だ!」
「うん!俺たちは一緒だよ」
竜の親子は抱きしめ合い、互いの生存を喜びあった。
ある日の朝、ソアラとバランは厨房で食事を作ろうとしていた。ダイは椅子に座り、両親の作業を眺めていた。
「母さん、何作るの?」
「パンケーキよ!ディーノは食べたことある?」
「ない」
「ふふっ!じゃあ、楽しみにしてね!」
「うん!母さんの手料理か…へへっ!」
「ソアラの作るパンケーキは美味しいぞ。昔、よく作ってくれた」
「へぇ〜!そうなんだ、楽しみ!じゃあ俺は紅茶の準備するね!」
「ありがとう、ディーノ!お願いね!」
ダイは紅茶の準備を終えると、この場にはいないポップたちを思った。
「そういえば、ポップたちのご飯は?」
「ちゃんと用意しているわよ!せっかくですし、皆で食べましょ!」
「分かった!俺、みんなを呼んでくるよ!」
「頼む」
ダイはポップ、レオナ、ラーハルト、メルルを呼び、厨房は賑やかになった。
「ソアラ様!手伝います!」
「ありがとう!じゃあ、これお願いね、ラーハルトさん!」
「ソアラ様、小麦粉や牛乳など、追加の食材をお持ちしました!」
「助かるわ!メルルさんもありがとう!」
「あら?この紅茶、パプニカにはないわね…へぇ〜、いろんな種類の紅茶があるのね!」
「テランは農業国だからな。いろんな種類の茶葉を栽培している。レオナ、よければパプニカに輸出するか?」
「ダイ、せっかくの家族団欒に俺たちも邪魔して良かったのか?」
「もちろん!みんなで食べよう!」
食事の準備をしているところ、カナルが部屋をノックして入室してきた。
「失礼します!レグルス様、ご報告したいことがあります!湖にて獣人族の目撃情報がございました!」
「獣人族…!まさか、魔王軍!!!」
ダイたちは獣人族の知らせに、魔王軍のガルダンディーを思い浮かべて警戒した。
「獣人族の特徴は?」
バランも真魔剛竜剣を手に持ち、いつでも出撃できるように構えた。
「なんでも…ピンクのワニの見た目だとか!また、見かけない戦士もいたとのことです!」
「ピンクのワニ!それって、クロコダイン!!!」
「一緒にいる戦士はヒュンケルだろう!」
「カナル、問題ない。その者らは我らの仲間だ」
「ほっ…承知しました!」
「ダイ、ソアラ。私はヒュンケルとクロコダインをここに連れてくる」
「分かった!」
「ええ!2人の分も用意しておくわね!」
バランはルーラで湖に向かって飛び立った。
テランの湖に到着したクロコダインとヒュンケルは、ダイたちの居場所が分からずにいた。
「ダイたちはどこにいる?テランにいるはずだが…ヒュンケル、何か知っているか?」
「恐らく、城にいるだろう」
ヒュンケルはレグルスが王族であることから城にいると考え、歩き出した。そこへバランがルーラで登場し、二者は見知らぬ突然の訪問者に警戒した。
「クロコダイン、ヒュンケル…ここにいたか…」
じっと二者を見つめるバランを前に、クロコダインとヒュンケルはただ者ではないと察し、冷や汗をかきながら身構え、小声で相談した。
「こ、こいつ、何者だ!?ただ者ではないぞ!ヒュンケル、知っているか?」
「いや、俺も知らないやつだ!…だが、俺たちを探していたということは…恐らく魔王軍の刺客!!!クロコダイン、油断するな!」
「おうっ!」
バランは身構える二者に疑問を持ちつつも、初めてのテランで緊張しているのだろうと察し、落ち着いた声で話しかけた。
「私はお前たちを誘いにきたのだ…」
「誘い…?」
「そうだ。クロコダイン、ヒュンケル…我らと…」
その言葉の後、ゆっくりと口を開き、バランは厳格な雰囲気を持ちつつ提案をした。
「パンケーキを食べないか?」
「「!!?」」
二者は驚愕し、目を見開き、信じられないという表情を浮かべた。
「パンケーキ!?パンケーキだとっ!!?」
「どういうことだ!?ヒュンケル!?パンケーキとは?」
「…パンケーキ、俺が知っているのは料理の名前だが…奴の口から出るはずがない!!!恐らくブラフ。別の意図があるはずだ!クロコダイン、油断するな!」
「おうっ!」
二者はバランを睨みつけ、身構え続けた。
(ヒュンケルとクロコダインは何故、警戒しているのだ?…そうか、パンケーキを知らないからなのか…知らない料理に警戒するのは当然か…)
バランは内心疑問を持ちつつ、パンケーキについて説明した。
「パンケーキとは…小麦粉や卵、砂糖、牛乳などを加え、混ぜた物をフライパンで焼いた料理だ」
「おい、何か語り出したぞ?…もしかして、本当にパンケーキのお誘いか?」
「警戒を解くなっ!恐らく、俺たちを油断させるためだ!隙を見せれば命はないと思え…!」
「おうっ!」
未だ警戒を解かない二者にバランは尚更疑問を持つが、城で待つ妻の手料理を思い浮かべ、背を向け歩き出した。
「まあいい…城へ行くぞ。時間がないからな(ソアラの手料理が冷めてしまう)」
「城…時間がない…まさか!ダイたちの元へ行くつもりか!!?」
「まずいぞ!奴が城へ行けば、戦場となる!ここで止めるぞ!」
「おう!」
ヒュンケルとクロコダインは武器を構え、バランに向かって怒鳴った。
「待て!お前を城に向かわせるわけにはいかない!!!」
「…何?」
バランは足を止めて振り返り、目を細めて睨みつけた。
「…私を城へ向かわせないだと…?」
「そうだ!何としても、ダイたちの元へは絶対に行かせん!!!」
「ここでお前を止めてみせる!!!」
バランはヒュンケルたちと向かい合い、怒りで頬をひくつかせた。
「…止めるだと?…私をここに押し止めるつもりか…」
城に待つソアラとダイ、そして、妻の手料理を思い浮かべたバランは、止められたことで怒りが爆発した。
「貴様ら、一体…何様のつもりだああぁっ!!?」
殺気を全開にし、真魔剛竜剣を構えたバランは、剣先を向け、ヒュンケルたちを威圧した。
「私を止めるというなら容赦はしない!!!貴様らを倒してでも、私はダイたちの元へ行く!!!覚悟しろ!!!」
殺気を向けられたヒュンケルとクロコダインは冷や汗を流し、歯を食いしばり武器を構えた。
「くっ!凄まじい殺気っ…!!!」
「やるぞ!クロコダイン!」
「おう!何としても、ここでやつを止める!!!」
三者は互いの信念を胸に、誤解したまま衝突した。
テランの厨房ではダイ、ソアラ、ポップ、レオナ、ラーハルト、メルルによって料理の準備が進められ、ソアラは卵白が入ったボウルをラーハルトに渡した。
「ラーハルトさん、こちらを泡立てていただいてもよろしいでしょうか?かなり泡立てる必要があるから大変なのだけれど…」
「ソアラ様、お任せください!」
ラーハルトは卵白を高速で泡立て始めた。
「へぇ〜!本格的だな!メレンゲ作ってるのか!」
「なんで卵の白いほうを泡立てるの?」
「これを泡立てたのをメレンゲって言って、パンケーキに入れるとフワフワになるの!普通は手間暇かかりすぎてやらないのだけどね」
「ええ、私も普段はやらないけれど…ラーハルトさんなら出来るって聞いて!そうよね?メルルさん」
「はい!ラーハルトさんは以前、私のお菓子作りを手伝ってくださり、メレンゲも作ったことがございます!」
「やっぱりそうなのね!ラーハルトさんは大変かもしれないけれど…」
「ソアラ様、問題ありません!ダイ様!フワフワのパンケーキ、楽しみにしてて下さい!うおおおっ!!!」
「おお!速い!速い!」
「わーい!フワフワのパンケーキ!」
厨房では楽しくパンケーキ作りが行われていた。
湖ではバランとヒュンケル、クロコダインとの激しい戦闘が行われた。バランは自身にバイキルトをかけ、攻撃力2倍で戦った。戦闘の結果、バランが勝ち、ヒュンケルとクロコダインは地面に倒れていた。
「ぐっ!…つ、強い!」
「これほどとは…!」
「はぁ!はぁ!手こずらせおって…!」
動かない2者を確認したバランは手を額に当て、竜の騎士の象徴である竜の紋章が出ないことに焦っていた。
(やはり、紋章が出ない…何故だ?何が原因だ?もしや…私が成人しておらず、子供だからか?)
バランは疑問を抱きつつもソアラの手料理を優先し、歩き出した。
「まあいい、私は城に行く(家でソアラの手料理が待っている)」
「ぐっ!ダイたちの元へは行かせん!」
「…お前たちでは私を止めることなどできん!先ほどの戦いで実力差が分かったはずだ!それに…何故お前たちが私を止めるのか、理由が分からん!」
バランは2者に背を向け、城へ向けて歩き出そうとしたが、その背中にヒュンケルの鋭い声が響いた。
「待て!お前を城へは、皆の元には行かせん!ここは俺の弟弟子の故郷…お前を行かせたとなれば、弟弟子に顔向け出来ん!弟弟子の為にも…お前はここで、倒す!!!」
(弟弟子の故郷…テランを故郷とする弟弟子は私だ…まさか、私のため?…私のためにヒュンケルは私を倒す、と言うのか?…どういうことだ?)
バランはヒュンケルの言葉に少し混乱しつつも、口を開いた。
「…私を倒す、だと?お前は、私を倒せると思っているのか?」
「…思わん!!!」
ヒュンケルはふらつきながら立ち上がると武器を構えた。
「だが!お前の体力を減らし、少しでも時間をかせぐことは出来る!!!…お前は、俺がここで食い止める!!!」
(ヒュンケル、何故だ?…何故そこまでする?…それほどまで私に…パンケーキを食べさせたくないというのか?)
バランは動揺しつつも、ヒュンケルの覚悟に応えるため剣を構えた。
「それほどまで私を止めたいと言うのなら…良かろう!この勝負、受けて立つ!!!」
バランとヒュンケルは武器を構え、互いに睨み合った。
城の厨房では料理が完了し、机には焼き上がったフワフワのパンケーキと紅茶が並べられた。
「出来た!」
「うわぁ〜!パンケーキフワフワ!柔らかそう!」
「ポップさん、焼くのお上手ね!」
「へへっ!まあな!俺、料理得意なんすよ!アバン先生ほどじゃねぇけどな!」
「あら!そうなの?意外ね!」
「レオナは料理できるの?」
「私?やったことないわ!城には専属のコックがいるから必要なかったし!」
「へぇ〜!じゃあ、父さんの料理は?」
「レグは…可もなく不可もなく、普通だな…」
「レグルス様は必要な栄養を取れれば良いと考えており、見た目や味にこだわりありません」
「そうなんだ、ちなみにラーハルトは?」
「えっと…ラーハルトさんは…あまり上手ではないですね…」
「フッ!俺は、食べる専門です!!!」
「…オメェ、威張って言うことじゃねぇだろ!」
厨房では楽しげな話が続いた。そして、食事をしようとしたところでソアラは未だ戻っていない夫を心配した。
「夫はまだ戻らないのかしら?」
「ちょっと時間かかりすぎじゃない?」
「確かに…何かあったのか?」
「じゃあ俺、見に行ってくるよ!ラーハルトはここにいて!母さんたちの側にいて!」
「かしこまりました!護衛はお任せ下さい!ダイ様、よろしくお願いします!」
ダイは城を出ると湖に向かって飛び立った。
クロコダインは冷や汗をかきながら、ヒュンケルと見知らぬ男性とのこれから始まる戦いに注目した。
(始まる…!実力者同士の戦いが…!)
バランは真魔剛竜剣を、ヒュンケルは鎧の魔剣を構え、両者睨み合った。
「勝負―」
「父さーん!ヒュンケルー!クロコダインー!」
空からの呼び声に、バランたちは視線を向けるとダイが飛びながら手を振り、バランたちの元へ近付いているところであった。
「パンケーキ焼けたよ〜!」
「…ディーノ!」
「ダイ!」
「ダイッ!…ん?今、父さんと言わなかったか?」
ダイは着地すると、武器を持つヒュンケルとバランを不思議そうに見つめた。
「2人とも、何してるの?訓練はご飯食べてからにしようよ!」
「ダイよ!聞きたいことがある!この男はお前さんの父親なのか!?」
「うん!レグが俺の父さんの生まれ変わりだったんだ!」
「何…レグだと!?」
ヒュンケルとクロコダインはバランを探るように見つめた。
「まさか…お前は、レグなのか!!?」
「む?気づいていなかったのか?…そうか、この姿を見せたのは今回が初めてだったな…」
バランは魔法を解き、煙が晴れ、レグルスが姿を現すと、ヒュンケルたちは目を見開いた。
「レグ!」
「…どうりで私に戦いを挑んできたわけだ…私を敵と勘違いしたのだな?」
「そうだ。魔王軍の刺客と考えていた…まさか、レグが魔法で姿を変えていたとはな…!」
「はぁ…俺はお前のためと思い、決死の覚悟で戦うつもりだったのだがな」
ヒュンケルはレグルスをジト目で見つめ、レグルスはバツが悪そうな顔をした。
「む。すまない、どうりで話が噛み合わないと…だが、その気持ちは嬉しく思う」
「ねえ!ねえ!早くしないと、パンケーキ冷めちゃうよ!」
ダイの言葉にレグルスは頷き、先ほどの質問をもう一度、2者に問いかけた。
「そうだな。ソアラたちも待っていよう…クロコダイン、ヒュンケル。我らと、パンケーキを食べないか?」
食卓では皆が席に座り、フワフワのパンケーキと紅茶を楽しんでいた。
「ん〜!美味しい!」
「いいわね…一時の平和な時に、みんなで食卓を囲むって…」
「平和って言えば…最近、魔王軍の奴ら大人しくないか?襲撃された街もねぇし、俺たちの前にも姿を現さないしよ…」
「言われてみれば…確かにそうだね」
「油断は禁物だが…今はこの時間を楽しむとしよう…」
「だね!」
その後、魔王軍はしばらく姿を現さなかったという。
Ifルートではソアラさんより先にバランの記憶が戻ったので、ソアラさんの対応がめっちゃ楽になります!
あと、バランとソアラさんにギュッと抱きしめられるダイ君が書きたかったんだ…。ダイ君、可愛いね!
本編は暗い話が多かったので、最後は明るい話にしました!
これにて竜の騎士編は完了です!
次の投稿はだいぶ先になると思いますが、気長に待っていただけると嬉しいです!メインは書き終わったので次からテンポよくいきます!