ダイの大冒険 ―次世代の竜の騎士ー   作:キャットテールの鈴

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テランの王子、半魔族の兵士、家庭教師、魔法使い見習いの4人はテランで修行し、竜の騎士の伝説に触れる話。
原作開始1年前。ダイ(11)、主人公レグルス(9)。


8_家庭教師とテラン観光

ギルドメイン山脈を右手に見ながら西へ向かったアバン、ポップ、カナル、ナバラ達一行は休憩を入れながら2日ほどの時間をかけて深い森の中を歩きテラン王国に到着した。一行はカナルの案内でテラン城に向かう道中にて湖面のほとりを歩いており、アバンはニコニコしながらカナルにテランについての話を振っていた。

 

「いやあ、ここは以前来た時と変わらず綺麗な国ですねぇ。さすが神秘の国と言われるだけあります!」

「アバン様はこの国に来られたことがあるのですか?」

「ええ!私、学者の家系なものでして、この国の伝承にとーっても興味があり、世界が平和になった後、一度この国を訪れたことがあります!ただ、残念なことに声をかけても警戒されてしまって教えてもらうことができませんでした。竜の伝承とか知りたかったのに残念です」

「この国の人々は部外者には警戒するといいますか、よそ者にはあまり協力的ではないことは確かですね…」

「ですが!今回いい機会ですので是非とも現地の人に案内とかしてもらいたいですねぇ!」

「一度王に面会し、そこで許可をいただければ皆アバン様に協力的になるでしょう」

 

ポップはテランに入ってから周囲を見渡し、ほとんどの家が木造建築で道路もレンガなどで舗装されておらず、故郷のランカークスよりも文化レベルが低いことに気づき気落ちしていた。都会の王国に対する憧れがあったため、いろんなお店が立ち並び、おしゃれな街並みを楽しみにしていた分、テランの自然豊かな風景にがっかりしていた。

 

「なんでぇ、王国っていうからどんな大きい建物とかあるかと期待してたけど、これじゃあ国というより村だな」

「なんじゃと?」

「いっ!」

 

独り言に近いつぶやきを聞いたナバラが鋭い目つきでポップを睨みつけ、それに気付いたポップは明後日の方向に目をそらして気まずそうに謝罪した。

 

「わりぃ、つい」

「ふん、まあこれでも王子が生まれてからよくなったのじゃがな。それまでは武器や道具の開発を禁じ、人々は豊かな生活を求めて他国に流れてしまった。今は、以前より生活は豊かになり、人々も増えつつある」

「へぇ、王子様かあ!なあなあ、この国にはお姫様は居ねぇのかよ?」

「いないね。王子であるレグルス様はほかに兄弟はおらんよ」

(なんでぇ、野郎だけかぁ)

 

おしとやかで美しいお姫様が居るのを期待していたポップはまたもや期待外れなことにがっかりしてさらに気落ちしてしまった。

 

一行は湖を通り過ぎ、森を抜けた先にあるテラン城に入るとカナルの案内でアバンとポップは客間に案内され、そこで王の謁見まで待機を命じられた。アバンは椅子に座り慣れた様子でくつろいでいたが、一方ポップは礼儀や作法に疎い自分が格式高い室内でどのように過ごせばよいかわからず緊張した様子で椅子に座り、部屋の中を落ち着きなく見渡してた。

 

しばらくすると、兵士カナルがノックしてから扉を開け、アバンを見ると声をかけた。

 

「アバン様、失礼いたします。王との面会の準備が整いましたためご案内いたします。お連れ様はこちらでお待ちください」

「分かりました。ポップはここで待っていてくださいね」

「分かりました!」

 

アバンが王との面会に呼ばれたため、ポップはそのまま客間で待機し、アバンはカナルの案内で王がいる寝室へと案内された。カナルはフォルケン王の寝室前に到着すると扉をノックした。

 

「王よ、アバン様をお連れいたしました」

「よい、中に入りなさい」

「失礼いたします」

 

カナルとアバンは許可をもらった後、フォルケン王の寝室に入室し、カナルが扉を静かに閉めた。フォルケン王は先程まで書き物をしていた背表紙に何も記載されていない本をベッド横のサイドテーブルに置くと、入室してきたアバンに対し、笑みを浮かべながら挨拶をした。

 

「アバン様ようこそ我が国へおいでくださいました」

「初めましてフォルケン王、お招きいただき光栄です」

 

アバンはフォルケン王にお辞儀をし、挨拶した後、顔を上げると真剣な表情でフォルケン王を見た。

 

「早速ですが今回私を呼んだ経緯を不吉な占い含めて教えていただけますでしょうか」

「うむ、我が国の占い師はかなり当たると評判でな、アバン様もお会いしたナバラは以前にも同様の占い結果を持ってきたことがあった。今回の不吉な占い結果も同様のものと考え我々はこう見ている。遠くない未来に魔王が復活する。と」

 

アバンは内心、魔王が復活する話だろうとは考えていたが、多くの苦難を乗り越え倒した魔王が復活することに、表情こそ変わらなかったが、内心では少し動揺していた。

 

「…なるほど、それで私を探していたのですね。ちなみにこの占い結果はほかの国には伝えないので?」

「残念ながら言ったところで信じて貰えないだろう。世界は平和になり各国で復興が進んでいる。その中で魔王が復活するかもしれないと言ったところで年寄りの戯言で終わるだろう。…たとえ一国の王であろうともな」

「ふむ、残念ながら私が言ってもあまり効果はないでしょう。以前"平和な時代になぜ家庭教師などの仕事をする必要があるんだ"と言われたことがありましたよ。人々にとって魔王がいたことは過去にしたい出来事なのでしょうね。必ずしも平和な時間が長く続くとは限らないのに…」

「信頼できる者にだけ伝えるのはよいが、人々には魔王が復活するということは伏せたほうが良いだろう。これから紹介する王子とその護衛の者にも」

「ではその王子が?」

「はい、アバン様に見て頂きたいのは私の息子、この国の王子レグルス。だが、レグルスは剣や魔法の技術はすでに達人の域に達しておる。あの子にはアバン様との旅を通して人として成長してもらいたいのです」

 

アバンはフォルケン王の変わった依頼内容に疑問を感じながらも、王族を旅に連れていくことの危険性を考えていた。

 

「よろしいのですか?レグルス王子は第1王子、旅は危険もあります。同行させずにこの国で見ることも出来ますが?」

「あの子は強い。そこらのモンスターや人でやられることは無いだろう。それに護衛にはこの国一番の実力者であるラーハルトをつける。…心配があるとするなら護衛の者は魔族と人間の混血児で見た目は魔族に近く、旅の道中厄介ごとが起こる可能性があることくらいかの」

 

アバンはラーハルトの名前を聞いて、以前テラン王国内で起きた事件、テラン王子殺害未遂事件にて王子を救った半魔族の青年のことだとすぐに気づいた。そして、王族であるレグルスと魔族の見た目のラーハルトを何も対策せずに旅をした場合、多くの危険がやってくる可能性があることから、対策が必要だと考えた。

 

「うーん、レグルス王子と護衛の方には何かしら対策したほうがよさそうですね。ではこうしましょう!」

 

アバンはにっこり笑いながらレグルス王子の身分を隠す方法とラーハルトの見た目をごまかす方法を提示し、フォルケン王はその内容に笑みを浮かべながら実施の許可をするのだった。

 

「ではアバン様にレグルスを紹介するとしよう。カナルよレグルスを呼んでまいれ」

「はっ」

 

カナルがレグルスを呼ぶために寝室から退室し、しばらくすると扉をノックする音が部屋に静かに響いた。

 

「父上、レグルスです。入ってもよろしいでしょうか?」

「よい、許す」

 

レグルスが寝室に入室し、すぐさま部屋にいたアバンに気づくが何気ない風を装いフォルケン王の近くまで行き立ち止まるとアバンの方へ体を向けた。

 

「レグルス、新しい家庭教師を紹介しよう。アバン様」

「ええ、初めましてレグルス王子。私はアバン=デ=ジニュアールⅢ世といいます。以後お見知りおきを」

 

レグルスは寝室にいた新しい家庭教師の名前を聞くとそれが誰かすぐに気づき、驚きの表情でアバンを見つめた。

 

「アバン?もしかして、先の魔王ハドラーを倒した勇者アバンでは?」

「おや、ご存知でしたか。私も有名になりましたねぇ」

「あなたの事は本で読みました。会えて光栄です」

 

レグルスはアバンに手を差し出し握手を求め、アバンも笑顔を浮かべると握手を返した。

 

「こちらこそ、ですが今の私は家庭教師のアバンです。旅の最中は私が勇者であることは伏せてくださいね」

「分かりました。…旅?父上、旅とは?」

 

レグルスは少し驚きの表情をしながら、疑問を解消すべくベッド上にいる父親に顔を向け、フォルケン王は小さく笑みを浮かべるとレグルスとアバンを見た。

 

「レグルスにはアバン様と世界を回る旅をしてもらいたい。期間は1年を予定しておる。旅の間は身分を隠し、アバン様の指示に従って行動するように」

「旅に出られるのですか!父上、ラーハルトを同行させても構わないでしょうか?」

「もちろん、アバン様にもご許可をいただいておる」

「感謝する!」

「賑やかな旅になりそうですねぇ。実は私には生徒が1人おりまして、一度みんなで自己紹介としましょうか!」

「では、この城には訓練場があります。アバン様、そちらまでご案内します。父上、失礼します」

「お願いしますねレグルス王子。フォルケン王、失礼いたします」

 

レグルスはアバンを連れてフォルケン王の寝室を後にすると、城の訓練場に案内した。お互い連れを連れてくるため、すぐその場を離れると、アバンは客間に残したポップを呼びに、レグルスは城の警護に当たっているラーハルトを呼びに行った。そして訓練場にはアバン、ポップ、レグルス、ラーハルトの4人が集まった。ポップはレグルスをちらっと見た後、その隣に立つ見た目が魔族のラーハルトをじろじろ見てきたため、ラーハルトは顔をしかめながらポップを睨みつけた。

 

「人をじろじろ見るな!不快だ」

「なあ、なんで肌が紫色なんだ?」

「ふん、俺は魔族の血を半分引いてる。お前たち人間からすると珍しいだろうな」

「へぇ、魔族なんて初めて見たぜ」

 

ラーハルトがポップに対して苛ついている様子に気づいたアバンは咳払いすると自身に注目を集めるようにした。

 

「おっほん、では、自己紹介としましょうか。私は家庭教師のアバン=デ=ジニュアールⅢ世!正義を守り悪を砕く平和の使徒!勇者、賢者、魔法使い!彼らを育て上げ、超一流の戦士へと導くのが私の仕事なのですっ!」

「おおっ!やっぱアバン先生はすげぇ人なんだな!」

「…随分と怪しい人間だな」

(アバン様の正体を知っていなければラーハルトと同様に怪しいと感じただろう…)

 

ポップはアバンのことを尊敬の眼差しで嬉しそうに見つめ、ラーハルトはアバンを睨みつけながら少し警戒し、レグルスは身体を動かしながら激しく自己紹介するアバンに対して少し戸惑った表情を向けた。

 

次にレグルスはその場で一歩踏み出すと、アバンとは逆に落ち着いた様子で自己紹介した。

 

「私はテラン王国王子レグルス。以後、よろしく頼む」

 

ポップはレグルスが王子を名乗ったことにびっくりしながら指さした。

 

「お、おめぇ王子なのかよ!」

「貴様!レグルス様に対して不敬だぞ!」

「いっ!」

 

ラーハルトはポップがレグルスに対して不遜な態度をとったことに怒ると歯をむき出しにして怒りの表情を向けた。ポップがラーハルトの剣幕にビビって少し後ずさりしたため、レグルスはラーハルトを戒めるためすぐに声をかけた。

 

「構わない、ラーハルト」

「…はっ!」

「なんかおっかねぇなあ…、俺はポップ!よろしくな」

「ああ、よろしく」

「…」

 

ポップはラーハルトに対して少し警戒しながらも笑顔を浮かべて挨拶をした。レグルスは返事をすぐ返したが、一方のラーハルトは目をつぶりポップの挨拶に無反応を示したことで、ポップはムッとした後、ラーハルトを睨みつけた。

 

少しして目を開いたラーハルトは不愛想な態度でアバンとポップに対し自己紹介をした。

 

「…俺はレグルス様の護衛任務に就いているテラン王国の兵士ラーハルト」

「けっ!そうかよ」

 

ラーハルトの自己紹介にポップは突っかかるように返事をしたが、ラーハルトはポップの返事を気にせず無視した。2人の険悪な様子を見たアバンは苦笑を浮かべ、レグルスは無表情で2人のやり取りを見ていた。自己紹介が終わるとアバンはポップの肩に手を置いて笑顔で今後についての説明を始めた。

 

「ポップは私の弟子です!今後はこの4人で旅をしながら共に成長する仲間となります。皆さん!仲良くしましょうね!」

「旅だと?」

 

ラーハルトはアバンの言葉に眉をひそめアバンを見たが、その質問に答えたのはアバンではなくレグルスであった。

 

「私は1年ほどアバン様と共にテランを出て世界を回る旅に出る。ラーハルトには私の供をしてもらいたい、問題ないか?」

「はっ!レグルス様の行くところ、どこにでもお供いたします!」

「頼りにしている」

「ご期待に必ずや応えてみせます!」

 

ラーハルトは先程の不愛想な態度から一変、レグルスに対して笑顔を浮かべながら同行できることを大いに喜んだ。ラーハルトの態度の変わり様にポップは苦笑を浮かべ、アバンは笑顔を浮かべた。

 

「なんつーか…いかにも忠臣って感じだな。王子さんに対しての態度変わりすぎだろ…」

「頼もしい護衛さんですねぇ!道中の安全もグーンと高まりそうです!では自己紹介がすんだところでこれからの予定を話しましょう!」

 

アバンは今後の旅の目的とし、ポップは旅をしながら魔法の授業を受け、レグルスは諸外国を回る中で見識を深めてもらう予定であることを話した。

 

最初の3日はテラン王国に滞在し、ポップに基礎の授業を行うこと、剣の手合わせも行いたい事をアバンが言うと、レグルスとラーハルトは不敵に笑い小さく頷いた。3日間ここで過ごし、4日目の朝にテラン王国を出て南下し、ベンガーナ王国、アルキード王国を回る予定であること、道中は野宿を行いその都度授業や手合わせもしていく予定であることも伝えた。

 

さらに旅の道中を安全なものにするためアバンはレグルスにある提案をした。

 

「レグルス王子の名では旅の最中良からぬ事件に巻き込まれます可能性がありますからねぇ、よろしければ偽名、もしくは愛称で呼ばせていただけないでしょうか?そのほうが親近感も湧いていいと思いますよ!」

「愛称か…私はこういったことには疎い。アバン殿は何か良案がおありかな?」

 

レグルスの提案にアバンは少し悩んだ後、閃いたようでレグルスに対してニッコリ笑いかけた。

 

「では、『レグ』という名はどうでしょう?心の距離もグーンと近くなっていいと思いますよ!私のことも先生と呼んでくださいね」

 

アバンのレグという名前の提案に悪くないと思いながらレグルスは頷いた。

 

「では今日から私はレグと名乗らせてもらいますアバン先生。ラーハルトもそのように」

「かしこまりました、レグ様!」

「…様はいらない、様付けで呼んでは身分の高いものと認識される」

 

様付けで呼ばないようにとレグルスに注意されたラーハルトは驚いた表情をした後、困った表情でレグルスの提案を拒否した。

 

「っー申し訳ございません、それは承服しかねます。人前では名前を呼ばないため、レグルス様と呼ばせていただいてもよろしいでしょうか?」

「む、だが無意識に呼んでしまわないか?」

「ご懸念には及びません!必ずやレグルス様の期待に応えてみせます!」

「そうか、ではラーハルトは今まで通りの呼び方で構わない。ただし、相手が私の本名を知らない場面では私の名前は口にしないようにすること。よいな?」

「はっ!承知いたしました!」

 

ラーハルトが元気に返事をした後、アバンとポップもレグルスの名前について確認した。

 

「では私はこれからレグ君、と呼ばせてもらいますね」

「俺はポップって呼んでくれ、王子さんはレグって呼んでもいいか?」

「構わない、これからよろしく頼むポップ」

「おう!よろしくな!それから…ラーハルトでいいんだよな?」

 

ポップが少し警戒しながらもラーハルトに声をかけるが、ラーハルトは少しムスッとした後、気のない返事をした。

 

「私はレグルス様の護衛だ。必要以上に馴れ合うつもりはない」

「…おめぇ、もうちっとその態度何とかしろよ!こいつと1年一緒とかどんな苦行だよ…」

 

ポップは頭を抱えながらこの先1年間無事に過ごせるか不安を募らせ、レグルスはそんなポップを見ながら少し気の毒に感じたため、問題が起こりそうになった際は間に入ることを考えた。ちなみに、レグルスの考える問題は殺し合いが起きた時のことを言う為、普段は何も対処しないのと同じである。

 

「あともう一つ解決しとかなければならない問題があります!それはラーハルトの姿です!森の中など人気が無いところは問題ないですが、村や町、国についたら魔族の見た目は隠さないとまずいことになります!そのためラーハルトには見た目を変えましょう!」

「…魔族の姿を隠すか。レグルス様の側にいるためとはいえ、なぜ俺が…」

 

ラーハルトは自分に関する話題であったため、アバンの話に耳を傾けたが、内心レグルスの側にいるためとはいえ自分が姿を隠さなければいけないことに少し不満を感じていた。

 

「見た目を変えるったってどうすんだ?変装するのか?」

 

ポップは首を傾げながらどのように見た目を変えるかアバンに疑問を投げかけると、アバンは得意げな顔をしてニッコリ笑った。

 

「こうします!モシャス!」

 

呪文を唱えたとたんアバンを中心に煙が発生し、姿を覆い隠して見えなくなったがその煙はすぐに晴れ、そこには先程までいたアバンはおらず、自信満々に笑いながらピースサインをするポップが現れた。アバンがいなくなり、かわりに現れたポップを見た3人は驚いた顔をし、特にポップは口を大きく開けて現れた自分を指さして驚きの声を上げた。

 

「お、おれぇ!!?先生が俺になっちまった!」

「変身呪文のモシャスか!」

「グッド!レグ君正解です!そうです、変身呪文のモシャスを使えば街中でも騒がれずにやり過ごすことができます!ラーハルトにはこの呪文を覚えてもらいましょう!せっかくなのでみんなも覚えましょうね!」

「なるほど、この呪文を使えば人間に溶け込むことが出来るのか。だが、俺は魔法が…」

「すんげぇ!この呪文を使えば綺麗なねーちゃんに化けられるってわけか!そ、そうしたら、ぐ、ぐへへへ」

 

ラーハルトは以前、呪文の契約をしたことがあったが、契約できた呪文は少なく、また、呪文の発動もほとんどうまくいかなかったため、モシャスも上手くいかないのではないかと考えていた。

一方のポップはボンキュッボンのねーちゃんに変身してあれやこれや色々しようと考えていたが、アバンはポップの考えを見透かしたように乱用させないためポップを叱った。ポップの声と姿で。

 

「こらポップ!この呪文を悪用してはなりません!身につけた力や魔法は人々のために使うべきだと私は思いますよ」

「はい、先生!…なんか自分自身に怒られるって変な気分ですね」

「まずは魔法陣を描いてみましょう!」

 

ポップの姿をしたアバンが魔法の書物片手に魔法の契約のための魔法陣を訓練場の床に3つ分描くと、ラーハルト、レグルス、ポップはそれぞれ魔法陣の上に立ち目を閉じ、契約の儀式を始めた。

 

ポップが魔法陣に乗り、目をつぶってすぐに魔法陣とポップの身体が光り輝いた。光が消えるとポップは自分の身体に新たな力が備わり、モシャスの契約が出来たことを感じ取れたことで大いに喜んだ。

 

「おお!契約できた!さっそく、モシャス!…あれ」

「ポップは契約できましたね!魔法はレベルアップによって使えるようになりますから訓練すればいずれ使えますよ。あとはー」

 

契約できたと喜んだあと、モシャスが発動せずに落胆するポップの横でレグルスとラーハルトはしばらくその場に待機したが魔法陣は光ることはなかった。待機中にモシャスの効果が切れたアバンはポップの姿からもとの姿に戻っていた。

 

「残念ながらラーハルトは契約できなかったですね」

「ぐっ、俺は昔から魔法は得意ではない…」

 

ラーハルトは契約できなかったことで苦々しく顔をゆがめ、ポップはそんなラーハルトを見ながら魔法に関しては自分の方が上だと嬉しそうに胸を張った。

 

「レグ君も残念でしたね」

「…アバン先生、魔法は契約をしなければ使えないのだろうか?」

「ええ、魔法は精霊と契約する儀式を行うことと、レベルアップによって使用可能になります。また、人によっては絶対契約できない呪文もありますね」

「私は…モシャスに限らず今まで魔法の契約をしたことがない」

「そうなのですか?フォルケン王がレグ君は魔法を使えるとおっしゃってましたが?」

「レグルス様は俺にホイミやキアリーの魔法をかけてくださいました。ほかの攻撃呪文ギラやイオなども使えております」

「そうだ、魔法の契約は1度もしたことはない。だが…魔法が使えることが分かる。今のモシャスもレベルが足りないため使えないが、契約自体は出来ている…気がするのだ」

「魔法の契約は以前行っていたのではないですか?」

「いや、そもそも魔法の書物自体読んだことがないのだ。必要性を感じなかったからな」

「先生、魔法って契約せずに使えたりするんですか?」

「んー、そうですね、道具の中には魔法の効果がある物もありますし、魔法力を高める輝石などを使えば発動することもありますが、基本は儀式を行うことで使うことができます。ですが、全ての魔法陣が解明されたわけではありませんし、過去に失った魔法陣もありますから、使えるならそれでラッキーと思いましょう!」

「へえ、楽でいいなぁ」

「とりあえず、ラーハルトは街中では変装してやり過ごしてもらうことにしましょう。変装道具はこちらで用意しておきますね!」

「分かりました、よろしくお願いいたします」

「では、ポップは魔法の書物に載っている魔法の契約を全部済ましてしまいましょうか!」

 

アバンから魔法の書物を受け取り、本の内容を見たポップは魔法の数と複雑な魔法陣に思わず悲鳴を上げた。

 

「げぇ!!これ全部かよ先生!ただでさえ魔法陣を描くのは大変だってのに!」

「ええ!契約しなければ魔法は使えないですからね。魔法陣は私も描くの手伝いますから大丈夫です!そのあと魔法力を高める訓練をしていきますよ!」

「私たちも手伝おう。ラーハルトが契約できる魔法があるやもしれん」

「かしこまりました」

 

4人は魔法陣を地面に描き、訓練場に10個の魔法陣を描き終わったころ、アバンがレグルスに声をかけた。

 

「一旦はこれぐらいでよいでしょう。レグ君、剣の手合わせをしませんか?お互い、力量を測りましょう!」

 

アバンからの手合わせの誘いにレグルスは嬉しそうに笑った。

 

「いいだろう!ラーハルトは魔法陣を描くのと、魔法の契約をするように」

「かしこまりました」

 

ポップは大人であるアバンと子供のレグルスを見比べ、かなりの体格差を見ながらレグルスには危ないのではないかと心配した。

 

「おいおい、レグの奴大丈夫か?いくら何でも体格差ありすぎだろ!」

「レグルス様なら問題ない。お前はおとなしく見ていろ」

「レグ君、今回は剣の技量を見るため、魔法はお互いなしでお願いしますね」

「望むところだ」

 

練習用の片手剣を持ったレグルスとアバンは練習場内で一定の距離を保つと真剣な表情で、剣を構えながら互いの様子をうかがい、ポップとラーハルトは魔法陣を描きながらも目線はちらちらと手合わせしようとしている2人を見ていた。

 

2人の睨みあいの末、先に動いたのはレグルスであった。体全体が沈んだとアバンが相手を認識した瞬間、思いっきり地面を踏み込んだレグルスが弾丸のような勢いで突っ込んできた。

 

(速い!)

 

アバンは突っ込んでくるレグルスに対してカウンターを狙って剣を振り下ろすが、レグルスは攻撃してきた剣を自身の剣の側面で滑らせるように横に受け流すと、すれ違うように横から回り、アバンの背後を取ると切りつけた。だが、アバンは体勢を低くしレグルスの剣をよけるとその場で回し蹴りを繰り出しレグルスを攻撃したが、レグルスは回し蹴りをバック転でかわし、少し距離が出来るとすぐさまアバンに突っ込んでいき再度剣撃を繰り出した。

 

「な、なんだありゃ!レグのやつめちゃくちゃ強いじゃねぇかよ!」

「アバン殿の剣の技術もなかなかのものだ。レグルス様相手にあれほどの立ち回りが出来る者はそうはいない!」

 

ポップとラーハルトは魔法陣を描く手を止め、アバンとレグルスの激しい攻防を驚きの表情で見ていた。特にポップはまだ小さな子供と言えるレグルスが人間離れした動きで大人のアバンと剣を交えていることに信じられない気持ちでいた。

 

「驚きました!まさかここまで強いとは思いませんでしたよ!」

「アバン先生もこちらのフェイントに引っかからないとは。私の動きをよく見ている!」

「内心ちょーと焦ってますけどね!これは奥の手も使わざるをえないようです!」

「奥の手?」

 

アバンが大きくジャンプし後方に下がり、剣を逆手に持ち構えると、体全体に闘気をみなぎらせた。刀身に闘気が集まるのを感じ取ったレグルスはまずいと思いながらアバンから距離を取り、剣を横に構えると左手の掌を刀身の側面に当てて防御の構えを取った。

 

「行きますよレグ君!アバンストラッシュ!!」

「ぐうぅっ!!」

 

アバンの刀身から放たれた閃光のような一撃は防御してもなお押されるような勢いがあり、吹き飛ぶことはなかったが、剣撃が収まるころにはレグルスが防御を構えた位置から後ろに下がっており、地面には引きずられた際にできる溝が出来ていた。

さらに、アバンストラッシュを受け止めたことでレグルスの腕全体はしびれてしまい、上手く剣を持つことが出来ず、剣を落とすことはなかったが剣を持っている感覚が分からなくなっていた。

 

(剣を振るえない状況ではこちらに勝ち目はないな…)

 

魔法が使えない状況で続行は不可と悟ったレグルスは腕を下ろして、体の力を抜いた。

 

「…降参する」

「ふぅ、いやー危なかったです!私も負けるんじゃないかと冷や冷やしましたよ!こんなに真剣になって戦ったのは久しぶりです!剣に関しては、私からレグ君に教えられることはほとんどなさそうですねぇ。レグ君、腕は大丈夫ですか?よかったら休憩しててくださいね」

「お気遣い痛み入るが、問題ない。ホイミ」

 

レグルスは震える手で自身の腕にホイミをかけ、癒しの光が落ち着く頃にはしびれがとれており、問題がないことを確認するため腕を振って感覚を確かめた。

ポップは剣の腕も大人顔負けで、魔法も使えるレグルスに驚きの表情で見ていた。

 

「なんかよぉ…天は二物を与えないってことわざあるけど、あれってぜってぇ嘘だよな」

 

ポップはラーハルトが近くにいることを失念しながら思わず呟いたため、特に返事はないつもりでいたが、ポップの呟きの話題が自分の主のことであったラーハルトはポップのことを横目で一度見て少し迷った後、ポップへ返事を返した。

 

「…レグルス様はまさしく天賦の才能を備えている。アバン殿もかなりの腕だが、レグルス様はまだ9歳、これからも伸びるだろう」

「そっか、レグってスゲーな」

「…ああ、俺が心から敬愛する主だからな」

 

ポップとラーハルトは互いに警戒しながらも少しだけ歩み寄れた瞬間であった。

 

アバンは先程のレグルスとの戦いを思い返しながら、魔王と戦っていた以前の自分より剣の腕がだいぶ落ちていることを痛感し、このままでは1年後の魔王復活の際には勝てないことを悟った。

 

(今のままの実力では魔王ハドラーと対峙しても勝つことは出来ないでしょう…。ですが、レグ君は攻撃力は高くないですが剣の技術力は誰よりも高い!かつて魔王に勝った勇者よりも。ラーハルトも見た感じ実力が高いようですし2人と一緒に修行すれば私もベリーベリー強くなれそうですね!)

 

アバンは皆とどのように修行するかよいか考えながら、レグルスに近づき声をかけた。

 

「ふむ、こうしましょう!レグ君、一緒にいる1年の間でよいので私と一緒にポップとラーハルトに戦い方を教えませんか?レグ君と戦って思いましたよ、腕が以前と比べてなまっていると。レグ君と一緒に教えればポップとラーハルトも今よりとーっても強くなりますよ!もちろん私もレグ君も!」

「レグが先生と一緒に教師するってことか!?」

「まて、アバン殿。俺はレグルス様の護衛であってー」

「ラーハルトも今より強くなればレグ君を守れますよ!」

 

アバンはラーハルトの言葉を遮るように、レグルスの名前を出すとラーハルトには効果覿面だったようで食い気味で共に修行することを承諾した。

 

「よろしく頼む!レグルス様、俺は今よりも強くなりあなた様のお役に立てて見せます!」

「ああ、共に強くなろうラーハルト。アバン先生、戦い方を教える件については承知した」

「よろしくお願いしますね!いやー、誰かと一緒に教師をするなんて初めてですよ!楽しみですねぇ!では、剣の手合わせはいったん休憩にして魔法陣の様子を見てみましょうか」

 

レグルスとアバンは剣をしまうと魔法陣を描いているポップ達の元へ行き、ポップとラーハルトは魔法の契約を行い、アバンとレグルスはまだ描いていない魔法陣を描き始めた。魔法の契約をしている途中でアバンはポップに魔法力を高めるための瞑想の仕方を教えたり、アバンとラーハルト、レグルスで剣と槍の手合わせを行うなど訓練は夕方近くまで続けられた。

 

 

 

「今日はここまでにしましょう!」

「つ、疲れたー!」

 

ポップは疲れた表情でその場で腰を下ろしやっと休憩が出来ると安心して息を吐いたが、続くアバンの言葉でショックを受けることになる。

 

「この後ですが、せっかくテランに来たので観光したいですねぇ。いやー、この国の伝承や伝説を知るのも楽しみの一つだったのですよ!ちょうど伝承に詳しい王族の方もいらっしゃいますし。ささっ、レグ君!この国の観光名所を案内お願いします!」

「せ、先生!少し、休もうぜぇ。俺疲れちまったよ」

「レグ君、ポップにホイミをかけてあげてください。勉強も修行に含まれますよ、ゆっくり歩きますからそんなに疲れないはずです。それに、伝承や伝説に詳しくなるといざという時、役に立ちます!では、レグ君!」

「分かった、では竜の神様の伝承が残る湖に案内しよう」

 

修行の疲れでげっそりした表情のポップにレグルスがホイミをかけた後、城を出て湖まで来た一行は、レグルスの案内で湖の中央に鎮座するドラゴンの石像へ到着した。石でできた台座の上には翼を生やした立派なドラゴンの石像、その石像の下にはドラゴンの顔に見える紋章が刻まれている。

 

「ここテランでは竜の神をたたえている。これは竜の紋章と呼ばれ、竜の神の力のあらわれとして敬われ、恐れられている。この紋章を額に抱く者を竜の騎士という」

「へぇ、額に紋章が出るのかぁ」

「竜の騎士はどのような姿をしているのですか?」

「姿は人間と変わらないようだが、人かどうかは分からない」

「人間じゃねぇのか?」

「伝説では"神の使い"と記されている。竜の騎士様は竜の神の生まれ変わりの如き凄まじい力を誇り、あらゆる呪文を使いこなし、天と地と海をも味方に変えすべてを滅ぼすものとされている。この世にただ一人しか現れず、世界に混沌が訪れる時、理を正すため現れるとも言われているが、竜の騎士様が破壊者なのか救世主なのかは分からない」

 

話を聞いていたポップはそんなすんげー奴がいるんだなと思いながらもふと疑問を感じたため、レグルスに質問した。

 

「理を正すか。じゃあよ、何で15年前の魔王の時にはその竜の騎士ってのは現れなかったんだ?」

「…ああ、15年前には竜の騎士様は出現しなかった。なぜ現れなかったのかは…分かっていない」

「竜の騎士って伝説っていうくらいだから本当にいるかも怪しくねぇか?」

「貴様!失礼だぞ!この国は竜の騎士様を"神の使い"として見ている、言葉は慎め!」

 

ラーハルトは周囲にテラン国民がいないことを確認しながらポップを怒鳴りつけた。もしも、テラン国民がポップの言葉を聞いたら怒って殴りかかっていた可能性があるため、内心冷や汗をかきながら注意した。アバンも宗教国家で神の使いを非難したり否定することがどれだけ不味いか理解していたため、ポップの発言には少し焦っていた。

 

「こら、ポップ!おっほん、伝説の竜の騎士が実在するのであれば一度お会いしたいですねぇ。ちなみに、竜の騎士は天界から現れるのでしょうか?」

「竜の騎士様は聖母竜マザードラゴンより産まれるとある。天より聖母竜マザードラゴンが降臨し、いずこかの地に竜の騎士様の赤子を産み落とす。その地の人間は神の子としてあがめ育て上げると伝説にはある」

「ドラゴンから産まれるのかぁ!なんかすげぇな」

「いずこかの地にですか、もしかしたらこの世界のどこかに竜の騎士がいらっしゃるかもしれないですね」

「この国テランにもはるか昔に竜の騎士様がこの地に産まれ落ちたという記述があるくらいだからな。この時代にお生まれしているのであれば、このテランに一度お越しいただきたいものだ。竜の伝説については以上だ」

「この国でも生まれたことがあるのですか!なるほど、だからこれほど竜の騎士の伝承が残っているのでしょうね!いやー、とても興味深い話でした。レグ君、ありがとうござます!ちなみに、竜の騎士にまつわる壁画やタペストリー、本などはあるのでしょうか?あれば見せていただいてもよろしいでしょうか?」

「城の図書館に竜の騎士様にまつわる本がある。あとで案内しよう」

「ありがとうございます!」

 

図書館で本を見たいと言い出したアバンにまだ休めない可能性が出てきたことで、ポップはげっそりしながらアバンに確認した。

 

「せんせぇ、それも一緒に勉強しなきゃダメですか?」

「いえいえ、ポップ達は休んでて良いですからね!何か詳しいことが分かれば後で教えますね」

 

ポップはやっと休めそうだと安心して息を吐き、そんなポップを見ながらラーハルトがレグルスに進言した。

 

「レグルス様、城では食事の用意をしておくと、先ほど城を出る際に報告がありました」

「分かった、アバン先生、ポップ。城に戻り食事にしよう」

「やったぜ!もう、お腹ペコペコだぁ」

「美味しい食事も訓練には大事ですからね!みんなで一緒にご飯にしましょう!」

「失礼ですが、俺はー」

「アバン先生は"一緒に"と言っていた。ラーハルト、一緒に食事をとるように」

「はっ!お供させていただきます!」

 

レグルス達一行は城に戻ると、来客が来た際に客人をもてなす少し大きめの部屋に皆を案内し、給仕により運ばれてきた料理を雑談しながら食事をした。食後、レグルスとラーハルトはアバンとポップを寝室がある客室に案内し、さらにアバンだけ連れて本が保管されている図書館に案内した。

 

アバンはレグルスとラーハルトに就寝の挨拶をした後、一人ろうそくの明かりの中、テラン王国の伝承や伝説が載った本を読み漁っていた。何冊か読み終わり、机に積みあがった本を本棚に戻している最中、背表紙に何も記載されていない立派な本を見つけたアバンは手に取りその場で数ページめくり、その本の内容が竜の騎士にまつわる本であったため、席に戻り最初から本を読み進めた。

 

背表紙に何も記載されていない本を何ページか進めたところ、ある一つの挿絵にページをめくる手が止まった。その挿絵は、天より降臨せし聖母竜マザードラゴンから額に竜の紋章を抱く赤子を受け取る身分の高い高齢男性が描かれていた。この挿絵が竜の騎士を授かる絵だけならこれほど驚きはしなかったが、アバンは赤子を受け取っている高齢男性、さらに王の近くにいる黒いとんがり帽子を身につけた老婆に心当たりがあった。

 

(フォルケン王!それにナバラ殿!)

 

挿絵に驚いたアバンは本の一番最後のページを開き、本が発行されてからまだ数年しか経っていないこと、さらに本を読み進めると途中から何も書かれておらず、空白のページが続いていたことからこの本が未完成であること、そして、この本を書いた著者が誰であるかも心当たりがあった。日中、フォルケン王を訪ねた際アバンが来るまで王が書き物をしていた本、それがアバンが持つ本の背表紙とそっくりであった。

 

本の主人公である竜の騎士に、挿絵に描かれている赤子が誰か思い至ったアバンは脳裏に1人の子供を思い浮かべた。

 

(まさか君だったのですね、レグ君。こんなにも早く竜の騎士にお会いできるとは思いもしなかったですよ!)

 

しばらくアバンは挿絵のページを呆然としながら見続け、受けた衝撃がなかなか抜けきらないでいた。そのあともアバンは夜遅くまで、本を読み続けていたが、考え事をしながら本のページをめくっていたため、本の内容があまり頭に入らなかった。

 

 

 

3日間レグルスたちはテラン王国で魔法の練習や、剣の手合わせを行い続け、アバンは夜になると図書館で本を読み、テランが管理する竜の騎士に関する内容はほとんど理解するようになっていた。

 

4日目の朝、アバンとレグルスはフォルケン王に出立前に挨拶をしたあと、ポップとラーハルトと合流し、城を出たところ、メルルとナバラが一行に近づいた。

メルルは一行の中でラーハルトに近づくと、笑顔で話しかけてきた。

 

「おはようございます皆さん。今日が出発の日ですね」

「おはよう、メルル。聞いているかもしれないが1年ほど国を離れることになる」

「はい、存じております。みんなレグルス様とラーハルトさんが国を離れると知って落ち込んでいます。2人とも頼りになりますので不在の間、不安なのでしょうね」

「俺もレグルス様もテランに何かあればすぐ駆けつける。それにこの2年間事件など何もなかった。今回も大丈夫だろう!」

「…はい、私もそう願っております。何かあれば一度テランに戻ってくださいね」

「ああ、もちろんだ!」

 

メルルとラーハルトの会話を聞いていたポップはメルルを上から下へ観察した後、ラーハルトに小声で尋ねた。

 

「なあ、ラーハルト。おめーの知り合いか?紹介してくれよ」

「俺の友人のメルルだ。占い師をしている。…ひとつ言っておくが俺の友人に不埒な理由で近づいたら、同じ釜の飯を食った仲といえど許さんぞ」

「いっ!わ、分かってらぁ!」

 

顔は可愛いし、胸もなかなかと思いながらメルルの胸元を見ていたポップは、ラーハルトに睨みつけられて慌ててメルルから目をそらした。メルルはラーハルトが急にポップを睨みつけた理由が分からず、首をかしげて2人を見ていた。

 

一方、ナバラはレグルスとアバンに近づくと声をかけ、あるお願いをしていた。

 

「レグルス様、これからベンガーナに行くと聞いております。よろしければ私とメルルもご一緒してもよいじゃろうか?」

「ああ、問題ない。ナバラ殿はベンガーナのデパートに行くのか?」

「実は、レグルス様が1年間不在と聞き、私らもしばらくは国外で占いの腕を磨くのもよいと思いましてな。ベンガーナは商業が発展し、人の往来が激しいと聞きます。…そこでならいろんな情報が入ってくると思いましてな」

「確かにベンガーナは各国からいろんな人や者が集まりますから、面白い話も聞けそうですねぇ!私も始めての町ではいろんな人に話しかけて情報収集しますよ、結構面白いことやためになる話も聞けて勉強になります!ナバラさんの気持ちわかりますよ!」

「そうなのか。私はアバン先生のように知らない人に気さくに話しかけられないな…」

 

アバンは内心、ナバラがベンガーナ王国に行く理由が魔王軍の情報や各国の世界情勢を入手するために滞在するのだろうと思いながらも口には出さずに話を合わせた。アバンとナバラから情報収集のすごいところを聞いたレグルスは疑う事なく、なるほどと感心したように頷いていた。

 

「では皆さん出発しますよ!急げば夜のうちにベンガーナに着くでしょう!」

「はい!」

「あと、メルルとナバラさん!レグルス君のことを今日からレグ君と呼んで下さいね。身分を隠すためですよ」

「分かりました!レグさんと呼びますね」

「うむ、承知した」

 

ナバラとメルルを含めた一行は朝日が木々の隙間から差し込む中、テラン王国を出発した。レグルスはテラン城に一度振り向いた後、期待と不安を胸に故郷を後にした。

 




レグルスが仲間になった!ラーハルトが仲間になった!
アバンが仲間になった!ポップが仲間になった!

原作ではあり得ない組合せメンバーを考えるのって大変ですが楽しいですよね!
原作であればバランがアバンと出会うこともなかったですし!

アバンとポップを登場させたのは、もし、原作でバランが魔王軍に入る前にアバンと出会っていたら人間にも良い奴はいると認識を改めたんじゃないかなと考えたから。
ラーハルトもポップとヒュンケルにもっと早く出会っていれば人間という種族に対して嫌いではあっても滅ぼす手伝いはしなかったのではないかなと思っています。
そのため、主人公とラーハルトはいい人間代表のアバンとポップに影響を受けてもらいます!
そして、アバンとポップは原作開始より強くなってもらいます!

ちなみに、アバン先生がレグルスの正体に気づいた本ですが、フォルケン王はカナルからアバン先生が竜の伝承に興味を持っているという報告を聞き、アバン先生が図書館を利用することを想定してカナルに本棚に入れるように指示しています。
そのため、フォルケン王が書いた本を図書館の本棚に入れたのはカナルになります。
アバン先生なら竜の騎士、そして主人公の正体に気付けるだろうと思っての行動です。
なぜ、フォルケン王はアバン先生にレグルスの正体をばらすようなことをしたのか?
1つ目は、アバン先生が学者であり、勇者であり、そしてアバン先生の人柄を風のうわさで聞いていたから。
2つ目、それは旅の途中、アバン達一行がアルキード王国に行く可能性があったから。
フォルケン王は勇者アバンと竜の騎士であるレグルスが協力して魔王に立ち向かってほしいと願っています。

報告:誤字脱字修正しました!報告ありがとうございます。
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