射命丸文と犬走椛
『 〇年〇月〇日、突如空を紅い霧が包み込んだ。霧は太陽を隠し、日光を遮断し。風に乗って瞬く間に幻想郷全域に行き渡り、段々と濃くなっていく傾向にある。その勢いは衰える形跡がない。その紅色は人間を不安にさせ。妖怪を興奮させた。妖精や小妖怪に至っては興奮し、中には正気を失う者もいた。この事からもわかるように、霧の中には魔力が込められており・・・ 』
「ふうむ。ここからどうしましょうかね」
射命丸文はコーヒーを一口飲んでから息を吐いた。
「この記事じゃ面白みに欠けますね。なんかこう、もっと盛り上がる展開にしていかないと・・・」
「新聞は事実を書くものですよ?読者も作者も、そこに面白みを求めるべきではないとおもいますが」
文に茶菓子のカステラを持ってきた、犬走椛が呆れたように言う。
「またまた椛は堅いんですから」
文はカステラを頬張りながら椛に座るように、目で合図をする。 椛はその場に座り、自分もカステラを口へ運ぶ。
「事実を面白くでっちあげる事こそが、ジャーナリストたる者の使命です。ありのままの事実を知りたいのなら、自分で現場に見にいけばいいのですから」
「とりあえず文さんが新聞記者失格だと言う事を、改めて確認しました。それになんですか自分で見にいけばいいって、それが出来ない、あるいは面倒だから新聞が必要になってくるのではないですか。面白くなくていいから、事実を書いて下さい事実を」
「椛」
文は椛の肩に優しく手を置いて、諭すように口を開いた。
「事実を書いたって、金にならなきゃ、意味がないのです」
「なんですかその、バレなきゃ犯罪じゃないんですみたいなノリは!」
「じゃあイカサマは初めてイカサマになるんですよ」
「やめちまえ新聞書くの」
「あやややや、嘘!嘘ですよ椛、そんなに怒らないでよ、私とあなたの仲じゃないですか」
「ええ、駄目な上司と優秀な部下。まるで山岡さんと富井副部長みたいですね」
「新聞記者でかけてきましたね。なかなかお上手。それに私は副部長のように愛嬌があって、親しみやすいtって、遠回しにみんなの人気者で、大好きって事ですね。もう椛のツンデ、痛い痛い、剣が刺さってる!そこはやめて!ごめんなさい!」
「まったく文さんはすぐに・・・。それよりも新聞は書けたのですか。紅い霧も濃くなったし、噂の紅魔館に取材に行けばいいじゃありませんか。そのために私も、こうやって控えているのですから」
「行きましたよ。だけど門番に追い払われました」
「・・・!文さんを追い払うって、その門番メチャクチャ強いのでは・・・?」
「そんな取材で当たり前のように武力行使しませんよ。それにこれは異変、解決するのは博麗の巫女の仕事です」
「確かにそうですが、当代の巫女は修行嫌いで、怠け者で有名ですよ」
「霊夢さんは、確かにあんな感じですが。あれであの子はやる時はやる子ですよ」
「・・・。随分巫女を信用してるんですね」
「そりゃ、私はあの子に修行を着けていた時代もありますしね。何よりおむつを替えていた時もありますからね。なんというかあの子の男を知っているっていうか」
「なななななななな、お、男を、知っている・・・・!!そそそそそそそそそ、そんな・・・文さんに限って」
文は面白そうにし、意地悪そうに口を開く。
「あやややや。椛は霊夢さんが男の子って事に驚いているんですか?それとも私が男を知っているって事に驚いてるんですか?」
「ど、どちらもですよ!いや博麗の巫女が男なわけないじゃないですか!!」
「そりゃそうですよ。ただ私は幻想郷を守る素敵な巫女さんだから、男の子みたいに強くなりなさいって、言いながらおむつを替えていたんですよ」
「なんですかそのドラクエ3のお母さんみたいな言い方!」
「言葉のあやですよ。射命丸文だけに」
「くだらない!え、じゃあ文さんが男を知っているって・・・」
「おややや。私も次期大天狗ですよ。あなたよりもずっと長く生きてるんですよぉ。子供を残したいと思ったのは一度や二度ではないし、殿方の腕の中で夢を見る。そういう経験が無ければ文学なんて・・・」
「あ、文さんのけだもの!!!さ、最低だぁあ!!」
「あややややや???」
「か、隠れてそんな・・・。そんな人だとは思わなかった!!風神少女から、風神痴女になってしまえ!!」
「風神の要素どこにもないじゃありませんか!?」
「ではただの痴女天狗だぁ!!うぅ」
「もう嘘ですって、そんなに悲しんでくれて嬉しいなぁ。私の事が、そんなに大好きなんで・・・」
「うぅ、うぇえん、文さんの馬鹿・・・ヒック」
(えええええ???マジで泣いてる。いや冗談なのに、これだけガチな反応が返ってくるなんて、いやいやどうしようこれ)
「あ、あの、もみじ、ちゃん?」
「触らないで!私を汚さないで!もう文さんなんか、大っ嫌い!!」
「あやややややややや!!!!!」
「ふん!」
「も、椛、冗談ですよ!!悪気はなかった。って言えば嘘になりますが・・・。いや私の華の操は、椛に散らされるためにあるのです!!だから、そんなに怒らないで!!お願いだから!!」
文はらしくない涙目で椛にすがりつく。だが椛はしてやったりとニヤリと笑う。
「ククク、アハハハ!!嘘ですよ嘘!私は狼で鼻が利くんですよ!文さんに男の匂がしみついてない事くらいすぐにわかりますよ!もうそんなに涙目で!次期大天府様ともあろうお方が、可愛いんだから!!あ~~お腹痛い!!」
「も、っももも。もみじぃいい!!もうお仕置きです!!!そりゃ!!」
「ひゃあ!」
文は一瞬で椛の背後に回って、その身体を抱きしめた、
「フフフフ、私をからかった罰です。椛を気持ちよくして、女の子にしてあげます♪そりゃあそこ触ってここ揉んで♪」
「や、ちょ!そ、そこは、何揉んでるんですか!!それにそんなところに・・・や・・・、あ、当たってる!文さんのが当たってる!大きくて、じゃなくて、あ、押し付けないで、柔らかくて気持ちい、ってそうじゃなくて・・・!うぅ振りほどけない、なんで痛くない力加減で、そんなに上手に締め上げられるんですか!!??」
「次期大天狗の名は伊達や酔狂じゃないんですよ!それに幕の内一歩だって風神の異名を取ってたじゃないですか」
「誰それ!お弁当屋さん? しかも絶対意味違う!」
「でも彼はヘビーき・・・」
「言うな!それ以上は絶対に言うなぁああ!!ってか、あん!もう私。やん・・・」
「椛ちゃん可愛い!!もっと色っぽい声を出させてあげます!!」
「ひゃぁわん!!!」
「・・・・」
二人が異常に仲良くするのを、こっそりと眺めていたのは姫海棠はたてだった。彼女は自室に戻り、文書を書き始めた。
『 〇月〇日に幻想郷を覆った紅い霧は、広がりが濃くなる一方である。しかし博麗の巫女が動く気配は残念ながらまだない。人間と妖怪のバランスを見極めるという彼女の立場から、これは仕方のない事かもしれない。ただ私は身近な者の変化と、自分の中にある興奮、そして紅という色が与える心理的影響から、一つ警戒を呼び掛けたい思う。それは紅という色は、根本的に人を興奮させる色であるという事だ。故に人里の方は気を付けた方が良いだろう。理性を失った人間が犯罪に手を染める事は充分に考えられるし、何より妖怪に襲われる可能性が上がる。同時にこの霧には魔力が込められているため、妖精などは普段よりはるかに力が増す傾向にある。人里の方は、無用な外出を控え、霧が収まるまでは、自宅から出ない事をおすすめしたい 』
はたては以上を踏まえた上で。博麗霊夢に早急な異変の解決を促しに、博麗神社へ向かった。妖怪が異変の解決を促すなんて可笑しいかもしれないが、目の前であんな光景を見せられたのだから仕方がない。それ以上に彼女は人里が好きだった。人間たちからもはたては寡黙だが常識があり、良心的で友好的な鴉天狗だと好かれていた。それは彼女にとって、自慢であり誇りであると同時にある種のコンプレックスも抱かせていた。人間に好かれる妖怪は、戦闘力が低い傾向にある。姫海棠はたてもスピード以外の能力は高くなく、親友である射命丸文は当然として部下に当たる犬走椛にも力は劣っていた。とは言っても並みの妖怪よりは強いと呼ばれる彼女だが、妖怪の山の中では中の下にようやく入り込めるくらいの実力しか持っていなかった。
そんな事を考えながらため息を着いていると、すぐに博麗神社に着いた。
「ま、魔理沙。だ、ダメよ、そんなところを触っちゃ、あぁ・・・んぁ」
「霊夢はどこを触っても柔らかくて、色っぽい声がたまらないのぜ。私がたっぷり可愛がってやるのぜ!」
「あ、そ、それ以上は、私、もう巫女じゃ、いられなく、な、ちゃう・・・」
「その時は私が嫁に貰ってやるのぜ♪」
「って、お前らもかよぉおお!!」
はたては異変の重大さと、それを起こしている妖怪の危険性を、改めて再認識するのだった。
あとがき
ここまでのおつきあい、ありがとうございました。
バガレボシ時代は、犬走椛の休日 がサブで、 この文々。新聞迷走記 がメインでしたが、こちらでは逆にしたいと思います。時間軸とかが少しおかしいですが、スピンオフなので、気にしないで頂けると嬉しいです。
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