キヴォトスにこちらの世界の音楽を流す妄想   作:マカロニサラ・ブリッグス

2 / 4
(小節の書き方が)理解出来ぬ。


ホシノの場合

 

 アビドス高等学校の少し寂れた校舎の端にある教室の中、ここは昼過ぎの時間で一番窓から陽が当たりやすく、私のお気に入りの昼寝スポットだ。

 

 机を並べて作った特製のベッドの上に乗り、自分の鞄を枕代わりにして寝そべる。そうすると、陽射しの暖かさで自然と体の力が抜けていくと共に肺の中の空気を大きく外へと吐き出された。

 

「ふぅ〜……今日は久しぶりに忙しい一日だったなぁ〜」

 

 アトラ・ハシースの箱舟占領戦や玉座での一件からしばらくの時が経ち、アビドス地区の復興もようやく終わりを迎えてから長いこと平和な時間が続いていたが、今日は珍しく不良集団の一掃へと赴いていた。

 

 しかし、多少のブランクがあった反動か、疲れがいつもより多く溜まっている気がする。

 

 深夜帯のパトロールなどの今まで行っていた習慣が無くなった関係で体がだらけ気味になってしまったからなのか、情けないことに少しだけ疲れに対する耐性が弱くなっているらしい。

 

 良い事とは言えないが、反対に悪い事とも言い切れない分、少し複雑な気分だ。

 

 モヤモヤとした気持ちを紛らわせるために、何となくスマホを取り出してSNSの記事に目を通す。流れてくるのは各学園の復興状況、そして色彩に関して各地で起こっていた事件の報道ばかり。

 

「うへ、D.U.地区の復興ももうすぐカタがつくみたいだね〜……あれだけ滅茶苦茶になってたのに早いなぁ」

 

 一通り記事を読み終えて、トレンドのランキングを見れば今朝あたりに投稿された例のチャンネルの動画の件で、世間は大盛り上がりらしい。

 

(そういえば、朝からシロコちゃんはご機嫌そうだったね〜……)

 

 あまり音楽を聴かない私にはその辺りのジャンルの話題には疎い。

 

 とはいえ、連日のように話題に上がり続けている程のものを無視出来るほど、おじさんも世間知らずでは無い。

 

(おじさんは若い子たちと関わっていくには話題作りが命だしね、一応こういうのにも触れておこうかな〜)

 

 しかし、まず何から聴いていったら良いのやら。私には胸を張ってもいいほどにさっぱりだ。聴く曲を決めかねて、しばらくの間ただぼんやりと画面をスクロールするだけになってしまっている。

 

「……ん?」

 

 適当に画面を下へ、下へと動かしていると不意に、変に目を引くサムネイルを見つけた。真っ黒な目がこちらを向いているかのような少し不気味に思える絵だが、ずらりと並んでいる小綺麗なサムネの中でとにかく見た目のインパクトがある。

 

 アーティストはOne o'clock……いや、ONE OK ROCK?言葉遊びだろうか。名前を読み取るとどうやらロックバンドらしい……激しい音楽はよく分からないが折角だ、試しに聞いてみるとしよう。

 

 曲名は、『the same as…』

 

 同じ……何に意味するタイトルなのだろうか。その疑問を胸に動画を開始した。

 

 

───────♪

 

何気ない日々

 

Just the same old thing

(昔から変わらない日常)

 

何が欠けて足りないか…

気付かないフリしてても

 

I can’t run away from myself

(自分自身には嘘をつけなくて)

 

 

「へぇ……」

 

 意外にも、その曲の始まりは静かなものだった。もっとエネルギッシュなものを想像していた為、少し驚きの声が出てしまった……けれど、想像との違いに反してこの曲はすんなりと自分の中に入ってくる。

 

 この特徴のある、尖っているけれど柔らかさのある声のおかげだろうか?

 

 

I try to show you I’m strong

(あなたに頼もしいと思わせようとしたけど)

 

Just a kid all long

(実際はただの子供だったんだ)

 

うまく甘えたい気持ちが

へたくそな強がりにしかならず

 

 

 ……なぜだか、この歌詞が痛いほどに突き刺さってくる感覚に陥る。

 

 まだ、あの人が居た頃を思い出してしまう歌だ……

 

 

The shape of love is

(僕の愛のかたちは)

 

The same as your heart is

(あなたと同じだから)

 

It doesn’t matter who you are

(あなたがどこの誰だかなんて、

そんなことどうでもいい)

 

So tell me my heart is

(ねぇ、教えてよ 僕の気持ちは)

 

The same as yours is

(あなたと同じなの?)

 

 

 どこか悲しさの混じるかのような歌声のせいなのか、先程まで横になっていた体は、気付けば瞼は閉じたままなのに不思議と起き上がっていた。

 

 疲れなんか忘れて今はとにかく、この曲を聴いてみたいと私は無意識にそう思えていた。

 

 Aメロ前の間奏に突入すると一斉に楽器隊が入り、音楽は激しいロックへと変わっていった。私というただの素人なりにも、これは間違いなく良い音楽だと思える演奏だと断言出来る。

 

 

さりげなくもらうその愛情は

とても不可解で…

素直には受け入れられず

何かをまだ閉ざしたまま

 

 

No matter how much you say

(あなたにどれだけ反対されても)

 

I can’t escape

(今更 逃げ出すなんてできない)

 

今何かを変えていくことで

この先に広がる何かを変える

 

 

(ああ……なんか変だなぁ、私……)

 

 何かが、ずっと胸の奥底を鬱陶しいほどに締め付けてくる。久しく聞いたことのない声が頭の中に流れてくるのが、今だけはどうしても止められない。

 

 サビの入りと同時に、音の波はそこから洪水のように勢いを増した。

 

 

The shape of love is

(僕の愛のかたちは)

 

The same as your heart is

(あなたと同じだから)

 

It doesn’t matter who you are

(あなたがどこの誰だかなんて、

そんなことどうだっていい)

 

So tell me my heart is

(ねぇ、教えてよ 僕の気持ちは)

 

The same as yours is

(あなたと同じなの?)

 

たとえ儚くとも

 

 

(ねえユメ先輩。あの時、私と一緒にいた時にさ……いつも私を見てなんて思ってくれてたのかな。)

 

(もしかしたら今、ノノミちゃん、アヤネちゃん、セリカちゃんにシロコちゃんに対して感じてることと全く同じだったのかな……)

 

(……もしそれならさ、先輩)

 

 

悲しいとき 寂しいとき

いつもそばにあるから!

 

And we hold every moment

(僕達は一瞬一瞬を噛み締めて生きよう)

 

'Cause that’s what family is for?

("家族"ってそういうものでしょ?)

 

 

頬に何かが伝っているらしいが、それさえも今はどうでもよく思えた。

 

(──私、頑張るからさ……最後まで見ていて欲しいな、私たちが守っていくアビドスの未来を)

 

そのまま2番の歌詞へと入っていく……

 

 

 

──♪……

 

 パタリパタリと廊下から乾いた足音が近づいてきたその数秒後、部屋の目の前で止まった。

 

「あ、見つけました〜♣……あれ?」

 

 

「……ふふ、いい夢でも見てるんですか?そんな姿勢で寝てるなんて……んー?ホシノせんぱいが音楽なんてめずらしいですね〜」

 

 

「よいしょっ、と……それじゃ帰りましょうか〜、せんぱい」




はい。
ホシノちゃんにはこれが一番(精神的に)効くと思います。

まだ色々と曲のストックはあるけどそこに繋げるストーリーに苦しめられてるぅ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。