キヴォトスにこちらの世界の音楽を流す妄想 作:マカロニサラ・ブリッグス
トリニティのエデン組のメインは結構揃ってきたかな
自室のベッドの上で、何をしている訳でも無く、ただ自分の足先をぼーっと眺めている。時折パタパタと振ってみたり、指を忙しなく動かしたりをしばらく繰り返し、ついには溜め息を吐いた。
「暇だな〜……」
やることは山積みだというのに退屈だ。毎日毎日トリニティ地区の復興作業に駆り出されては瓦礫の撤去などの雑用を投げられ、馬車馬のように働かされている。
最も、緊急事態だったとはいえトリニティ校舎の壁を吹き飛ばして移動していたのは他でもない私の仕業なのだから、そこについての文句は言えない。
いや、だからといって私を撤去用クレーンか何かと勘違いをしているような仕事を振ってくるのは流石にどうかと思うのだが……
しかし、そのおかげで大事な可愛い後輩を守れたことを思えばそれぐらいの仕打ちは安いものだと、そう割り切ろう。
……話が逸れた、とにかく今はこの退屈を吹き飛ばす楽しみが欲しいのだ。
何か出来ることを考えたが精々、自室で行えることと言えば銃の手入れか一人でチェスをやることくらい、すぐに飽きが来てしまうことばかりだ。
「うーん……いっそのこと先生にメッセージでも──」
スマホを手に取って、アプリを開いて先生のアカウントを探す。
スワイプして1秒もかからず見つけたアイコンをタップして、早速メッセージの内容を打ち込んでいく。送信する文章はとくに苦労することも無く完成し、あとは送るだけ──
その直前で、指をピタリと止めた。
「……何してるのかな、わたし」
バカなのか私は。先生は今が一番忙しい立場なのだ、こんな浅い理由で邪魔なんて出来るはずがない。
いや、先生のことだからたとえどんな状況であろうとも時間を作ってこっちへ来てくれるのだろうけれど……あんな事があった手前、私のわがままに振り回されることでこれ以上無理なんてして欲しくは無い。
「あ〜!」
しかし、それ以上に退屈を晴らす方法が思い浮かばず心の鬱憤は溜まる一方……いい加減それにも耐え兼ねた私は枕に顔を埋めて叫んだ。
「……そうだ!」
そうしているうちに、ふと思い出した。
『WORLD Sounds』の投稿のことだ。流行のセンサーが強い私は当然その楽曲はほとんど聴いているのだが、復興作業が続いていたことで1曲だけ、まだ聞けていない動画があったのだ。
それは水色一色が強く主張するサムネイルで、非常にシンプルだが目を引くものだった。
「……ファンファーレか……」
トリニティという校風では割と馴染みのある言葉だ。祭事や儀式においての演奏で使われるものだが、一般としてはスポーツやゲームでの応援曲という側面が強い。
sumikaという、私には聞き覚えの無いアーティストが手がけている作品、一体どのような曲だろうか……
────♪
ああ
夜を越えて
闇を抜けて
迎えにゆこう
光る朝も
雨も虹も
今から全て迎えにゆくよ
始まりはアコギの演奏と深みのある歌声だ。メロディーには疾走感があり、青一色な背景と相まってイントロの時点でも清涼感が感じられる。
「……いいな〜、これ」
間奏に入ればアコギ演奏は終わり、それに続いてピアノ、ギター、ベース、ドラムが入ってくる。しかし音作りにクセは無く優しさがあることで聴きやすく、より疾走感を助長させている。
寒色系のペンキをぶちまけたようなプールという舞台セットはまるで海の中に立っているようで、見ただけでも楽しさが感じられる。
暗い暗い暗い部屋を作って
目を塞げば気付かない
チクチクチクチク
心は傷まない
眩しい眩しい光遮る
カーテン開くのは
他ならぬ僕だ
震えた僕の手だ
辛い悩みを抱える人を表現する歌詞は、調印式のときの私の心情と似ている。
仲間も自分も裏切って、絶望で盲目になっていたあの時……寄り添ってくれる先生と、自分に立ち向かってくれたサオリがいてくれなかったら、そのカーテンを開くどころか手を伸ばすことさえしなかっただろう。
それにコハルちゃんの小さくどこまでも大きい勇気と優しさがなければ、きっと本当に私の心は折れていたはずだ。
こんな滅茶苦茶な自分に立ち上がるチャンスを与えてくれたあの人達には感謝してもしきれない。
知らなけりゃ良い事だと
逃げるのはもうやめ
醜さも不甲斐なさも
照らして
飲み干したら
新しい自分だろう
心を満たしてくれる良い歌詞だ。自分の悪い部分をただ悔やまずに、学び、受け入れていく、そうすれば人は変わっていける。先生が教えてくれたことと共通する言葉だ。
ああ
夜を越えて
闇を抜けて
迎えにゆこう
傷の海も 悩む森も
厭わない
毒を飲んでさ
ファンファーレ、過去を肯定し、今も未来も、全てを巻き込む応援歌。回りくどさのない演奏と、ただ真っ直ぐな言い回しの歌詞が眩しく光る。
なんとなく、窓の外を眺める。ガラスの外には青空が広がっていて、その中を真っ白な小鳥たちが羽ばたいていく。ティーパーティーの席では毎日見ていたような光景が何故だか今だけは、とても美しく感じられた。
本当に気持ちのいい曲だ。
ああ
夜を越えて
闇を抜けて
迎えにゆこう
光る朝に 目背けずに
今 瞬きを繰り返すのさ
たった3分間の曲。しかしその曲が残していった余韻は果てしなく長いものだった。
「……明日も復興作業だったかな」
スケジュールを思い出しながら、スマホを閉じる。そして横目で鏡を見たみたら、自分の顔は自然と口角が上がっていた。
「……うん、それなら調度いいかもね」
ベッドから降りて、明日に向けての準備を始めた。軽めの化粧品と、少量の弾薬とコハルちゃんが残してくれたアクセサリーのひとつを鞄にしまう。
トリニティの子達には急な行動で混乱させてしまうのは申し訳ないけれど……少しだけ、また自分のわがままを貫いていよう。
「今日は先生のお手伝いに行こうかな。それならきっと退屈なんてしないし、先生が無理をすることもないからね……」
明日はきっと、こっぴどく怒られてさらに忙しくなるだろう。それはなんて、楽しみなことなんだろうか。
日を空けると何書こうとしてたか分からなくなってる、あると思います。なんなら日をまたがなくても起こるのでメモって大事なんやね……
そういえば、自分の選曲にはだいぶ色々条件をつけています。
基本的に、イメージソングでは無くてキャラの背景とストーリーでの出来事とその中での心情。最後にそのキャラがお題の楽曲を聴いて、どう感じるか、独自の解釈でキャラクターエミュをしてみた結果でそのキャラが曲を気に入ってくれるのかで考えてます。
イメージ強めでいくと、ボカロのメルトが今回のミカで使われてたかもしれません