ボクは魔法を使いたいんだよぉ!!!   作:冬月雪乃

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一章 複製01

 今回訪れるダンジョンとは、つまりゴーレム達の巣窟……らしい。

 内部はSFよりもスチームパンクじみた内装と、歯車剥き出しだったり蒸気を撒き散らしながら徘徊する機械達が警備しているとのこと。

 階層数は三階と少ないが、その分接敵が多く持ち前の固さがあって非常に面倒なことがあげれる。

 多分魔法がマシな仕様であってもあまり人気はでなかっただろうな。とボクは思う。

 ボスはフレッシュミートゴーレムとミスリルゴーレム。前者が物理が有効で、後者が魔法。

 同時でなくて、最初にフレッシュミートゴーレムが現れて倒すとミスリルゴーレムが出るらしい。

 なのでボクの役割は前半はナナを援護し、後半はメインDPSとしてナナに援護されながら固定砲台として破壊魔法をばかすか撃つ。これだけだ。

 いくつか改変を終えた魔法もあるし撃ち放題お祭り騒ぎの我が世の春である。もちろんリソースであるMPはきちんと管理しなければならないが……まぁ所詮初期魔法。自然回復量の方が多いだろう。

 あと問題はエンチャントされた魔法と純粋に詠唱されて撃ち出される魔法にどこまでの違いがあるか。というところだ。

 

「いつ折れても大丈夫なように、一応刀は十本買ってきたから大丈夫だとはおもうんだよね!」

「刀から手を離す気はないんだね……」

「斬る手応えが違うんだよねぇ、刀。鋭いっていうかさ」

「待ってめっちゃ怖い」

 

 西洋剣の強引に砕き斬る感じよりすごく良くてね。とかなにやら恐ろしいことを語り始めた幼馴染みの声を意識的に聴覚から外して歩みを進める。

 街から出て外れ、森の奥にある洞窟が目的地だ。

 マーカーをマップ上でセットしてナビで道順を表示してるので迷わずいける。

 

「ところでスキルはなにを上げることにしたの?」

 

 スキルを上げる。とはスキル制のゲームにおいて重要な役割を持つ。

 言ってしまえばレベルのようなもので、これらを上げることで例えば攻撃力があがったり、同じレベルでもMPやHPに差異が出たり、あるいは使える魔法やスキルが変わったりとそのプレイヤーのスタンスに合わせてやれることが変わるのだ。

 もちろん無制限に上げられるわけではなく、全てが一律で上限100の合計700までで組まなければならない。課金すれば1050まで上げられる。

 内訳は

 

【戦技】盾・剣・鈍器・槍・弓・投擲・酒豪・野生・調教/契約・罠・取引・習得・格闘・暗殺・舞踏・盗み・音楽

 

【魔法】呪詛・破壊・回復・強化・召喚・天文・冒涜・因果・死霊

 

【基本】登攀・水泳・治癒・採掘・伐採・栽培・釣り・考古・筋力・魔力

 

【生産】料理・酒造・鍛冶・木工・裁縫・装飾・修理・複製・調合・錬金・美容

 

 となっていて、ここでさらに使用に複数のスキルのレベルを要求する武器や魔法もあるので全プレイヤーの悩みの種でもある。レベル制も混ざってるゲームなのである程度の融通は利くとしてもやはり悩むところではある。

 

「【魔法】カテゴリの呪詛・破壊・回復・強化・召喚・天文・冒涜・因果・死霊」

「魔法全部じゃん……上限間に合わなくない?」

「そう。だから課金して【基本】カテゴリの魔法まで上限の100まで上げられるようにした」

「うっわ徹底してる……」

「そういうナナは?」

「【戦技】カテゴリの剣と、【基本】カテゴリの筋力と治癒以外は悩み中!」

「オーソドックスな剣士タイプかってことか」

「まー、私はどこぞのマホキチくんみたいに最初からガンギマリでプレイスタイル決めてる訳じゃないからねぇ」

 

 ガンギマリじゃないが。

 それはともかくとして、あと50は何かに必要になれば入れていこうと思う。前に出る気は欠片もない。

 

「ま、スキル制って言ってもPS次第で格上とも『戦えてる』レベルまでいけるのはVRゲームの醍醐味だよね~」

「魔法で絨毯爆撃したら終わりだけど?」

「この魔法が地雷呼ばわりのゲームにおいてそんなのは起こらないでしょ…………え、まって、やるの……?」

 

 ドン引き顔の天使とかいう珍しいものが見れたので笑顔だけ返す。うっわぁ、とか呻き声が聞こえたが、なにを勘違いしてるのだろう。

 どこか他人事な彼女の肩を掴んで、

 

「──もう共犯者やで……」

「やっぱり!? いやだぁ!! 絶対魔王の手先とか言われ始めるやつじゃん!!」

「配信もするやで……」

 

 もうおわりだ、と四肢を大地につけてうめき散らす天使を無視して先に進む。

 諦めてほしい。恨むならこのゲームにしつこいほど誘った自分を恨んでくれ。

 

「あ。そういえばケイは?」

「しばらくイン出来ないって。インストールはしたみたいだから気長に待と」

 

 ケイとはクラスメートの友人だ。

 狐目の胡散臭い雰囲気を醸し出すちょっと堅気じゃなさそうな男だが、中身は普通の男子高校生。

 そしてボクと同じくナナの『熱烈! UPO勧誘2156年春』を受け流しきれなかった同類でもある。かわいそう。

 そんな彼はテスト勉強に勤しんでいる。なんでも、全教科80点以上を取らなければゲーム禁止らしい。

 ゲームはどうしても時間をとるからね。

 てっきり一緒に買ったヘッドマウント型デバイス【Selah】にはいくつかの勉強アプリもあるし、ゲームないで筆記も出来るのでテスト勉強もやろうとしたら出来るから中でやるのかと思ってたけど……まぁ、そこは本人の自由だ。

 

「お、ここだよ」

「結構雰囲気あるなぁ……」

 

 その他雑談をしながら歩いていると、不意に岩に囲まれた穴が現れた。

 中からは白い煙──恐らく蒸気──が吹き出ており、耳を澄ますと金属が触れあって軋み合う音がわずかに聞こえてくる。

 

「おー、ここが……えぇっと……【忘却文明ステラテア】」

「中はフツーにインスタンスダンジョンみたいだね。他のパーティーとかち合うことはないみたい」

「街から出て一歩目からPvP出来ちゃうこの魔境みたいな世界で? 随分良心的じゃん」

「初心者クラスのダンジョンだからじゃないかな? 雰囲気覚えてねみたいな」

 

 なるほど。

 時折よくわからない拘りを見せてくる運営もここは良心的らしい。

 であれば背後から他のプレイヤーに転がされることを心配しながら探索しないで済みそうだ。

 

「一応いまある情報だと、今回のダンジョンの目玉はミスリルゴーレムからドロップする【ミスリル銀インゴット】と、途中のミストゴーレムからドロップする【霧のスキン】だね」

 

 スキン。

 FPSゲームなどではお馴染みの自分の武器の見た目を変えられるアイテムだ。

 このゲームにおいても同じ意味を持ち、それは自キャラから魔法まで多岐に渡る。

 中でもダンジョン産のスキンはそこでしか手に入らないため、ボスドロップよりそれを追い求めに周回するプレイヤーもいるそうだ。

 

「ま、霧のスキンそのものはなんかもやもやが武器にまとわりつくだけであんま見た目よくならないらしいからやっぱ不人気なんだけどね」

「このダンジョン、不遇になるべくしてなってるよ絶対……」

 

 もはや『実は何か隠してました! だから他が渋いんです』って言われた方がわかるほどの不遇具合だ。

 なんせボスが時間かかる(周回効率×)雑魚も固いから武器の耐久がよく減る(コスト×)スキンもそんなによくない(旨味なし)。おわりだ。

 ボクたちはそんなところに挑むわけだが。

 インスタンスであることを知っていたら来なかっただろうなぁ、とやる気を起き上がらせてインスタンス入場を軽く触る。

 

 次の瞬間。ボクたちの視界は白に包まれた。

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