ボクは魔法を使いたいんだよぉ!!!   作:冬月雪乃

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 お説教という名の休憩が終わるのは、お互いのデバフが時間切れでなくなる頃合いだった。

 この頃には消費したMPも自然回復で完全に戻ったし、一息つくことでそこそこの余裕も戻った。

 雑魚も断続的に沸いてはいたが、ナナが一瞬で刈り取っていくのでなんの心配もない。

 そしてその間にボクたちはお互いのリソースとスキルの確認を行うことにした。

 リソースの確認といってもナナは三本の刀の耐久が失くなったので残り七本、ボクといえば【嵐の尖塔】に使える触媒が無くなったのでもう撃てないこと位か。【水魔の手銃】クラスのMPのみを消費する魔法のみでの戦いとなるが、それは今さらだ。そもそも【嵐の尖塔】も使う気はなかったのだし。

 そしてドロップ品だが──

 

「ボクはコアだったけどナナは?」

「守護傀儡の外装甲だって~」

 

 ゴトン、と女性が持ち上げるにはあまりにも非現実的な分厚い装甲を持ち出して主張する姿はなんだか頼もしい。

 ボクは手のひらに出現させた赤い玉……多分モノアイの部分を観察するように見せる。

 

「なんか魔法陣が刻んであるの意味深だよね」

「それはナナのもだよね。あとで写させて」

 

 いいよ~というナナの許可を聴きながら壁に背を預けて座っていた状態から立ち上がる。

 HPもMPも全回復、撃てる魔法はアイテムがないから限られてくるが、それでも前衛がいるのでどうにかなるだろう。

 気を付けて立ち回って戦わないとならないので、その分ナナの負担が強くなることは正直なところ申し訳ないが。

 

「さてさて、さっさと次に行こうねえ」

「今度はちゃんとボクも戦うからね?」

 

 エネミーの襲撃が少なくなったダンジョンをマッピングしながら歩く。

 ボクの言葉にナナは何か言いたげだが、刀という攻撃リソースが休憩時間の敵襲で残り六本となってしまったので何も言えないのだろう。

 むむ~っと唇をむにむにさせてうなっているだけだ。

 

「ま、なんとなくここの敵に対して効果的な属性もわかってきたし、ナナのお荷物とかキャリーされてるみたいでヤなんだよ」

「ん~……そっか、わかった」

 

 ま、わたしもそこそこ疲れるからね、とナナも行ってくれはしたので納得はしたのだろう。

 

 #

 

 球体ゴーレム十体、人型の近接仕様ゴーレム二十三体、銃撃系のゴーレム系三十七体。

 そして踏破した階層二層。

 休憩からここまで歩くまでに会敵したエネミーたちだ。

 ほとんどがナナの一撃で沈黙するか、ナナが銃弾を刀で弾くとかいう漫画みたいな技を披露してる後ろで【水魔の手銃】で黙らせるかの作業で、ナナの負担大きすぎてるが正直これはもうどうしようもない。

 近接戦の才能がありすぎてる。これほとんどPSは現実での彼女を怒らせないようにしようと誓うには十分すぎた。

 

「よし、ここで最終階層なんだよね」

 

 そしてボクたちは大きな広間の大きな扉の前にいる。

 背後には広間と同じく、変わらず手掘りの雰囲気を感じさせる階段。

 豪華に装飾された扉はいかにもここから先はボスですと言いたげだ。

 

「そだね、最後の階層はこの広間とボス部屋だけみたいだしちょっと作戦会議とかしよっか」

「了解、ところでスキルはどんな感じ」

「んー、えっとね、剣が十、筋力が十一、治癒が五かな。シエン君は?」

「破壊が六」

「ほんとに魔法以外に上昇判定入れてないんだね!?」

「そのためにこのゲームやってるからね」

「ま、野良でやる気ないって言ってたし良いけどさ。身内プレイなんだし」

 

 ありがたい。

 さて、と仕切りなおすと、ナナは聞く姿勢を取った。

 金と緑のオッドアイは変わらず元気に輝いており、口を開くまでもなくどうする? と問いかけているようだった。

 

「まず、ボクがバフを掛けます。これは防御と攻撃を上げるだけの初級魔法だから熟練が低くてもそこそこの強化にはなると思う。効果時間も熟練低いからそこまで長くないけど、そのたびにかけなおすから安心して」

 

 うんうん、とナナ。ボス前の強化は当然だよね! と納得の声だ。

 

「そしたらボクが冒涜の魔法でデバフかけます。こっちは動きが遅くなる系のデバフなのでレジストされてもよほど早くない限りどうにかなると思う。ナナ運動能力やばいし」

「うーん、出来ればレジストされないでほしいね!」

 

 それはそう。

 

「で、最初の敵は魔法があんま効かないということなので呪詛魔法でDot入れつつできる限りナナを支援するね」

「頼りにしてるよお!」

「ありがと。で、次の敵が物理が効かないってことらしいから、ナナはできる限りヘイトを取ってもらってボクがひたすら初級魔法を浴びせる。ざっくりだけどこれでいいかな」

「もちろん! っていうか二人だとそれくらいしかできないしね……」

「確かに。じゃあバフ掛けるからそしたら突入しようか!」

「了解! じゃあ早速お願い!」

 

 目を閉じて両腕を広げ、受け入れの姿勢を見せたナナの姿にそこまで無防備にならなくても、とも思うがそれはそれだ。

 一度暗記した呪文をもう一度思い出す。

 元となったのは【ディバインアーマー】という名の初級魔法。MPの消費も少なく、起動詞のみでも物理攻撃に十分なバフが見込めるため、結構錬金で刻むには人気な魔法の一つだ。

 もったいない、やっぱ魔法は詠唱してこそだよな、と心で愚痴りながら息を吸い、魔法を紡ぐ。

 

彼が望んだのは鋼の身体(Et voluerunt corpus ferro)

 何者にも動じない不退転の決意(Immobile determination)

 彼は傷つく事も厭わず駆け抜ける(Ille nocere non verentur concitus)

不退転の鎧(Armaturam obstinata)】」

 

 ナナの体が薄い緑に光り輝く。

 同時にUIに表示されたナナの名前の隣に人型がガッツポーズを決めてるアイコンが現れた。その下には刻一刻と減っていく数字。これが効果時間なのだろう。のこりは約五十秒ほどだ。

 完全に詠唱してこれなら起動詞のみのものなら大体この半分くらいを目安に考えておこう。

 

「じゃあ、開けるよ!」

 

 UIと考察に気を取られていて気づかなかったが、いつの間にか扉に手をかけてナナがわくわくした顔で宣言した。

 頷けば、正面を向いて扉を押していく。

 

 そして僕たちは、このダンジョンに最初に突入した時と同じく視界を真っ白に染め上げられた。

 ──さあ、ボス戦だ。気合を入れて行こう!

 

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