魔法少女ナラティブ   作:MOPX

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4年越しの真実!! モンスターの正体は……宇宙!!

 

「モンスターの正体は……宇宙!?」

 

藍子の口から語られた衝撃の事実。

魔法少女になってから、悪いやつとしか思ってなかった黒い怪物達。

 

その正体は――宇宙。

 

「……」

 

 

その正体は――宇宙!!

 

「……?」

 

 

驚いてはみたけど、よく考えたらどういうことなんだろうか。

わからない。

 

「ねえ藍子」

 

「……なに?」

 

「それって私にわかる話?」

 

「……あなたにはわからないかもね」

 

「じゃあ、いっか……」

 

「……は?」

 

ぷいっと顔を背けてどこからともなく本を取り出す友人を私は慌てて遮るのだった。

 

「冗談!! 冗談だって!! 聞かせて聞かせて聞かせてください!! モンスターの小難しい話!!」

 

「……含みのある言い方。まあ、いいでしょう。そこまで言うのなら……」

 

若干の面倒くささを発揮する藍子はさておき、私はほっと胸を撫で下ろす。

 

萌黄さんは初日でキッスまでいったのだ。

胸の炎を燃やせ、茜谷茜。

こんなところで新参の魔法少女に後れを取るわけにはいかないのだ。

 

それに、だ。

 

藍子が珍しく自分から話したがっていること。

恐らくは4年間、ずっと考えていたことに違いない。

 

聞くべきだと思った。

 

 

 

 

「モンスターが出現のメカニズムは明らかになってない……それくらいはあなたも知ってるわよね」

 

もちろん。

これでも魔法少女の端くれであり、『組織』からも説明を受けている。

 

世界各地で突発的に、場所を選ばず出現するモンスター達はまるで最初からそこにいたかのように『出現』する。

1999年から確認されたらしく、当時の人類には対抗手段がなく、世界規模の混乱が起きた(らしい)。

 

魔法少女の存在が確認されたのは、その後のことだ。

 

 

「……モンスターの解析が困難なのは連中が魔法力以外では倒せないのもあるし、放っておくと消えてしまうからね」

 

そうそう。

あいつら暴れ回るだけ暴れたら勝手に消えていくんだよね……。

そのおかげで被害がある程度は抑えられてのはあるんだろうけど。

 

だからこそ魔法少女の数が足りない時代でも、対処がなんとかなっていた。

4年前みたいな事態が稀で――。

 

 

「あれ? じゃあ4年前のあのモンスターも私達が倒さなくても消えてたのかな……?」

 

「……そうよ。そういうことになるのよ」

 

どうしてこんな簡単なことに気づいていなかったのだろう。

4年前もこのことは知っていたはずなのに。

 

私達はあいつが『世界を滅ぼす存在』だと思っていた(・・・・・)

 

 

「……閑話休題。ここで一つの疑問が生まれる。モンスターはどこから来て、どこへ消えるのか。無から何かが生まれるなんてことはあり得ない。物理学としてね。でも人類は、いまだにそのエネルギーの出所が掴めていない……」

 

うんうん、と私は頷いた。

正直よくわからないが、こうしたリアクションを取っていれば藍子も喜ぶだろう。

どうぞ、続けてください藍子先生。

 

「なぜ解明することができないか? それは恐らく人類がまだ解析できてないもの(・・・・・・・・・)を出自としているからよ。真っ黒で訳がわからないもの……宇宙よ」

 

うんうん。

 

……。

 

……?

 

「あんのぉ~藍子先生ぃ~」

 

「……質問は一人につき一つまででお願いするわ」

 

「素人質問で恐縮なのですがぁ~その学説にはぁ~チト無理があるのではないのですかぁ~?」

 

「……そのしゃべり方やめなさい。……でも本当にそうと断言できるのかしら? 宇宙の約27%を占めると言われているダークマター、更に約68%を占めると言われているダークエネルギー……宇宙の大半を占めているこれらについて、人類はまだ解を持っていない。だとしたら、何故違うのだと言い切れるのかしら?」

 

「……人間が知っていることなんて、ほんの一握りに過ぎない」と藍子は付け加えた。

私にはわからない話だと思ったが、もう一度、窓の外から夜空を見上げれば不思議ではないような気もした。

 

確かに、宇宙の『黒』とモンスターの『黒』は同じだった。

 

 

「それ、偉い人達とかには話したの? 大変なことじゃん」

 

「……私がそんなことを意気揚々と話すと思う?」

 

「いや、思わない」

 

「……断言されると気に入らないわね。まあいい。私が直感的にそう思ったというだけで根拠のない話よ。言ったところで誰も信じたりしないでしょう。それに……」

 

「それに?」

 

「……この一面に広がる夜空。ほぼ全部がモンスターの素だとして、私達に何ができるの?」

 

藍子の言う通りだ。

もし、いま視界に広がっているモノ全部が敵だとして、さすがの私でもちょっと勝てる自信はない。

 

どこまで広がっているかもわからない、この星を覆っているもの全部が敵だなんて、普通の人が知ればちょっと耐え切れないだろう。

 

 

「……ここまではまあ、前置きね。次が本題であるモンスターの目的ね」

 

私は喉をごくりと鳴らした。

なんだろう、藍子の話につき合うだけのつもりだったが、ちょっと楽しくなってきた。

 

 

「……この宇宙は加速膨張を続けている……あなたも知ってるわよね」

 

「ううん、全然知らない」

 

「……この宇宙は加速膨張を続けています。宇宙は膨らんでるってこと。そしてそれをもたらしているのはダークエネルギーだと言われているわ。もうわかったわよね。この宇宙そのものであるモンスターの目的は――」

 

「無限に大きくなること……?」

 

「そういうことよ」と藍子が頷いた。

何だか途方もない話だ。

 

「……この世界全部を覆いつくして……外にでも向かうつもりなのかもね」

 

「でも、だとしたら何でこの星に? 今の話だと宇宙の外側に向かわないとおかしくない? それに星なんてたくさんあるでしょ? 知らんけど」

 

「……さあね。私達には予想もつかないような理由があるのか……はたまた、知らないだけでいたる星が同じように攻撃されているのか。……モンスターというネーミングはある意味で奴らの本質を言い当てていたのよ。まるで、ゲームの敵のように無尽蔵に湧き続ける存在」

 

スイッチが入ったのか、藍子は一息で言い切る。

モンスターがこの星に出てくる理由は割と大事なところな気がするが、そこはうやむやだった。

まあ、藍子にわからないなら私にはもっとわからないだろう。

 

藍子先生の更なる研究成果に期待をしたい。

 

 

「いやーでも目的っていうからどこかに向かってるのだとかそういう話かと思ったけど……まさか宇宙の外側とはね」

 

「……どこかへ向かっている、ね。……あなたはたまに本質をとらえるから、真面目に考えるのがイヤになる」

 

「そうかな? もっと褒めて!!」

 

「……次からはもっと呆れのニュアンスを込めるわ。……アホの茜」

 

 

 

 

「本日は講義ありがとうございました、藍子先生!! ……藍子がこんなにしゃべるの久しぶりじゃない?」

 

「……別に。もう一生分しゃべったから、明日からはもう口をきかない、あなたとは」

 

「何で!? 十生分でも、百生分でも……うーん、百万生分でも話そうよ~」

 

「……十の累乗しか数えれなかったわね、あなた」

 

「累乗って何?」

 

「……」

 

楽しいガールズトークもお開きだ。

藍子とこんなに話したのだって、それこそ4年ぶりかもしれない。

 

……そういう意味ではあの黄色い魔法少女に感謝しないといけないのかもしれない。

 

「それにしても、藍子はずっとこんなことを考えてたんだね」

 

「……まあ、そんなところかしら」

 

あの時、真っ白な妖精達を見てからずっと。

きっと藍子は妖精やモンスターについて考えていたのだ。

本を読んでいたのも、どこかにヒントがないか探していたのだろう。

 

「いやー、これで萌黄さんの宿題にもすっきりして答えれそうだよ!!」

 

「……本当にそう思ってれるの? あなた」

 

「うん、だってモンスターがまさにモンスターだったわけでしょ? つまりは魔法少女も魔法少女ってことだよ!!」

 

「答えになってない」とぼやく藍子に私は微笑む。

ここまで一人で考えていた友達がいるのだ。

 

私にはこの世界のことが何一つわかならいけど、でも、考えれば何かが出てきそうな気もしてきた。

だって私は魔法少女だから。

きっと魔法少女にも、意味はある。

 

 

「宿題は『宿命』であり、『主題』である……まさにこう、うん、良い感じに答えてみせるよ!!」

 

「……あなたにしては気のきいたことを言うじゃない」

 

「でしょでしょ!! これ昼間から頭の中にあって温めてた!!」

 

「……でもそれならいいのかしら?」

 

「え?」

 

藍子の視線の先には、部屋の中央の小机。

更にその上にあるノートに向いてると気づいた。

 

私が今日から付け始めた、それは――。

 

「……その日記、表紙に何も書かれてないわ」

 

「……? あー」

 

うなだれる。

根本的に何か足りないと思ったら、それか。

 

タイトルがなかったのだ。

 

 

「……タイトルが……ないのに……『主題』を考えるなんて……できる……の……すぅ」

 

「わわ!! 藍子!?」

 

その場に倒れそうになる藍子を急いで抱きかかえる。

どうやら本当に、電池切れらしい。

 

我が友はすうすうと寝息を立てていた。

 

「寝顔は昔みたいに素直な少女って感じなのになあ……なんて言ったら怒られるか」

 

藍子をベッドまで運ぶ。

今日はお風呂はなしだ。

明日の朝、また訪ねてこよう。

 

窓まで歩く。

カーテンを閉める。

 

改めて、藍子の寝顔を見て決心する。

 

藍子が本の中で何かを探していたように、私は自分の宿題の答えを考えなければ。

さながら、自分の日記にタイトルを付けるように。

 

そしてそれを萌黄さん、もちろん藍子にも聞いてもらうのだ。

それで二人の気持ちを動かすことができたら……。

 

きっと、雑然としていた、今日一日の出来事にだって、意味があったって言える。

 

 

「よし、私はやるよ。明日から1週間で何かを見つけてみせる。だから見ててね、藍子」

 

独り言の決意表明。

返事を期待していなかった空間で、微かに『……頑張りなさい』と聞こえた気がした。

 

 

 

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