逆玉を目指す転生者が伯爵令嬢に絆されるだけの話。 作:たかたけ
まあいつもの事ですね。いけない時にする執筆、ゲーム、漫画、読書。
……最高だね!!!
『魔法』…それは紀元前前から人に与えられた力。魔力を媒介にしてさまざまな事象を起こすことができる、超常の力。
その限界は未だわかっておらず、世界中の魔法師たちはその頂を見ようと日々研究を続けている。
魔法には基本属性がある。『炎』『水』『風』『土』『雷』『闇』『光』『無』これらの属性は個人によって得意不得意が分かれる。炎が得意な人は水を使い難かったり、風か得意な人は水が苦手と言うものは生まれた瞬間から決まっている。
………………
…………
……
…
「“ファイヤ”」
俺がそう唱えると翳した手の先から少し離れた場所に直径30cmほどの炎が現れる。
その轟々とした炎を見て俺は満足してからその炎を握りつぶす。
「よし、なかなか良い感じだな」
俺は手の感触を確かめるようにして手を閉じたり開いたりしてみる。
そして次に俺を起点とした八方向にそれぞれ『炎』『水』『風』『土』『雷』『闇』『光』『無』の基本属性を使った魔法を生み出す。
そして次にそれを縦横無尽に動かしていく。これはチートの中の一つである『思考力強化』を使ったものだ。そうでなければ俺は2個程度の魔法しか同時に操れないだろう。
魔法を動かしながら俺は地面を蹴って走ったり、軽くパルクールを行い、動きながらの魔法制御を体に叩き込んでいく。
……勘のいい人はお気付きだろう。そう、俺には基本属性で苦手な属性はない。神様の計らいかはたまたそれ以外の理由かはわからないが、ありがたく使わせてもらおう。
「“支配掌握”」
俺そう呟いて固有属性“空間”の魔法を使う。それはアレクを中心として半径30mの透明なドーム状の球体を生み出す。
このドームはアレクにのみ視認することができ、他の人は見ることすら愚か、魔力すら感じ取ることはできない。空間掌握と言う名前をそのままにこの魔法は空間を掌握することができる。基本、魔法は発動者から離れる場所に生み出すことによってその出力は大幅に下がっていく。しかし、この空間内で魔法を使うと魔法の出力は落ちずにそのまま発動できる。
つまり、この空間を造った状態のアレクは魔法師にとっての弱点を一つ無くしたと言えるわけだ。
それだけではない、この空間掌握ではその空間内の事象、または動きを全て感じ取り意のままにすることが可能だ。もちろん、それは誰かが発動した魔法さえも。
つまりはこの魔法を発動した場合アレクは、魔法発動領域の拡張権、ドーム内の全情報、アンチマジックの全てを手に入れることが可能になる。まるでチートだな(携帯アニメ風)
まあ、もちろん弱点はある。領域を広げすぎると脳が情報を処理しきれなくなる…、まあチートで解決できるんだけどね!!!
俺はその後、しばらく魔法の練習をしてから家への帰途を辿った。
✴︎ ✴︎ ✴︎
──疾駆。
俺は正面に立つ西洋風の剣を持った大柄の男に肉薄する。手に持っている体に合わせた小さめの剣を男の剣を持っている手向かって素早く振る。
──カンッ。
しかしその斬撃は最も簡単に流されてしまう。俺はそれを気にすることなく剣を使った連撃を叩き込むがそれも全て防がれる。
男は一度体勢を立て直すためか後ろに下がろうとするがそれを阻止する為に俺は思いっきり男の靴を踏み締め、逆に体勢を崩そうとする。しかし男はそれを読んでいたのか踏み締めた足の逆の足を軸に俺を思いっきり蹴り上げる。
突然浮遊感に包まれたことに俺は驚愕するが“空間掌握”ですぐに自分が吹っ飛ばされた事を理解した。
俺はすぐに空中で体勢を立て直す。そして男を改めて見ると空中に浮かんだ俺を見ながら剣を構えている。どうやら着地を狙っているようだ。
それに対抗する為に俺も剣を構え直す。男は俺が空中で対抗すると思っているだろう。
しかしそれは囮、俺の本当の狙いは…。
──短距離転移っ!
大柄の男が俺に向かって鋭く剣を振るう、それを当たる瞬間ギリギリに俺は空間魔法の応用…短距離転移を使い男の背後に回り込み、先ほどまで空中で溜めていた力を男に向かって解放した。
──スカッ。
だが俺の視界から突然その男が消え、斬撃は空を切る。俺は慌てて男の位置を確認しようとするが──、
──ゴンッ
その音が俺の頭に響き渡り、刹那のうちに鈍痛が頭へと伝わってきた。
「イッッテエエ!!!」
「はーっはっはっは!まだまだ俺には敵わないなあ!」
男が何かを喋っているが俺にそれを聞く余裕はない。俺は手を頭に当てて、その場にしゃがみ込んだ。“手当”っていうのは手を当てると痛みが和らぐことからつけられたんだぜ!!!(涙目)
「父さん!本気で殴っただろ!!!めっちゃ痛いんだけど!?」
「いや〜悪い悪い。いきなりアレクが消えたからビックリしちまってな!加減できなくなった!」
くっそ〜…。チートがあるのにこんなに痛いんだよ!しかも負けるし、まだ
俺は親父を睨みつけるが当の本人はガハハと笑っているだけだ。
──ゾクッ
俺は背筋に氷が通った様な嫌な感覚に額から冷や汗を流す。その圧を出しているであろう女性は親父の方にポンっと手を置いた。親父がブリキの人形の様にギギギと、そちらを向くとそこには般若を背後に宿した母さんがいた。
「あなた?何を…しているの?」
「ま、待てアイナ…話せば分かる…!」
「そうね。あなた…いえ、ジーク。いっぱい、お話ししましょう?」
母さんはそう言うと、ズルズルと父さんを引きずってどこかに行ってしまった。…片腕で。
俺の家でのヒエラルキーは見ての通り母さんが一番上で、俺と父さんは1番下だ。
なので俺は隅っこでガタガタ震えて親父を見守ることしかできない。俺の名前を呼んで助けを求める声が聞こえた気がしたがきっと気のせいだ。キット…。
俺は6歳の時から鍛錬を始めた。最初こそは身体能力チートを使っていたが、それでは剣士もとい騎士としての成長ができない事を直ぐに悟った。
理由は色々あるが、その中の一つを挙げるなら技の成長だろう。チートを使えば確かに親父には勝てるだろうが、結局は力でのゴリ押しになってしまう。自分の力に酔い、振り回されるのは結局騎士としてではなく蛮族や賊などと一緒だ。
俺は引くべき一線を守れる人物だ(もといヘタレ)。
…まあ、思考チートや身体制御チートやらは使っているのだが。いや、ちゃうねん。確かに身体能力の強化などは成長を妨げるかもしれないが、身体制御やら思考強化やらは大丈夫では!?寧ろ型を自分にものにしたり高速思考で最適解を出したりするのって己の成長を促してるだろ!!?(目逸らし)
俺は先程地面に落としてしまった木剣を拾って素振りの構えをする。
──ヒュッ…ヒュッ…。
風を切り裂く音が鳴る。素振りを始めた最初は剣をずっと力みながら持っていた為ブンッ…という不恰好な音しか鳴らなかったが今となっては程よい力で風を切る音が鳴らせる様になった。
全くブレることのない剣筋、ずっと同じ型を繰り返して行う姿はまさしく現代で言うところの機械だ。剣を極めようとするものがこの男の素振りを見たなら確実に彼の異質さが垣間見えるであろう。
それにも理由がある。その理由は……。
──やっぱりチートは最高だぜ!!(クズ風)
そうチートである。彼はチート思考で型の最適解を見つけ出し、チート身体制御でその型を寸分の狂いも無く繰り返している。それがこの異常な光景のロジックだ。
感謝の正拳突きならぬ感謝の素振りである(全然違う)。
子供の時から無理をして筋肉を付けると成長に阻害が出るので程々にしているやっている事は大抵が型を体に染み込ませるものだ。まあ、鍛えなくてもチートがあるから大丈夫なんだけどね。
筋肉のある男はモテる。女性は強い男が好きなのは人間が生まれて直ぐから決まっていたことだ。
俺はモテる為の努力を損なわない。それが俺が幸せになることに直結しているからだ。だから女性にモテる方法を調べたりしたし今も実践してみている。
女性の心を弄んでしまって申し訳ないと思うが俺の幸せのためだ、恨むなとは言わないが許してほしい。
俺は素振りを千回程行った後にストレッチを行う。これがあるのとないのでは天と地の差だ。
俺はストレッチをした後に水で濡らした布で体を拭く。
「(あー、風呂入りたいなあ)」
そんな事を思うが平民は風呂に入るという習慣などは無いので水で体を軽く洗うことしかできないので我慢する。
俺は改めて貴族になる意志を固めて家の中に入っていった。
✴︎ ✴︎ ✴︎
突然だが俺が住んでいる領地を収めている伯爵家の騎士たちの鍛錬場まで来ていた。
「騎士団長の息子とは言え、まだガキだろ?」
どうしてそうなったのかは昨日の夜まで遡る。
………………………。
「アレク。今度騎士団の鍛錬場に来ないか?」
「は?騎士団?鍛錬?どうゆうこと?」
親父から言われた全く知らない情報を与えられた事で俺は完全に困惑した。
そんな俺の様子に親父は納得したのか片手で皿を作ってその反対の手で皿の上を拳でポンっと叩いた。
「ああ!そういや、俺って何してたかって言ってなかったか!」
「確かに、貴方ってそもそも家に帰って来れる日って少ないものね…」
「ああ、まあ仕方ないんだけどな」
親父と母さんでポンポン話が進んでいくのに好奇心やらで耐えきれなくなり俺は親父へと聞いた。
「親父って、いつも何してるんだ?」
「…聞いて驚け?俺は、この領地を収めている伯爵様に仕えている騎士団の騎士団長だ!!!」
そう言って自慢するように胸を張った親父を見て俺は少し呆れる。
「……なるほどな。確かに親父強いしな。…で?なんで俺を騎士団の鍛錬に誘ったんだ?」
「…もう少し、何かないのか?例えば『親父すっげ〜』とかそんなこと言ってくれても良いんだぞ?」
「いや、だって俺は最近親父に勝てるようになってきたし。まあ凄いとは思うけど…」
「ふぐぁぁあ!!!」
親父は最近12歳になったばかりの俺に負けていることが悔しいのか胸を抑えて床に倒れ伏した。
「……。ま、まあ。それは置いておいてだ…。「引き摺ってそうだけど」…アレク、今は黙っててくれ。「うっす」……。俺がお前を騎士団の鍛錬に誘った理由はだな…、お前が強すぎるからだ「親父…やっぱり気にして…」違うっ!これでも俺は巷では伯爵の剣と言われる異名を持っていてだな…「あーそういうの大丈夫」…。もう、俺、泣いて良いか?」
「まあ要するに、親父は俺の鍛錬相手を増やす為に誘ったってことか?」
「まあ、それだけじゃないんだが…。そんなところだな」
この提案は最高だ。俺の目的の一つである『呪いの子』にも会うことができ可能性ができるし、将来的に騎士団に入るつもりだし、まさに一石二鳥。棚からぼたもち。灯台下暗し。
『呪いの子』…。その特徴は白雪の様に白い肌と髪。血を混ぜ込んだ様な真っ赤な瞳。噂によれば太陽の光を受けるだけで体調を崩すひ弱な体なんだとか。それはどんな回復魔法も医学でも治すことができない、まさに呪い。異常な症状だと言われたことで『呪いの子』という名前がついた。
ちなみに俺はその症状についてよく知っている。それは…。
先天性白皮症…メラニンの生合成に支障をきたす遺伝子疾患であり、その結果、メラニン沈着組織の色素欠乏およびそれに付随する…というものだ。またの名を、…『アルビノ(albino)』。
白髪赤眼である!!!!この世の宝である!!!バンザイ!!白髪赤眼バンザイ!!!
…っと話がそれた。
「それだけじゃ無いって?他に何か理由があるのか?」
「いや、それは一回言った後に説明する」
「ふーん」
行った後にか…、ただタイミングが悪いのか?それとも…伯爵邸の敷地内でしか言えないことなのか?それも、母さんにすら秘匿される伯爵の側近やら部下しか知り得ない何か重要な………。
まあいっか。俺が今考えたところでその答えは出て来ないだろう。それならば大人しくその時を待っていたほうが良さそうだ。
「それで、どうだ?来てくれるか?」
「ん。良いよ。俺も父さん以外の人と戦ってみたかったし、今の俺がどのくらい強いのかハッキリさせられそうだ」
「ははは!そのストイックさ、やはり俺に似ているな!!!」
そう俺が答えると親父は腕を組みながら高笑いする。
「あなたに似てるって…そんなわけないでしょう?この子は私に似たのよ」
母さんは高笑いする親父を鼻で笑ってそう言った。
「ふっ、じゃあ俺たちに似たんだろうな…なんたってアレクは俺とお前の子供なんだからな」
「もう、あなたったら…」
「あーはいはい。ご馳走様でした……。俺、魔法の勉強するからもう部屋に行くよ。おやすみ〜」
「「おやすみ〜」」
─次の日。
「ということで、行くぞ!アレク!!!」
「は?行くって、どこに」
「昨日言っていただろう!鍛錬場だ!!!」
「……今日って聞いてないんだが」
「今言ったからな!」
ニッとイケメンスマイルを浮かべた親父に俺はキレた。
「…おい、なんで木剣を持ったまま近付いてくるんだ?」
「……」
「ちょ、なんで振り上g─「死ね!クソ親父!」うおおおおおお!!?」
「チッ…避けられたか」
「避けるだろうが!!なんでいきなり殴りかかってくるんだ!俺はお前の父親だぞ!?」
親父は俺の斬撃を容易く回避してそう言う。だがこんな大事な事をしっかり報告していなかった親父が悪い。
そもそも本気でやっていないのでいつも俺と本気でやり合っている親父が避けられない道理はない。
「はっ…報連相も出来ない親を持った記憶は無いな」
「うおっ!今本気でやっただろ!?掠ったぞ!?」
「安心しろ。痛くはしない「アレク〜。そこまでにしときなさい」わかったよ母さん」
「…なんで母さんの言うことは聞くんだ」
この家のカーストトップは母さんだぞ?母さんの言う事を聞くのがこの家で長く生き抜くためのコツd「アレク?」─ははは!なんでもございませんよお母様!!!
と、言う感じでこの伯爵邸の庭に在る騎士団の鍛錬場まで来た訳なんだが来た訳なんだが…。
「(でっか…。これどんだけあるんだよ)」
俺は異常なまでに広い屋敷に庭を見てそう心の中でつぶやいた。あまりの敷地の広さには親父から気を離すと迷子になってしまいそうだ。
どうやら騎士団の鍛錬場が伯爵邸の庭の中にある理由はこの敷地の広さが理由の一つらしい。…こんなに広いと手入れ大変そうだな。
「アレク、ついたぞ」
そんな事を考えているといつのまにか鍛錬場までついたみたいだ。
その鍛錬場多くの騎士らしき人が剣を交え合っており、その気迫がここまで伝わってくるほどの熱量。伯爵がいい騎士を育てていると言うことが容易く理解できる。
「騎士団総員!集合!!」
そう親父が大声で言うと。今まで鍛錬していた騎士たちがすぐさま親父の正面に整列した。
「よーし。お前ら全員いるな。俺の横にいる子供が俺の息子のアレクだ。今日はお前たちの鍛錬にこいつを参加させる」
そう言うと親父の近くにいた騎士の1人が口を開いた。
「…騎士団長、いくら自分の息子自慢がしたいからと言ってこんなところまで連れてきますか?」
そう言った騎士はどこか呆れた様な様子で頭を押さえている。
「なんだ副団長殿。何か文句でもあるのか?」
「いえ、そう言うわけではありません。私はその子供にここの鍛錬に参加させることができるほどの強さがあるのかと言うことです」
その副団長と呼ばれた人はかけているメガネをかちゃりと上げてそう言った。
「ふむ。確かに副団長殿の意見には一理あるな。……おい、グラス出てこい」
「ウィッス!」
トントン拍子で進む話に俺は少し違和感を感じたが親父に呼ばれたらしい人が前に出てきたのを見て一旦その思考を打ち切る。
その男は他のピシッとした騎士とは違って少しヘラヘラした様な印象を受ける騎士だった。
「こいつはこの騎士団の中で上位の強さを持つ若手の騎士だ。コイツと戦ってアレクの力を示せばいい」
「……。まあ、それなら良いでしょう。ただし、力を証明できないなら団長の子供とはいえ鍛錬に参加させることはできませんよ」
「ああ、わかってるよ」
俺とチャラい騎士との模擬戦が決まり、それぞれが邪魔をしないために避けていく中俺は横に立った親父に質問する。
「…親父、なんであんな芝居してたんだ?」
「ん?お前ならなんと無くわかってるだろ?」
「まあな。どうせあの騎士のプライドへし折るためにあの副団長と裏とってたんだろ?」
「ははは!さすが俺の息子だ!」
親父の様子を見るにどうやら正解だったらしい。
「はあ…。昨日のもう一つの理由ってこれのことか?」
「まあな!」
俺は親父に利用されていたらしい。それに少し腹が立ったので強めに親父の足の脛を蹴った。
「イッタ!!何をするんだ!?」
「…ムカついたから。…まあ、親父の頼みはちゃんとやるよ。あの騎士が使い物にならなくなっても文句言わないでくれよ?」
「……。できるだけ加減してやってくれ…」
俺はそう言う親父を無視してチャラい騎士へと近寄っていく。
「ん?もう話はいいのか?ガキンチョ」
「ああ、待たせたか?」
「いんや、子供を待ってあげるのは大人の役目ってもんでしょ」
そう言ってカラカラ笑っている男はどうやら俺のことを子供としか見れていないようだ。まあ仕方なくはあるが。
「そんなこと言ってていいの?こう言うのもアレだけど俺って結構強いらしいよ?」
「へえ〜。ま!騎士団長の息子とは言え、まだガキだろ?」
「……」
ちょっとイラってした。
「両者、準備はいいか?……では、始め!」
そう審判役の騎士が言うと目の前のチャラ騎士が勢いよく切り掛かってくる。
「ガキだからって容赦はしないぜ!!」
俺はその粗い斬撃に自身の剣を相手の剣の腹に当てながら衝撃を完璧に受け流す。
──流転。
この技は俺が少し前に考えた技で特典である思考強化を使いながら相手の斬撃を完全に受け流すと言うものだ。「流転」の意味通り限りなく移り変わる…俺へ当たって止まることなく相手の剣は空を斬ると言う意味だ。
完全に斬撃を受け流されたしては少し驚きつつもさすが騎士と言うべきか一度下がって俺の様子を伺い出した。
─チャラ騎士視点。
すぐに終わると思っていた。
騎士団長の息子とは言え、ただのガキ。俺が本気で相手をする価値すらない。そう、思っていた。
─カキン
そんな軽い音を立てて俺の渾身の斬撃が全て受け流されていく。本来ならばもっと大きい音を立てるはずの剣はどんなに強く振っても子供の遊びでしか出ない様な音しか返さない。
──クソクソクソクソクソ!!!
なんで!俺はこの騎士団で若手ナンバーワンなんだぞ!?それなのに、俺よりも小さいこんなガキに!こんな、ガキに!!!
─カキン
また、受け流された。今まで俺が積んできた経験を否定する様な軽い音。それがこのガキとの差。これではまるで、
俺が子供扱いされているみたいじゃねえか…
─騎士視点。
「なんだ?あいつ、遊んでるのか?」「音が軽いし、遊びでやってるんだろうよ」「騎士団長の息子とは言え仕方ないよな」
そう言う声がチラホラ聞こえたが、それは大抵新人騎士の声だった。そう新人騎士が思う中で他の熟練の騎士たちはアレクの異常性に気付いていた。
「…全て、受け流している。それも、完璧に…」
他の熟練騎士の言葉を代弁する様に副団長と呼ばれていた男が譫言の様にそう言った。
「…そんなことがあり得るのか?」「騎士団長の息子とは言え、まだ12だろ?」「しかも魔法まで使えるらしい」「…嘘だろ?」
騎士たちはそれぞれアレクの剣技に衝撃を受けていた。たった12の子供が己を凌駕するであろう剣技を繰り広げているのだ。目を疑わないわけがない。
「ジーク団長…彼、本当に12歳なんですか?」
「それは、アレクが俺の息子か疑っているのか?」
「それは違いますけど…。正直信じられないんですよ…あの子供が私たちの剣技を超える技を使っているのですから」
副団長がそう言うとジークが腕を組みながら笑い始める。
「ジーク団長?どうしたんですか?」
「いや、こんなので驚いてたら…お前たち今日は失神するかもしれないぞ?」
「……は?」
それはどちらに向けての言葉だったか。ジークへ向けてかそれとも、アレクと戦ってる騎士が後ろに大きく吹き飛ばされた事へだろうか。
その騎士は吹き飛ばされた体を受け身で起こしてアレクへと注意を向けようとするが、そこにはアレクの姿はなかった。
アレクはすでにその騎士の懐、それも死角へと潜っていた。アレクは騎士の無防備な腹に蹴りを叩き込む。
「ぐうっ」と唸りながら後ろへ吹き飛ばされた騎士は腹を押さえながらながらも剣を構え直す。しかし前を向いた時にはすでにアレクは正面へと移動していた。
そしてアレクは素振りのような要領で真っ直ぐ縦に剣を振り下ろす。
─パアンッ
剣を振った音とは思えない音が鍛錬場に響き渡る。何かが破裂したかの様な音、アレクが剣を振った後に音が鳴るのを誰もが見たはずだ。アレクの剣は音を置き去りにした。
──音残。
ただの素振り、しかしながらそれは突き詰める事で一つの技になった。音を置き去りにするという剣技として。
─カラン、カラン…
金属が石製の地面に乾いた音を立てて落ちる。それは戦った騎士が持っていた刀身の1/3だった。アレクの斬撃は鋼製の剣を叩き切ったのである。
完全に戦意を失い、くずれおちた騎士をアレクは確認して。
「俺の勝ちで良いですよね?」
そう言って軽く笑った。
おやすみ。
主人公のヒロイン。白髪紅眼(アルビノ)は確定。
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2度目の人生(逆行)
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普通の子
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前世の記憶有り(ゲームの世界的な)
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乙女ゲーのヒロイン
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悪役令嬢