繋ぎ回。刃牙成分は少なめ。
「受けましょう、その
自分を見つめる周囲の視線も、一夏の驚いたような視線も、千冬の興味深そうな視線も、真耶の不安げな視線も。その全部を
時は少し─10分ほど遡る。
入学初日のIS学園、その2時間目が終わった休み時間のこと。優は1人、僅かに苛立ちを覚えながら離れた場所にある男子トイレへと向かっていた。何せ女子校であるこの
そしてそれ以外にももう一つ、彼を苛立たせるものがあった。
(鬱陶しい…。)
それは教室外にも押し寄せた女子の存在。幸いにもそれらはほとんどが教室に残されたもう1人─一夏の方へと興味を示しており、優には向いていない。
そもそもの話だが─考えてみてほしい。はち切れんばかりの筋肉を湛えた
(あ。)
さて、そんな優がトイレからの帰路についていた時、彼はあることに気がついた。
(そういやもう1人とまだ話してねえな。)
思い返せば、一夏というもう1人の男子生徒は1時間目の後には何やら女子生徒に連れて行かれており、2時間目の後には自分がこうして教室外へと出ていっている。そのため、いまだに挨拶を済ませてはいなかった。
(…まあ、構わねえか。そのうち用があれば話すだろ。)
見たところ、別に優と一夏は話が合いそうな感じでも無かった。ので、彼はあっさりとその事を頭の隅に追いやって、次の授業の事を考えていた。詰め込みで予習は済ませ、どうにか授業にはついていけているが、それでも余裕は一切無いのだ。
さて、そんな彼が呑気に教室へと帰ってきた時だ。その時、クラスは妙な
「…何の騒ぎだ?」
「あれえ?すぐるんも気になるぅ?」
(((((すぐるん!!!???)))))
つい溢れた発言を拾ったのはぬるりと近づいてきた、例ののほほんとした女子であった。そして彼女の『すぐるん』呼びに周囲が戦慄するなか、2人は何事もなかったかのように話を続けていく。
「…
「お?もう覚えてくれたの?」
「ある程度は、な。…で、ありゃなんだ?」
ちょいちょいと例の騒ぎの方を指で指しながら優は尋ねた。布仏─のほほんさんもまたそっちをみて、ああ〜とか言い出している。
「なんかねえ。セッシーがねえ。」
「せっしー。」
野太い声で優は復唱した。何て似合わないんだ。巻き込まれていない女子は素直にそう思った。
「そう、で、セッシーがねえ、おりむーに絡んでるんだよぉ。」
「おりむー。」
またしても野太い声で復唱した。やっぱり似合わない。何だこれ。あれだ。頑張って娘の趣味についていこうとする父親みたいだ。誰か1人が思いついたそのイメージは周囲に瞬く間に広まっていった。
「…なるほど。話はわかった。」
「へえ?すぐるんどうするのぉ?」
「いや、何もしないが。」
事情はある程度は飲み込めたが、それはそれ。しれっとそう言い切って優は自席の方へと歩いていった。そんな彼の後ろをぴょこぴょこついていくのほほんさん。
「そうなの?」
「そりゃあな。何せ─アレはあの2人の喧嘩だ。」
未だにギャアギャアと叫んでいる2人を指さして、優は当然のようにそう言った。
「なら俺が手を出していいわけがない。」
─
「…すぐるんは変わってるね〜。」
「そうか?ところで…」
気がつけばポリポリとお菓子を食べ始めたのほほんさんを見て、優は一つ尋ねた。
「その『すぐるん』ってのは…俺か?」
「「「「「今更!!!???」」」」」
あまりにも気の抜けた、今更感に溢れるその声に、周囲から鋭いツッコミが入った。
そうしてそのまま3時間目。教壇に立った千冬が授業を始めようとして、何かを思い出したとばかりに言い出した。
「ああ、授業の前に…再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな。」
代表者。要はクラス長であり、生徒会の集まりやら会議やらに参加しなければならない役職。歴とした学生である優には、至って想像の範囲内のモノであった。欠伸を噛み殺して、事態が収束するのを待つ。
「では候補者はいるか?自薦他薦は問わん。」
「はいっ!織斑くんを推薦します!」
「私もそれがいいと思います!」
これはこれは。
織斑姉弟の言い争いと、周囲の盛り上がりを他所に試合があれば寮を抜け出せるのかとかそんな事を優は考え始めた。
「はい!筋に…じゃなかった金丸さんがいいと思います!」
「待て相川。今何と言いかけた?」
「何でもありません!」
そして例の筋肉フェチにノータイムで巻き込まれた。…あの千冬に問い詰められて何でもありませんでやり過ごすとは、可愛らしい顔をしてなかなか肝が座っている。
「そ、そうか…。他にはいないか?」
「待ってください!納得がいきませんわ!」
巻き込まれたか、とどこか
「そのような選出は認められません!大体!男がクラス代表だなんていい恥晒しですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年間味わえと仰るのですか?」
…面倒。随分と面倒な手合いだ。
暴走するオルコットに、それに呼応する一夏。2人は随分とヒートアップしていき、とうとうお国の批判まで飛び出して。そしてついに行き着くところまで行き着いた。
「決闘ですわ!」
「おう、いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい。」
机を叩いて言い合う2人に、周囲に動揺が走る。その中で、優だけがすっと軽く手を上げた。
「…なんだ?金丸。」
「決闘。ルールは
徒手か武器ありか。はたまたISを使うのか。仮にISを使わないのなら、どこまでやっていいのか。
え?と誰かがつぶやく中、優は当然のようにそう千冬に尋ねた。その目からはふざけた様子は見られない。─こいつは本気で尋ねている。
「ルールか。…この状況で真っ先に思いつくのがそれか?」
「大事でしょう。少なくとも…
「(…暗にそれ以外なら当然何でもあり、をほめのかすか。)…そう言うのは本人たちから聞け。ただしここはIS学園。ISを使うのは前提だと思え。」
「わかりました。」
内心で軽く舌打ちをして、千冬は2人を指した。
「だ、そうだけど。ハンデはどのくらいつける?」
「あら。早速お願い?」
「いや?俺がどのくらいハンデつけたらいいのかなーと。」
─野郎、相手を舐めてやがる。
一夏の発言にクラス中が笑う中、優は冷ややかだった。明らかに、今奴は─なぜかは知らないが─相手を舐めている。積み上げた修練も、そこからくる自負も敬意もなく、だ。
「お、織斑くん、それ本気で言ってるの?」
「男が女より強かったのなんて、大昔の話だよ?」
「織斑くんは確かにISを使えるのかも知れないけど、それは言い過ぎよ。」
そして口々に上がる、否定の声。それを聞いて、千冬はふむ、と頷いた後口を開いた。
「お前たち、よく聞け。」
その顔つきは、至って真剣。
「『男と女が戦争をしたら3時間で女が勝つ』。…そんな説をお前たちは聞いたことがあるだろう。」
そりゃまあ、なんて声が上がる。事実では?なんて声も出てくる。そんな彼女たちに、千冬は堂々と言い切った。
「そんな妄言は嘘だ。信じるな。もしやってみれば分かるが、普通に負ける可能性はあるぞ。」
「「「「「…………え?」」」」」
教室が大口を開けて呆気に取られる中。優だけは少しだけ片眉を釣り上げた。
「そもそもその説はISが、世界にたった500程度しか無い兵器を全て女性サイドの戦略として使い、その他の戦力は全てISの撃退のために動く事を前提にしているわけだが…現実にそんな事あると思うか?」
加えて言うが、と言って千冬は扉を指差した。
「仮に今、そこから武装したテロリストが入ってきたとして。この中で何人対応できる?」
クラス中が沈黙に満ちた。その中で千冬は2人だけを出席簿で指し示す。
「この中だと、私を除いて2人。…専用機持ちのオルコットと、対人格闘に極めて秀でた金丸。この2人なら可能性がある。IS抜きだと金丸だけだな。ただし…もしテロリストが本気なら、止める前に1人か2人は死ぬだろうが。」
ひっと小さく悲鳴が上がった。そんな生徒たちを見回して、千冬は改めて言い切った。
「そういうことだ。いくら秀でたIS乗りといえど、生身ならば所詮はただの人。そこを狙われれば如何なる人でも死ぬ。…ISは今までの兵器に比べて極めて優秀だが、それだけだ。決して無敵では無い。覚えておけ。」
世界最強。その座に立った人物からの諫言にクラス全員が静まる中、はあ、とため息をついて千冬は話を切り替えた。
「と言うわけで、だ。勝負の件について話を戻すぞ。ハンデは無し。ルールとしては公式戦準拠の、シールドエネルギー制を採用する。日時は1週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。いいな?
「…‥3人?」
「3人だ。オルコット、織斑、金丸。違うか?」
「…あ、俺もですか。」
少しだけ。ほんの少しだけ上機嫌な様子で優は応えた。
「お前も他薦者だ。なら戦う義務がある。そうだろう?」
「…そうですね。ああ、そうだ。」
そう言って、優は
「受けましょう。その勝負。」
金丸 優
いまだに主人公と話してない系男子。多分性格は合わない。
のほほんさん
のほほんさんマジのほほんさん
筋肉フェチ
相川さん。顔が全モブで一番好き。
織斑 一夏
もげろ。
セシリア・オルコット
まだ尖ってる時期。
織斑 千冬
ISを持つことによる慢心を見て流石に言わざるを得なかった。
ここで本編とは全く関係ない話を。ジャック・ハンマーは最近噛みつきキャラになりつつありますが、これマジで怖いと思うんですよ。ネットだとネタ枠みたいに扱われてますけど。
だってあいつ240センチですよ?しかもあの筋肉ですよ?そんなのどんな達人がどう足掻いても両手塞がれて、首筋噛まれるじゃないですか。そしたら頭の上から動脈噛み切られて終わりですよ。そう考えると骨延長したの無駄じゃなかったと思うんですよね。打撃も強いし。
と言うわけで私は巨漢ジャックの噛道はすごい好き。