ブロロロロロロロロ‼︎
山奥の道路にて猛々しいエンジン音が鳴り響く。
一台のバイクが二台のトラックに追われていた。
なんとか振り切ろうとするが二台のトラックが猛追してきて振り切ることが出来ない。
その二台のトラックの間には糸が張ってありそこには蜘蛛もいた。
バイクには二人乗っており運転手が左右のサイドミラーを見るとトラックを運転していたのは仮面を付けてた男だった。
運転手は後ろに乗っている女性の方を見る。
彼女は両手を強く握り落とされないように踏ん張る。
しばらくすると前方にパトカーが二台、道を塞ぐように停めてあった。
バイクは二台の間を通り、トラックはそのままのスピードでぶつかりパトカーを押し除けた。
トラックの方は間に糸が何重にも張られ、完全に並走する形で追っていた。
さらに前方に先程のトラックが何台も積み上げられていた。
道を塞がれてしまい、このままではバイクの二人が危ない。
「風を受けて!あとはマスクを…」
女性が何か言ったが、次の瞬間ーーー
ドガァァァァァン‼︎
道路が爆発し並走していたトラックが吹っ飛んだ。
その爆風でバイクも飛ばされてしまう。
吹っ飛んだトラックとバイクはそのまま崖に落ちていく。
後ろに乗っていた女性も吹っ飛び崖に落ちていく。
その時、彼女は何かを口ずさんだ。
すると彼女の身体が光り、やがて収まると受け身を取りながら着地する。
彼女の姿は変わっていた。
身体ぴったりに装着されたマゼンタ色のインナーにヘッドフォン型のギアに目元を覆うバイザー、両肩と両脚、両腰に装甲が施された装甲服…対ノイズ用プロテクター『シンフォギア』である。
そう、彼女は聖遺物【
本来“特異災害対策機動部二課”が占有するオーバーテクノロジーを何故彼女が持ってるかは置いといて、着地した彼女を何人かが包囲する。
服装だけを見ればSATの様な警察の特殊部隊に見えるが、蜘蛛を模ったエンブレムを付け黒一色のベレー帽、何より顔全体を覆う集中線を描いた仮面が特徴的な兵士…
警察の特殊部隊に偽装した兵士が彼女の周りを包囲し自動小銃を向ける。
絶体絶命の状況だが慌てる様子も無く両腰の装甲が展開し何かが飛び出す。
それを引き抜くと二丁拳銃として両手で装備した。
二丁拳銃を兵士達に向けると彼女はトリガーを引き銃口からエネルギー弾を打ち出す。
打ち出されたエネルギー弾は兵士に命中すると身体に穴を開け対象を絶命させる。
兵士達は自動小銃にて応戦するが軽い身のこなしによって回避し、当たりそうになっても両肩の装甲に内蔵されている電磁波兵器により力場を形成、銃弾の弾道を逸らして攻撃を無力化する。
二丁拳銃で無双していると兵士達は
兵士達の行動を不審に思った彼女は何かの気配を感じ上咄嗟にを向く。
なんと蜘蛛の巣状の網が彼女に覆い被さり、動きを封じた。
覆い被さったのは電磁ネットであり、シンフォギアを纏っている彼女の動きを封じる代物だ。
動きを封じた彼女の周りを兵士達が包囲し銃を向ける。
すると…
「裏切り者に死を…それが私の仕事です。」
複数の兵士を連れて彼女に近づく者がいた。
兵士達の姿も不気味だが、率いている者もより不気味だ。
赤と黒のライダーズジャケットを着込み、ガスマスク状の仮面は蜘蛛を模っており側面にはドレッドヘア状に編み込んだパーツが四対垂れ下がっている。
まさに“怪人”と呼ぶに相応しい存在だ。
「ですが、組織からの命令は生け捕り…ですので今は二度と逃げ出さない為の
そう言うと怪人は装者の目に向けて指を立てる。
目潰しを行おうとしているのだ。
あと数センチで目に当たる……その時だった。
ギュオオン‼︎
突如として猛々しい機械音が鳴り響き何事かと音のする方を見上げると、崖の上に
「ガングニールホッパー⁉︎完成してたのですか‼︎」
怪人が驚いていると仮面の男が人間とは思えない程の跳躍でジャンプし、怪人の近くに着地する。
怪人は軽い身のこなしで回避するが、男はすかさず追撃する。
兵士二人が止めようと前に出るが、男は宙返りをしながら飛び掛かり、二人の頭を鷲掴みにして地面に叩き潰す。
その結果、二人の頭は潰れ血飛沫が舞う。
「ーーーッ⁉︎」
返り血を浴びた仮面の男はその光景に戦慄し震える。
その隙に彼女はコンバットナイフ型のアームドギアを取り出し、電磁ネットを切ると足を引きずりながら距離を取る。
彼女の足に小蜘蛛がいる事に気付かないまま…
その事を確認した蜘蛛の怪人はその場を後にする。
兵士達は発砲するが仮面の男は弾道を読んでいるかの様な動きで翻弄し兵士の顔面を全力で殴る。
また兵士の身体を全力で蹴る。
兵士を木に固定してから全力で蹴る。
腕から伸ばした鋭利な刃で兵士数人の胴体を一気に真っ二つにする。
高周波振動による手刀で兵士を突き刺し心臓を握り潰す。
一方的な殺戮により鮮血が舞い、辺り一面血で染まる。
返り血で染まった仮面の男はその場を後にする………
シン・仮面絶唱シンフォギア
山奥の何処かにある古びた山荘…
その建物の中に仮面の男…『ガングニールホッパー』はいた。
彼は洗面台の鏡で己の姿を見る。
全体が漆黒で彩られ薄いピンク色の複眼に2本のブレードアンテナ、額のランプが特徴的な飛蝗を模した仮面…
彼は動揺していた。
(風の音がする……何故僕の身体の中に風の音が…?)
彼は自分の身体の違和感に動揺していた。
まるで身体の隅々までも改造された様な…
(人を殺した……僕が…違う!身体が勝手に……!)
人を殺した感覚に彼は精神的に参っていた。
無理もない。
彼は今まで人を殺した経験が無いのだから…
そして何より…
(何故僕は
殺人を犯しても今の今まで平常心を保っていた事に彼は酷く狼狽した。
自分の左手を見る。
彼の左手にはバイク用のグローブを酷似したものを装着しており、血がベッタリと付いていた。
彼はそれを勢い任せに外そうとする。
中々外れずやっと外すと…
「ーーーッ⁉︎」
彼の左手は皮膚や爪がまるで異形の生物みたいな感じであり、その事に恐怖を抱きながらグローブを付け直す。
続いて仮面を外そうとするが思いの外固く、やっとの思いで開き素顔が明らかになると彼は戦慄する。
何故なら………
「な…何だこれ……⁉︎」
彼の顔は多数の痣が刻まれており、瞳は赤く変色…
極め付けは額に昆虫が持つ単眼に酷似した所謂“第三の目”といえる宝玉が存在していたのだ。
素顔を数秒見た後、彼は仮面を付け直す。
山荘の中の一番広い空間に赴くと、そこに先程シンフォギアを纏った女性が立っていた。
彼は女性に駆け寄り彼女の両肩を強く掴む。
「教えてくれ‼︎僕はどうなってしまったんだ⁉︎君なら何か知ってるのだろう⁉︎」
「私が説明しよう。」
すると男性の声が聞こえてきたので振り向くと、そこにはスーツ姿の初老の男が立っていた。
その男を見た彼は目を見開く。
「せ…
仮面の男…
「君は私が主導する《昆虫合成型オーグメンテーションプロジェクト》の最高傑作であり、《SHOCKER》の持つ様々な技術を注ぎ込んだ《聖遺物融合型オーグメント第一号『ガングニールホッパー』》だ。」
彼の口から語られる未知の単語に困惑する本郷だったが、恐る恐る尋ねる。
「…つまり先生が僕をこの様に改造したと?」
「そうだ。私と私の研究グループが《プラーナ》を用いた技術、我が息子イチローが開発したガングニールを核とする《示現生体エンジン》、そして我が娘ルリ子が解析に成功した《シンフォギアシステム》の三つの技術で君の身体をアップグレードさせた。」
淡々と説明する緑川に本郷は信じられないと思いつつも、それを知ってか知らずか彼は説明を続ける。
「《プラーナ》は君の肉体と生命力そのものを直接支えている。ベルトから大気中のプラーナを吸引し圧縮、その圧縮したプラーナを用いて超人化。それを合図に《示現生体エンジン》のリミッターが解除されエネルギーを無尽蔵に供給、それにより生じたフォニックゲインを《シンフォギアシステム》を介して武装化する…勿論元に戻る方法も用意してある。本郷君、ベルトの右側にあるスイッチを押してみてくれ。」
彼はベルトを見ると左右のアタッチメントにスイッチがある事を確認する。
言われた通りに右側のスイッチを押すと、全身の力が抜けていく感覚に陥りベルトの風車部分が競り上がり付近の四つの穴からバーナーみたいに噴射し身に纏っていたスーツ全体が光に包まれ元のコート姿に戻り、飛蝗を模した仮面もフルフェイスヘルメットに変形した。
彼はヘルメットを取ると…
「でも、そんな力を僕に…何故です?」
本郷は他ならぬ恩師が自分を改造した事実に少なからずショックを受けていた。
「以前から組織は君を次なるオーグメンテーションの被験体候補として目を付けていた。私がやらずとも他の研究グループが君を改造していただろう。そして何より君は望んでいた。君がかつて経験した深い絶望に端を発する…【大切な人を守る為の力】を求める渇望を。」
彼の言葉に自身が経験した絶望と渇望に心当たりがある本郷。
確かに
「しかし先生…あの仮面の人達もオーグメンテーションを施された強化人間だったのでしょう?」
「君に施したものに比べれば簡易的なものであるし、組織の命令には絶対服従するよう洗脳措置を受けた…
「それでも人である事に変わりはありません。そんな人間達を最も簡単に殴り殺せてしまう……“たった一人”が持つには余りにも行き過ぎた力です‼︎」
彼のいう通り殴る蹴るで人を簡単に殺せる上にその事に何ら罪悪感を抱かないこの力は彼が渇望する力とはだいぶかけ離れている。
「…そう認識してくれればいい、だが今や組織に属するオーグメントの殆どが君と同等の力を持ちながら、その力を
そう言うと緑川は本郷の方を向く。
「だから私とルリ子は組織を抜けた。本郷君、どうか組織を…《SHOCKER》を倒してくれ。無論君が活躍できる様に敵対している組織に支援を取り付けた。そして本郷君専用にカスタマイズされたバイクもね。」
緑川が指差す方向を見ると先程まで乗っていたバイクが鎮座している。
高所から落ちた筈だがバイクに傷一つ付かなかった。
「そうだ、君のパートナーとなる娘のルリ子を紹介しよう。」
本郷は自分から見て右側にいる女性を見る。
「初めまして本郷猛、貴方のことは事前に調べたわ。城南大学きっての天才生化学者であり、頭脳明晰スポーツ万能、過去の経験から様々な武術に励んでいる。数多くの資格を取っているが他人とのコミュニケーションが苦手で、それが原因で現在は無職。唯一の趣味であるバイクでツーリングしながら一人旅をしていた。合ってる?」
「…正解だ。よく調べたな。」
「私は用意周到な上に他人を信じない。けど、貴方の性能を当てにしてみる。同行を許すから、少しでも私が我慢出来る格好にして。」
そう言うと彼女は近づき、本郷の首に赤いスカーフを巻き付ける。
「これは?」
「昔からバイク乗り…“ライダー”の必需品よ。それに…ヒーローと言えば赤なんでしょ?知らないけど。」
彼女がそう言う中、本郷は気になる事がある。
「そういえばあの蜘蛛を模った仮面…あれもオーグメントなんですか?」
「《クモオーグ》…私とは別の研究グループが作った人外融合型オーグメントであり、組織の掃除屋として不安分子の排除を行なってきた。」
緑川がそう説明した刹那…
(蜘蛛…?)
本郷の目の前に蜘蛛が一匹、糸を垂らして降りてくる。
咄嗟に胸騒ぎを覚え、素早く蜘蛛を薙ぎ払う。
薙ぎ払われた蜘蛛は床に激突するも難なく立ち上がり腹部分が開閉しカメラのレンズが出てくる。
「いかん、逃げろ‼︎」
緑川がそう叫ぶが本郷の手の甲へ天井から糸が降ってこびりつき、その糸に引っ張られ壁に叩きつけられる。
そのまま全身にいくつもの大きな蜘蛛の巣が粘着され、拘束されてしまう。
ルリ子もその場に倒れて気を失ってしまう。
彼女のコートの襟から先程の蜘蛛が何匹も出てきた。
「お邪魔しますよ。」
天井から蜘蛛の仮面の男…クモオーグが緑川の前に降り立つ。
本郷は拘束する糸を破ろうとするが、びくともしない。
「無駄です。人に戻るなどという愚かな理由でエネルギーを放出した今の貴方に私の糸は切れません、《ガングニールホッパー》」
クモオーグはルリ子の足に蜘蛛型ロボットを忍ばせアジトまで泳がせた。
そして隙をついて人に戻った本郷を拘束し無力化、ルリ子を気絶させた。
「さて…」
クモオーグは両手で緑川の胸ぐらを掴む。
「先生ぇ‼︎」
「私に構うな‼︎私はプラーナで世界を救済する為に多くを巻き添えにした……これはその報いだ、本郷君もすまなかった…」
「よして下さい‼︎そんな事…」
本郷はもがくがびくともしない。
「さあクモオーグ……殺せ‼︎遠慮せずに私を!お前の“幸せの贄”にしてみせろ‼︎」
「ご心配なく…その願いは私らしいやり方で叶えてあげましょう。」
クモオーグが着用しているジャケットの各所に備わるファスナーがひとりでに動き出し、そこから新しい腕が生えてくる。
「裏切者に死を……それが私の仕事です。」
生えてきた腕は緑川の首を絞める。
「いいですね〜〜この手応え、獲物の命は自身の手で直接頂く…これが私の
オーグメントの力なら人を殺す事は簡単だが、クモオーグは敢えてそれをせず絞首でもって反応を楽しみながらゆっくり殺す。
「では緑川弘、貴方も死んで私の“幸福の一部”となって下さい。」
「止めろぉぉぉーーー‼︎」
「本郷君…ルリ子を……頼む!」
次の瞬間、緑川の首の骨は折れ絶命する。
そして亡骸を粗雑に放り込んだ。
「私に幸せをありがとう……貴方も未来永劫お幸せに。」
緑川弘の亡骸は瞬く間に泡に包まれ、崩れ落ちて消えた。
「ガングニールホッパー、貴方も裏切者の一人ですが親愛なるオーグ仲間の一人なので
そう言ってクモオーグはルリ子を背負い、部屋に爆弾を設置し仮面越しに糸を飛ばして手に取りそれを伝って屋根を突き破りこの場を去った。
「先生……うわぁぁぁぁぁぁぁーーーッ‼︎」
残された本郷は人型の沁みを直視したまま慟哭した。
その時の怒りと悲しみで彼の中のプラーナが活性化、渾身の力で糸を引きちぎり間一髪山荘を脱出した。
彼の身体は怒りや悲しみなどの感情の昂りで覚醒した謂わば“即席強化体”と呼べるものだった。
気持ちの整理が追いつかず呆然としていると、彼の元にバイク…《サイクロン号》が自律走行で駆け寄る。
その事で彼は自分のやるべき事を確認する。
「ルリ子さんを助けないと…!」
そう決心した本郷は直様ヘルメットを被りサイクロンに乗り込み発進する。
走らせながらスカーフを巻き直し、サイクロンの左側グリップに付く赤色のレバースイッチを親指で押し込み、ハンドルを押し込む。
すると外装が変化して常用モードから四つのライトに《ガングニールホッパー》の
大型マフラーからジェットエンジンの如く噴射し、一気に急加速する。
急加速によって大量の風…つまり大気中のプラーナがベルトに吸引され圧縮・活性化、即席強化体とは比べ物にならない程の超人化を果たす。
それを合図に示現生体エンジンのリミッターが解除され膨大な量のフォニックゲインが発生、身体が光に包まれ黒色のライダースーツにダークグリーンの胸部アーマー、四肢にはアーマーと同色のグローブとブーツを装着したガングニールホッパー専用の強化防護服になり、仕上げにフルフェイスヘルメットが変形し漆黒に彩られた仮面にダークグリーンのクラッシャー、薄いピンク色の複眼に額のランプと2本のブレードアンテナといった
変身が完了したガングニールホッパーはハンドルから手を離して胸部の《コンバーターラング》から大気中のプラーナを吸収すると胸部アーマーの隙間が緑色に光り、パワーアップする。
変身を果たしたガングニールホッパーは急加速を維持したままクモオーグの跡を追う。
一方、事前に手配していた車に乗ったクモオーグが前方に気配を察知し振り向くとそこにはガングニールホッパーが立っていた。
彼はサイクロンの機動力を駆使し先回りをしていた。
直様車を止めルリ子を降ろしてから背負う。
こうしてガングニールホッパーとクモオーグは対峙する。
「流石緑川の最高傑作…無傷と想定外でした、ガングニールホッパー。」
彼を称賛するクモオーグだが、彼はもう“ガングニールホッパー”という名前では無い。
ライダーであり…仮面を付けて戦う戦士……
「違う。僕の名は…ライダー……仮面ライダーと名乗らせて貰う‼︎」
「裏切者がほざかないで下さい。オーグ仲間を殺めるのは遺憾ですが、古来より飛蝗は災いの象徴ですし、仕方ありません。ここで始末しておきます。」
すると何処からともかく電磁スティックや電磁棒を装備した下級構成員が十人ほど現れ武器を構える。
「邪魔者に死を…それが私の仕事ですので。」
それを合図に戦闘員達がライダーに襲い掛かる。
彼はなんとか躱すが何本かの電磁棒が当たってしまいダメージを受ける。
だが、そのダメージは大した事は無い。
直様殴る蹴るで反撃し、先程と同様鮮血が飛び散る。
圧倒的なパワーで捩じ伏せ、腕から伸ばす鋭利な刃物《スパインカッター》、高周波振動する爪《ハイバイブネイル》によって展開していた戦闘員達を殲滅する。
取り巻きを倒したライダーはクモオーグの方を向く。
クモオーグもルリ子を降ろしダム付近で対峙する。
「私は人間が嫌いです。その人間を捨てたオーグメントの為に、人間をこの手で殺す。それが私の幸福‼︎」
そう言うとクモオーグは糸を飛ばしてダムの上へと移動する。
ライダーも飛蝗特有の跳躍で一気に移動する。
「いいですねぇ、その近接戦闘能力…ですが当たらなければ何も問題有りません。」
クモオーグの言う通り、確かにパンチの一発一発の威力は高く彼自身が武術に励んでいる事も相まって近接戦闘能力が高いが、彼自身ガングニールホッパーとしての力に振り回されている上にクモオーグの回避能力が高いので、攻撃が一向に当たらない。
「私の戦闘人形の殺害行為、実に見事でした。貴方も人間を殺す幸せを知りましたね。」
戦いながらそう言うクモオーグは糸を吐き牽制するが、薙ぎ払って掻き消しクモオーグの顔面に向けて右ストレートを叩き込む。
「違う!そんな幸せ、僕には無い‼︎」
右ストレートが命中し、クモオーグの仮面にヒビが入る。
うめきながらもクモオーグはライダーを称賛する。
「いいですねぇ、この打撃力…既に人間では無い貴方と分かり合えないのが残念です‼︎」
クモオーグはそのままダムからバク宙で飛び降り、糸を使って降りる。
ライダーも跳躍で跡を追う。
着地した瞬間、クモオーグにより羽交い締めにされる。
するとクモオーグの身体から新たに4本の腕が生えてきて、ライダーを拘束する。
「見て下さい!この圧倒的な殺傷能力‼︎人では無い喜び‼︎貴方も同じオーグメント…なのに、この幸せが何故分からんのです⁉︎」
クモオーグはこれまでの落ち着き具合からは想像もつかない程ハイテンションで人では無い喜び、それを理解しない仮面ライダーに対する嘆きをぶつける。
「さあ、貴方も死んで私の幸福の一部となって下さい…」
そう言うクモオーグに対しライダーの答えは…
「…悪いがアンタの幸福の為に犠牲になる気は無い‼︎」
拒絶の反応と同時に彼はエネルギーを解放。
スペック以上の跳躍で飛び、錐揉み回転による遠心力でクモオーグを引き剥がす。
引き剥がした仮面ライダーは背中の翅状のプレートが光り、三対六枚の力場による翅…《フォースフェザー》を展開しより高く跳躍する。
そう、仮面ライダーもといガングニールホッパーは空中戦闘能力が高いのも特徴だ。
回転をかけながら狙いを澄ますライダーにクモオーグはなす術がない。
「しまりました…空中では私が圧倒的に、不利ぃぃぃぃーーー‼︎」
クモオーグの悲鳴と同時にガングニールのエネルギーを右足に集中しての飛び蹴り…《ガングニールスマッシュ》を叩き込む。
持ち前のパワーに加え位置エネルギーも合わさった飛び蹴りはクモオーグに致命傷を与えるのに充分な威力を発揮した。
もろに直撃を受けたクモオーグは地上まで真っ逆さまに墜落し、大きな音と共に土埃が舞った。
ライダーは翅を使い、地面に着地するとクモオーグの姿を目撃する。
彼は起き上がろうとするが、しばらくして力つき泡となって消滅した。
「………」
クモオーグは確かに数々の殺人を犯したとはいえ、人間である事に変わりない。
彼は黙祷を捧げた。
例え自分もオーグメントだとしても心は人であるとして……
すると後ろからルリ子が来る。
どうやら麻酔の効果が切れて動けるようになった。
「大丈夫か?」
「なんとかね。組織の人間は機密保持の為にあの様に死体は融解される。貴方も私も例外なくね。」
「………」
「…どうしたの?」
「すまない、僕は先生を…君の父親を助けられなかった。」
「貴方が謝る事は無いわ。父も私も覚悟していた事だし…」
「それにこの仮面を被っていると暴力の加減が出来なくなる。」
「そのマスクには生存本能を増幅させるシステムがが入ってる。闘争心を高め、殺人に対する忌避感を無くし、自分が生き残る為には容赦無く敵を殺せる状態になるの。」
「思ったより辛い…」
「貴方が感じている“辛い”という字に、横棒を一本足すと“幸せ”と言う字になる。“幸せ”なんて“辛さ”のすぐ近くにあるものよ。」
彼女のちょっとした講義みないな話に彼は真摯に耳を傾ける。
「少なくとも貴方はその辛さを背負って戦う事で私を助けてくれた。誰か守って戦うってそう言うことよ。それに父は貴方を勝手に改造した張本人よ、気にしないで……私も気にしない。」
ルリ子は本郷に背を向けたまま感謝を述べる。
「…父はプラーナ技術の実用化の為に私を“作った”。」
「作った…?もしや君はデザイナーベイビーなのか?」
「当たり。父親と言っても繋がっているのは遺伝子情報だけ、貴方も私も父からすれば自分のエゴを通す為の道具でしかなかったのよ。」
ルリ子はそう辛辣に答える。
確かに父に対する愛憎入り乱れる感情は本郷の実父に対しても似たような感情を抱いていた時期があった。
「…でも僕が最後に見た先生の姿は、間違いなく“我が子を思う父親”だったよ。」
「え?」
「先生が最後に言った言葉は“ルリ子を頼む”だった…君からしたら何を今更かもしれない、でも先生は死んでも尚“父親”である事を捨てなかった。だから、この身体は先生の娘を想う愛情の産物と思う事にする。」
「あの男のエゴをそこまで肯定的に捉えるなんて…貴方随分とおめでたいわね。だから選んだんでしょうけど。」
本郷の優しすぎる人間性に呆れつつも、二人は常用モードに戻ったサイクロンに乗り、その場を後にする。
その一部始終を観測していた人物に気付かないまま…
やっと書けた…
結構長くなった上にセリフもうろ覚えだから、他の人の小説を参考にして書きました。
装者達との遭遇はコウモリオーグ編かサラセニアオーグ編のどれかを予定しています。
次回、『恐怖コウモリオーグ』