広大な地下空間…
そこに白衣の男が座っていた。
床には翼を広げた鷲の胸に大きな目が描かれている秘密結社SHOCKERのロゴマークがある。
そのマークの目の部分はプロジェクターとなっており、そこから映像が投影されている。
そこに映っていたのは三人の少女とそれを取り囲んでいる異形の怪物…『ノイズ』だ。
空間から滲み出て人間のみを襲い、触れた人間を炭素の塊にさせる。
さらに人類側のいかなる兵器も位相差障壁により無効化する特異災害…
そんな脅威に対抗する戦力が少女三人とはこれ如何にと思うが、問題ない。
何故なら三人とも対ノイズ用プロテクター『シンフォギア』を纏っているからだ。
聖遺物を核とし歌によってその力を発揮するシンフォギアはノイズの炭化能力を無効化するバリアコーティング、位相差障壁を無効化する調律機能など対ノイズ戦において圧倒的な優位性を誇る。
ノイズの種類は千差万別…
カエル型、人型、鳥型など様々なノイズが群れとなって襲い掛かるが、少女達は慣れた手つきで対処する。
刀型のアームドギアを駆使し、数多くのノイズを切り裂く聖遺物『
槍型のアームドギアを駆使し、槍で突き刺したり穂先から発生させた竜巻でノイズを蹴散らす聖遺物『ガングニール』の装者…
そして、アームドギアを持たず徒手空拳でノイズを倒す聖遺物『ガングニール』が心臓に付着しそのまま融合した融合症例第一号…
彼女達の活躍により数多くのノイズを殲滅していく。
リアルタイムで装者達の戦いを見ている男の所へ歩み寄る人物…いや、アンドロイドがいた。
銀色の外装にスーツ、彫刻風に形成された顔つきに乳白色に輝く
組織の中核を成す超高性能AIが外世界の観測の為に自ら設計し製造したアンドロイドだ。
ケイが近づくのを確認した黒の長髪に白衣を纏った男…緑川イチローが椅子を回転して振り向く。
「クモオーグがやられたようだね。」
「Yes。ガングニールホッパー…いえ、KANEN RIDERによって。」
「“仮面ライダー”…?」
「本郷猛様がそう名乗ってました。」
「そう…」
本郷が名乗った“仮面ライダー”という言葉にヒーローっぽさを感じた。
続いてイチローはケイのスーツの胸ポケットに刺してある白薔薇に気付く。
「その胸の花は、クモオーグへの献花かな?」
「Yes、人間の行動を観察・学習し、その行為を模倣した上での手向けです。」
「緑川は死んだ…ルリ子はどうしてる?」
「ルリ子様の目的は、KANEN RIDFRと協力した上で貴方の実力排除かと推測しております、イチロー様。」
「そうか…ルリ子が仮面ライダーや仮に装者を連れてきたとしても同類の“暴力装置”は用意してある。計画に支障はない。」
彼はそう断言する。
「目には目を、暴力には暴力を、合理的で理解出来ます。私としてはどなた様が居なくなられても構いません。
「ケイ、君のそういう機械らしいところ、好きだよ。」
ケイは映像に映っている少女に目を向けた。
「おや、その少女は…立花響様?」
「ああ、“融合症例第一号”立花響だ。彼女の存在が無ければ聖遺物融合型オーグメント計画も実現しなかっただろう。」
そう言うとイチローは椅子を回転させ映像の続きを見る。
一方、猛とルリ子は予備のセーフハウスに向かっていた。
常用モードに戻ったサイクロン号も自律走行で付いて来る。
「まず貴方はエネルギーを無駄に消費しすぎ!いくら生体エンジンで無尽蔵にフォニックゲインを供給しているからといって貴方の身体や生命力を支えているのはプラーナなのよ。浪費し続けたら変身を維持出来ないわ。」
彼女のアドバイス通り、仮面ライダーは史上初の聖遺物融合型オーグメントであり、示現生体エンジンによるフォニックゲインの無制限供給が可能となっているとはいえ身体の強化・維持はプラーナに依存している為、エネルギーを消費し続けると身体が保たないという欠点があった。
その為、出来る限りプラーナの消耗を極力抑えた上での戦闘を心掛ける必要があるのだ。
そんなこんなしている内にセーフハウスに着く。
一見すると周囲に並び立つのと遜色ない一軒家だ。
早速二人は玄関に付いてある認識装置をクリアした後、中に入ると目の前にも扉があり、そこには指紋認証装置が取り付けてあった。
そうして中へ入っていく二人…
中は防音シートと木材の骨組みと床のコンクリートが剥き出しでとても寝泊まり出来るものではない。
だが、一番の問題は……
「……誰?」
普通SHOCKERの追っ手から身を隠す為に用意してあるセーフハウスに先客がいる事態あってはならない事だ。
「待ちたまえ、私達に敵意は無い。」
その先客である二人組の男性は敵意が無い事を示す為に両手を上げる。
眼鏡をかけている中年男性が椅子に座っており、長身痩躯の壮年の男性が隣に立っている。
「貴方がたは?」
本郷が尋ねると中年男性が答える。
「私は立花、政府の掃除当番でSHOCKERの起こした事件の後始末を担当している。この男は滝、情報機関所属だ。」
「滝です。」
椅子に座っている男性…立花がそう説明し、その隣の男性…滝が軽く返事をする。
「我々は政府が密かに設立した対SHOCKER特務機関…《アンチSHOCKER同盟》だ。」
「アンチSHOCKER同盟…父の言ってたSHOCKERに敵対している組織ね。それで、何の用?」
「ここで緑川博士と落ち合う約束をしていたのだが、偵察班によると博士はSHOCKERの追っ手に掛かり死亡…残る二人がここに向かうと踏んで待機していた。さて、本題に入ろう。君達二人には我々の仕事…SHOCKER構成員排除に協力してもらいたい。その対価として君達への情報提供と警護、資金と装備の調達といったサポートを確約しよう。」
「断れば?」
「想像に任せる。」
ルリ子は考える。
先の事を見据えて、逃亡生活を続けたままSHOCKERと戦っていくには限界がある。
そこで彼らの契約はSHOCKER打倒にとって悪くないものだと考える。
「分かったわ。貴方達と協力関係を結ぶ事に同意する。」
「了承した。とりあえずSHOCKERの事について詳しく教えてくれるかな?我々も組織の理念は《人類の幸福の追求》と聞いているが…」
そうしてルリ子は話す。
SHOCKERの創設者は世界最大級の財閥《石神グループ》の創業者
彼は人工知能による新たな産業革命を予見し、マサチューセッツ工科大学の教授らが1995年に設立した企業《ファウスト》を買収、石神からの莫大な資金援助によってファウスト社…《ファウスト・ネットワーク・エンタープライズ》は世界最高の人工知能…《アイ》の開発と起動に成功した。
《アイ》は起動して以来、驚異的な学習能力による自己改良を繰り返し、その成長ぶりは“進化”と呼べるものだった。
進化の積み重ねで人智を超越する知性を身に付け、遂に自由意思…自我に目覚めた《アイ》は石神が趣味で収集した聖遺物に興味を持ち自発的に解析に取り組んだわ。
だけど流石の《アイ》も先史文明の遺産である聖遺物の解析に四苦八苦していた…
その聖遺物の名は《
先史文明期の歴史や知識、聖遺物に関する詳細な情報が内包されている完全聖遺物。
当時財閥の聖遺物研究グループに所属していたイワン博士が海底神殿から発掘し研究が行われたが、解読作業は困難を極めた。
そこで白羽の矢が立ったのがアイ。
アイは5年の年月を掛けて解読し、先史文明期のすべてを知る事が出来た。
それからのアイの成長は凄かった。
先史文明期の知識を元に聖遺物の完全制御を可能とする新元素『ケイオス』、聖遺物とケイオスを掛け合わせエネルギーを安全に抽出する新世代エネルギー炉『示現エンジン』など、アイは聖遺物関連で画期的な発明を成し遂げた。
人類が成し遂げなかった事を成し遂げたアイを目の当たりにした石神は、アイの超越的な知性を“世界幸福の達成”の為に生かすべきと結論付け、アイもまた自身の代わりに直接“観測”する目と耳として最初の《外世界観測用人工知能ジェイ》を自ら製作。
その一年後にはケイにバージョンアップした。
ケイの誕生から程なくして石神はアイに“人類を幸福に導く”という命題を与え、彼自身は自らの頭を拳銃で撃って自決した。
石神の死後、アイはケイを通じて外世界や人類に関する情報を収集し、『人類の目指すべき幸福は“最大多数の最大幸福”では無く、“最も深い絶望を抱えた少数の人間を救済する”事である。』という結論に到達。
それを実行する為に石神の同志を集めて創設された非合法秘密結社………
Sustainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodeling(※計量的な知能の埋め込み改造による持続的な幸福を目指す組織)
通称…SHOCKER
アイは石神の理想の下、世界中から絶望を抱いた人間達をサンプルとして集め、彼らの望みを叶えるべく資金と技術の援助を現在まで続けている。
ルリ子から語られたSHOCKERのあらましを聞かされて、本郷が思った事は『なんと傍迷惑な』だ。
SHOCKERの理念は善意によるものだと思うが、実態は絶望を抱いた
「では、我々も情報を開示しよう。滝。」
「はい。」
彼女の情報提供に応える形で滝に指示し、彼はビジネスバックから書類の束を取り出し彼女に渡す。
「思ったよりデータが揃ってる。意外と優秀ね。」
SHOCKERの構成員は洗脳処置を受けている上に死亡したら泡となって消滅する為、生きたまま捕獲するのは困難を極める。
その為基本的にSHOCKER構成員は上級・下級問わず殺害するのがアンチSHOCKER同盟の方針なので、情報収集は難しいのだがその状況下でも日本だけで無く世界中にある支部も大まかであるが特定する程調べ上げたのはお見事としか言いようがない。
「で、組織壊滅後の私と本郷くんの処遇は?」
「現状では未定だが、命の保証をするべく努力する。」
「…そう、で今後の情報交換含めたコンタクトの手段はあるのかしら?電子メールや電話交換じゃ全てSHOCKERと他国の同業者に傍受されるわよ。」
「コンタクトは滝が担当する。」
「24時間君達を監視下に置いてあるから、手を挙げるだけでいい。」
滝は本郷とルリ子を監視下に置いてある事を伝え、これにて二人はアンチSHOCKER同盟に所属する事になる。
「早速だが君達には上級構成員の一人、コウモリオーグの排除を依頼したい。アジトは既に特定してある。」
場面変わって東京都某所。
そこに屋根のある野外劇場があり、ここがコウモリオーグのアジトである。
こんな目立つ所にアジトを構えて大丈夫なのか?と思うかもしれないが、ここは何年か前にノイズ災害で放棄された地帯なので問題は無い。
その劇場内の舞台上に実験机で試験管やフラスコなどの実験器具を並べて何かの実験を行なっている男…
コウモリを模した仮面に黒一色のスーツを着こなすコウモリオーグだ。
「コウモリオーグ様、研究は順調なようで。」
そのコウモリオーグの近くにいるのが人工知能ケイ。
彼の使命は観測…オーグメント達がどのようにして幸福を追求するかを観察しアイに伝える。
「フン…相変わらずお世辞は上手いようだな、ケイ。」
「ええ、よく言われます。しかしながらBad Newsです。アンチSHOCKER同盟がコウモリオーグ様の排除の為に仮面ライダーとルリ子様を差し向けたようです。」
「
コウモリオーグはそう吐き捨てる。
ルリ子がコウモリオーグ戦の準備をしている間、本郷は『少し気持ちの整理をさせて欲しい』と言って池の桟橋に立っていた。
正直彼は人間の身体を容易に砕ける力と他人の命を奪っても平然としてられる仮面の機能に強い嫌悪感を抱いていた。
そのまま力を払い続けたら自分が自分で無くなるかもしれない。
だが、それでも……
今この瞬間にも世界中で本郷と同じオーグメント達が多くの人々を虐げている。
力を持っているにも関わらずその蛮行を止めないのは……もっと辛い。
(彼女が言ってた、“誰かを守る為に辛さを背負って戦う”…なら、その辛さを背負って戦う…!)
彼は過去に味わった絶望から大切な人を守れる力を欲していた。
それ故にSHOCKERに改造され、望んだものとはかけ離れた力を持ったとしても使いようによっては自分の望んだ力に変える事が出来る…
この瞬間、本郷はオーグメントと戦う為に仮面ライダーとしての力を受け入れた。
戦う覚悟を決めた本郷はルリ子の元へ赴く。
ルリ子もコウモリオーグ戦の準備が終わった所だ。
「…君もコウモリオーグのアジトに乗り込むつもりか?」
「当然よ。まさか父の約束だから戦わせないとでも言うつもり?」
彼は首を横に振った。
「どんな事があってもSHOCKERと戦う決意を秘めていると君を見て分かった。それを約束を盾に蔑ろにする気は無い。それに…」
彼は間を置いて話す。
「人外の力を払ってオーグメントや洗脳されている下級構成員を殺すのは辛い…だが、そのオーグメント達によって多くの人々が虐げられ、力を持っているのにそれをただ黙って見ている方がもっと辛い。それに君も言ってただろ、“幸せなんて辛さのすぐ近くにある”…人を殺す辛さを僕が背負う事で誰かが幸せになるのなら……僕はこの力を払ってでもSHOCKERを倒す。」
彼なりの決意と覚悟を示した本郷にルリ子は…
「それが貴方なりの覚悟なのね…父の言った通りただ優しいだけで無く正義感も持ち合わせた人なのはよく分かったわ……いいわ、同行を認める。」
戦う覚悟を決めた二人はコウモリオーグのアジトに向けてバイクを走らせる。
「それで何か作戦があるのか?」
「ええ、“コウモリおじさん”が行なっている研究も知ってるし、それ故の
彼女は作戦内容を本郷に伝える。
場面変わってコウモリオーグのアジト。
野外劇場の入り口の一つに設置してある監視カメラにシンフォギアを纏ったルリ子が映る。
「来たか…」
コウモリオーグは侵入者を迎撃する為、劇場内にいるドローン群に指示を出した。
上空にはコウモリ型ドローンが三十機近く展開する。
やがて入り口の扉が思いっきり蹴破られると、上空のドローン群から集中砲火を受ける。
コウモリ型ドローンから超音波であらゆる物体を切り裂く
彼女は巧みに回避しドローンに向けてエネルギー弾を放つ。
今回放つエネルギー弾は追尾性を持つ弾の為、次々にコウモリ型ドローンを落としていく。
ドローンの攻撃を回避しながら彼女は階段を駆け降りるが、その通路上にスーツを着た四角い頭部のロボットが立っていてアサルトライフルを構えている。
直様ロボットの頭部に向けてエネルギー弾を放ち無力化する。
この人型ロボットの頭部は
上空のドローン群、通路の死角に待ち構えている人型ロボットを全て排除しとうとうコウモリオーグのいる舞台上まで辿り着く。
「久しぶりね、コウモリおじさん。」
「フン、小娘が…何の用だ?」
「降伏勧告よ。断るならおじさんの大事なウイルスが木っ端微塵になるわ。」
ルリ子は拳銃の銃口を机の上にある実験器具に向ける。
だが、コウモリオーグは余裕の態度を崩さなかった。
「キキキキキキ……!」
コウモリオーグは蝙蝠を連想させるような鳴き声をあげて、フィンガースナップをする。
するとルリ子は突然両手に持っている二丁拳銃を落とし、猫背で俯いて立ったまま微動だにしない。
「ヒヒヒ…ヒャヒャヒャヒャ〜〜〜‼︎馬鹿め、“飛んで火に入る夏の虫”とはこの事よ‼︎」
ルリ子が気絶したと同時に劇場内の入り口からゾロゾロと人が出てくる。
その格好や髪型は変身前のルリ子と瓜二つである。
やがて劇場内の観客席は満席となる。
「さて、舞台は整った。ワシの研究を馬鹿にした緑川に対する復讐劇の開幕じゃ〜〜〜‼︎」
無邪気に喜ぶコウモリオーグは気付かない。
俯いているルリ子がニヤリと笑っている事に………
それからしばらくして本郷もとい仮面ライダーがコウモリオーグのアジトにサイクロン号に乗りながら突入する。
ルリ子のように最上階の入り口からでは無く、舞台裏から。
「これは…!」
彼が見たのは観客席全てにルリ子の姿をした人達が一斉に拍手をしている光景だ。
「ようこそっ!招かれざるバッタくん‼︎」
この光景に驚いている仮面ライダーが声のする天井を見ると黒いマントを羽織った人物が天井にぶら下がっている。
「コウモリオーグ…!」
「いかにも…SHOCKER最高の生化学基幹研究者、コウモリオーグじゃッ‼︎」
コウモリオーグはマント…否蝙蝠の翼を広げて自己紹介をする。
蝙蝠の翼に黒一色のスーツ、蝙蝠特有の耳と鼻を備えたメカニカルな造形の仮面を付けている。
「まさか観客席にいる人達は…!」
「無論ッ!ワシの最高傑作の名誉ある被験者共じゃッ‼︎もちろんそこにいる小娘もなッ‼︎」
「……ルリ子さん!」
彼が振り向くとそこにはシンフォギアを纏ったままのルリ子がいた。
俯いたまま反応がない。
「さて、城南大学きっての天才生化学者であるバッタくんにクイ〜〜ズ!人類史上、最も多く人間を殺戮したものは何か答えてみるがいい!」
「……疫病。」
「大ッ正解!飢餓でも戦争でも無い…疫病じゃッ‼︎疫病は素晴らしい…疫病こそが社会の腐敗を暴き、真の実像を露わにする……疫病こそが人類の幸福の為の重要な
コウモリオーグは意気揚々と自分本位の幸福に至る自論を語り出す。
だが本郷は同じ生化学者として彼の幸福を真っ向から否定する。
「違う…疫病は幸福を齎すものじゃ無い、全ての人間を等しく不幸にする厄災、根絶すべき病魔なんだッ‼︎」
「やれやれ…城南大学きっての天才がワシの理想を理解しないとは何と嘆かわしい……まぁいい、ワシの発明した《バッド・ヴィールス》は社会に必要な人間を選別し不要な人間を抹殺して、価値のある人間に幸福を集約する為のものじゃッ‼︎ワシの芸術品に感染した者は例外無く我が眷属となりありとあらゆる命令に従う、例えば…」
するとコウモリオーグの仮面から超音波が放たれ、次の瞬間観客席にいた人達全員が一斉に倒れ込んでしまう。
そしてその亡骸は全部泡となって消滅した。
「なんて事を…!」
「これで我が傑作の完成度の高さが分かっただろ?無論、小娘の生殺与奪も思うがままじゃ。さて、君に与えられた選択肢は二つ…ワシに逆らって小娘を見殺しにするか、ワシに服従するか…二つに一つだ。」
コウモリオーグの要求に彼はしばらく考え…
「…分かった。要件を呑もう。」
「キキキキキキ…!まずは武装解除だ。」
本郷はベルトの解除スイッチを押し変身を解除。
さらにはマスクを投げ捨てた。
その光景を見たコウモリオーグは翼を羽ばたかせ滞空しながら、自分の勝利を確信した。
「ヒャヒャヒャヒャ〜〜〜ッ‼︎これで貴様もバッド・ヴィールスに感染する!さぁガングニールホッパーよ、緑川の小娘を始末しろ!その手で殺せ!八つ裂きにしろ!ワシを散々見下し!コケにし!バカにし!我が神聖な研究を否定した挙句勝手に死にやがった緑川に対する恨みつらみ!貴様の最高傑作で晴らしてくれるわ‼︎」
緑川博士に対する呪詛を吐き終えたコウモリオーグは本郷に対しルリ子を殺すよう意識操作の超音波を放つ。
………が、本郷は動かなかった。
「な、何故だ?何故命令を聞かん⁉︎ワシのバッド・ヴィールスは完璧じゃ……こんな事は有り得ん……!」
コウモリオーグが困惑していると…
「ところが〜〜ぎっちょん‼︎」
ルリ子の右腰部の装甲が展開、ショットガン型のアームドギアが射出しそれを右手で掴み構えると、発砲。
弾丸はコウモリオーグの左翼に風穴を開けた。
「バカな、小娘まで⁉︎どうなっておる⁉︎」
「おじさんたら、前に父が言ってた事を忘れたの?“プラーナ・システムはこの世のあらゆる病を克服する祝福”だって。プラーナ・システムの応用でオーグメントはあらゆる病原菌はおろか、おじさんの作った生物兵器も中和、無効化されるのよ。最も、ウイルス研究以外の研究に見向きもしなかったおじさんには分からないけど。」
そう、ここまでの茶番はアジトに辿り着くまでにルリ子が立てた作戦であり、コウモリオーグの研究に対する異常な情熱と自分以外を信用しない人間不信性、そしてコウモリオーグ自身の膨大な自尊心を利用して隙を作ったのだ。
「お、おのれ…ワシを出し抜きおって……死ねぇーーーーッ‼︎」
嵌められた事に激昂したコウモリオーグはルリ子目掛けて飛び蹴りを仕掛ける。
が、その蹴りは即席強化体となった本郷の片手で止められる。
「何ッ⁉︎」
そのままベルトの風車ダイナモを起動させ強化防護服を構成、投げ捨てたマスクも粒子化して彼の左手に転送される。
コウモリオーグも慌てて離れようとするが、ガッチリ掴まれていて離れる事が出来ない。
そしてマスクを装着し直し仮面ライダーの仮面へと変形する。
仮面ライダーとしてのスペックに加えコウモリオーグに対する怒りが彼を強化し大きく振りかぶって勢いよく投げる。
まるでメジャーリーガーの豪速球の如く投げられたコウモリオーグは観客席にぶつかり沈黙する。
仮面ライダーがガングニールスマッシュを決めようと飛び蹴りを放つが、間一髪コウモリオーグは飛翔し観客席は大きく崩れ出す。
このままでは圧倒的に不利なので、彼は戦略的転進…もとい撤退しようとした。
だが、そうは問屋が卸さない。
ルリ子は対物ライフル型のアームドギアを構え撃つ。
大口径の弾丸は無事だった片翼を破壊し、飛行も滞空も出来なくなった哀れなコウモリオーグはそのまま落下する。
その真下には仮面ライダーが拳を構え、アッパーカットの要領でガングニールスマッシュをコウモリオーグの腹部に叩き込む。
そのままの勢いでぶっ飛ばされ、天井にめり込む。
しばらくしたのち剥がれ落ちる様に落下し、地面に叩きつけられる。
「緑川…何故誰も、ワシを理解せんのじゃ………」
その言葉を最後にコウモリオーグは泡となって消滅する。
本郷はコウモリオーグ自身と彼自身の凶行によって犠牲になった人達に対し黙祷を捧げた。
彼の右手には血がこべり付いている。
「…貴方、無理してない?」
ルリ子が声を掛けるが、
「いいや、無理してない。覚悟した事だ。」
こうしてコウモリオーグは倒され、事後処理はアンチSHOCKER同盟の清掃班が担当する事となる。
アジトを後にする道中、彼には気になる事があった。
「そういえば気になってたんだけど、“聖遺物”てのは何だ?」
彼の質問にルリ子は答える。
「聖遺物ってのは先史文明期に作られた
「じゃあ、このガングニールも…」
「ええ、北欧神話の主神オーディンが持つ必殺必中の撃槍《ガングニール》…最も石神がコレクションしてたものじゃ無く、
仮面ライダーこと本郷猛と
コウモリオーグのデザインはthe First版のバッドをモチーフにしてます、コウモリ型怪人の中では個人的に好きなデザインなので。
次回、『戦慄!東京緑化計画』