シン・仮面絶唱シンフォギア   作:あーくこさいん

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※本郷達と二課の装者達の遭遇は5話目にあたるコンドルオーグ編にしました。


3.戦慄!東京緑化計画

東京某所…

 

突如としてトレーラーが爆発する。

爆発したトレーラーの周りを完全武装したアンチSHOCKER同盟実働部隊が取り囲む。

アンチSHOCKER同盟実働部隊がSHOCKER幹部が所持したであろうトレーラーを破壊したのだ。

 

 

 

 

 

その頃、地下駐車場に駐車中のリムジン車内では先程の様子がリアルタイムで映っていた。

 

「サソリオーグ様、連中は予定通り囮に引っ掛かりました。」

 

SHOCKER下級構成員(女性)がリムジン車内にいる上級構成員…《サソリオーグ》に報告する。

先程実働部隊が破壊したのは囮。

本命の猛毒性化学兵器はあろうことか人口密集地に置かれ、もし放出されれば甚大な被害は免れない。

 

「それはgood…じゃあ大量殺人パーティに参りましょう!私の可愛い毒薬達を使って…Let's 世直し‼︎」

 

そう意気込んだ次の瞬間、リムジンにサーチライトが当てられる。

 

「ややや!何事かしら⁉︎」

 

アンチSHOCKER同盟の別の実働部隊がリムジンを取り囲み、一斉にアサルトライフルを向ける。

 

「はにゃにゃ!これはlittle badね。ちょっと早いけど…ここでshowtimeとしましょ!」

 

サソリオーグはリムジンのドアを蹴破り、実働部隊の前に対峙する。

服装は赤と黒のドレスを纏っているが、左手にはサソリの鋏を装着し口元が露出している仮面はサソリの全体像を模している。

 

「さあ、Let`s party‼︎殺し合いを楽しましょ〜!アハハッ‼︎」

 

女下級構成員達が防弾シールドを持ってサソリオーグを守る。

実働部隊がアサルトライフルを一斉発射するが、効果無し。

 

「アハハハハハ‼︎」

 

高笑いを挙げながら、次々と実働部隊員を自慢の鋏で切り裂いた。

ある者は胴体を真っ二つにされて、またある者は首をちょん切られて……

 

「Ecstasy!Ecstasy!Super Ecstasy‼︎良いわ、もっと幸せにして〜‼︎」

 

遂に実働部隊員を皆殺しにしたサソリオーグ。

だが次の瞬間、どこからか銃撃され下級構成員達をすべて射殺する。

サソリオーグが辺りを見渡すと、そこに立っていたのは二丁拳銃を持つルリ子と仮面ライダーだ。

 

「Oh…これはBig Event!貴方達も好きねぇ…」

 

「貴方の猛毒が厄介なのでね…」

 

「悪いけど、止めさせてもらう!」

 

「…良いわ。 very good!好きなだけ殺し合いを楽しみましょう‼︎」

 

サソリオーグは嬉々として仮面についてある尻尾の先端を勢いよく射出し、仮面ライダーに巻き付ける。

巻き付いた後、先端の針が彼の首元に刺さってしまう。

 

ルリ子は射撃するがサソリオーグの背中から二対四本のサソリの脚が展開し、次々飛んでくる銃弾を防ぐ。

 

「アハハハハッ‼︎私のDeadly Poisonがどんどん注入されていく‼︎貴方の身体を徐々に破壊していくわ‼︎」

 

サソリオーグの最大の武器は彼女が開発した新型猛毒性化学兵器である。

プラーナシステムは生物兵器に対して絶大な強さを発揮するが、化学兵器に対しては対応出来ない欠点がある。

このままでは仮面ライダーの命が危ない。

 

「…それはどうかしらね!」

 

だが彼女は慌てる様子も無く特殊な形状の銃を取り出し、それを仮面ライダーの首元に銃口を押し付け、トリガーを引く。

トリガーを引いた瞬間、内部にあるマゼンタ色の液体が仮面ライダーの首元から体内へと入ってくる。

 

突然の奇行に戸惑うサソリオーグだが、仮面ライダーに変化が起こる。

刺さった瞬間、仮面ライダーの身体がマゼンタ色の光に包まれる。

 

そしてワイヤーを左手で掴むと勢いよく引っ張りサソリオーグを引き寄せる。

突然の事に対応が出来ず引き寄せられたサソリオーグの腹目掛けてガングニールスマッシュを叩き込む。

 

ガングニールスマッシュをモロにくらい、勢いよくトラックに叩きつけられるサソリオーグ。

 

「ワ、why…?」

 

これが致命傷となった為、そう呟いた後彼女は泡となって消滅した。

 

何故サソリオーグの猛毒性化学兵器が効かなかったのか…

それはルリ子がプラーナシステムの欠点をシンフォギアの力で補ったからだ。

 

SHOCKERが特異災害対策機動部二課から奪ったシンフォギアの核となっている第六号聖遺物【布都御魂(ふつのみたま)

 

この聖遺物の特性は『解毒及び活性化』

伝承では毒気に侵された軍勢を布都御魂の霊力で覚醒させ、活力を取り戻した事に由来し、ありとあらゆる毒性物質を解毒し細胞やプラーナを活性化させる特性を備えている。

その特性を持った液体を拳銃型注射器『ビージェクト』で打ち込む事で、仮面ライダーの体内に入ったサソリオーグの猛毒性化学兵器を解毒、活性化によるパワーアップでガングニールスマッシュの威力を底上げしたのだ。

 

こうしてサソリオーグの討伐を終えた二人は後処理を清掃班に任せ、立花達がいるトレーラーへと向かう。

 

 

 

 

 

「ご苦労。これでサソリ事案の処理が完了した。無論猛毒性化学兵器の押収もほぼ完了している。」

 

「ええ、これで次の目標に対する準備が整った。」

 

ルリ子がそう答える。

 

 

 

 

 

ここは代々木公園の地下深く…

 

そこにある地下施設の中枢には巨大な植物が鎮座している。

その植物の前にサラセニアオーグが立っていた。

 

「いよいよだ。母なる地球を汚す文明を樹の力でもって浄化する大いなる計画の第一歩…《東京緑化計画》の準備が整った‼︎」

 

サラセニアオーグが嬉々として語る。

その後ろにはケイがいた。

 

「おめでとう御座います、サラセニアオーグ様。」

 

「…ケイか。私が絶望を経て辿り着いた幸福…《文明を滅ぼし母なる地球を緑溢れる星に戻す》……その根幹を成す侵食性植物【深緑】が完成した今、もう誰も止める事は出来ない‼︎行けッ【深緑】‼︎手始めに罪深き背徳の都市東京を樹海に変えてやるのだ‼︎」

 

サラセニアオーグの掛け声に応える様に、巨大な植物…【深緑】が蠢く………

 

 

 

 

 

東京都渋谷区…

そのスクランブル交差点では沢山の人が行き来していた。

 

ノイズという特異災害に見舞われながらも人々はいつも通りの日常を過ごしていた…

 

その時だった。

 

ゴゴゴゴゴ…‼︎

 

「うわっ、何だ⁉︎」

 

「きゃっ‼︎」

 

突如として地震が発生する。

かなり大きい地震に人々は立つことが出来ずにしゃがみ、中には転倒する者もいた。

 

地震はまだ収まる気配がない。

人々は次第に収まるだろうと思い、その場に留まった。

 

だが、知る由もない。

この地震がこれから起こる厄災の序章に過ぎないことに…

 

 

 

 

 

揺れが段々と激しくなり、道路にもヒビが入る。

次の瞬間…

 

「うわぁああああ‼︎」

 

「きゃあああああ‼︎」

 

スクランブル交差点が大きく陥没し、大勢の人が奈落へ落ちる。

そしてそこから尋常じゃない大きさの蔦が多数出てきて、ビル群に突き刺さる。

蔦が突き刺さったビルは瞬く間に侵食され倒壊、巨大な樹木が出来上がる。

人々は逃げ回るが、その侵食スピードは渋谷を瞬く間に樹海にする程だった。

 

渋谷だけでなく新宿も樹海と化しており、代々木公園から半径2kmが緑生い茂る樹海と化した。

 

 

 

 

 

渋谷や新宿の惨状をアンチSHOCKER同盟の指揮用トレーラーのモニターが映し出していた。

 

「これは…!」

 

「サラセニアオーグの開発した侵食性植物【深緑】…あらゆる有機物に侵食しその構造を遺伝子レベルで書き換える代物。加えて増殖スピードも尋常じゃない程強く、アジトから解放されてから僅か半日で半径2km圏内が深緑によって樹海化する…彼の能力といい脅威度の高いオーグメントよ。」

 

「ああ、だから我々も前に強襲を仕掛けたが失敗に終わっている。故に今回は奴を倒す為にサソリオーグの化学兵器に目を付け強襲した。それを応用した新兵器で近い内に強襲をかけるつもりだったが、予想より早くサラセニアオーグが行動したようだ。」

 

「すぐに行かないと…!」

 

「ええ、けど陸路は期待出来ないし空からだと生い茂っている樹海と空に伸びる蔦で出来た触手に阻まれてアジトへの到達は困難…しかもサラセニアオーグを倒す新兵器もまだ完成していない。急げば今日中に完成するけどそれを運ぶのもこの状況では一筋縄ではいかない。」

 

ルリ子がそう指摘するが、立花司令がこう言う。

 

「安心しろ、我々には切り札がある。」

 

 

 

 

 

立花司令に案内されると、アンチSHOCKER同盟のものと思われる基地に着く。

基地内の格納庫には軍用輸送ヘリなどが鎮座されている。

その奥にシーツに被せられた物体があった。

本郷達はそれに近づく。

 

立花司令がシーツを取り除くと、そこには掘削用ドリルにキャタピラが付いた、まさにSF作品に出てくるドリル戦車が台車に搭載されていた。

驚く本郷達を他所に立花司令は答える。

 

「紹介しよう、地中掘削戦車【土竜】だ。」

 

立花司令によるとこれはSHOCKERのアジト制圧の際に地中から侵入する為に造られた試作兵器だ。

陸と空が駄目なら地中から侵入すれば良い話だ。

 

「搭載兵員は10名、地中を約5km掘り進む事が出来る。これを2台用意した。」

 

「2台?」

 

「サラセニアオーグのアジトの所在は把握しているが構造までは現時点で分かっていない。なのでまず本郷君を乗せてアジトに強襲してもらう。そして新兵器が完成したら彼の位置情報を元に緑川君を乗せて向かわせる。」

 

こうしてサラセニアオーグ討伐戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

東京都代々木公園、現在公園跡地にはビル並みの大きさを誇る巨樹が佇んでいた。

周辺区域も樹海のように緑に生い茂っていた。

 

「はあああああ‼︎」

 

そこに存在する怪物を徒手空拳で倒す少女がいた。

 

彼女の名は立花響(たちばなひびき)

2年前のノイズ襲撃にて天羽奏のガングニールの破片を心臓にくらい、そのまま融合・シンフォギア適合者となった少女である。

三人目の装者としてノイズと戦っていたが、今回はノイズ以外の特異災害に対処する為にその中心である代々木公園跡地に派遣された。

そこで大樹を守護する怪物と交戦している。

 

無論、戦っているのは彼女だけでは無い。

 

「くらえぇ‼︎」

 

LAST∞METEOR

 

穂先から竜巻を発生させ多数の怪物を一網打尽にする装者…天羽奏(あもうかなで)

聖遺物【ガングニール】の装者で姉御肌な性格である。

 

千ノ落涙

 

さらに上空から無数の剣が降り注ぎ、怪物の群れを次々と串刺しにする。

降り立った少女の名は風鳴翼(かざなりつばさ)

聖遺物【天羽々斬】の装者で幼少期の頃から装者としての適性があり長い間装者として戦ってきたベテランである。

 

その三人の少女こそ世界唯一の対ノイズ機関『特異災害対策機動部二課』の戦力…シンフォギア装者だ。

 

数多くの怪物を倒した三人だが代々木公園跡地はおろか渋谷や新宿といった大都市が樹海と化していた。

 

「奏さん、翼さん、敵は倒しました。でも…」

 

「ああ、さっきの化け物といい被害の規模といいノイズじゃない事は確かだ。」

 

「なんにせよ人に仇なすなら倒すまで…」

 

三人が話していたその時…

 

ゴゴゴゴゴ…!

 

何か地震が起きたかと思えば目の前の地面が隆起し大きな音と共に大穴が空く。

それに驚く三人だが、その穴から何かが這い上がる。

 

常人の二倍の身長に筋骨悠々の身体、そして何より右手に持っている身の丈並みの大きさの棍棒…その棍棒には亡骸が複数融合しており所々返り血がこびりついていた。

 

「今度は番人のお出ましってわけか…!」

 

奏がそう呟くとアームドギアを構え直し、翼と響も構える。

巨人は雄叫びを上げ襲い掛かる。

 

 

 

 

 

「………」

 

代々木公園の地下深くのアジトではサラセニアオーグがモニターで戦況を見ていた。

装者達と交戦している番人…【デスガーター】は棍棒を振り回し装者達を寄せ付けず、攻撃も自慢の巨体にて無効化していた。

 

続いて【深緑】に目を向ける。

この間にも深緑は侵食を続けていき、半径5kmを樹海化していた。

 

「東京緑化計画は順調に進んでいるな。」

 

サラセニアオーグが確信したその時、地下施設に揺れが生じた。

 

「…これは?」

 

驚いたサラセニアオーグが触手を伝って確認するとアジト内部に何かが地中から突入し、さらにその内部から何者かが飛び出して来たのだ。

確認すると聖遺物【ガングニール】の反応をキャッチ、その敵が報告にあった者だと確信する。

 

「来たか、ガングニールホッパー…!」

 

自身の計画の障害となりうる聖遺物融合型オーグメント第一号【ガングニールホッパー】だと判断しアジト内部に待機させていた配下の怪物の軍勢を差し向ける。

 

土竜でアジト内に侵入出来た仮面ライダーはそのまま中心部に向け走り出す。

サラセニアオーグ配下の怪物の群れが襲い掛かるが、パンチや飛び蹴り、腕から伸縮されるスパインカッターによってすれ違いざまに切り裂いたりと怪物相手に善戦していた。

そもそも戦力の大部分を現在進行形で広がる樹海の防衛に回している為、アジト内部に残してある戦力は少なかった。

 

アジト内部の構造は分かっておらずサラセニアオーグが何処にいるかは不明だが、仮面ライダーにはプラーナを感知できるセンサーが付いている。

その為他生物のプラーナを取り込んでいる故に反応が強いオーグメントの位置は手に取るように分かるのだ。

 

アジトに攻め込まれたサラセニアオーグは一見ピンチに見えるが、彼にはある自信がある。

確かにアジト内部にある深緑の本体を倒せば活動を停止するが、そもそも本体を倒す事自体ガングニールホッパーであっても不可能だという事に…

 

やがて大きな扉をぶち破ると、広い空間に辿り着く。

そこには樹木の様な植物が鎮座していた。

施設の床に根を張り、触手が蠢くその姿はまさに奇怪…悍ましいものだった。

 

仮面ライダーが深緑を目の当たりにしていると、空間全体に声が響く。

 

『我が楽園へようこそ、ガングニールホッパー。」

 

「…仮面ライダーだ。それよりアンタがサラセニアオーグか?」

 

『如何にも。【深緑】の開発者であるサラセニアオーグだ。ここまで侵入出来た事については褒めてやろう…だが、例え貴様でもこの【深緑】を倒す事は出来ない。やれ!』

 

サラセニアオーグの指示で深緑の触手は仮面ライダーに襲い掛かる。

仮面ライダーはスパインカッターで迫り来る触手を切り落とし本体に接近する。

まずは渾身のパンチを打ち込むがびくともしない。

続け様に回し蹴りを決めるもこれも決定打にならない。

 

その間に新しく生えた触手がライダーに迫る。

彼は素早くいなすが、次々と触手が襲い掛かる。

蹴りをつける為、ガングニールスマッシュを決めたいところだがサラセニアオーグの特性によりそれらの技は効果が無い上、使えばエネルギーを大きく消耗しかねないものだ。

その為、攻撃は通常のパンチやキックに留め、エネルギーを温存していた。

 

 

 

 

 

「たああああああ‼︎」

 

天ノ逆鱗

 

翼が巨大化したアームドギアを右足にて蹴り貫く【天ノ逆鱗】をお見舞いし、デスガーターは真っ二つに貫かれ倒される。

 

「やったな、翼!」

 

「やりましたね、翼さん!」

 

デスガーターを倒して安堵する三人だが…

 

「なかなかやるな。」

 

突如として声が響く。

 

「誰だッ⁉︎」

 

装者達が辺りを見回すと、何かが地面から生えるように現れる。

その姿は全身が緑色で胸が赤く血管みたいな模様、所々に植物の蔦が蠢いていて仮面は赤いバイザーに植物の蔦が触角のように伸びており、左手は蔦を模した鞭と化していた。

 

「初めまして装者諸君。私はサラセニアオーグ。」

 

サラセニアオーグは装者達に自己紹介をする。

 

「アンタか…この惨劇を引き起こしたのはッ!」

 

奏がそう突っかかると、サラセニアオーグは頷く。

 

「如何にも、私の開発した【深緑】は薄汚い人工物で溢れる文明を緑溢れる楽園に変えている。止められはしない。」

 

「どうして…どうしてこんな酷い事するんですか⁉︎」

 

「……せっかくの客人だ。すこし昔話に付き合ってくれるか?」

 

するとサラセニアオーグはさっきまでの上機嫌な様子から打って変わってしんみりした様子で話す。

 

「私がまだ人間だった頃…就職してからの新入社員歓迎会にて上司に裸踊りを強要されたと思ったら翌日セクハラ扱いでクビになっていた。」

 

「えっ…?」

 

突然の過去話に困惑する装者達。

サラセニアオーグはお構い無しに話を続ける。

 

「おかげで借家から追い出され公園で寝泊まりする生活を余儀なくされた…当時の私は怒り狂いその上司を殺そうかと思ったが……そんな気持ちは空を見ているとどうでも良くなった。大地はどの建造物よりも大きく、空はどんな照明よりも明るい…そうしてこう思う様になった、人間など地球という大きな存在と比べればちっぽけな存在に過ぎない…私の住処は豪邸よりも広大なこの地球なのだと……」

 

いきなりしんみりした様子で過去話を始めたサラセニアオーグに困惑が止まらない装者達。

しかし次の瞬間…

 

「…だからこそ気付いてしまった、人間の度し難い大罪を‼︎本来生命体にとっての家とは地球そのもの…それにもかかわらず人間共はそれを忘れ母なる地球が築いてきた生態系から自分勝手に逸脱し、屁理屈で築き上げた社会構造に胡座をかき地球を汚してまで自己中心的に繁栄する人間の度し難い愚かさを‼︎そして私がこんな愚かな連中に下等な扱いを受けている現実に絶望した‼︎」

 

さっきまで雰囲気とは打って変わって、烈火の如く怒るサラセニアオーグにたじろぐ。

 

「何より自分自身がその愚かな人間である事にも気付いた私は母なる地球に還るべく自ら命を絶とうとした…そんな時一人の人物が現れた。ケイと名乗った彼は私を拉致しこう言った…

『貴方の絶望、しかと確認しました。しかし何も自害する必要はありません。ここは一つ、その母なる地球に恩返しをしてみては如何でしょうか。』と…

最初は困惑したが冷静になって考えてみた、自害した所で人間共は悔いないし地球は汚染され続ける…なら私の生涯を賭けて地球を本来あるべき形に戻す為に行動する事を選んだ。そしてオーグメンテーション手術の中で成功率が低かった植物のオーグメンテーションに志願し、私は…下等な人間からサラセニアオーグへと生まれ変わったのだ‼︎」

 

過去話を終えた彼は装者達に宣言する。

 

「そして私の開発した【深緑】は現在進行形で愚かな人間が屁理屈で築き上げた文明を飲み込み樹海に変え、いずれはこの地球を蝕む文明全てを緑に帰す‼︎それこそが私の幸福…母なる地球に対する恩返しだ‼︎」

 

「…そんな事させない‼︎」

 

「アンタこそ屁理屈で人類滅ぼそうとしているだけじゃねぇか‼︎」

 

「お前の狼藉、止めてみせる‼︎」

 

装者達はアームドギアを構えて、体制を整える。

 

「ほぅ…楯突く気か。ならその傲慢さを悔い土に還るがいい‼︎」

 

サラセニアオーグの掛け声と共に地面から怪物の軍勢が生えてきて、装者達を取り囲む。

 

「いくぞ、響、翼‼︎」

 

「はいッ‼︎」

 

「ええ‼︎」

 

装者達が飛び出し怪物達と交戦する。

サラセニアオーグ配下の怪物は千差万別、人型・狼型・昆虫型・鳥型の深緑で出来た怪物の群れが襲い掛かる中、奏が槍型のアームドギアを投擲。

投擲された槍は大量複製されて広範囲に降り注ぎ、大量の怪物を塵に帰す。

 

STARDUST∞FOTON

 

大量の怪物を一掃しても尚生き残った個体が襲い掛かる。

響が徒手空拳で、翼は逆立ちしながらの横回転し脚部のブレードで周囲の怪物を切り裂く。

 

逆羅刹

 

その勢いのまま突撃し、サラセニアオーグに迫る。

彼は左手の鞭を構え、逆羅刹を防ぎ切る。

 

逆羅刹が効かないと見るや否や、翼は飛び上がり持っていた刀型のアームドギアを大型化、横に振る事で青色のエネルギー刃を飛ばす。

 

蒼ノ一閃

 

飛ばされたエネルギー刃はサラセニアオーグに向かい、そのまま真っ二つに斬った。

切られた事で上半身と下半身が離れ、上半身が地面に落ちてからしばらくして下半身が倒れた。

 

「終わった…?」

 

サラセニアオーグとの戦いが呆気なく終わって拍子抜けする。

だが周りには怪物の群れがいる為、警戒を解かずに構える。

 

「親玉を倒して終わりって訳じゃないな…」

 

「とにかく残りの敵を倒して、後の処理は本部に…「っ⁉︎翼さん、奏さん、あれ‼︎」どうしたたちば…⁉︎」

 

響が何かを指差したのでそっちを向くと信じられない光景が目に映る。

さっき胴体を真っ二つに斬られたサラセニアオーグが元通りに戻っていたのだ。

 

「無駄だ。貴様らが【聖遺物】とかいう訳の分からない物で武装しようとも、大いなる自然の力を宿した私の前では無力…無力なのだよ。」

 

サラセニアオーグが子供を諭すように言い放つ。

 

「嘘…斬ったはず⁉︎」

 

「どうなってんだ⁉︎」

 

驚いている隙をつき、右腕に蔦を纏わせ剛腕を形成したサラセニアオーグが奏に急接近する。

奏は急いで防御の構えを取るが、威力が凄まじく彼女は大きくぶっ飛ばされる。

 

「奏さん⁉︎」

 

「貴様ァ‼︎」

 

響が奏の所へ駆け寄り、翼が激昂してサラセニアオーグに斬りかかる。

最初の一撃はいなすが、縦からの一刀両断でサラセニアオーグを真っ二つにするが…

 

「まだ分からないのかね?」

 

「っ⁉︎」

 

真っ二つにされたのにも関わらず平然としている事に驚きだが、続け様にこう言い放つ。

 

「私は不死身なのだからな。」

 

両断面から無数の蔦が伸び、縫い合わせる様にして再生したのだ。

 

「あっ……う、うわぁあああーーーッ‼︎」

 

ノイズとの戦いを経験しているとはいえ、異様な光景に翼は戦慄しがむしゃらに斬りかかる。

そんな剣撃をサラセニアオーグは鞭でいなす。

 

「どうした?剣撃が粗いぞ。」

 

そう言うとサラセニアオーグは翼の腹に蹴りを入れる。

翼は吐血し大きく吹っ飛ぶ。

 

「翼さん‼︎」

 

響が翼を心配し駆け寄ろうとするが、サラセニアオーグが牽制する。

鞭で彼女の足を絡め取り、響は転倒する。

 

「ぐっ……!」

 

転倒した響に蔦が絡まり動きを封じる。

そのまま持ち上げて磔の様に固定する。

 

「安心しろ、貴様は殺ろさん。私のアジトに連行する。」

 

「待て!」

 

「響をどうする気だ!」

 

息が絶え絶えになりながらも何とか立ち上がった翼と奏はサラセニアオーグに問う。

 

「上からの命令だ。聞いたところによるとこの小娘は心臓に聖遺物【ガングニール】が付着しそのまま融合した【融合症例】だそうじゃないか。」

 

「「っ‼︎」」

 

二人は驚く。

響が融合症例なのは世間はもちろんの事、特機部ニ(とっきぶつ)でも一部の者しか知らない最高機密(トップシークレット)だ。

 

「何故それを…」

 

「我がSHOCKERの情報網を舐めないでもらうか…さて、君達二人にはそろそろ退場してもらおう…やれ。」

 

サラセニアオーグの命を受けて新たに生えてきた怪物の群れが翼と奏を包囲する。

明らかに絶体絶命だ。

 

(このままじゃ翼さんと奏さんが…どうすれば…⁉︎)

 

磔にされた響は考えを巡らす。

このままでは翼と奏が危ない。

だが、かと言って自身の身体は拘束されて身動きが取れないし、二人はダメージが蓄積しており満足に戦えそうにない。

 

すると頭の中に()()()()()()が思い浮かぶ。

確かに状況を打開できる可能性は高い。

だがその技はとても危険で下手すれば自らの命に関わる。

 

(…迷っている暇は無い!)

 

しかし彼女はその技を、禁断の歌を歌う事を決めた。

 

「…へいき、へっちゃら……!」

 

彼女が小さく呟くと、力を込め彼女の身体を拘束していた蔦を引きちぎる。

突然の事に驚くサラセニアオーグだが、お構い無しに響はサラセニアオーグに突貫する。

 

「ほぅ…突っ込んでくるか……」

 

サラセニアオーグは左手の鞭を槍のように鋭くして構える。

そして左手を手刀の要領で突き出すと槍が伸びた。

伸びた槍はそのまま響の腹部を貫通する。

 

「「響(立花)‼︎」」

 

二人が叫ぶが、サラセニアオーグは貫いた響をそのままに槍を元の長さに戻し引き寄せる。

 

「フン…考え無しの馬鹿が……」

 

サラセニアオーグが響を嘲笑する。

だが、響はニッと口元を上げる。

 

「捕まえた…!」

 

次の瞬間、彼女の鎧から数本のワイヤーが射出されサラセニアオーグの身体を巻き付け固定する。

 

「…ワイヤーだと⁉︎小賢しい真似を…!」

 

サラセニアオーグがそうほざくと彼女の口から特別な歌が…

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

「なっ⁉︎」

 

「その歌は…!」

 

二人は驚く。

それもそのはず、その歌は絶大な力を発揮するのと引き換えに下手すれば命に関わる禁断の歌……絶唱だ。

 

Emustolronzen fine el baral zizzl

 

「何だ…?鎮魂歌(レクイエム)のつもりか……ん⁉︎」

 

危機的状況にも関わらず突然歌い始めた響に困惑するサラセニアオーグだが、センサーでは彼女の身体からエネルギーが増幅している事に気付く。

 

「エネルギーが増幅している…?何をする気だ⁉︎」

 

意図が読めないサラセニアオーグはワイヤーを引きちぎろうとするが、思いの外頑丈で引きちぎれない。

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

「やめろ、響ぃ‼︎」

 

「その歌を歌っちゃだめぇ‼︎」

 

奏と翼が響の絶唱を止めようとするが、響は止まらない。

そして、遂に…

 

Emustolronzen fine el zizzl

 

彼女は絶唱を歌い切った。

歌い切ってしまったのだ。

次の瞬間、増幅されたエネルギーが一気に解放され響を中心に大爆発が起きる。

 

「な…⁉︎」

 

サラセニアオーグは真っ先に爆発をモロに受け、文字通り蒸発。

周りにいた怪物達も文字通り消し飛ぶ。

そして生い茂っていた木々をも吹き飛ばす。

 

奏と翼も飛ばされたが、防御の構えをとっていた事で事なきを得た。

やがて爆発は収まる。

 

「うっ…奏、大丈夫?」

 

「ああ、それより響が…!」

 

双方の無事を確認した二人は響の元へ急行する。

二人が心配するのも無理はない。

絶唱とはシンフォギア装者が力を限界以上に開放する歌。

装者にとって最大の攻撃力を誇り切り札になる反面、装者への負荷も凄まじく所謂諸刃の刃である。

事実、2年前のツヴァイウィングの惨劇で天羽奏が絶唱を使おうとした際、死を覚悟した。

 

そして最近装者になった立花響には絶唱なるものを教えていない。

特に奏は自分の所為で響を装者にしてしまった負い目がある以上、そのような自爆技を教える訳にはいかなかった。

 

とにかく響の元へ急ぐと、彼女を発見する。

だが、彼女の姿を見て二人は驚く。

 

何故なら絶唱を歌ったにも関わらず響は吐血しておらず、外見上元気そうだった。

それどころかサラセニアオーグによって腹部に空いた穴が塞がっており血も止まっていた。

 

「奏さん…翼さん…良かった…」

 

響自身は二人が無事で安堵するが、二人はそれどこでは無い。

 

その時だった…

 

「なるほど…流石は神話や伝承に出てくる武具の名を冠する事はある…!」

 

何処からかサラセニアオーグの声が轟く。

装者達が辺りを見回すと、なんとそこには無傷のサラセニアオーグが立っていた。

 

「そんな…!」

 

「お前は絶唱で倒された筈‼︎」

 

「…冥土の土産に教えてやろう。貴様らが対峙しているのは深緑本体から増殖した分身体に過ぎん。私自身…謂わばオリジナルはこの代々木公園の地下深くに鎮座してしている深緑本体と一体化している。つまり、今対峙している分身体に先程のような攻撃を何度も浴びた所で痛くも痒くもない‼︎」

 

装者達は愕然とする。

つまりは地下深くにある本体に攻撃を当てなければ意味が無い。

先程の戦いで消耗し切った装者達に勝ち目は無いのだ。

 

「さて、そろそろ終わりにしよう…」

 

サラセニアオーグが指を鳴らすと地面から数本の龍を模った触手が生えてくる。

無数の牙が生えており、涎のように樹液を垂らしていた。

 

「安心して土に還るがいい‼︎」

 

サラセニアオーグの合図で触手が一斉に襲い掛かる。

もはやこれまで…

 

が、触手が響達に噛み付くことは無かった。

 

「ん?どうした…?」

 

不思議に思ったサラセニアオーグが振り向くと、全ての触手が苦しそうにもがきやがて倒れた。

突然の事にサラセニアオーグや装者達が困惑すると、異変は伝播する。

なんと触手はおろか周りの樹木が一斉に枯れ始める。

それは急速に広がり半径約5kmの樹海の木々が枯れるのも時間の問題だ。

 

「な、何が起こって…⁉︎」

 

驚愕するサラセニアオーグだが、かと言う分身体も足から枯れ始めて倒れてしまう。

訳が分からないサラセニアオーグだが、ある情報から悟ってしまう。

 

「そん…な…私の…夢が……悲願が………」

 

サラセニアオーグ分身体はやがて全身が枯れて絶命、亡骸は泡となって融解・消滅した。

 

「一体、何が…?」

 

響の呟きに誰も答える事は出来ず、事件は解決した。

 

 

 

 

 

時は遡り、仮面ライダーと深緑本体(サラセニアオーグ本体)との戦いははっきり言って仮面ライダーが不利だ。

深緑の触手攻撃を躱し続け、隙を見てパンチやキック、スパインカッター等で反撃しても直様再生してしまう。

 

サラセニアオーグの強みは驚異的な自己再生能力。

植物系オーグメントは動物・昆虫系オーグメントに比べて再生能力が抜きん出て高いのが特徴だ。

反面、手術の成功率が低く数多くの被検体が死亡、良くて自我を失う個体が多かった中、サラセニアオーグは自我を保った数少ない植物系オーグメンテーション手術の成功体だ。

 

『貴様がガングニールホッパーだろうとこの私の前では無力。何故なら、人工物をも砕き繁殖する自然…植物の力を得ているからな!』

 

サラセニアオーグの言う通りこのままでは仮面ライダーがエネルギーの消耗で負けてしまう。

だが彼に焦りの表情は無い。

作戦通り進んでいるからだ。

 

次の瞬間、甲高い音が響き地面が隆起する。

そう、土竜がこの空間に乱入してきた。

 

ハッチが開かれ出てきたのは【布都御魂】のシンフォギアを纏うルリ子だ。

 

「お待たせ、本郷くん。」

 

「ルリ子さん、こちらは今のところ大丈夫だ。」

 

『お仲間の到着か、無駄な事を…自然の力を取り込んだ私の前では如何なる力も無力に等しい……!』

 

援軍の到着すらサラセニアオーグは余裕の表情を見せる。

それほど自分の力に絶対的な自信を持っている事だろう。

 

「それはどうかしらね。」

 

だが、彼女はその自信を打ち砕く秘密兵器を持っていた。

すると彼女の右肩が変形し、身の丈以上の大きさを誇る巨大な電磁砲…【大口径レールキャノン】になる。

 

そのままある弾丸を本体に打ち込む。

電磁力で撃ち込まれた弾丸は深緑本体に深く突き刺さる。

 

『無駄だと言ってるのが分からんか…⁉︎』

 

命中してすぐに異変が起こる。

深緑の触手が苦しそうにもがいたかと思えば命中した箇所から枯れ始めていく。

 

やがてそれは瞬く間に伝播していき、本体はおろか根を張っていた部分も急速に枯れていく。

 

『貴様…何を⁉︎』

 

「植物系オーグメントの長所、抜きん出た自己再生能力を遥かに上回る速度で侵食するオーグメント全体の天敵、サソリオーグの猛毒性化学兵器を大量に凝縮した特殊猛毒弾よ。自身の力を過信するあまりそっちの対策が疎かになっていたようね。」

 

ルリ子の説明に絶望するサラセニアオーグ。

そのまま枯れて本体もろとも絶命する。

 

「さて、深緑が枯れた以上このアジトも持たないわ。脱出するわよ。」

 

「分かった。」

 

そう言うと二人は土竜に乗り込みアジトを後にする。

深緑が枯れ切った事でサラセニアオーグのアジトは崩壊する。

 

撤収している最中、一息ついた所で本郷は気になる事がある。

 

「そういえば地上の敵は誰が対応した?」

 

「特異災害対策機動部二課。一般的に知られている一課とは違い、二課は世界で唯一ノイズに対抗できる武装システム『シンフォギア』を纏う装者が所属している対ノイズ機関。現在三名の装者が所属しているわ。」

 

「名前を聞いても?」

 

「一人目は【天羽々斬】の装者風鳴翼(かざなりつばさ)、二人目は【ガングニール】の装者天羽奏(あもうかなで)、この二人はアイドルユニット『ツヴァイウィング』として活動している。そして三人目は立花響(たちばなひびき)。」

 

三人目の名前に本郷は驚く。

 

「響が…?」

 

「ええ、二年前の惨劇でガングニールの破片が心臓に刺さり、その特異性を見込んだ兄さんが彼女を融合症例として実験・観察し、そのまま自身が掲げる幸福の為に利用した……聖遺物融合型オーグメント第0号【ガングニールヒューマン】として…」




次回、『女王の城と撃槍の少女』

乞うご期待ください。
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